53 / 259
14話(3)
しおりを挟む
「お風呂洗ったよ」風呂掃除終わったのか。リビングで執筆しながら目線だけ睦月を見る。
ぎゅう。
後ろから抱きつかれた。ダメだ、欲情する。このままでは挿れてしまう!!
「入ったら?」睦月に告げる。
「え? 一緒にお風呂入らないの?」背中にくっつけている顔を離し、こちらを見つめる。
「はぁ? 入れば? 1人で」我ながらひどいことを言っている。
「なんで急にぃ~~!!!」背中から、ぐーで軽く殴られているのが伝わる。
そう思うのも無理はない。でも、でも……やっぱり一緒に入れない!! ノリで言っちゃったけど、丁重にお断りしよう。
「執筆していたら、冷静になりまして。危うく風呂場で挿れるところでした。宣告通り、自粛します」睦月をチラッとみると、口をつぐみ、眉が八の字になっている。か、かわいっ。絶対一緒にお風呂入らない。
「……挿れっ……大丈夫、宣告は終わった!! お風呂に行こう!!」一瞬、欲情された気がする。腕を引っ張られる。どうしても一緒に入りたいらしい。そもそも自分で間に合ってるって言ったくせに。
「行きませんて。充分満足したでしょ、もう良くないですかぁ? 卯月さん先に入ってください」はぁ。ため息をつき、腕を振り払う。ちょっと面倒くさい。
「じゃあ先に入るね~~」卯月は勉強の手を止める。畳んである洗濯物を手に取り、脱衣所へ向かった。
「ひどい!! ほんとひどい!! 思わせぶり!! 塩対応!! 如月のばかぁ~~うぅ~~」その場で横になり、丸まっている。ちょっと言い過ぎたかな。ノートパソコンを閉じて、顔を近づける。
「ごめんね?」
「やだ。お風呂一緒に入ってくれないとやだ」そっぽを向き、スマホをいじり始める。完全に拗ねている。
「いやぁ、睦月さん自分で一緒にお風呂入るのは間に合ってるって断ってたじゃないですか」スマホをいじる様子を眺めながら、頭にそっと手を伸ばす。
「最後は同意した。やめて。如月きらい」触ろうとした手を振り払われる。
如月きらい…如月きらい…如月きらい……如月きらい……如月きらい如月きらい如月きらいきらいきらいきらいきら……。
がーーーーーーん!!
「ちょ、やだ、やめて! きらいとか言わないで!! 嫌わないで!! ごめん! 睦月さん! ごめんね?」そっぽを向く睦月の体を揺らす。
「やだ。如月きらい」ぁああぁああ!!!
「すぐ嘘つくし」え?
「上から目線だし」は?
「いつも自分都合だし」あ?
「執筆以外何も出来ないくせに」はぁ?
「俺以外見るし」あ゛?
「ぶっちゃけ、女の子好きでしょ」はぁああ?
「それにさぁ」イライライライライライライライライライライライライライライッラーーーー。
プッチーーーーーン。
「はぁ? 何? 自分だっていつも自己都合でしょ。同意とか関係なしに求めるだけ求めて私の為に何かとかないじゃないですか。人に見るなって言うくせに自分は職場でいちゃいちゃしてるのによく言いますね」イライラして、指の関節を鳴らす。
「ぁあ? 何その言い方。俺が毎日、如月のために何してるのか気付いてないの? 毎日衣食住提供してやってるんだから、有り難みくらい感じろよ」スマホから目を離し、如月を睨む。
「ハ。ナニソレ。そういうこと言ってる訳じゃないの分かりませんか? バカなの?」
「あ゛ぁ?!」
「この短時間で何があったし……」卯月はお風呂から上がり、フェイスタオルを首にかけ、脱衣所からリビングへ戻る。
「ほら、何があったか知らんけど、お互い謝って仲直りしたら?」2人の間に入り、仲を取り持とうとする。
「お断りします。なんで私が謝らないといけないんですか。先に言い出したのは睦月さんなのに。先、お風呂入ります」ほんと腹立つ。畳んであるバスタオルを手に取る。
「さっさと入れ、1人でな!」吐き捨てるように睦月は言う。
「言われなくても1人で入りますよ」舌打ちし、脱衣所へ向かう。
「お兄ちゃん!! 如月も!! もぉ~~!!」
卯月は部屋へ流れるピリピリする雰囲気に頭を抱えた。
*
お風呂から上がりリビングへ行く。風呂に入ったことで少し冷静になる。そんな風に言うつもりなんてなかったのに。なんだかムカついて、すごく嫌なことを言ってしまった。如月に謝らないと。いやでも、俺もかなり嫌なことを言われた。謝るのはあまり気乗りしない。
先に言い始めたのは、俺だけど……。
うぅ。どうしよう。如月どこ……。
「卯月、如月は?」キッチンでコップにお茶を注ぎながら訊く。
「あーーなんかしばらく帰らないって言ってたけど?」は?
