如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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25話(5)

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 ーー如月家 夕飯後


「睦月くん、花火ありがとうね」洗い物が終わり、お義母さんに声をかけられた。
「いえ……明日帰るのでみんなで何かしたかったというか……」

「うちの息子には睦月くんはもったいないわ」
「あは…あはは……」
「そこ笑うところ違うと思いますけど」むっとした如月が隣に来た。

「睦月くん甚平でも着る?」甚平!!
「着ます!!」わぁい!!
「浴衣より似合いそう……いいっ!!」悶えてる如月を無視して、義母の後ろを着いていく。

 和室へ行くと浴衣姿になった卯月がいた。お祭りに行った時とは違う浴衣だ。ちょっと花火やるだけなのに、大袈裟な気もしてくる。

「お兄ちゃんも着るの?」
「うん、甚平を~~」出してもらった甚平に着替えていく。

「汚すなよ」小春に釘を刺される。
「やだなぁ~~誰がどうやって汚すって言うんですかぁ~~」

「書斎」
「え?」甚平を着る手が止まる。
「派手にやったとは思わなかったのか?」じとりと小春に見られる。

「は……如…弥生さん……俺が寝た後…掃除……しなかったの……?」思えばシーツ変えたり、情事の後の掃除はいつも俺が1人でやっている。

「私が掃除するとでも?」何当たり前みたいな顔で!!
「掃除しとけよぉおおぉお~~……」手で目元を押さえる。泣きそう。

「ごめんなさいぃいぃ!!! 今から掃除させて頂きます!!!」甚平を着替え終わり、頭を下げる。

「もう掃除終わったんで。お代は花火で頂きます」小春は睦月の頭を撫でた。
「ほんとすみませ~~ん!! お姉さん!! 大好きです!!」小春を見つめる。

「なんだぁお前は~~!! 憎たらしいなぁ!!」むぎゅ。小春に抱きしめられ、胸に顔が埋まった。
「ん~~~~っ!! やば…胸やわらかぁ…ってちがぁっ!!! やめてくださぁい!!」

「姉さん、あんまりやると、睦月さん立っちゃうから」冷めた目で見てくる。
「立つか!!!!」小春から離れ、如月のそばへ行く。

「花火準備しよ?」如月のTシャツを引っ張る。
「はいはい」

 Tシャツを引っ張る手が、如月に外され、手を握られた。なんとなく気恥ずかしくて、目線が下がる。手を繋いだまま、縁側へ向かった。



 買った花火を開けて、縁側に並べていく。火を用意して、バケツも準備する。中々良い感じ!


「あとはみんな揃うまで待つだけ!!」縁側に座り、脚をぷらぷらさせる。
「楽しみですね~~ん」如月は顔を傾け、睦月に口付けした。

「いきなりなにぃ~~っ」急にキスされ、頬が赤く染まる。
「ふふ。脚ぷらぷらしてる睦月さん可愛くて。甚平も似合ってます」
「甚平着てシないよ?」ゴロンと縁側に横になる。

「分かってますって。せめて今だけ抱きしめさせて」如月は睦月の隣に寝転がり、後ろから腕を回した。 
「ほんとに~~?」回ってきた腕の上に自分の腕を重ねる。

「ほんと~~ん」ちゅ。首筋にキスされた。
「だめだめ~~ちゅーだめ~~っん」かぷ。今度は首筋に甘噛みされた。

「だからといって噛んでいいと言っていないぃ~~」後ろに手を回し、如月の頭を撫でる。
「けち~~」

「何やってんの~~?」卯月がしゃがみ込み、顔を覗き込んできた。

「ん~~? なんも~~」
「なんも~~」
「なに2人してなんもって~~」卯月の後ろからぞろぞろと如月家の家族が来るのが見え、如月と一緒に体を起こす。

「お兄ちゃんどれからやる?!」
「ぇえ~~じゃあこれで」適当に真ん中から花火を取る。

「お兄ちゃん火つけて! 火!!」
「はいはい」花火の先にチャッカマンで火をつけると、光が流れ出した。

「綺麗~~!!」
「うん、綺麗」

 卯月の隣に立ち、手元の先から流れ出る光の粉を見つめる。兄妹でこんな風にまったり何かして過ごすのは久し振りかもしれない。

「あれ? 如月はどこ?」辺りを見回す。縁側の隅で本を読んでいる姿が目に入った。

 俺に花火、あんなに買わせたくせに本読むとかどうなの?!?! 今は花火やれよ!!! 腹立つな!!

