如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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13話(8)

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 ーー避けられてる?


 今日の如月を振り返る。


 手を繋いで帰ってきたところまでは普通だった。神谷が来て、ご飯を食べて、あ。食器を下げた時、キスしようとしてきたのに、しなかった。なんか誤魔化されたような気がする。
 

 俺がくさかったとか? 最近暑いし、二駅分歩いてるし、夕飯にニンニク使ったし、蒼とも話した! くさくてやめたとか? ぇええぇええ!!


 ーー睦月は如月の言った『くさい』がトラウマになっていた。
 

 その後、そうだ、風呂! ケンカみたいになっちゃったから、謝りたくて、一緒に入ろうと思って、入った。


 めっちゃガン見されて、無理とか言われてすぐ出てった。無理とは? 慰安旅行で一度一緒に風呂は入ってる。


 てことは俺がくさかったから? 耐えきれない、無理的な? ぇえええぇえ!!


 そうそう、風呂から出て、如月がへたってたから、後ろから抱きしめた。こっちみてから、顔を逸らした。何故? 風呂から出てるから、俺はくさくはないはずだ。


 歯磨きはしてないな。ニンニク? くさくて、顔を背けた的な? 嫌って言って和室に避難するほどだから相当!!!


「歯磨きしなきゃ!!!」  


 洗面台へ向かい、歯を磨く。よし、これで大丈夫。リビングへ戻り、卯月に声をかける。


「俺、くさくない?」確認は必要!
「くさい」ぇえええぇえ!!
「どこ……が……?」
「香水と男の匂いがする」


 香水、やめよう!!!


 男くささってどうやって消すの!! 柿渋的な石鹸?! 分からん!! そんなに俺くさいの?! どうしよう!!!


 とりあえず、如月にもどの辺がくさいか聞かないと。和室まで行き、ふすまを思いっきり両手で開ける。ローテーブルで執筆する如月の近くまで寄り、座る。


「急に開けないで……」すごく戸惑っている。
「俺、くさいの?」真剣に訊く。
「は?」如月はパソコンから目を離し、睦月を見る。
「俺のこと、くさいから避けてるんだよね?」
「はぁ?」怪訝な顔で訊き返した。

「じゃあ、なんで避けるの? やっぱり、俺、何かした?」如月の服をぎゅっと握る。
「何もしてないですって」如月は薄く微笑み、ノートパソコンを閉じた。

「……キスしてよ」顔を傾け、如月を見つめる。如月と目が合う。
「ん~~っタイム!!!!」


 手のひらで顔の間に距離を取られる。ぇええぇえ?


 なんだ? やっぱりおかしい。如月は何か変だ。反応的にくさいとかではなさそう。


 まさか、もうシないってキスもハグも含めて全部しないって意味?! ぇええぇえ!! 困るんだけど!!!


「なんでダメ?」


 壁として立てられた如月の手のひらを掴む。力が入っていて動かない。むむむむ。


「なんで……えっと……け、穢らわしい、お、女の匂いがして、くさいから(違うけど)あの件片付けてからなら良いですよ」やっぱりくさい!!

「俺、蒼とヤッても気持ち変わらないから!! くさい匂い絶対消す!!」キスもハグもしたい!!
「う、うん……?」少し難解そうな顔してるけど、まぁいいや! 蒼に連絡取って、約束しよう。


 和室を離れ、リビングに置かれたスマホを手に取り、連絡を取った。




 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー



 ーー数日後、オフィス終業時刻



 今日は蒼と約束の日。気持ちとしてはやりたくない。だけど、これで全て終わりになるなら、仕方がない。それに、如月が相手してくれなくて、俺は我慢している!! 早く終わらせたい!


「今日あの日なんだって?」神谷が訊く。
「まぁ……」
「無駄な時間になると思うけどなぁ、まぁ頑張れよ」


 神谷はポンっと肩を叩き、帰って行った。オフィスを出て、人目のつかない場所へ移動し、蒼に連絡を入れる。蒼も終わったようだ。


「ごめんねぇ~~待ったぁ?」はぁ、気乗りしないわ。
「いや、別に……行こっか」ホテル街へ徒歩で向かう。


 自分が思ってたよりすごく嫌だ。適当に安めのホテルを選び、中へ入る。ましてや仕事帰り。誰にも見られたくはない。


 ソファにビジネスバッグを置き、ワイシャツのボタンを上から3つほど外す。蒼はベッドに座った。


「いいかな?」


 ムードも何もない。ベッドに押し倒す。如月もこういう気分だったのかな。


「いいよぉ」ブラウスのボタンを外していく。


 んーーなんだろう。あれ?? ムードがないから? 全ッ然興奮しない!!! 酒? お酒飲んでないから? シラフだから? できないパターンってどうなるの? どうしよう!!


 いや、まだ何も始まっていない。もう少し様子をみよう。


 背中に手を回し、ブラジャーのホックを片手で外す。胸に手をかけ、下着ごと揉む。お腹から、少しずつ全身を愛撫していく。


 指を下の方に差し入れる。唇にだけはキスはしない。好きではないから。蒼は喘いでいるが、こちらは体に熱さえもこもらない。全く反応しない。


「……はぁ…睦月くん……?」


 蒼が目をトロンとさせて、こちらをみる。欲情してもおかしくないのに、何も感じない。


「あぁ、ごめん……疲れてるのかな? 仕事終わりだし」


 そんなこと今まであったかなぁ。蒼に避妊具ゴムを渡され受け取る。一応努力はする。繋がって動いてみる。まぁ、確かに女性でしか得られない快感はあるがイケる気がしないのは何故!!!


