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29話(6)注射で感じてた?!看護師さんにヤキモチ?!
しおりを挟むーー翌日 朝
すこー。
2人は病室のベッドで仲良く手を繋いで一緒に寝ていた。(※ちゃんと着替えた)
がららら。
「如月ぃ~~ちょっと早いけど来たよー」
ドアを開け、病室へ入る。如月は一旦家に帰ったかな? お兄ちゃんは今日も目が覚めないままかな。兄と如月の居るベッドへ近づいた。
ん? なんでベッドで一緒に寝てるの? なんか手、繋いでるし。どういう状況? ベッドの上に放置された小さなものが目に入る。なんだこれ。ゴミ? 手に取って見つめた。(※えっちの残骸)
「いっやぁぁぁあぁあぁあ!!!! 何これ!!! えっ?! えっ?! なななな何?! こ、これって!!! まさかっ!!! きゃあぁああぁあぁあ!!!!」恥ずかしくて顔が熱くなる。
卯月はファンタジー感覚で覗くのは良いが、現実を見るのはダメだった。
「うぅーー……なんですかぁ~~」
「ん~~ぁ……なに朝からうるさ…ふぁ…卯月? おはよ」
睦月は目を擦りながら身体を起こし、卯月を見た。手に持っている愛の結晶(?)が目に入り、一気に目が覚める。
「如月!!! なんで捨ててないの!!! そ、そんなもの見ちゃだめっ!!! 触っちゃだめっ!!! い、いやぁあぁあぁあ!!!」手に持っていたものが兄によって奪われ、ゴミ箱へ捨てられた。
「お兄ちゃんのえっちぃ!!」持ってきた雑誌で兄を叩く。バシ。
「えっち?! ちっ、違っ!!! 俺のじゃないし!!!(?)もう!! 如月起きて!!!」ゆさゆさ。如月を揺すっている。
「ん~~なに睦月さぁん……」
「如月もえっちぃ!!!」眠そうに起き上がった如月の頭を雑誌で叩く。バシ。
「なにぃ…卯月さん、いたぁい~~」如月は叩かれたところを押さえた。
眠そうに起きるなり、愛しそうに兄を見つめながら抱きしめて座る如月と、抱きしめられて、頬を赤らめ伏し目がちになる兄。なんだこれ!!! 見てるこっちが恥ずかしい!!!
妙に色っぽい雰囲気が漂う2人にドキドキして、顔が赤くなってしまう。何この空気感!!! 入り込めない!!!
「もう!!! 私、看護師さんと先生呼んでくるから!!!」
その場に居られなくなり、逃げるように病室を立ち去った。
*
ピシャ
扉が閉まる。
「卯月行っちゃった」睦月が目線だけ上げ、私を見る。かわい。
「ん~~? すぐ戻ってくるでしょ」顔を覗き込み頬にキスすると、照れたように睦月が笑った。
はぁ、可愛い!!!! なんだろう、めっちゃ可愛い!!! 幸せ!!! 愛深まった気がする!!! もっともっともっと可愛がりたい!!!!
「如月、退院したらデートしよ」振り返り、私を見つめる。行きたいが少し心配。
「だめー。頭打ってるし、しばらく安静にしてください~~」頭の傷が治るまでは大人しくしてもらおう。
がららら。
「お兄ちゃん、血とるって~~。検査して大丈夫なら明日退院だって~~」看護師を連れ、卯月が病室に戻ってきた。
「血液検査する必要あるの……」腕の中の睦月が渋い顔をしている。
「あるからとるんじゃね? 私売店行ってくる」
「まぁ、確かに?」財布を持ち、また病室から出る卯月を見送った。
「あ」固まる睦月さん。
「…………」物言いたげな看護師と目が合う。
抱きしめられている姿を他人に見られ、恥ずかしいのか、睦月の頬が赤く染まっている。可愛い。離れ難い。願わくはこのまま睦月さんに注射を打ってほしい。まぁでも、常識的に離れよ。
黙って睦月から離れ、ベッドの隅に移動する。
「…………(別に良いんだけど、なんかやっぱりさ、こう『後でまた抱きしめさせてね、睦月さん(ちゅ)』みたいなやつ欲しい。甘やかされたい!!)」睦月は如月に目で訴えた。じぃ。
「…………(え、何? 頬染めて。しかもなんか煩わしそう!!! どういう感情?! 看護師さんいいっ的な?! 嘘!! 今更(?)また女性にいくとかアリなの!!)」
「腕出してくださぁい~~」睦月は台の上に腕を乗せ、拳の中に親指を入れ、ギュッと握った。
「少しチクっとしますねぇ~~」なんだか嬉しそうにベタベタ睦月に触る看護師にイラッとしながら注射針を眺める。
「はーい」
ちく。
「っん…ぁあっ……いたぁっ……」歪む睦月の顔。
注射されて感じてる!!! どうなのそれ!!! 綺麗な看護師さんが相手だから?!?! 距離近いし、触られてるもんね?!?!
「睦月さん!!! そういうの良くないと思う!!!」頬を赤く染めた睦月の後ろから肩を掴む。
「え、何?……~~っん」ビクッ。睦月の肩が小さく上がった。
(針が抜ける瞬間も感じるというのかぁあぁあぁあ!!!)
「10分くらい押さえておいてくださいねぇ~~」
「はぁい。ありがと。お疲れさま」終始、看護師さんも睦月さんもにこにこしている。
「これ貼りますね。あ、頭のガーゼも……交換します」睦月の腕に触れ、小さな絆創膏を貼り、今度は頭に触れている。距離近すぎでしょ。イラ。
「あ……ちょ……っいたぁ」若くて綺麗なお姉さんと距離が近いせいか、照れながら恥ずかしそうにしているのが、また腹立つ。
「すみません……テープに髪の毛がくっついて……」もはや、いちゃいちゃしてるように見えてくる。
「だいじょーぶです。やって?」少し顔を上げお願いする姿にイラ。他の人そんな頼み方するな!!!!
