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19話(3)
しおりを挟むーー串カツ屋
「新刊発売おめでとう!! かんぱーーい!!」3人はグラスを当て合い、発売を祝った。
「皐さんも来れば良かったのに」卯月は寂しそうにジュースを飲んだ。
「なんかまだ色々やることがあるらしいです」如月はグラスに入ったビールに口を付ける。
「ねぇ、飲むの? やめようよ~~」睦月は不満そうに如月を見つめた。
お兄ちゃんもちゃっかりビールだし。てか、お兄ちゃんってお酒強かったっけ? 慰安旅行の時やばみじゃなかった?
「ぇえ? こういう時しか飲む機会ないですもん~~。悪酔いはしないんで、大丈夫です」如月は片目を閉じ、親指を立てた。
「いやいやいや、そうじゃなくてさぁ……」兄は唇を尖らせている。
「お兄ちゃんって飲んで大丈夫なの?」卯月は睦月に訊く。
「え? う、う~~ん。たぶん……」大丈夫かな。
「飲みすぎなきゃ問題ないでしょ」如月は串カツを頬張りながら、睦月を見つめる。
「た、たぶん……?」兄の目はかなり泳いでいる。
「お祝いなんだから、楽しく食べて飲もーー」如月お気楽だなぁ。まぁいっか。
「そうだね~~はぁ、美味しいぃ」卯月は串カツをソースにつけ、口の中へ入れた。
「ほら、睦月さんも食べて! 飲んで!」如月に無理やり飲まされている。
「俺絶対飲まない方が良いんだってぇ~~」もう頬赤いし。
「グラフ2杯ぐらいはいけるでしょ、はい串カツ」如月は睦月の口の中に串カツを入れる。
「ほふぉのパターンらめて! 自分で食べますから!!」睦月は口の中から串を抜き、味わった。
心配し過ぎかな? お兄ちゃん、お酒弱くて、やばいやつになるパターンになるかと思ったけど。如月も居るし、大丈夫かぁ! 気にしないで食べちゃおう!!
3人は楽しくわいわい、串カツを食べ、飲んだ。
ーー30分後
ぁああぁあぁあ!! 1人じゃ無理!!!
誰か助けてぇええぇええ!!!
「……うぇ~~ん……ひっぐ…如月、新刊おめでとう……ひっぐ…うっ……おれ……旭がきて……如月…うっ……えっぐ……うわぁああん」兄号泣。まじうざい。仕方がないので背中をさする。
「……うっ気持ぢわる…………」如月は口元を押さえ、ふらふらとお手洗いへ向かった。何? お酒飲めないの?! 飲むなよ!!
「卯月ぃいぃい~~えっぐ……おれ、おれ……如月が好き過ぎて……うっ……ひっぐ…うぅ~…えっぐ……ずっと抱き合いたい…ひっぐ……」何を言うとんの。
「……ビール苦手かも……」如月はお手洗いから戻るとテーブルに伏せた。
あーー、どうしよ。この状態で1人じゃ帰れんわぁ。皐さん電話しても繋がらなかったしなぁ。
兄のスマホに手を伸ばし、フェイス認証で、ロックを解除する。
旭? あぁ、あいつね。大阪来てたよね。もう誰でもいい! 助けてくれ!!
卯月は旭に連絡を取った。
ーー30分後 旭到着
「何これーー、カオス」旭は号泣する兄と潰れている如月を見て目が濁る。
「助けて~~あとお金払って……」ほんと申し訳ない。
「はぁ?! 俺が払うの?! 何も食べてないのに?!」卯月は睦月と如月を見る。いや、払えんでしょ。無理だな。
「その代償はきっちり払ってもらうよー」あーー、ごめん。
「2人の関係を壊すようなものはやめてください……」それだけはやめて欲しい。
「わかってるって」旭は如月の腕を自分に回し、担ぐ。
「お兄ちゃんはよろしく」旭は伝票を手に取り、軽く笑い、店を出た。
「ぇえ~~運べるかなぁ?」兄を背中に乗せ、ずるずると引きずる。
あ、お会計終わってる。ほんと、すみません。アレ? いや、そうではなく。如月どこ連れていく気?! いいの?! これ?! ダメじゃね?!
