如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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28話 サプライズにならなくても楽しめればそれでいい!

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 ちゃぷ。


 浴槽の中で睦月を後ろから抱きしめる。基本的にお風呂は1人で入る主義だが、今日は一緒に入りたいと思い、誘った。


 激しくし過ぎたせいか、睦月さんは少しお疲れのよう。ごめんね。もたれかかる睦月の頬を優しく撫でた。


「……ねぇ如月」
「んーー?」
「なんで俺のこと少し距離取ったの?」
「え?」


 入れようとしていた入浴剤が手から滑り抜け、湯船に落ちた。いや、なんでって……。


 貴方がちょっと触れるだけだえっちな声出したり、感じたりするからですけど!!!! あと私の脳内がえっちな睦月さんの姿でいっぱいだからですよ!!!!


「……………」言うか、言わないか、葛藤。
「なんで黙るの?」言っていいのか?


 睦月さんを見ると性的欲求が以前より感じるようになっちゃったけど、睦月さんのことが好きだからであって、身体だけが欲しいわけじゃないし、言っても良いかな。うーん、うーん。


「ねぇ、もしかして倦怠期?」振り返り、不安そうに、見つめてきた。
「倦怠期?」なんのこと?

「一緒に住んでるから、俺のこと慣れて飽きちゃったというか……気持ちが冷めて、嫌になって……その、スキンシップしたくなくなったみたいな……」
 

 睦月は正面を向き、ぶくぶくと顔を半分お湯に沈めた。


「え? 待って。私が倦怠期で睦月さんに距離取ってるみたいなこと言ってます?」


 慌てて睦月の顔を覗き込む。目線が下がり、しょぼんとしている。


(私が倦怠期なんて、あり得ない。)


「そうだよ。それしか考えられなくて。今日いちゃいちゃして、倦怠期は違うかなぁって少し思ったけど……」


 睦月の手が私の頬に触れた。何かするわけでもなく、ただ、優しく撫でる。


「ばかだね」ギュッと強く睦月を抱きしめた。
「……だってぇ……」抱きしめた腕に睦月の腕が重なる。

「だって睦月さんに触ると、すぐ可愛い声出すから、むらむらします」はぁ、とため息をつき、浴槽の淵に頭を乗せた。
「出してないし」

「出してますって~~ちょっと背中触っただけで『あっ……』って言うんだからぁ~~」水を弾いて睦月の顔にかける。
「ちょっ…顔にかかった!!! 言ってないし!!!」顔を手で拭く睦月が可愛くて、もう一度、水を弾く。

「もうね~~頭の中、睦月さんのえっちな姿でいっぱいで、勘弁して欲しいくらいです~~」ばしゃばしゃ。
「ちょっと!!! かけ過ぎ!!! やめて!!! 何するの!!! 如月ぃ!!!」ばしゃっ。顔にかかった。

「ちょっとやめてくださいよ~~」手で濡れた顔を拭う。
「お返し!!!」ばしゃ。またかかった。
「やめて!!! 顔にかかるのイヤ!!! かけないで!!!」ごしごし。両手で拭く。


 目を開けると、膝の上で、向かい合うように睦月が座っていた。引き締まった腹部に紅く色づいた胸の先端が目に入り、顔を逸らす。恥ずかしさと性的な気持ちが交差する。


「正面向かないで……」


 逸らした顔をもう一度睦月へ向ける。水を掛け合ったせいで、水滴が髪から垂れ、色っぽい。あぁ、触れたい。


「キスしようかなぁって」傾けた睦月の顔が近づいてくる。
「キスじゃ済まなくなるよ」睦月の胸元に手を触れる。

「あっ……」小さく肩が上がり、頬が染まった。
「ほら、ちょっと触っただけでこれだもん~~」お風呂出ようかな。

「ち、ちがう~~っ!!」
「何が違うの~~ほらぁ」腿の付け根に手を添える。
「んっ……」睦月の顔が少し歪む。
「我慢してるし」じぃと目を見つめる。

「もぉ!! お風呂出る!!!」恥ずかしそうに立ち上がり、浴室から出ていってしまった。追いかけよう。
「睦月さん、待って~~」浴室から出て、バスタオルを手に取り睦月を頭から包む。