 ん~~っ物足りない? せ、攻めてほしい……うわぁああぁあ!! 何この思考!! やだぁ~~!!


 蒼も察したのか、一度止める。


「口でしよっか?」自分でしたことがフラッシュバッグし、赤面する。
「ぇえ?! あぁ、うん……」それならイけるかもしれない。
「なんで赤くなってるの、変なの」口に入れるのをみて目を瞑る。


 浮かぶのは如月。思わず、自分が如月に挿れ、頬を染めながら、恥ずかしそうに喘ぐ如月を想像する。『睦月さぁんっ…あっ』はぁ、あぁ、良い。良いなこれ。そのままぐちゃぐちゃに乱したい。はぁ。


 あーー!! やばい!! 出る!!!


「蒼!!! 待って!!!」時、既に遅し。ちーん。
「ごめん……」気まずくて正座し、うずくまる。

「ていうかぁ、全然たたないし、挙句、出るし。セックスしたら諦めるって話はなかったことで」蒼はベッドから降り、着替え始めた。
「えっ!!」それは困る、色々!!

「方向性変えよ~~っと」悪い笑みを浮かべる。
「これ以上、やめてよ。そんなことして、俺と付き合ったとしても俺はお前のこと好きにならないよ」諭すように伝える。

「だから何? だってすごくタイプなんだもん。睦月くんとの子どもが欲しい。だから諦めない」は?


 これ、何か仕組まれていた? 避妊具に穴開けられてる可能性とか。怖。もし、そんなことされていたら、取り返しのつかないことになるところだった。


 着替えを済ませ、蒼と外に出る。


「何か、した?」それとなく訊く。
「何かって? 別に?」口角が上がる。これは何かしたな。怖い。
「帰るわ」蒼の方を見向きもせず、早々と家へ帰った。


 *


「ただいま……」静かにドアが開く音がした。帰ってきた。
「おかえりなさい」


 廊下まで出迎えにいくと、こちらをみて、安堵したような顔になった。


「ごめん……できなかった」えっ!!!
「……挿れました……?」恐る恐る確認を取る。
「え? うん、一応」睦月は少し頬が赤くなり、下に俯いた。


 こ、これは! 成功であり、失敗?! う~~ん。蒼の目論見は多分、私の調教対策で防ぐことが出来た。男だから分かる! おそらく、イけなかった!! ってことは、私の目標元の体に戻すは一応達成出来たのか?


「俺……途中で出ちゃって……取引は失敗した」睦月は頭を抱えて座り込む。
「え……?」どういう状況?


 前戯で出ちゃってイけなくなった的な……? デリケートすぎて聞けない!! そのパターンだと、元の体に戻ってるのか? あ、でも、女性には興奮したことになるのか。元に戻った!!! あとは私次第!!


「そ、そういうこともありますよね……久しぶりの女性ですもんね」隣に座り睦月の背中をさする。
「あ?」眉間にシワを寄せ、顔をあげ、如月を睨む。

「え?」
「なんか勘違いされてる気がする」じーーっと如月を見つめる。

「俺が前戯でイッたとか思ってない?」急に顎と頬を掴まれる。
「ち、違うんですか……?」
「挿れてもイけなくて、口でしてもらってる時に、如月のえっちな姿想像したら、出ちゃったぁ~~」


 なん…だ……と?


 作戦失敗?! むしろ悪化した!!! ひぃいぃいい!!! 


「あの変な宣告、全部解禁してね。んーーっ」


 掴まれた顎が思いっきり、引き寄せられ、唇が重なる。 


「~~っ!」久しぶりに重なる唇。唇の感触に胸がドキドキする。
「ーーっはぁ」恥ずかしくて、顔を逸らす。
「如月、俺、お前じゃないとたたないみたぁ~~い」  


 なんか想像と違う!!


「ちょっとだけ、いちゃいちゃしようよ」両手首を掴まれる。
「ここ、廊下ですけど!! 卯月さんリビングに居ますけど!!」押し倒されないように力を入れ、必死に抵抗する。

「背徳感で逆に燃えるわ~~」何言ってんの!!
「絶対嫌だ!!」ワイシャツとスラックス姿はちょっとくるものはあるけど人道的に無理!!

「何やってんの? 誤解はとけたの?」卯月が2人の様子を見つめ、声をかける。
「「え?」」
「あっーー」


 負けた。背中が廊下に当たる。


「そうだね、もう大丈夫みたい。卯月、30分くらい、和室に籠ってて。その後ご飯ちゃんと作るからさぁ」睦月は妖しく笑う。
「私はギスギスしてるよりは2人がいちゃいちゃしてた方がいいわぁ~~お腹空いてるから、早くしてね」和室へ入り襖を閉めた。

「だ~~いじょうぶ、少し愛でるだけだよ」片手で如月の頬に触れる。
「愛でるとは? ーーあぁっ」


 首筋にゆっくり口付けをされる。荒くない。私のことを優しく愛撫して終わるつもりだろうか。もしそうなら、少し幸せ。


「なんだ、可愛い声出せるじゃん。ちょ~~っと、堪能するだけだよ。俺がな!!! 禁欲されてたから燃えてきたぁ~~!!」服の下に手が入ってくる。前言撤回!!!

「ほらね!! 結局!!! 期待した私が愚かだった!! 夕飯を作れ!!」肩を押さえ、近づかないようにする。
「ちょっと!! ほら、ごめんって~~キスしよ? キス」睦月は顔を傾け、目を閉じた。


 体を起こし、唇を重ねる。自然に手と手が触れる。そして、指を深く絡め、繋ぐ。優しくて、甘いキスを交わす。初心に戻ったように、お互い頬を赤らめ、合わせていた目を逸らした。
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