「え? 出て行ったの?!」飲もうとしたコップをキッチンカウンターへ置き、和室へ急いで行く。中を見渡す。居ない。
「うそ……」リビングに戻りノートパソコンを探す。ない。マジか。洋室へ行く。
「カバンがない……」如月が居ないことに青ざめる。
「卯月……如月どこ行ったか知ってる?」あぁ、どうしよう。やってしまった。
「え? 知らんし。2、3日したら帰ってくるでしょ」何それ……。
なんであんなこと言っちゃったかなぁ。強がってるけど、メンタル弱いの分かってたじゃん……。最悪。とりあえず電話してみようかな。え、でもなんで俺が? 俺からかけるの? うーーん。
「……如月からは折れないと思うよ」卯月がボソッと呟く。
知ってる。そういうやつじゃない。
それに俺がそっぽ向いた時点で如月は一度折れてる。なのにそこで許さなかった自分が悪い。
電話してみようかなぁ……。遅くなったら拗れそう。
スマホを開き、如月に電話をかける。
『おかけになった電話はーー』
あぁ~~。電源切れてるし。蒼のことも有耶無耶になってしまった。でも蒼の件よりこっちの方が重要。
ねぇ、いつ戻ってくるの? しばらくってどれくらい? どこにいるの? 出て行くほどの怒る内容だった? 衣食住提供してやってるって言ったことは流石に謝るよ。なんで出て行くの? 顔も見たくない? 俺はケンカしていても、同じ家に居たいし、毎日顔がみたいよ、如月。
どうしようーー。
ーー皐宅
ここ最近、皐はずっと家に帰っても仕事をしている。プロポーズしたその日から皐の家で同棲を始めた。一人暮らしをしていた家は解約し、全て皐の家へ荷物を持ってきた。
果たして、このプロポーズが正解だったのかはわからない。
「皐さん、今話せる?」ずっと原稿をチェックしている皐に声をかける。
「なんだい? 湊」目線は原稿のままだ。
「ご両親の挨拶の件なんだけど……連絡してくれた?」皐の手が止まる。
「していない。要るのか? 挨拶は。必要性を感じない」ハァ?
「いるでしょ……結婚するんだよ?」思わず、眉を顰める。
「この指輪も必要性を感じない」薬指の指輪を眺め、抜こうとする。
「いや、抜かないでよ」指輪を押さえ、阻止する。何考えてるの。この人。
「何故式を挙げないといけない?」皐は頬杖をつき、訊く。
「そりゃ、親孝行や人生のけじめとして……」皐は嘲笑い、答えた。
「必要ないな」
「僕は挙げたい。皐のウェディングドレスみたい」皐をじーーっとみつめる。
「そうか、頑張れ」他人事。挙げる気ないでしょ。
何? そもそも結婚する気あるの? 全くないよね? 全部全部必要ないって……ぁあああああ!!! こちらのこと何も考えてない。 ムカつく!!!
「結婚は恋愛と違って、お互いの家族を巻き込んでいくんだよ? 分かってる? 2人だけのものじゃないよ? 責任が出てくるんだからさぁ。少しは協力してくれない? 僕だけじゃどうにも出来ないよ」皐の見ている原稿を取り上げる。
「はぁ。結婚とは、面倒くさいものだな」え?
「自由もなくなりそうだ」ぇえ?
「仕事は続けられるのか?」それは大丈夫。
「事実婚でいいのでは」ハァ?
