如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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11話(4)#扉の向こうで始まろうとするNTR?!最悪なタイミングで出て行ってやろう?!

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 俺はどうやって帰ってきたんだっけ? 


 何故目の前に蒼が? 神谷はどこですか? 目の前のこの人は一体何をやっているのですか?


 激しい頭痛のする頭と追いつかない思考に悩まされながら、必死に状況を整理する。立ち上がりたくても、アルコールのせいなのか、身体に力が入らず、上手く立てない。


「え~~と、かわいいよ?」


 自分で何を言ってるのかもよく分からない。


「ほんとぉ~~? 嬉しい」


 なんか良くないことを言った気がする。頭がガンガンする。飲み過ぎた酔いと僅かに感じる眠気に思考回路が段々と止まっていく。目の前の女性をぼんやり眺めた。


「お酒ってさぁ、人恋しくなるよねぇ」


 蒼は睦月に顔を近づけ、キスをした。


 *


『(ちょっと……!)』
『(もう出ようって~~まだ見るの?)』


 ごくごく。イラっとして、缶チューハイを一気に飲み干す。見る限り、睦月は理性を失っているように感じる。


 *


 あれ? 今キスされた? 唇、柔らかかったなぁ。女の子、久しぶりかも。肌、白いなぁ。柔らかそう。脱いだらどんな……ん? あれ? 一体何を考えているんだ?


「睦月くんも恋しそうだねぇ~~」


 蒼が目の前で浴衣の帯をゆっくりと解いていく。


 その浴衣の下はどうなっているのだろう。最近は男性の体しかみていなかった。目が離せなくなり、思わず息を飲む。


「じゃあ~~ん。下着は付けてませ~~ん」


 肩からそっと浴衣を下ろした。


 白い。大きい。ほんのりぴんく、きれい。柔らかそう。触りたーーえ?


 理性が働き、ハッと我に帰る。自分の手は知らず知らずのうちに相手の胸へ伸びていた。


「触らないの?」


 蒼が首を傾げる。


「え?」


 何この手。伸びかけた自分の手をサッと引く。なんだろう、すごくドキドキする。本能が女性を求めている。少しだけ体が熱くなった。


 *


「(どこまで見る気?)」
「(手を出したら帰る)」
「(見てどうすんのさ)」


 2人で扉の向こうにいる睦月を見つめた。


 そう、別にどうもしない。皐とのことをあれだけ私に言っておいて、自分は理性を失い、相手へ欲情していることは怒りが湧くが、咎める気にはならない。


「(どうせ元々、女性が好きで抱いてた人ですから。睦月さんは若いですし、後戻り出来なくなる前に、戻れるならその方が良いに決まってます)」


 神谷の肩にもたれかかり、続ける。


「(私と愛し合ったって居たって、この先に結婚も、家庭を作ることも、子孫を残すことも出来ませんから)」


 そう。いつかは気づくこと。睦月さんがバイセクシュアルであるなら、尚更、自分の家族が欲しいと思える時がくるはずだ。


 今は一時の燃えるような恋心で先が見えず、一緒にいるだけかもしれない。


「(睦月さんは私のことをなんかごちゃごちゃ言いますけど。これでも大切にしてるんです。それにまだ挿れたことはないですよ)」


 思わず、クスッと笑みが溢れる。


「(ちょっと~~酔ってるの? 生々しいこと言わないでよ)」
「(だから、今ならまだ戻れる)」
「(それに女性には勝てませんよ。はぁ~~あ、見てられない)」


 久しぶりに飲むお酒のせいか、普段は言えない、心に秘めた想いがつらつら出て、饒舌になる。


 睦月さんが後戻り出来なくなる前に、戻れるならその方がいいし、何も見なかったことにしようと思ったが、腹ただしい気持ちと許せない怒りの感情はとても消化できそうにない。


 この際、1番最悪なタイミングで出て行ってやろう。


 *


「えっと……話し合おう……?」


 いや、違う。そうじゃない。頭が全く回らない。視覚から入る女性の身体に、とても性的欲求を感じるのが分かる。


「変なの~~」


 蒼は睦月に寄り添い、もう一度、口付けをし、軽いキスを繰り返していく。


「待っ……~~っ」


 蒼の腕を持ち、自分から離す。二の腕柔らかい……。あっーーーーもう。


「だめだめだめ、絶対だめ」


 蒼へと言うよりは自分に言い聞かせているに近い。


「誰も居ないから分かんないよ?」


『(居るけどな)』
『(居ますけどね)』にこ。


 理性が働かず、感情的に、本能のまま動きそうになる。体が抑制出来ない。掴んでいる二の腕にぎゅっと力が入る。


「私に欲情してるの? 仕方ないなぁ」


 俺の背中に手が回り、胸に顔が当たるように抱きしめられた。


 何してくれちゃってんのーー。もう無理なんですけどーー。


 男性とはまるで違う、視覚的刺激と、甘い香り。強制的なボディタッチは性欲が掻き立てられる。抑えきれない。スイッチが入ってしまったのが分かる。


 そっと胸を愛撫する。


『(へぇ~~)』イライライライラ。
『(もう、やだぁ~~僕の布団でマジでやめて)』


「あっ……んっ……やっぁんっ」


 掴んだ腕を押し、股の間に片足を入れ、押し倒していく。触りたかった欲求に駆られた、胸に手を掛ける。


 ガラッ


「マジでこのタイミングで出るの?」
「流石に全身愛撫してるところは見たくないですよ。はぁ肩凝ったぁ」
「修羅場じゃん~~嫌なんだけど」


 音がした方を見つめる。
 え……きさ……ら……ぎ……?