「お兄ちゃん!! 起きて!!」兄の頬を叩く。
「……うっ……えっぐ……如月ぃ……ひっぐ……」ダメだこりゃ。
ぁああぁあぁあ!! どうしよ!!
まぁまぁまぁ! 意識はあったよね?! 大丈夫、きっと大丈夫!
卯月は睦月を予約したホテルへ運んだ。
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ーーーー
*
ぎもぢわる。そんな飲んでないはず……。ビールとかあんまり飲まないのに、調子に乗って飲んでしまった……。
あ、ホテル……。
ちょっと休も……ん?
ん?
んんん?
んんんんんんんんんん?
「うわぁぁあぁあぁあぁぁあぁあ!!!!」
「耳元で叫ぶなってー」なんで旭さん?! 何故担がれている?!
「ここここここどこ?! 睦月さんは?! 卯月さんは?!」予約したホテルと違う!!
「俺のホテルだけどー」はぁ?!
「帰ります!! すみません!! 介抱ありがとうございました!! おえっ……」吐き気が起こり、口元を押さえる。
「俺の服で吐かないでくれるー?」旭は如月を抱きかかえ、ベッドへ横向きに寝かせた。
「まだ吐いてません……うっ」旭にビニール袋を渡され、その中へ吐く。申し訳。
「服、緩めるよ」シャツのボタンが外されていく。
「開け過ぎでは?」第4ボタンくらいまで開けられた。
「誰がここまで運んだと思ってるの? 少しくらいサービスしてよね」旭は如月のパンツのボタンを外す。
「パンツのボタン外す必要あります?」訝しげに旭を見る。
「お腹苦しいかなって。酔ってる人を襲ったりしないよー」信用出来ない。緩まって楽になったのか、再び吐き気がくる。
「う゛」ビニール袋に顔を入れる。
「飲み過ぎ」旭は如月のそばに座り、背中を優しく叩いた。
「はぁーー……なんかすみません」迷惑はかけている。
「いいよー。一緒に過ごせてちょっと幸せだし」旭は如月の頭を撫でた。
うーん、複雑。この人の優しさは好き。でもアレなんだよねぇ。だからといって、恋人にしたいとかそういうのはない。
私は自分を愛してくれる人に惹かれるのだと思う。愛は返さないけど。ほんと、気をつけないと皐みたいな関係になりそ。
はぁ、一通り吐いてスッキリした。お風呂に入りたい。でもここで入るのは嫌だな。自分のホテルに戻らないと。
振り返り、後ろで背中をさする旭を見つめる。
「なにー。目がとろ~んとしてるよ」旭はそっと、開いたシャツの隙間に手を入れる。
「ん、ダーーメ。睦月さんのところ帰らなきゃ~~」手を掴み、シャツから抜く。怠い体を起こした。
「ちぇ~~っ。今度デートしてくれるなら、串カツの支払いチャラの上、ホテルまで連れて行ってあげるよ?」う~~ん。1人で帰れる気がしない。
「……いいですよ」
背に腹はかえられぬ! これで安全に睦月さんのところへ帰れるならアリ。如月はベッドから立ち上がる。
「足元ふらついてるしー。よっと」
「え? いやぁあぁあぁあ!!!」
こんな姿で戻りたくない!!
酔いによる頭痛と怠さで、口とは反対に体は抵抗する気が起きず、首の後ろに手を回す。そのまま、部屋を出た。
*
「如月はぁ?」ベッド上で目を覚まし、隣で寝転がる卯月を見る。
「え?」卯月は焦ったように目線を外す。
「如月はぁ? どこ」なんだ?
