如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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31話 譲れないことは譲れない! 検索履歴は秘密の扉?!

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 ごちそうさまでした。夕食後の食器洗いや風呂掃除など、本日の残った全ての家事を済ませる。如月は帰って来てからずっと、パソコンと睨めっこ。つまらん。もっと可愛がってほしい!!!


 和室へ入り、襖を閉めた。如月が一瞬、こっちを見たけど、すぐに視線はパソコンへ。如月にとっては、これが仕事かもしれないけど、少し構って欲しい。


 座ってる如月の後ろから抱きつく。そのまま腰を下ろし、背中に頬をつけた。こんなに密着しているのに、タイピングの音が止まらない。無視されている。むー。


「さびしいぃ~~構ってぇ~~」背中に頬を擦る。すりすり。
「はぁ? さびしくないですって。ほら、私、ここにいますから」


 かたかたかた。まだ止まらない、指先の音。


 そして俺へは塩対応。


「如月ぃ~~すき~~ちょっとだけ休憩! ねっ? ねっ?」如月の顔を覗き込むと、浅いため息と同時に、頭が撫でられた。


 ようやく、キーボードを叩く手が止まる。


「も~~」
「ちょっ……わぁっ」


 急に腕がグイッと引っ張られ、如月の胡座の上に身体が倒れた。背中を押され、上半身が起きる。胡座の上に横向きに座る姿は、もうお姫さま。恥ずかし。頬がほんのり赤く染まる。


「後ろに居たらキス出来ないでしょ」


 顎が掴まれ、顔の向きを如月の方へ変えられる。艶やかな笑みを浮かべ、少し強引に唇がついばまれる。


「~~~~っ」強引な口付けに顔が熱くなる。
「あ、旅行どうします?」Tシャツの下から胸元へ手が這う。

「んっ……シルバーウィークとかどうかな……あっ……卯月は如月の実家にいってもらって……」胸の先端が親指の腹で擦られた。

「都合のいい預け先みたいに利用しないでくださいよ~~まぁいいけど……ん」ちゅ。不意に挟まれる、口付け。なんかだか照れる。

「秋だから…あっ……紅葉とか……京都いいかも…んっ…寺的な……ぁあっ……もう~~触りながら話さないで~~」如月の指先が胸の先端で遊ぶ度に体がビクッと反応する。

「ふふ。だって可愛いんだもん。大阪行った時も、京都推してましたよね。行きたいの?」突起が少し強めにつままれた。気持ちい。

「やぁっ…別にそういうわけじゃ……風情とかありそうだから如月好きかなって……」照れくさくて、如月から目線を逸らした。


 Tシャツの下を這っていた手が戻っていき、優しく背中に添えられた。背中と肩が如月に引き寄せられ、軽く抱きしめられる。


「睦月さん、ありがとう。でも2人で行くところだから、私だけじゃなくて、睦月さんも行きたいところを選びましょ」


 穏やかな笑みを浮かべ、近づく如月の顔に気持ちが溶かされそうになる。目を瞑り、唇が重なるのを待った。


「如月…………」



 スパン!!!



 襖が勢いよく開いた。



「……………」如月は遠い目になった。

「今良いところ!!! タイミング!!! あと少しでキスだったぁ!!!」

「知らんがな!! 好きあらば、いちゃいちゃ、ちゅっちゅっして!!! それよりもなんと!!! 重要なお知らせがあります!!!」卯月は紙を1枚、俺の目の前へ差し出した。


 保護者各位『秋の稲刈り体験』


「稲刈りだぁあぁああ~~っ?!?!」やりたくなくて顔が引きつる。
「そういえば、田植えしましたもんね。ちゃんと収穫までするんですねー。すごいです」如月は差し出された紙を手に取り、眺めた。

「へー、田んぼに入って稲刈りね。長靴履くんですね。睦月さん頑張って」面倒くさそうに保護者便りを俺へ押し付けてくる。

「いやいやいや、前回植えた人が刈るのが主流でしょ!!!」紙を押し返す。やりたくない。

「如月はお父さんポジションをもうやり通すことが出来ないので、お兄ちゃんは私と収穫します」その言葉に固まる。

「え……やだ……暑そう……長靴とか履きたくない……ださい……」目が淀む。
「しつこいくらい(長靴)って書いてありますよ。履かないと~~似合うと思いますよ~~長靴」如月がクスクス笑っている。


(自分はやらないからってバカにして!!!)


「私も行こうかな、稲刈り。睦月さんの長靴姿見たいし」


 嘲笑うように口元に手を当て、ぷっと笑う姿がまたむかつく。でも、来てくれるなら、一緒に行きたい。


「行こうかなって……何? 行かないつもりだったの? どんな時も俺のそばに居てよ」如月のシャツを掴み、見上げる。

「それはずるいですよ、睦月さん……」困ったように笑う如月の手が、優しく頬を撫でた。

「如月も植えたんだから、一緒にきて。それに、3人じゃないと落ち着かない。 じゃ、そういうことで! ごゆっくりぃ!!」


 卯月は立ち上がり、和室を出た。


 スパン!!!


