如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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18話(4)

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「ふぁあぁ……」目が覚めた。

 手を伸ばし、スマホを見る。6時半過ぎ。腕の中で睦月がすぅすぅ寝息を立て、まだ寝ている。指の背で、頬を撫でる。体を起こし、睦月から離れ、布団を掛けた。

 性欲は減退傾向だと思っていたが、まだまだイケるらしい。身体的衰えは感じるが、自分が思ってるいるよりは、現役だったようだ。とりあえず、ちょっとやり過ぎた。睦月さん、ごめん。反省。

 気持ち良さそうに寝る顔に心が和む。ベッドから降り、着替えてリビングへ向かう。今日は土曜日。睦月さんが起きた後、どうしよう。たまには自分からデートへ誘ってみようか。

「お腹すいたなぁ」

 睦月さん起きないかな。朝ごはん食べたい……。いや、作らせるのではなく、昨日のお詫びに私が何か作った方がいいのかもしれない。スープぐらいなら私にも作れるだろうか?

 冷蔵庫を開けて野菜を確認する。ふむ。多少失敗しても、煮込めばそれらしくなるだろう。実家でよく出てきたスープを作ろう。冷蔵庫から大根と水菜を取り出す。

 ない! ない! ない!!!

 シャーって皮剥くやつがない! 包丁で大根の皮剥くの? 怖! 出来るかな?! 大根を切り、親指を包丁に添え大根を回しながら少しずつ剥いていく。

「痛っ!!」切った? 大丈夫そう。血は出てない。オッケー。指先は怪我したくない。えっちに支障出るし。

 再チャレンジ。一周向けた。皮が厚い。大根が小さくなってしまった。まぁいいや。大根は短冊切りに。水菜も大根と同じような長さで切る。

「ぽんこつ嫁なんて呼ばせない」

 ニヤリと笑みを浮かべ、小さな鍋を取り出す。

 水600ml、鶏ガラスープ大さじ1投入。火にかける。面倒くさいから大根と水菜も先に入れちゃおう。

 ぐつぐつ

 火が通ってきた。塩小さじ3分の1、醤油大さじ1、酒大さじ1投入~~。まぜまぜ。カニカマをさいて、入れて~~。

 出来上がり~~。味確認。大丈夫、不味くない!! 安定の実家の味!! 問題なき仕上がり!! ぽんこつ嫁卒業!! 火を止める。

 ダンッ

 寝室で大きな音がした。なんだろう。心配になり、様子を見にいく。睦月が頭を押さえて床に座っていた。

「大丈夫ですか?」睦月に手を差し出す。
「あぁ~~うん。ちょっと歩こうとしたら、足ガクッてなって、頭打ったぁ……」睦月が自分の手を握るのを確認し、床から引き上げる。足元はふらついている。

 いくら睦月さんが若くて体力が有り余っているとはいえ、相当なダメージを与えたと思われる。申し訳ない。

「お姫さまだっこして運ぼうか?」薄く微笑み睦月に訊く。
「歩けるわ!」睦月は如月に握られた手を払い、フラフラとリビングへ向かう。私にはしたくせに。

「ねぇ、なんか作ったの?」コンロの上の小鍋を覗く。
「えぇ……その……ごめんね……?」如月は目線を下げ、指先で首を掻きながら謝る。

「なんで謝るのさぁ。気持ち良かったよ? またシようね」睦月は振り返り、微笑みかける。如月の顎を持ち、唇を重ねた。
「ん……嫌じゃないなら」
「はぁ? いつでもウェルカムだよ」睦月は再びキッチンを向く。

「これ、俺の為に作ったの?」
「えぇ……まぁ……そんなとこ……」なんか恥ずかしい。
「でもスープだけじゃ朝ご飯になんないね」睦月は口元に笑みを浮かべ、料理を始めた。


(何故にフレンチトースト!! スープに合わない!!)


「出来たぁ~~」睦月はフレンチトーストを皿に乗せ、テーブルへ運ぶ。
「はい、スープ」如月はスープの入った器を隣に置き、スプーンとフォークを並べた。席に着き、手を合わせる。

「頂きます」
「頂きま~~す」
「んふーー」うま。

 スープが合わないとかどうでもいい! じゅわってして美味しいーー。甘いものが昨日の疲れを消し去ってくれる気がする。フレンチトースト最高。

「スープ美味しい!」睦月は意外な顔しながら、口を付ける。
「何その顔。ぽんこつ嫁じゃないんで」フォークでフレンチトーストを刺す。
「ぇえ? じゃあ、今度は一緒に作ろうね」睦月はフォークを持つ如月の手首を掴み、自分の口の中へフレンチトーストを入れた。

「美味し。ごちそうさまぁ~~」睦月は空いた皿を持ちキッチンへ向かう。
「最後の1個だったのに……」しょぼん。

 あっ、デートに誘わなくては。う~~ん。私から誘うとか恥ずかしい。思えばリードしてくれるのは大概、睦月さんな気がする。えっちは別として……。

 たまには私からリードしよう。恋愛において、リードは得意だったはずだ。リードして、睦月さんに楽しんでもらおう。

「睦月さぁん」洗い物をする睦月の後ろから抱きつく。
「なに~~」
「……デ……デートしません……?」気ごちなくなってしまった。
「へ?」睦月は目を丸くして如月を見る。

「あ、いやぁ~~たまには……私からって思ったけど……体キツくて無理なら別に……」恥ずかしくて、睦月から目線を逸らす。
「行く行く!! 全然ヘーキ!! なにもぉ~~嬉しい!!」睦月の顔にパッと花が咲いた。