「あーー、え~~っと。介抱されてます」目を合わせようとしない。
「誰に?」前回より飲んでないせいか、思考も早く回り始める。
「旭さん……?」はぁ?
「何してくれちゃってんの!!!!」怒りで酔いも全て吹っ飛ぶ。
「だだだだって~~頼れる人いなかったし……」卯月は睦月と距離を取るように後ずさる。
「なんかあったらどうするの!!!」あぁ! 如月が旭に食われる!
コンコン
「はいいい!!」逃げるように卯月はドアを開け、出た。
「どうもーお届け物でーす」如月をお姫様だっこした旭が部屋の中へ入ってきた。すぐに駆け寄り、如月を見る。
「……寝てる」少し頬が赤い。
「途中までは起きてたんだけどねー」旭はベッドまでいき、如月を横に寝かせた。
「あ、何もしてませんからー」旭は睦月を見て言う。
「旭、ありがとう」なんでこんなに胸元はだけてるんだろう。旭へ向ける笑顔が引きつる。
「じゃ、またねー。弥生さんにデートよろしく伝えといて」え?
「待って!! どういう意味?」旭の肩を掴む。
「本人に聞けば?」旭は手を振り払って、部屋を出る。
「あ、私も自分の部屋行くね! おやすみ~~」卯月も部屋を出て行った。
卯月、部屋別だったんだ。いやぁ、色々難解!! 何故こんなに上も下もボタンが外れてるの?! 何かあったのでは?! デートとは?! 一体2人の間に何が?! 気になる!
如月の頬を叩き、起こす。
「如月ぃ、ちょっと起きて~~」
「ん~~……あ……睦月さぁん」にへらぁと如月は笑う。なにちょっと可愛いんだけど。
「まだ酔ってるの?」如月の頬を触る。
「分かんないけど、気分良い~~」酔ってるなぁ。
「睦月さん、向日葵持ってきて~~」
酔っ払った如月にしばらく付き合うことにした。花束を如月に渡す。
「ふふ。うれしーー」如月は花束をぎゅっと抱きしめる。愛しっ。
「……いちに……さん…し……」如月は向日葵の本数を数え始めた。
「11本だと思うけど?」睦月は如月を見つめる。
「ほんとだ、ちゃんと11本ある~~。睦月さんって意外とロマンチストだったんだねぇ。知らなかったぁ」
11本の向日葵。意味、最愛。花を贈るなら、本人が気付かなくても意味を込めて、と思った。気づいてくれてよかった。
「睦月さん、ぎゅーして、ぎゅー」如月、甘えんぼ。如月の横に寝転がり、前から花束ごと抱きしめる。
「ちゅーはぁ?」なにもぉ。目とろんとしてるし、頬赤いし、胸元見えてるし!! ズボンずり下がってるし!! 甘えたさんだし!! キスなんかしたら我慢できなくなるわ!!
「キスしたら止まらなくなるよ?」顔を近づける。
「ぇえ?」状況判断出来てなさそう。
「俺が何言ってるか理解できてる?」にこぉって笑われても。
「分かってなさそうだなぁ。知らないよ?」睦月は如月を仰向けに寝かせ、覆い被さる。
「花束、邪魔だね」向日葵を取り上げ、如月の下唇を唇で甘噛みする。ほんのり濡れる唇。その少しの光沢が自分の中に火を付けた。
「ーーんっ」少し強めに唇を重ね、押し付ける。ん……げろくさ。
「睦月さん?」体が自然に、唇を離す。
「風呂だ!!! 風呂!!! 風呂に入れ!!! そして歯を磨け!!! それからだ!!!」如月の首根っこを掴み、引きずりながら、浴室へ連れて行く。
「睦月さぁあぁん!! 何するんですかぁ~~」
「いいから入れ!!!」手元がおぼつかず、うまくシャツのボタンが外せない様子。
あぁ、もう! 世話が焼ける!! 俺が風呂に入れてやんよ!!! えへっ。
睦月は鼻歌を歌いながら、如月のシャツのボタンを外した。
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