「捕まえた」優しく頭と身体を拭いていく。
「捕まった」被せたバスタオルの隙間から目が合う。



 頭に被せたバスタオルが肩に落ちた。



 濡れた髪と、お風呂上がりで紅潮した頬にそそられ、唇を重ねた。


 *


 ちゅ。


 お風呂上がりに突然のキス。なんだか恥ずかしくて、頬が染まる。如月はまだタオルで拭いてないのか、長い髪から水滴がぽたぽた落ちている。


「拭いてあげようか?」バスタオルを手に取る。白くて綺麗な身体に目がいってしまう。
「拭くだけだよ?」如月の身体に触れ、水滴を拭き取る。
「わ、分かってるてば……」


 後ろから拭こう。腕、背中、そして腰。しなやかなライン。思わず手で触れる。脚を拭き、前へ。胸部を見るだけで、鼓動が速くなる。


「早く拭いて~~」如月に急かされ、拭く。
「なんか、こうさぁ、あるでしょ!!」ふきふき。胸元から順に拭く。
「ないって。頭拭いてほしーからあっちいこ」如月に手を引かれ、リビングへ向かう。


 床に座った如月の頭をわしゃわしゃと拭く。


「もっと丁寧に拭いてってば~~」着替えながら、ぶつぶつ言っている。
「この方が早いの!!」如月の頭を拭き終わり、自分も着替える。


 さて、今日は卯月がお泊まりで居ない。後は寝るだけとはいえ、このまま寝るのは少し寂しい。何しよう?