「何? なんでそんなこと言うの? 一生人生一緒に過ごすって誓ったんじゃないの?」皐の顎を掴み、目を見つめ、口付けする。
「ーーん。誓ってない。湊が勝手に話を進めただけだ」ハァ? ひど。
「私は事実婚で構わない。正直、こんなに面倒くさいものだと、思わなかった。私は自分の人生が、充実していればそれでいい。嫌なら別れてくれ」ティーカップに入った紅茶を飲みながら言う。今話していることが大事なことでもないかのよう。
「どういうつもり? ここまで来て別れてくれ? 指輪も買いましたが!!」皐の方が僕より給料は高いのに、僕が全額負担した。ボーナス一括払い。23歳の僕にとって、結婚指輪の買い物は懐のダメージが半端ない。
「外そう。そして売れば良い」ティーカップを置き、薬指の指輪を外し、机に置く。
「今更やめるんですか!」奪った原稿をグシャっと握り潰す。
「ふ。籍は入れていない。まだ間に合う。良かったな」バカにしたように鼻で笑い、神谷の手からシワクチャになった原稿を奪い、席を立つ。
「はぁ。この家は好きに使うといい。3日位家を空ける。頭を冷やせ」皐は椅子に置かれた鞄に原稿を突っ込み、家を出た。
「頭を冷やせって……なんで僕が!! 冷やすのは貴女でしょ!!」
なんなの? 全然結婚に前向きじゃない。独身派の思考回路。結婚を受け入れたんじゃないのか? 意味が分からない。話し合いにもならない。指輪を選んでいる時は楽しそうだったのに。指輪、置いて行ったし。要らないの?
はぁ。ため息をつき、スマホに入っているGPSをみる。玄関門扉のところで止まっている。全く。行くところないんじゃん。仕方ないな。
ドアを開け、外に出る。皐は居ない。え?
なんとなく気になり、ポストを開ける。皐のスマホだ。手に取り、見る。ご丁寧にメモの画面になっており『残念だったな、湊』と文字が打たれていた。薄く笑って文字を打つ姿が目に浮かぶ。
この人は~~!! でもこういうところが憎めない。
はぁ。ため息をつき、皐のスマホを片手に家の中へ戻る。
3日後に帰ってくるとはいえ、僕はどうするべきなんだ? 本当に3日後に戻ってくるんだよね? 結婚に前向きじゃないなら別れるべき? いや、結婚が目的で近づいた訳ではない。でもセフレは勘弁。何これ、イチかゼロしか選択肢がない感じ。
皐の言う通り、まだ籍は入れていない。そもそもどれが本心? 全て? 何故そんなことを言うの? 僕を試しているのか? 本当に結婚したくないのだろうか。
分からないーー。
ぎゅう。
後ろから抱きつかれた。ダメだ、欲情する。このままでは挿れてしまう!!
「入ったら?」睦月に告げる。
「え? 一緒にお風呂入らないの?」背中にくっつけている顔を離し、こちらを見つめる。
「はぁ? 入れば? 1人で」我ながらひどいことを言っている。
「なんで急にぃ~~!!!」背中から、ぐーで軽く殴られているのが伝わる。
そう思うのも無理はない。でも、でも……やっぱり一緒に入れない!! ノリで言っちゃったけど、丁重にお断りしよう。
「執筆していたら、冷静になりまして。危うく風呂場で挿れるところでした。宣告通り、自粛します」睦月をチラッとみると、口をつぐみ、眉が八の字になっている。か、かわいっ。絶対一緒にお風呂入らない。
「……挿れっ……大丈夫、宣告は終わった!! お風呂に行こう!!」一瞬、欲情された気がする。腕を引っ張られる。どうしても一緒に入りたいらしい。そもそも自分で間に合ってるって言ったくせに。
「行きませんて。充分満足したでしょ、もう良くないですかぁ? 卯月さん先に入ってください」はぁ。ため息をつき、腕を振り払う。ちょっと面倒くさい。
「じゃあ先に入るね~~」卯月は勉強の手を止める。畳んである洗濯物を手に取り、脱衣所へ向かった。
「ひどい!! ほんとひどい!! 思わせぶり!! 塩対応!! 如月のばかぁ~~うぅ~~」その場で横になり、丸まっている。ちょっと言い過ぎたかな。ノートパソコンを閉じて、顔を近づける。
「ごめんね?」
「やだ。お風呂一緒に入ってくれないとやだ」そっぽを向き、スマホをいじり始める。完全に拗ねている。
「いやぁ、睦月さん自分で一緒にお風呂入るのは間に合ってるって断ってたじゃないですか」スマホをいじる様子を眺めながら、頭にそっと手を伸ばす。
「最後は同意した。やめて。如月きらい」触ろうとした手を振り払われる。
如月きらい…如月きらい…如月きらい……如月きらい……如月きらい如月きらい如月きらいきらいきらいきらいきら……。
がーーーーーーん!!