 如月の元へ行に、本を取り上げる。

「あぁ~~っ」返して欲しそうに手を伸ばしてくる。
「だーーめっ!! 俺と花火するの!!」手を引っ張り、花火が並べられているところへ連れて行く。

「はい!! ど~~ぞ!!」適当に花火を取り、一本如月へ渡す。
「ありがとうございます」自分の持っている花火の先に火を着ける。

「火は~~?」如月が訊く。
「俺の花火から移して」如月に寄り添い、自分の持っている花火を如月の花火の先に近づけ、火を分け与える。

「お兄ちゃん、私と如月、火の着け方違う!!!」卯月が強引に火を貰いに花火の先を近づけてきた。卯月の花火に火が移る。

「危な!!! 少しでもいちゃつきたいし、えっちな雰囲気になりたいんだから仕方ないでしょうが!!!! ほら!! チャッカマンあげるって!!!」花火を3本、手に持ち、チャッカマンで火を着けた。

「睦月さん、口から本音出ちゃってます」
「みて如月!!! あっは~~トリプル花火!!」指の間に挟み見せる。

「あ~~うん、すごいねーー」
「めっちゃ棒!! ひど!!!」


 花火が消えては、今持っている花火から火を移し、バトンのように繋げる。気づけば残った花火は線香花火だけになっていた。



「あんなにたくさんあったのに、線香花火だけになりましたね」如月は残った線香花火を手に取り、睦月と卯月へ渡した。

「そうだね。結局俺たちだけでやっちゃったね」


 縁側では夏の風物詩を見るかのように、俺たちを眺めながら、如月の家族がビールを飲んだり、つまみを食べたりして、わいわい楽しんでいた。


 3人円になり、しゃがみ込む。チャッカマンでひとつずつ、線香花火へ火を着けていく。ぱちぱちと小さく弾ける花火を見つめながら口を開いた。


「お盆もあと半分になったね」
「そうですねぇ。私、睦月さんと卯月さんがうちへ来てくれて良かったです」如月は睦月と卯月を交互に見た。

「上手く言えないですが……もっと親しくなれた気がしました。自分の家族と仲良くしてる姿を見るのも嬉しくて」


 恥ずかしそうに目線を線香花火へ移す姿が愛しくて、線香花火が落ちないように、そっと如月の肩に頭を乗せた。


「また来年もうちへ来てほしいです。なんて」
「来年も、再来年も、その次の次の年も。毎年行くよ、弥生さん」ちゅ。横を向き、如月の頬に口付けする。

「あ~~またキスして~~!! すぐいちゃいちゃ!! ちゅっちゅっ!! あっあっ!!!」卯月に指さされた。
「べ、べつにいいでしょ!! 何その表現やめて!!!」的確すぎて頬が赤く染まる。

「事実を述べただけでござる!!」卯月は立ち上がり、終わった花火をバケツに入れに向かった。
「そういうのは言っちゃダメでござる!!」

「ふふ、2人とも仲良し。あ」ぽと。如月の線香花火が落ちた。


「ねぇ、如月。千早さんも皐さんも呼び捨てなのになんで、俺のことは呼び捨てで呼ばないの?」如月の肩から顔を見つめる。

「えっ? え~~……う~~ん……」なんだか困っている。
「試しに呼んでみて?」

「……む、むつき」如月は恥ずかしそうに目線を揺らし、耳まで真っ赤にさせながら、言った。

 可愛い!!! めっちゃ可愛い!! そんな難易度高い要求したつもりなかったけど!! こんな真っ赤になって呼んでくれるなんて!!! 可愛いし嬉しい!! 今すぐにえっちしたい!!! 抑えろ俺!!!