「まだ寝ないよね?」如月に確認をとる。
「え? えぇ。本でも読もうかなぁ?」2人きりなのにぃ。


 明日で夏季休暇も終わる。明日の予定も決めたい。和室へ行き、布団を2枚敷く。せめて、こっちで2人でまったり過ごしたい。


「如月っ!! 布団敷いた!! こっち来て!!」リビングで寝転がり本を読む如月に声をかける。
「はいはい」面倒くさそうに、起き上がり、本を片手に和室へ来た。


 和室以外の電気は全て消灯させる。寝る前の2人だけの穏やかな時間。布団は2枚敷いたけど、1枚の布団に2人で寝転がる。


「今日ね~~時計、お揃いで買ったし、如月がいつも俺のこと考えてるって分かったし、いっぱいいちゃいちゃ出来たし、楽しかったぁ」


 うつ伏せで本を読む、如月に背を向け、自分の気持ちを話していく。


「俺は倦怠期じゃないよー」


 寝返りを打ち、如月の方を向くと、いつの間にか、うつ伏せから横向きなっており、こちらを向いていた。


 もぞもぞ。


 如月に近づき、脇腹の下に腕を通し、抱きつく。


 ぎゅ。


「私はもう過ぎました、倦怠期」頭の上に如月の顎が乗る。
「え? 倦怠期あったの?」目線だけ上げ、如月を見つめる。


「まぁ。スキンシップとか面倒くさく思うこともありました。今はそんなことないですよ」


 如月の腕に身体が優しく包まれた。


「いっぱい笑って、ケンカして。これからも一緒に過ごしていきましょうね~~」

「そうだね」


 リモコンを手に取り、和室の明かりを消す。


「あ、でもケンカはやだなぁ~~っ」

「ケンカは愛を深めるんですよ~~?」


 如月の腕の中で瞼を閉じる。


「俺はケンカより抱きしめたり、寄り添ったりして愛を深めたいで~~す」

「じゃあ明日もいっぱい、いちゃいちゃしましょーね」



「…………」



 ぐぅ。



「ふふ、もう寝てる」



 如月は腕の中で眠る睦月の頭を優しく撫で、目を閉じた。



「おやすみ、睦月さん。愛してるよ」



 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー


 ーー次の日 お盆最終日 朝



「お兄ちゃん、如月ただいまぁ!!!!」


 なんかめっちゃ早く帰ってきた……。せっかく、如月と朝からいちゃいちゃしようかと思ったのに。如月はまだ寝てるし。


「お、おかえり……」リビングから玄関まで迎えにいく。
「如月は?」卯月の持っているお泊まりセットを受け取り、脱衣所へ向かう。
「まだ寝てるから静かにして~~」


 洗濯機に卯月が着替えた昨日の服を入れ、今日の分の洗濯を始める。如月と今日もデートって思ったけど、今日は無理だな。洗濯機に洗剤と柔軟剤を投入し、リビングへ戻る。


 リビングでスマホを見ている卯月に声をかけた。


「宿題、終わったの?」
「もちろん。意外と計画的なの。今日の予定なに?」卯月はスマホから目を離し、睦月を見た。

「実は予定が決まってないんだよね~~」無意識に頭を掻く。
「如月まだ寝てるんでしょ? なんか買いに行かない?」
「何かとは?」

「3人で楽しめて、如月を喜ばせれる何か。たまには如月を喜ばせる会です」卯月はスマホをカバンにしまい、玄関へ向かった。
「なるほど」卯月の背中を追いかける。


 これはちょっと良いかもしれない。如月にお世話になってる……ん? というよりいつもお世話をしているような気がするけど。


 卯月にとっても、俺にとっても大切な存在であることには変わりはない。たまにはサプライズもいいな。良い大人が記念日を毎月お祝いもどうかと思って、スルーしてきた。だから、付き合って、記念日のお祝い的なことは何もしてないし。


 この際、まだ3か月だけど、お祝いも兼ねよう。


 卯月と一緒に玄関を出た。


「何買うの?」卯月に訊く。
「とりあえずスーパーでいいんじゃね?」スーパー?

「え? なんで……?」
「だって、如月が1番喜ぶのはお兄ちゃんの飯だもん」
「…………」


 妹にすら全て見抜かれているみたいで、なんだか恥ずかしく、言葉に詰まる。


「そうでしょ? 私意外となんでも知ってるんだから~~」


 いつも行く激安スーパーへ卯月と歩いて向かう。兄妹で買い物とはなんだか少し、照れくさいな。



 ーー激安スーパー



「めちゃ混んでる!!! こんなところで買い物するの?!」すごく嫌そうな顔で卯月が見てくる。
「え? うん、そうだけど……」カゴを2つ手に取り、中へ進む。

「なにその慣れた感じ!!!」
「いつも来てるし……何作る?」片っ端から安い野菜をカゴに入れていく。

「どんだけ買うの!!!」
「え? 男2人と育ち盛り1人で食べたらあっという間だよ?」いっぱいになったカゴを卯月へ押し付ける。

「ちょっと!!! 私が持つの?!?! 重い!!! 女の子に持たせるなんてひど!!!」
「あっち見る」卯月の腕を引っ張り生魚コーナーに足を運ぶ。


 空いてるカゴを持ち、魚を品定めする。う~~ん。なんか少し高い気がする。魚はないな。肉へ目がいく。挽き肉安い。挽き肉かぁ。キャベツとニラ買うし、餃子だな!!!


「卯月!!! 今日は餃子パーティだ!!!」持っているカゴへ豚ひき肉を大量にぶち込む。
「なんか勝手に決めてるし!!! こんなに挽き肉買ってどうすんの!!! 要らんでしょ!!!」

「別に今日全ての挽き肉を使うわけじゃないも~~ん。ま、しばらくは挽き肉料理かな」
「偏り!!! もっと平等に買うべき!!!」卯月はカゴに豚バラ、肩ロース、鶏肉と置いてある全ての種類の肉をカゴに入れた。


「ちょっと!!! 安くなってないのは買わない!!! 戻して!!! 要らない!!!」カゴから入れられた肉を戻す。
「偏り反対!!!! せめて違う肉買えし!!!」戻しても入れられる肉。イタチごっこ。

「入れるな!!! 分かった!!! 買う!!! 買うからやめて!!!」無駄な出費をしている気がする。
「牛肉ね」卯月は牛肉をカゴに入れた。

「はぁあぁあぁあぁあ?!?! そんな高いもん却下!!!!」カゴに入っている牛肉を掴むと卯月に牛肉を掴まかれた。
「それはさせん!!!! 買うって言った!!! 嘘だめ!!!」


 ぐっぐっぐっ。牛肉の引き合い。


「だあぁあぁああっ!!! 買えば良いんでしょ!!! 買えば!!!」


(マジで要らん……無駄な出費……)


 睦月は泣きながら牛肉をカゴに入れた。


 2つのカゴはいっぱいになり、卯月と、ひとつずつカゴを持ち、会計へ向かった。




 




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