 襖が閉まる。静かに開け閉めは出来ないのか。押し付けられた保護者便りを畳の上に置き、如月の目を見る。さっきの続き、しよ? 言葉にはしないが、甘えた表情で訴える。


「で、旅行はどこ行きますか? 9月の三連休」


 伝わらなかった。まぁいいけどさ。それも大切だもんね。


 ノートパソコンを広げ『旅行 京都』で検索する如月の手元を見る。ブラインドタッチが早い。やっぱり京都行きたいのかな? 画面に流れ出てくるオススメプランを眺めた。


「睦月さんはどこに行きたいんですか?」
「う~~ん」横を向いていた体を正面へ向け、画面を見て真剣に考える。
「私、お茶持って来ますね」


 俺をみて、ニコッと笑い、キッチンへ行ってしまった。行きたいところねぇ。如月と一緒ならどこでもいい。検索エンジンをクリックすると検索履歴が表示され、いつもとは違う如月の一面が垣間見える。


 ふぅん、そんなこと調べるんだ。


 アブノーマルプレイって……俺とナニしたいの? 普通のえっちじゃ物足りないの? 如月さぁああん!!! 俺、変なことはやだよぉ~~。


 なんで生クリームと蜂蜜めっちゃ調べてるの? なんか作って食べるの? よく分かんないんだけど。


 たくさんの検索履歴の中うちの『指輪』という文字が目に留まった。指輪? どうして? 内緒で指輪、買ったりとかしないよね? 少し気になり、検索履歴をクリックする。


 マリッジリングの専門店のホームページを中心にクリックした痕跡がある。いやいやいや、一緒に見に行ったじゃん。どういうつもり? 割り勘はするつもりないけど、買ってもらうつもりもない!!!


 これは言うべき? でも人の検索履歴を勝手に見ている自分もどうなのか……。なんだか言うのは気まずいな。


「睦月さん、良いところありました?」


 後ろから如月の気配を感じ、慌てて開いていた画面を閉じた。見られたかな? 如月の方を見ると、きょとんとした顔で首を傾けている。机にコップが2つ置かれた。


「いや……まだ……」


 先ほどのページが気になって、薬指の指輪に触れてしまう。うーーん。仮に言わなかったとして、お互いが同じタイミングで指輪を用意し、ダブっても困る。


「何かあるの?」何かを察したのか、不審そうに、じぃっと見つめてくる。
「うん……まぁ、あるような、ないような……」その視線に耐えられず、目線が泳ぐ。


 やっぱり言おうか。このまま黙っていて、何かを疑われるよりは、自分の思っていることを伝えた方がいい。


「……なんで指輪調べてたの?」勝手に履歴を見た罪悪感もあり、如月を直視出来ず、俯く。
「あーー……それは……その……まぁ……」


 曖昧な話し方が気になり、顔を上げると、如月は赤く染まった頬を人差し指で掻いていた。照れてる。かわいい。


「今の指輪……お互い元々、薬指用に買ってないですし……サイズが合ってないのが気になって……もうこの際買っちゃおうかなって……クリスマスプレゼントとかにして……」


 やっぱり!!! 買おうとしてた!!! 危な!!! てかクリスマスプレゼントに指輪?!?! 何それ!!! ずる!!!


「だめっ!!! 指輪は俺が買います!!! 今の指輪はサイズ直す!!!」ぎゅっと如月の手を握った。
「ぇえ……でも高いし……」


 如月は眉を八の字に下げ、心配するような表情を浮かべた。


 そんなめちゃくちゃ良い給料ではないが、年齢の割にはそれなりに貰っている。買えないことはない。そして俺が如月へ贈りたい。これは譲れない。


「お願い、俺に買わせて?」


 握った如月の手。細くて長い指をゆっくりと広げた。爪先は綺麗に切り揃えられており、長くは伸びていない。これは俺への配慮。手荒れもなく、筋が立つ手はとても綺麗。



 少しばかり、如月の薬指に触れる。



「そうですか。私に何か伝えたいことでも?」



 目を細め、意地悪く笑う如月を見ると、つい言ってしまいそうになる。でも今は言わない。あともう少し、もう少しだけ待って、如月。



 俺の準備が整う、その日まで。



「…………」



 ただ、ただ、如月を見つめる。そうだよ、と笑って言えばいいのに。



 ここで同意したら、自分がしようとしていることが、全て伝わってしまいそうで、言えない。いや、もうバレているのかもしれないけれど。



「ふふ。いいよ、別に答えなくても。その代わり、旅行代は私に全額出させて?」



「ぇえ~~それとこれとはなんか違うような……」



 如月の顔が近づく。



 目を瞑ると、唇が触れ合い、さっきしそびれたキスの続きが始まったーー。



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