 全身から血の気が引く。一気に酔いが覚める。顔は青ざめ、頭が真っ白になる。失っていた理性は急に戻り、止まっていた思考回路が巡る。


「随分とご乱心のようですねぇ、睦月さん」


 口元は笑っているのに、目が笑っていない。怒っている。それはそうだ。


「いや……これは……」


 即座に蒼から降りる。言い訳のしようがない。どう考えても悪いのは俺だ。


「私が居なかったら、何をしていたんですかねぇ? んーー?」


 如月は睦月の目の前にしゃがみ、強く顎と頬を掴み、唇を重ねた。


「ちょっ……っんーーっ」


 無理やり唇はこじ開けられ、舌が入ってくる。こちらのことなど無視し、激しく絡めてくる。


「ーーっはぁ……はぁ」


 先程とは比べ物にならないくらいの熱さが全身から湧き立つ。


「あとはその女と抱き合って、処理すれば。お邪魔しました~~」


 如月は親指を下げ、背中を向け歩き始めた。


「待って、待って! 行かないで! ごめん! 待って」


 足元がふらついて、うまく、歩けない。


「佐野、悪いけど、僕も如月っちと行くね~~ごゆっくりぃ」


 神谷が机の上に置かれたお酒を手に取り、如月の背中を追う。


「置いてかないで! やめて!」


 声も虚しく、2人は部屋を出て行ってしまい、その場に座り込む。


 最低だ。自分がすごく最低だ。謝らないと。謝って許してもらえるのか。自分なら許せない。


 もう皐のことをどうこう言える立場ではない。本当に最低。最低最悪。だけど、絶対に別れたくはない。


 如月に謝りにいかなきゃ。


 後ろから柔らかさと重みを感じる。
 蒼が抱きしめてきた。


「どこ行くの? みんな気を遣ってくれたね」


 もう、酔いも覚め、あんなにも欲した性的魅力は何も感じない。如月にされた深いキスの感覚だけが熱として、体に残っている。指先で唇に触れる。もっと如月とキスしたい。


「ごめん、行かなきゃ……蒼も部屋に戻った方がいいよ……」
「帰ると思ってるの~~?」
「……えっと……変なことしてごめん!! 浮気は出来ない!!」


 フラフラしながら、蒼の腕を引き、扉のまで連れて行く。


「まだ話終わってないってばぁ~~」


 蒼を部屋から追い出し、鍵をかける。


 一旦、水を飲もう。早く如月のところへ行かなければ。取り返しがつかなくなりそうだ。急ごう。


 *


「男の僕でも、ちゅーして欲しくなりました」


 アルコール片手に歩きながら話す。


「何言ってるんですか~~」


 如月が洋風な扉で立ち止まり、鍵を差し込み、開けた。ここかぁ。


「だって、見た? ちゅーされてる時の佐野の顔。どんな感じなのかな~~って思うじゃん」


 強引にキスをされている時の佐野の顔はうっとりとした目で、もっと全てを欲するかのように委ねていた。自分がキスする時の参考にしたい。


 部屋に入ると、大きなベッドがひとつ、そして奥にある露天風呂が目に入った。


「え、卯月ちゃんと同じベッドなの?」


 如月がミニテーブルに酒と部屋の鍵を置いたのを視線で確認する。


「そうですよ~~。今日は抱きしめて寝ます」


 どんな関係よ、それ。


「明日も朝一緒にお風呂入りたいなぁ。癒されたい……」


 『も』?


「何それ~~自分はやりたい放題じゃないですか~~」


 小さな椅子に腰掛け、缶に口を付けた。如月は僕と向かい合うようにベッドの隅に腰掛けた。


「そこに性意識はないですもん。人として、好きだから出来ることです。誰にでもはしない」
「理解不能だわ……」

「どうすんのさ、佐野あいつ置いてきちゃって」


 ゆっくり飲めなかった分、酒が進む。


「別に。抱けるなら、抱けば。お好きにどうぞって感じです」
「あのキスの後じゃ、もうたたないでしょ~~」


 缶に残っている酒を流し込む。


「ん~~如月? あれ? 神谷さん?」


 卯月が目を擦りながら体を起こした。


「なんかあった? 如月? 怒ってるの?」


 芋虫のようにゴロゴロしながら、ベッドに座る如月の元へ行き、膝の上に頭を乗せる。


「ん? まぁね」


 如月が猫を可愛がるように卯月の頭を撫でている。


「何その距離感ーー! 僕の膝の上にも頭乗せてよぉ~~」
「きも」


 お酒と一緒にさりげなく、この部屋の鍵を取る。


「もういいよぉ~~帰る!」


 ほろ酔いになりながら、部屋を出て、佐野を探しに向かった。

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