如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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28話(2)兄妹で出かけても結局は3人揃う?!

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 むくっ。


 上半身を布団から起こす。


 しーーん。誰も居ない。


「睦月さぁん……?」


 布団から立ち上がり、リビングへ行く。誰もいない。脱衣所から洗濯の終わりを知らせる軽快な音楽が聞こえた。


「分かんないけど…なんか置いていかれたぁ……」しょぼん。


 脱衣所へ行き、洗濯機から洗濯カゴへ洗い終わった洗濯物を移す。たまには家事しちゃお。普段はやらないけど。私だってお手伝いするもん。


 洗濯カゴを持ってベランダへ向かう。毎日出る3人分の洋服は中々の量。重たい。これを毎日睦月さんが1人でこなしていると思うと、有り難みを感じる。


『ありがたみくらい感じろよ』って睦月さんにキレられたこと(14話(3))を思い出す。その通りです。はい、すみません。ハンガーに洋服を通し、物干し竿にかける。


 ケンカらしいケンカはあれ以降ほとんどしていない。別にしたいわけではないが、もう少し腹を割って話せるようになったらいいな、とは思う。話せていないのはいつも私かもしれないが。


 ありがたみ……。


 いつも睦月さんと卯月さんにはお世話になってばっかりだ。たまには喜ばせるような、お返しをしたい。


 ちょうど、今誰もいないし、準備出来るかも!!


「睦月さんと卯月さんが喜ぶことってなんだろう?」


 洗濯物を干しながら考える。まだ3枚程度しか干せていない。考え始めると、手が止まる。


 睦月さんはいっぱい愛を伝えれば喜んでくれるのでは?!?! 卯月さんって何が好きなのかな。食べ物は好きそうだけど。う~~ん。


 ポケットからスマホを取り出し、検索エンジンを開く。『人気のプリン屋さん』という見出しが目に入り、タップする。駅前に新しいプリン屋さんが出来たんだぁ。へー。


「買いにいっちゃお~~」


 睦月さんも卯月さんもきっとプリン好き!!! きーめた!!! ハンガーに通した洗濯物をその場に置き、洋室へ着替えにいく。衣装ケースから、いつもの服装を引っ張りだす。着替えてっと。


「よし!! 行こう!!」


 カバンを手に取り、玄関を出た。



 *



「絶対買いすぎだと思うね~~」
「ここに来たら買わないと!!!」


 サプライズの料理の材料を買いに来たはずなのに、兄の買い物に付き合わされている感が半端ない。会計の終わった品物をエコバッグへ詰める。


 詰め方とかよく分からないんだけど。手際よく、ブロックみたいにエコバッグへ綺麗に詰める兄は買い物慣れしている。


 全て縦に入れればいっぱい入るかな? 牛乳とかも縦置きだし。卵、肉、牛乳、パン、ありとあらゆるもの全て縦にエコバッグへ詰める。


 おぉ!! なんだか綺麗じゃない? 形もいいし、良い感じ!!!


「お兄ちゃん全部エコバッグ入れた」
「じゃ、帰ろうか」


 袋いっぱい詰まったエコバッグを持ち、スーパーを出た。餃子だけってなんか、寂しい。食後のデザートとかあった方が喜ぶのでは?


「お兄ちゃん、デザート買っていこ。食後のお楽しみあった方が如月も喜ぶ」多分。
「あ~~そうだね。何にする?」
「星奈に美味しいスイーツ店を昨日教えてもらったからそこで」


 行き先を自宅から駅前へ変え、歩き出す。この荷物を持って駅前まで歩くのは少し嫌だが、これは如月のため!!! 頑張ろ!!


 駅前まで歩くと、見慣れた人影がスイーツ屋さんの前でうろうろ。何をやっているのだろう。


「お兄ちゃん、アレ」うろうろする人物を指差す。
「……何やってるんだろうね?」なんとなく2人で木の陰に隠れ、その人物の様子を窺う。


 しゃがんだり、頭を抱えたり、まるで不審者。


「ぁああぁあぁああ!!!! スマホ忘れたぁぁぁぁあ!!!」如月は頭を抱えて叫んだ。


「金がなくて買えないんじゃない?」


 後ろにいる兄の顔を見る。仕方ないなぁと今にも言いそうな、優しい目つきで如月を眺めていた。早く行ってあげなよ。


「行ってこれば」私のそばを離れない兄に言う。
「一緒に行こう」


 兄に背中を押され、如月の元へ向かうが、2人の恋仲を邪魔したくはなくて、一歩下がり、様子を見守る。


「如月、こんなところで何やってるの?」睦月は頭を抱える如月を後ろから抱きしめた。

「え? 睦月さん? なんでここに?」
「スイーツを買いに卯月と。お金ないの?」睦月はぷっと笑い、如月の顔を覗き込んだ。

「スマホ忘れてきて、決済出来なかったんですぅ~~」
「お金なくて買えないんじゃん~~」


 今にもキスしそうな雰囲気の2人を眺める。如月を家へ連れてきたのは私だけど、こんなにラブラブになるとは思わなかったな~~。


 あ、ほら!!! ここ外ですけど!!!人もいっぱいいるところで!!! 私も居るのに!!! ちゅーして!!!


「卯月ここいますぅ~~気まずいんで、ちゅーとかやめてくださぁい~~」2人の間に手を入れ、くっついている体を引き離す。

「スキンシップ大切!!! 如月が俺のこと飽きないためにもスキンシップは続けないと!!!」
「やりすぎたら、特別感がなくなって逆に飽きるのでは? 知らんけど」


 会った途端、如月にベッタリな兄に対して、呆れしかない。さっき引き離したのに、もうハグしてるし。


「飽きちゃやだぁ~~」ぎゅぅ~~。
「だから、倦怠期は過ぎたって」ちゅ。


 はあぁ~~。一体何を見せられているのか。プリン買うから、もう先に帰って良いですか? あとは勝手にやってくれ!!! そしてリア充爆発しろ!!!!