「もう1回呼んで?」肩を抱いて、如月と距離を縮める。
「……むつき」もっと呼ばれたい。
「もう1回」如月に顔を近づける。
「睦月……ん」

 名前を呼ぶ、その薄く開いた唇にキスした。


「……やっぱり恥ずかしいからさん付けで」



「ぇえ~~なら時々は『睦月睦月愛してる~~』って呼び捨てで抱いてね」如月を見つめ、笑いかける。
「なんですか、それ~~」

 一緒に立ち上がり、終わった線香花火を片付けに行く。縁側で騒いでいた如月の家族もそろそろお開きみたいで、片付けていた。

 よし、やるか!!!

「手伝います!!!」小春に宣言する。
「ありがとう。助かる~~~~」ニヤッと笑っている。

「だからと言って全部押し付けるのだけはやめてくださいよ!!!」散らかったゴミを重ね、袋に入れていく。
「睦月くん、ありがとうね」お義母さん!


 本領発揮。効率的に手際良く片付ける。放置されたビールグラスをまとめて持ち、キッチンへ運ぶ。多分、これで全部。片付けはこれで終わり。

「はっ!! 洗ってるし!!! 無意識にビールグラスを洗ってしまった!! 俺、飲んでないのに!!! べつに良いけど!!」

 スポンジを置き、タオルで手を拭く。如月は縁側かな?


 もう一度、縁側へ戻ると、如月が縁側の隅に座り、本を読んでいた。先ほどまで人の騒ぐ声でうるさかった縁側は静まり返り、涼しさを奏でる風鈴の音がした。


「……明日帰るって思うと少しさびしい」


 縁側に寝転がり、如月の膝の上に頭を乗せる。いつも、妹のために、如月のために、家事に仕事にしっかりしなきゃと頑張って、甘えれない、俺なりの甘え。

「どうしたの?」如月は読んでいる本を縁側に置き、睦月の頭を撫でた。
「べつに。少しさびしくなっただけ」目が合うのが恥ずかしくて、ごろんと横向きになる。

「甘えてるみたい」何度も頭を撫でてくる手が心地よい。
「……甘えてるよ、少しだけ。何も頑張ってない、だらしない姿だよ」はは、と薄く笑い、委ねるように目を閉じた。

「……いつも頑張ってくれてありがとう。こんなことで良いならいつでもおいで」
「うん」頬を擦り寄せられ、幸せな気持ちになる。

「ねぇ、キスしていい?」如月は睦月の頬に触れ、顔の向きを正面に変えた。
「どうぞ?」薄目を開け、如月を見つめる。


「……ん……っん…ちょ…はぁ…んっ…はぁ…ん」ゆっくりと如月の顔が近づき、唇が触れ合う。熱い息を吐きながら何度も重なった。


「ーーはぁっ……もぉ~~軽くキスじゃないの?」
「そのつもりだったんですけど~~ちょっと無理でした」如月はにっこりと微笑んだ。

「……抱っこして」この言葉が何を意味するのか如月ならすぐ分かるはず。両腕を伸ばしてアピールする。

「甘えんぼさんだね。好きですよ、そういうの」如月は睦月をお姫様抱っこで持ち上げた。


「…………」かぁぁ。


 お姫さまの方だとは思わなんだ。(※俵抱きだと思った)お姫さま抱っこされて思う。めっちゃ恥ずかしい。顔が熱い。やめてもらおう。自分で言っといてアレだけど、そもそも抱っことかしなくていいや。恥恥恥恥恥!!!!!


「やっぱなし!!! 恥ずい!!! 下ろして!!! 自分で歩く!!!」ぺしぺし。如月の背中を叩く。
「はぁ? 今更何言ってるんですか。嫌ですよ。ちょっと!! 暴れないで!!! 落ちるから!!!」全然離してくれない!

「お~~ろ~~し~~て~~っ!!」
「『抱っこして』が可愛かったからやだ!!!」


 如月はお姫さま抱っこして歩き始めた足を止め、星の散らばる夜空を見上げた。


「どした?」
「睦月さんと一緒なら実家で過ごすのも楽しいなぁって」


 如月家で過ごす夏の夜。来年も絶対来よう。如月にお姫さま抱っこされながら、縁側を後にした。



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