「はい、今やります」だから!! 距離近い!!!
なんかめっちゃ腹立つ!!!!
なんなの? 看護師さん相手に感じたり、すごくにこにこてれてれして!! 綺麗で可愛いから?! 胸が大きいから?! ナース服だから?! 私の前で堂々とよそ見してむかつく!!!
すごく小さなことで嫉妬しているのは分かっている。しかも看護師さん相手に。でも目の前で仲良さげに話す2人を見ていると、苛立ちがおさまらない。
「あっ……なんか落ちまし……」ふに。落ちたものを拾い、渡そうとした睦月の手が、看護師のふくよかな胸に当たった。
(近いもんねぇ? 距離が。結構ダイレクトにいかなかった?)
「あ……はぁ…や…柔ら…いや、違っ……ご、ごごごごめんなさいぃ!!!!」真っ赤になってるし。まぁ、元は好きだもんね。大きい胸。別にいいけどさ。冷めた目で睦月を見る。
「大丈夫です~~はい、出来ましたよ。もう、佐野さんかっこいいからドキドキしちゃいます~~」イラ。もう、早く持ち場へ帰れよ!!
「いや、ほんとすみません。ありがとうございます」真っ赤になりながら俯いている。
もう、私の存在忘れてるんじゃない? 勝手にすれば。体育座りをして、ボソッと呟く。
「……もう、女性と付き合えば」
「はぁ?」私の言葉が聞こえたのか、急に睦月が振り返り、睨まれた。地獄耳。
「まだ呼びに来ますねぇ~~佐野さん」もう二度と来るな。
「はーい、ありがとうございまぁす」もう何? そんなにこにこして!!
看護師が病室から出ていくのをイライラしながら見つめる。早く出て行け。そして振り返るな。
「で、なんでそんなこと言うの?」心なしか目が怒っている気がする。のそのそと私の隣に睦月が来る。
「べつにぃ~~」顔を横に向け、逸らす。
「ねぇ~~?」服を引っ張ってくる。無視無視。
「うるさいな~~、看護師さんと仲良くしとけば」
あーーあーーあーーーー!!! クソみたいなこと言ってる!!! こんなこと言っちゃダメなのに!!! 分かっているのに、嫉妬からくる醜い感情のせいで止まらない。
「女性の方が柔らかくて気持ちいいと思いますよ。それに、挿れることできますしね」にっこり笑ってみせる。
ーー本当、最悪。
作ってる笑顔と反対に心の中は後悔しかない。素直に『仲良くしないで』って言えばいいのに、反対の言葉しか出てこない。なんて天邪鬼。
意外にも睦月さんは、怒らず、そんな私のことを分かっているみたいに、何も言わず肩へもたれかかってきた。
「……………」静かな病室に沈黙が流れる。
「……怒らないの?」睦月の方を見て、訊く。
「だって、ただのヤキモチじゃん。そんなに嫌だった?」
大きな目を細め、見つめてくる。その挑発するように細めた瞳が艶やかで、性的な気持ちになり、ゾクっとする。睦月さんのくせに。
睦月の手が私の頬に触れる。今なら素直に言えそう。
「…………目の前で自分の好きな人が他の人といちゃいちゃしたり、感じてたら頭おかしくなる」頬に触れる睦月の手の上に自分の手を重ねる。
「いちゃいちゃしてるように見えたの? あと感じてませんけど」睦月はニヤニヤしながら、如月の正面で膝立ちし、抱きしめた。
ぎゅ。
「いちゃいちゃしてたぁ。注射されて感じてたし……あと照れてた……胸…触って喜んでた……」言い出したら、思ってたことが溢れ出る。
「いやいやいや、100歩譲っていちゃいちゃしてるように見えたとして、感じてはない!!! 喜んでない!!! 柔らかくて驚いただけ!!!」ふぅん。
「まぁいいけど」
「変なヤキモチ妬かないで? 俺、如月のことだけが好きだし、如月しか見えてないよ?」背中に回された腕がぎゅっと締まる。
「……うん」
いつのまにか強くなっている、独占欲。注ぐ愛情が深くなれば深くなるほど独り占めしたくなる。睦月さんが誰かに触られるのすら、嫌だと思ってしまう。
失いかけて、更に深まる、睦月さんへの気持ち。
「早く退院して、いっぱいいちゃいちゃしたいなぁ」体育座りしていた脚が睦月によって横に倒された。
「……今もしてるでしょ」目の前に居る睦月を真っ直ぐ見つめる。
「病室じゃ限界があるし……まぁちょっとドキドキして、ここも良いけどね」
ゆっくり膝の上へ座ってくる睦月に鼓動が早くなる。
睦月の指先が髪の間を通り頭に触れた。反対の手も指先が髪をすり抜け、地肌に沿う。頭に添えられた両手に軽く力が入り、睦月の顔へ引き寄せられ、唇が重なった。
「……っん……んん…はぁ…んっ…ん…ふ…んはぁ…ん」
自分たち以外誰も居ない静かな病室に、くちゅくちゅと唾液が混じり合う音が響く。頬を染め、官能的に舌を絡めてくる睦月がいやらしくて、身体は熱くなり、Tシャツの下に手を入れた。
「ん……はぁ……んんっんっ…ん~~~~っ」
キスしながら籠った声で鳴く睦月が可愛くて、何度も口付けを交わし、身体に巡る甘い疼きを堪能した。
ふふ。キスだけでやめられなくなりそう。
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