 でも、どこへ行こう? 思えば睦月さんの好きなこととかあまり知らない。そもそも、私たちはお互いのことをあまり知らないのかもしれない。

 美味しいものを食べながら、親睦を深めよう。

「睦月さん、何か食べたいものありますか?」スマホで検索しながら訊く。
「肉!!!」ムードなさそう。まぁいいけどね。
「分かりました~~卯月さんも心配ですし、一度佐野家へ戻りましょ」


 私たちは支度をして、佐野家へ戻った。


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 ーー正午 焼肉店


 落ち着いた雰囲気。明るくも暗くもないちょうど良い照明。大理石調のテーブルは高級感がある。夜に来れば良かった。

「個室!! お洒落!! 大人!!」この人はぁ。
「……早く座りましょ」睦月の隣に座る。
「正面に座らないの?」隣に座る如月を睦月は見た。
「え? 広いしダメ?」
「良いけど……」表情が固い。

 注文した肉を焼きながら、睦月の表情を窺う。上品で洗練された雰囲気に呑まれ、緊張しているようだ。もはや、リードやデート云々ではない。店の選択をミスった。んーーどうしよう。

「焼けましたよ、お肉」睦月の皿の上に乗せる。
「ありがとう」会話終了。

 どうするの? これ。私自身、あまり多く喋るようなタイプではない。個室の空間に流れる無言がとても気まずい。

「睦月さん、この後どっか行きたいところあります?」肉を口に運びながら訊く。
「特には……」もぉーー。

 私からデートを誘ったのだ。この空間も、この後も睦月さんに楽しんでもらわなくては意味がない。一生懸命、思考を巡らせる。


 ……考えても無駄じゃない?


「もうっ!! 睦月さん!! らしくないですよ!!」睦月の肩を持ち、激しく揺らす。
「えぇ~~だってぇ~~なんか高級な感じして、俺にはちょっとぉ~~」肩を揺らされ、睦月の頭が揺れる。

「肉を食え!! 人を喰う鬼のように食べてしまえ!!」睦月の皿に焼いた肉を次々と積み重ねていく。
「こんなに食べれるか!!」如月はタブレットで追加注文をする。

「ハラミもタンも美味しいですよ、もっと食べろぉ~~」箸で睦月の口の中に突っ込む。
「ちょ、ん゛!! まだ食べてる! 入れないで! んーー!!」更に口の中へ入れる。
「はい、水!! 飲め飲め」グラスを睦月の口に押し付ける。

「ーーはぁっ……オイ。如月は全然食べてないなぁ?!」睦月は如月の皿を見つめ、眉を顰める。
「ぇと……私はその……睦月さんのせいで最近ちょっと……お腹が気になるというか……」思わず目が泳ぐ。

「ほう、俺の飯がうま過ぎて太ったと!! 見せてみろ!!」如月のシャツを掴み、捲る。
「ちょっと!! やめて!! 何するんですか!!」お腹を押さえ、シャツが捲れるのを防ぐ。
「ほら、見せてみろってぇ~~如月ちゃん!!」お腹公開。

「……こんなの誤差じゃん。太ってない。食え!!!」睦月はビビンバをスプーンで掬い、如月の口の中へ入れる。
「ーーっん゛!!! 辛っ!!!!」急いで水を飲む。
「如月のためにコチュジャンいっぱい入れた」ざけんな!!

「…はぁ…はぁ……睦月さぁあぁあん!!!」睦月の首の後ろから腕を回し、引き寄せ、口の中に、肉を詰め込む。
「ちょ!! ふぁ、らめて!! もうはいららい!! んぐっ」睦月はいっぱいになった口元を押さえる。

「お肉と私の愛にまみれて幸せになってしまえ」口元を動かしながら睦月は答える。
「意味わからんでひょ」如月はビビンバをスプーンで掬い、口内へ運ぶ。
「ふふ。辛」ビビンバを飲み込み、睦月の頬に軽くキスをした。

「ビビンバ食べた口でしないでくれる?」睦月はじとっとした目で如月を見る。
「ぇえ? じゃあ今日はもうしない~~」如月はプイっと顔を背けた。
「はぁ?! なんでそうなるの!!」睦月は如月の服を掴み引っ張る。
「はいはい、うそうそ」睦月の頭を指先で優しく撫でた。

 全く、可愛いなぁ。普段通りの睦月さんに戻って良かった。私からのリードやデートは上手くいってないような気がするけど、目の前で、笑ってくれてるから、もういっか。

「はぁ~~お腹いっぱい。お肉と如月の愛にまみれて幸せでぇ~~す」睦月は如月の肩に頭を乗せ、寄り添う。

「それは良かったでぇ~~す」顔を向け、見つめ合う。自然に近づくお互いの顔。睦月の瞳が閉じる。軽く目を瞑り、唇を重ねた。

「キムチくさ」睦月が呟く。
「食べましたからぁ。睦月さんめっちゃ焼肉くさいです」
「誰かにめっちゃ食わされましたからぁ。はぁ~~あ、今日もう食えんわぁ」睦月は伝票を手に取り、席を立つ。

「あと少しだけ、デートして帰ろ?」如月に手を差し出す。
「そうですね」差し出された手に手を乗せ、席から立ち、会計へ向かう。

 睦月は手に持っていた伝票を会計に出し、お金を払った。あぁーーあ、払っちゃった。ここは払いたかったなぁ。

「今日は私がリードしようと思ったのに」絡まった指先を見つめながら、ぼやく。
「えぇ? 如月が? ベッドの上だけで十分だよ」
「もう、睦月さんったらぁ~~」

 夜の情事を思い出し、お互い、頬は染まり、口元が緩む。膨れたお腹をさすりながら、店を出る。体の中は食べたお肉と幸せで満腹になっていた。


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