如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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13話(4)

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 今日は帰らないとは? それはそういうことですか? このタイミングで? なんで今! 望んでいたけど、なんか違う!


 頭の中をぐるぐると色んな思考が巡る。考えすぎて、今食べている夕飯の味がよくわからない。如月は目が合うとにっこり微笑む。だけど、瞳の奥はどこか笑っていない。怒りを感じる。


 うぅ~~、やだなぁ。


「ごちそうさまでした……」手を合わせ、食器を台所へ下げる。
「お兄ちゃん、今日の家事は私がやっておくよ」余計な気遣いを……。
「ありがとうございます」如月は嬉しそうに笑い、食べた食器を下げ、洋室へ向かう。

「本当に出かけるの?」洋室にいる如月に声をかける。座って鞄に色々何かを入れている。
「うん。睦月さんのこと好きですし……誰かに盗られたくないから」如月はちらっと睦月の方を見た。

「俺はどこにもいかないよ?」座っている如月の後ろから抱きしめる。ふと、鞄に入れているものが目に入る。

「そういう問題じゃないし」何これ、何、鞄に入れてんの。こわい……。
「それ、何……」見たことないごつごつしたものを指差す。

「えーー? なんでしょう。まぁいいじゃないですか」こわ!!
「早く行きましょ~~」如月は立ち上がり、斜め鞄を肩に掛け、睦月の手を引っ張った。

「行ってきま~~す」如月は卯月に軽く手を振る。
「お兄ちゃんがんばぁ~~」何を頑張るの?


 如月に連れられ、外に出る。外にはタクシーが待っていた。タクシーに乗り、外の景色を眺める。妖しい雰囲気のホテル街でタクシーから降りた。


「……なんか緊張するんだけど」いざ、現実が目の前まで来ると怖気づく。如月の服をぎゅっと握る。
「入ったことないんですか?」ホテルの中へ入り、部屋を選ぶ。

「……ないですけど何か? 家派なので」煌びやかなホテル内に少し気後れする。
「へーー」選択した部屋まで進み、ドアを開けた。


 中は意外と落ち着いた雰囲気。そして、大きなテレビ。大きなベッド。ゆったりソファ。高級感のある机。驚きを隠せない。


「すごい!!! なにここ!! ホテルじゃん!!」初めて入る空間に新鮮さを感じ、テンションが上がる。部屋の中を順番に見ていく。
「ホテルですって……」如月はソファに座り、落ち着きない睦月を見つめる。
「お風呂めっちゃ大きい!!」家とは全然違う。

「テレビ大画面!!!」映画とか観たい。
「アメニティいっぱい!!!」持って帰りたい。全てに興味が湧き、目が輝く。
「睦月さん、これ」何かを手渡された。
「お風呂、入ってきてね~~」にこやかに手を振られる。


 さっきお風呂入りましたけど?


 そう思いながら、浴室へ向かう。つか何これ。手元を見る。腸内洗浄? ちょっとぉ!!! 脱衣所のドアを勢いよく開け、ソファで本を読んでいる如月の元へ急いで行く。


「……これは?」ひきつった笑顔で訊く。
「やらないと楽しめないよ?」本から目線を上げ、答える。何か説明ぐらいしろ!

「早くお風呂入ってきて?」
「~~~~っ やればいいんでしょ!! やれば!!」受け取ったものを握りしめ、浴室へ戻る。


 これって前準備なの? 如月が平然としてるのは、俺以外にも男と付き合ったことあるってこと? どうやって使うのこれ!!


 ーー睦月が格闘すること1時間。


「……色々終わりました……」


 備え付けのバスローブを着て、脱衣所を出る。バスローブとか初めて着た。準備が整ったことで身が引き締まる。


「長いって。何してたんですか? 待ちくたびれました」呆れ顔で睦月を見る。本を閉じ、脱衣所へ向かった。


 何持ってきたんだろう。変なもの入れてたのは確か。今お風呂入ってるし、見ちゃおう。如月の鞄の中に手を入れ、中身を取り出す。


 コンドーム。いるって言ってたよね。ちゃんと持ってきたんだ。しかも箱ごと。そんなに使うの?