「ちょ、やだ、やめて! きらいとか言わないで!! 嫌わないで!! ごめん! 睦月さん! ごめんね?」そっぽを向く睦月の体を揺らす。
「やだ。如月きらい」ぁああぁああ!!!
「すぐ嘘つくし」え?
「上から目線だし」は?
「いつも自分都合だし」あ?
「執筆以外何も出来ないくせに」はぁ?
「俺以外見るし」あ゛?
「ぶっちゃけ、女の子好きでしょ」はぁああ?
「それにさぁ」イライライライライライライライライライライライライライライッラーーーー。
プッチーーーーーン。
「はぁ? 何? 自分だっていつも自己都合でしょ。同意とか関係なしに求めるだけ求めて私の為に何かとかないじゃないですか。人に見るなって言うくせに自分は職場でいちゃいちゃしてるのによく言いますね」イライラして、指の関節を鳴らす。
「ぁあ? 何その言い方。俺が毎日、如月のために何してるのか気付いてないの? 毎日衣食住提供してやってるんだから、有り難みくらい感じろよ」スマホから目を離し、如月を睨む。
「ハ。ナニソレ。そういうこと言ってる訳じゃないの分かりませんか? バカなの?」
「あ゛ぁ?!」
「この短時間で何があったし……」卯月はお風呂から上がり、フェイスタオルを首にかけ、脱衣所からリビングへ戻る。
「ほら、何があったか知らんけど、お互い謝って仲直りしたら?」2人の間に入り、仲を取り持とうとする。
「お断りします。なんで私が謝らないといけないんですか。先に言い出したのは睦月さんなのに。先、お風呂入ります」ほんと腹立つ。畳んであるバスタオルを手に取る。
「さっさと入れ、1人でな!」吐き捨てるように睦月は言う。
「言われなくても1人で入りますよ」舌打ちし、脱衣所へ向かう。
「お兄ちゃん!! 如月も!! もぉ~~!!」
卯月は部屋へ流れるピリピリする雰囲気に頭を抱えた。
*
お風呂から上がりリビングへ行く。風呂に入ったことで少し冷静になる。そんな風に言うつもりなんてなかったのに。なんだかムカついて、すごく嫌なことを言ってしまった。如月に謝らないと。いやでも、俺もかなり嫌なことを言われた。謝るのはあまり気乗りしない。
先に言い始めたのは、俺だけど……。
うぅ。どうしよう。如月どこ……。
「卯月、如月は?」キッチンでコップにお茶を注ぎながら訊く。
「あーーなんかしばらく帰らないって言ってたけど?」は?
「え? 出て行ったの?!」飲もうとしたコップをキッチンカウンターへ置き、和室へ急いで行く。中を見渡す。居ない。
「うそ……」リビングに戻りノートパソコンを探す。ない。マジか。洋室へ行く。
「カバンがない……」如月が居ないことに青ざめる。
「卯月……如月どこ行ったか知ってる?」あぁ、どうしよう。やってしまった。
「え? 知らんし。2、3日したら帰ってくるでしょ」何それ……。
なんであんなこと言っちゃったかなぁ。強がってるけど、メンタル弱いの分かってたじゃん……。最悪。とりあえず電話してみようかな。え、でもなんで俺が? 俺からかけるの? うーーん。
「……如月からは折れないと思うよ」卯月がボソッと呟く。
知ってる。そういうやつじゃない。
それに俺がそっぽ向いた時点で如月は一度折れてる。なのにそこで許さなかった自分が悪い。
電話してみようかなぁ……。遅くなったら拗れそう。
スマホを開き、如月に電話をかける。
『おかけになった電話はーー』
あぁ~~。電源切れてるし。蒼のことも有耶無耶になってしまった。でも蒼の件よりこっちの方が重要。
ねぇ、いつ戻ってくるの? しばらくってどれくらい? どこにいるの? 出て行くほどの怒る内容だった? 衣食住提供してやってるって言ったことは流石に謝るよ。なんで出て行くの? 顔も見たくない? 俺はケンカしていても、同じ家に居たいし、毎日顔がみたいよ、如月。
どうしようーー。
ーー皐宅
ここ最近、皐はずっと家に帰っても仕事をしている。プロポーズしたその日から皐の家で同棲を始めた。一人暮らしをしていた家は解約し、全て皐の家へ荷物を持ってきた。
果たして、このプロポーズが正解だったのかはわからない。
「皐さん、今話せる?」ずっと原稿をチェックしている皐に声をかける。
「なんだい? 湊」目線は原稿のままだ。
「ご両親の挨拶の件なんだけど……連絡してくれた?」皐の手が止まる。
「していない。要るのか? 挨拶は。必要性を感じない」ハァ?