「お兄ちゃん、プリン!!!」顔の緩んでる兄を睨む。
「あぁ~~そうでしたぁ」睦月は如月から離れ、プリン屋の前に並んだ。


 3人で横並びになり、メニューからプリンを選ぶ。これにしようか、こっちにしようか、迷いながら選ぶ、この些細な時間はあたたかくて、楽しい。


「俺これにする~~」
「私こっちにします~~」
「じゃあ私コレ!!!」


 目の前で箱に包まれていくプリンを見つめる。早くおうちで食べたいな。



 プリンを受け取り、3人で帰路につく。



 3人で歩くと2人は喋って、1人は後ろをついていくような形になりがち。でも私の背中で兄と如月は手を繋ぎ、3人で歩く形を崩さない。



 そんな兄と如月の気持ちが好きだ。



「早く3人でプリン食べたいなぁ~~っ」



 私は2人の顔を見て、満面の笑みを浮かべた。



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 *



 ーー帰宅



 リビングへ行くと、なんだか部屋の中が湿っぽい。


 エアコンが付いているのに、ベランダの窓が開いている。新しいエアコンが来て、節電モードになっているからといって、開けっぱなしにはされたくない。長い時間出かけるなら切って欲しい。


 なんだこれは。


 床の上に放置された濡れた洗濯物。ベランダを見ると途中まで干していたことが分かる。イラ。放置された洗濯物をハンガーに通し、急いで全て外に干す。


「如月ちゃぁあん!!! これをやったのはキミかな?!?!」リビングで座って本を読む如月の首に腕を回す。
「えっ? あ~~そういえば、やったような気もしないこともない」とぼけた顔をする如月を睨む。


「……途中までだけどやってくれてありがと」


 咎めようと思ったけど今日はやめる。何せ今からは如月のためのパーティだ。気分を害したくはない。キッチンへ向かい、料理の準備を始めた。


 キャベツとニラ以外の買ってきた材料を冷蔵庫へ仕舞う。何故このエコバッグには、全て買ったものが縦に入っているのか。卵を縦に入れるとはどういう神経してるの? 割れるって。1番下に入れろよ。イラ。


 ボウルにひき肉と調味料を入れ、下味を付ける。その間にキャベツとニラをみじん切りにしていく。


 とんとんとんとん。


 まな板を包丁で叩く音に釣られるように、如月がキッチンへきた。


「餃子ですか?」


 ぎゅ。顎が肩に乗り、後ろから抱きしめられた。そうそう、これこれ!!! いちゃいちゃ度復活してる!!!! 良かった!!!


「今日は餃子パーティなの~~」切った野菜をひき肉の入ったボウルへ入れ、混ぜ合わせる。

「楽しそう」如月はスプーン、そして冷蔵庫から餃子の皮を取り出し準備した。

「よし!! おけ!!! 本当は冷蔵庫で寝かせたいけど、今日は包んじゃいます!!! 餃子パーティじゃあぉあぁあぁあ!!!」叫びながらボウルに入ったタネをリビングへ運ぶ。

「すっごいテンションですね……」ボウルにスプーンを刺し、餃子の皮を袋から出した。
「そりゃあ、如月に喜んでもらうための餃子パーティですから!!!」水の入った小皿を机の上に置き、床に座る。

「私のパーティ?」きょとんとした如月を見つめる。

「そうだよ? いつもありがとう、3ヶ月記念日パーティ!!! 卯月ぃいいぃい!!! 包むぞ!!!」手のひらの上に皮を乗せる。皮の淵に水を付け、具を包んでいく。

「あいよぉおぉぉお!!!!」机を囲うように3人で座った。

「私も睦月さんと、卯月さんを喜ばせようと思ってプリンを買いに行ったのに、睦月さんが買ってしまいました」
「あはは、同じ理由で同じもの買いに行ってたんだね~~ダブらなくて良かった。ありがとう」


 その気持ちが嬉しくて、笑みが溢れる。ひとつの机を囲い、なんでもないことを話しながら作る餃子は楽しい。


「睦月さぁん!!! うまく包めません!!!」如月の餃子を見る。タネが多くて溢れている。きちゃない。

「何やってんの~~ほら、貸して」如月の横に移動し、包み直す。
「餃子はそんなに綺麗に包めませんけど、睦月さんなら包めます~~」ぎゅ。後ろから座ったまま、包まれる。


 待って。餃子を包んだ手ですよね? 俺に触る前に洗え!!!!


「ちょっと!!! その餃子の汚い手で触らないで!!! 服白く汚れた!!!」
「ひど~~い!!! 愛情表現なのに!!! もう二度と睦月さんとハグしない!!!」



 如月は睦月から離れ、キッチンへ手を洗いに行った。



「やっ、あっ!! 待って!!! ちょっ極端!!! 汚してもいいから!!! ほらハグしよ!!!」



 包み終わった餃子を置き、如月の元へ行く。



「何、睦月さん~~触るな言ったりハグしよ言ったり~~」



 手を洗い、如月の前に立つ。二度とハグしないはやだ。じぃ。ごめん。如月に抱きつく。ぎゅう。



「嘘だってば。冗談に決まってるでしょ」背中に腕が回り、抱きしめられた。

「もし、本気だったら追いかけなかった時、後悔するから……」如月すき。ぎゅ。



「ほらほら!!! 全部包んだよ!!! そんなとこでいちゃいちゃしてないで焼け!!!!」餃子を持った卯月がキッチンへ来た。



 如月から離れ、大きめのフライパンを取り出し、油を引き、コンロで温めた。


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