 ローション。必要なの? これ、要るの?
 …………。これ、誰に使うつもりですか。俺? 俺に使うの? え、やだ、こわい。


 出したものを全て鞄の中へ戻す。見てはいけないものを見た気がする。余計に緊張し、室内をうろうろ歩く。


「ぁあ゛~~~~っ!!」


 叫んでみる。緊張はほぐれない。


 そうだ、テレビをみて気を紛らわそう。少しは落ち着くかもしれない。テーブルに置かれたリモコンを手に取り、テレビをつける。


『あっあ~~ん』
『イっちゃうよぉ~~』


「な、なななんてえっちな……!!!」


 男女が身体を重ねるアダルトビデオに思わず釘付けになる。


 如月と出会ってからずっと観ていない。久しぶり過ぎてなんだか目が離せない。ぉお、えろ……って、ダメダメダメ! 何してるの! もうっ。


 手で顔を隠し、指の隙間から見つつも、急いでテレビの電源を切る。少し名残惜しい。


「お茶とか飲めば落ち着くかも……」


 辺りを見回す。小さな自販機みたいなものを見つける。


「部屋に自販機があるなんて、親切だなぁ~~」


 自販機の前に屈み、種類を見る。変なものがいっぱい並んでいる。


「っ!!!! えっちな自販機!!!」


 あ、でも水もある。水に手を伸ばした時、後ろから如月が肩に顎を乗せてきて、びっくりし、違うボタンを押す。


「1人で何してるんですか? 叫んでなかった?」
「あーー……如月のせいでなんかへんなの出てきた……」

「自分が押したんでしょ」如月は出てきたおもちゃを手に取り、電源を入れる。
「そんな躊躇いなく触るなよ」改めて、水のボタンを押す。

「バイブですね、つかう?」なんで笑ってんの……。如月は睦月の顔をじーーっと見る。
「…………誰に?」同じように如月の顔をじーーっと見る。ペットボトルのフタを開け、水を飲む。

「……………」しばらく見つめ合う。なんで何も言わないの。何? 俺に使いたいの?
「んーーとりあえず座ってお話でもします?」如月は睦月の手を取り、ベッドへ移動した。


(ここに座るのぉ? ソファじゃないの?)


「なんでしたっけ、少し話そうって言ってませんでした?」如月はベッドに腰掛ける。
「いやぁ……もういいっていうか……」ベッドの上で体育座りをする。

「緊張してるんですか?」如月は睦月の頭の後ろを撫でた。
「逆に何故緊張しない?!」
「え? 初めてじゃないから?」何言ってるの? とでも言いたげに首を傾ける。

「……どんな恋愛遍歴……」


 でも、興味はある。恋人として、過去にどんな人とお付き合いしていたのかは知っておきたい。


「元恋人どんな人……?」なんとなく、モヤモヤしてしまい、左手の指輪を触る。
「そういうの気にする派ですか?」眉にシワが寄る。話したくなさそうだ。

「基本、男性とはあんまり長続きしないですね~~母性本能のある女性の方が上手くいきます」それ、俺に言うの?
「なんで?」
「ヒモ体質なので」如月は子供っぽく笑った。

「それは間違いない」つられて笑みが溢れる。
「まぁ、好きになった人を愛するのみなので、男とか、女とか、相手のセクシュアルマイノリティとか、私には関係ないですけどね~~」如月は睦月を後ろから優しく抱きしめた。


 でも他にも気になることがある。この際、色々聞いてみよう。


「大変申し上げにくいのですが」顔を上げ、如月を見る。
「なに~~?」
「何故卯月とお風呂に入るのですか?」


 俺的には大問題。一応、大切な妹だ。


「純粋で、けがれがなくて綺麗で……全身を愛でてます」なにそれ。
「卯月を性的な目でみないでよ……」
「あはは、それはないですね~~強いて言えば家族への愛情表現です」


 意味わからん。目が白く濁る。


「皐と距離が近いのも家族的な愛情表現?」1番のモヤポイントだ。
「……別れてから、気持ち悪さとかも無くなったし……関係性がよりフランクになって、余計可愛く見えるというか……」何言ってんの?
「好きってこと?」不信感が募る。

「皐のことも好きですよ。でも、卯月さんみたいに、一緒にお風呂とか入ったら、欲情しそう……」はぁ?

「……元恋人だから、家族愛にはならないっていうか……likeとloveの混同みたいな……」はぁああ?

「それはつまり、俺と別れたら皐とよりを戻す可能性が?」如月を睨む。
「なきにしもあらず……」如月は静かに、顔を逸らす。

「何そのキープ的な! 俺絶対別れないから!!」如月の方を向き、胸元を掴む。掴んだバスローブの隙間から胸板が見え、鼓動が早くなる。

「離してくださいよ~~睦月さんが1番ですよ?」1番とか2番とかそういう問題ではない。自分以外は見て欲しくない。

「俺だけをみろよ!!」胸元を離し、肩に手をかけ、押し倒す。嫉妬心に飲み込まれ、緊張は消えていた。
「ナニソレ。自分のことは棚に上げるつもりですか?」睦月の顎を掴み、顔に寄せる。

「うっ……」
「大体、あんなに女の匂い纏って、襟元に口紅付けて、何もなかったって変だと思いません?」やはり、怒っている。

「何をされたのかなぁ?」笑顔がこわい。言いたくない。
「教えてくださいよ、睦月さぁん」

「え? ーーっ」顎を掴まれたまま、唇が重なり、体のバランスを崩し、如月の体の上に倒れ込んだ。
「それとも、言わせてあげようか?」


 如月は寝返りを打ち、睦月に覆い被さり、黒い笑みを浮かべた。



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