「いるでしょ……結婚するんだよ?」思わず、眉を顰める。
「この指輪も必要性を感じない」薬指の指輪を眺め、抜こうとする。
「いや、抜かないでよ」指輪を押さえ、阻止する。何考えてるの。この人。
「何故式を挙げないといけない?」皐は頬杖をつき、訊く。
「そりゃ、親孝行や人生のけじめとして……」皐は嘲笑い、答えた。
「必要ないな」
「僕は挙げたい。皐のウェディングドレスみたい」皐をじーーっとみつめる。
「そうか、頑張れ」他人事。挙げる気ないでしょ。
何? そもそも結婚する気あるの? 全くないよね? 全部全部必要ないって……ぁあああああ!!! こちらのこと何も考えてない。 ムカつく!!!
「結婚は恋愛と違って、お互いの家族を巻き込んでいくんだよ? 分かってる? 2人だけのものじゃないよ? 責任が出てくるんだからさぁ。少しは協力してくれない? 僕だけじゃどうにも出来ないよ」皐の見ている原稿を取り上げる。
「はぁ。結婚とは、面倒くさいものだな」え?
「自由もなくなりそうだ」ぇえ?
「仕事は続けられるのか?」それは大丈夫。
「事実婚でいいのでは」ハァ?
「何? なんでそんなこと言うの? 一生人生一緒に過ごすって誓ったんじゃないの?」皐の顎を掴み、目を見つめ、口付けする。
「ーーん。誓ってない。湊が勝手に話を進めただけだ」ハァ? ひど。
「私は事実婚で構わない。正直、こんなに面倒くさいものだと、思わなかった。私は自分の人生が、充実していればそれでいい。嫌なら別れてくれ」ティーカップに入った紅茶を飲みながら言う。今話していることが大事なことでもないかのよう。
「どういうつもり? ここまで来て別れてくれ? 指輪も買いましたが!!」皐の方が僕より給料は高いのに、僕が全額負担した。ボーナス一括払い。23歳の僕にとって、結婚指輪の買い物は懐のダメージが半端ない。
「外そう。そして売れば良い」ティーカップを置き、薬指の指輪を外し、机に置く。
「今更やめるんですか!」奪った原稿をグシャっと握り潰す。
「ふ。籍は入れていない。まだ間に合う。良かったな」バカにしたように鼻で笑い、神谷の手からシワクチャになった原稿を奪い、席を立つ。
「はぁ。この家は好きに使うといい。3日位家を空ける。頭を冷やせ」皐は椅子に置かれた鞄に原稿を突っ込み、家を出た。
「頭を冷やせって……なんで僕が!! 冷やすのは貴女でしょ!!」
なんなの? 全然結婚に前向きじゃない。独身派の思考回路。結婚を受け入れたんじゃないのか? 意味が分からない。話し合いにもならない。指輪を選んでいる時は楽しそうだったのに。指輪、置いて行ったし。要らないの?
はぁ。ため息をつき、スマホに入っているGPSをみる。玄関門扉のところで止まっている。全く。行くところないんじゃん。仕方ないな。
ドアを開け、外に出る。皐は居ない。え?
なんとなく気になり、ポストを開ける。皐のスマホだ。手に取り、見る。ご丁寧にメモの画面になっており『残念だったな、湊』と文字が打たれていた。薄く笑って文字を打つ姿が目に浮かぶ。
この人は~~!! でもこういうところが憎めない。
はぁ。ため息をつき、皐のスマホを片手に家の中へ戻る。
3日後に帰ってくるとはいえ、僕はどうするべきなんだ? 本当に3日後に戻ってくるんだよね? 結婚に前向きじゃないなら別れるべき? いや、結婚が目的で近づいた訳ではない。でもセフレは勘弁。何これ、イチかゼロしか選択肢がない感じ。
皐の言う通り、まだ籍は入れていない。そもそもどれが本心? 全て? 何故そんなことを言うの? 僕を試しているのか? 本当に結婚したくないのだろうか。
分からないーー。
10
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる