如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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9話(9)#今日は拒否してもやめないよ?!なのに良いところで訪問者?!

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「……なんで……あり得ない……」
「だから言葉にして、相手へ伝えて。俺はどんな結果になっても大丈夫だから。それに俺はそこまで弱くないよ」


 如月を安心させるように、優しい笑顔を作る。心はこんな優しい気持ちになど、なれない。別れるかもしれないという考えに、悲しみや寂しさが交差して、今にも胸が張り裂けそうだ。


「なんで……なんで!! 私が皐を選ぶと思っているんですか!!」


 俺の胸ぐらを掴み、声を荒げる如月に驚く。こんな感情的になる如月は見たことがない。


「私がどんな想いで貴方に接し、何を想い、過ごしてきたのかまるで分かってない!」


 悔しそうに唇を噛む姿に胸が苦しくなる。俺だって好きでこんなことを言ってるわけじゃない。


 胸元を掴む手は少し、震えている。如月の手に自分の手を重ね、Tシャツを掴む手を広げ、剥がす。


「如月を愛している。この気持ちに変わりはない。ただ、今の俺は如月を信じきれない」


 俺の発した言葉が、この場を緊張と緊迫を感じる空気に変えた。ピリピリとする雰囲気に少し息苦しくなる。緊張感が漂う中、如月が口を開いた。


「睦月さん、もう少しだけ待ってもらえますか?」


 服の裾を強く握りしめる如月に、これが今の如月にとっての精一杯なのだと思った。


「あまり長くは待てないけど」
「絶対に別れてケジメをつけます。だから、別れるなんて言わないで」


 困ったように眉を下げ、悲願する如月に鼓動が早くなる。如月の下がり眉には弱い。こんな状況なのに、如月が可愛いなんて思う俺は馬鹿だな。


 それでも分かった、とは言えない。あとは全て如月次第。見つめ合う無言の空間に緊張し、次の言葉が見つからない。


「……これだけ見つめて、キスしてくれないんですか?」


 潤んだ瞳で見つめ、キスを求める如月を見て、体の中が少しずつ熱くなる。だが、それと同時に頭の中にある言葉がぎる。


 『えっちはあった』
 『えっちはあった』
 『えっちはあった』


 はぁああああ??? キスしてくれだぁ?
 実に腹ただしい。なんなの?
 俺だけを見ろよ。


 次第に緊張は解け、独占欲からくる怒りの感情が湧く。


 誰にでもそういうことが出来るの? いや、今は皐とも恋人同士ではある。あっても何もおかしくない。自然なことだ。モヤモヤしたままは良くない。この際、事実確認をしよう。


「あのさ……毎晩えっち……してたって聞いたけど……」


 思わず声が小さくなってしまう。俺たちは、まだそこまで進んでいない。


「…………愛のない前戯のみです。言い訳に聞こえるかもしれませんが、致し方なかったんです。体や唇にもキスはしていないですし、最後までしていません」

「皐が私の体に何をしようと全然ダメでした……今はこんなに欲情するのに」


 如月は目を伏せ、ギュッと両手で膝を抱えた。


 膝から顔をあげて見つめる潤んだなまめかしい瞳に、激しい性欲が湧き上がる。こんなことをしにきた訳ではないのに、欲求が止められず本能のまま動く。


「居なくなってから、忘れた日はなかった。ずっと苦しかった。色々ほんとごめん。大好き、愛してる」


 如月に顔を近づけ、優しく唇を重ねた。


「それは私も同じです。本当にごめんなさい。早く帰りたいです。卯月さんにも会いたい。睦月さん、愛しています。これからもずっと」


 穏やかに微笑む如月に、笑みが溢れる。


「でも、そんなキスじゃ、今は物足りないです」


 俺のキスに対し、如月が意地悪く笑った。



 *



 待ち合わせのフリをして、皐を見張る。今日は特に慌ただしく、彼女は足早に色んな所をまわっている。


『ふぁあ~~』


 よく欠伸をするなぁ。寝不足なのか。こうして見張っていると、仕事を一生懸命頑張る女性にしか見えない。


 長い黒髪で、身長は少し低い。目を惹く綺麗な顔立ちだ。急に周りをキョロキョロし始め、立ち止まり、こちらを見た。


(え? あれ? 今、なんか目があった気がする。気のせいかな)


 それも束の間、見た目の派手な女の子が近づいてきた。


「お兄さんですね、連絡ありがとうございます~~今日は食事だけですか? 最後まで?」
「え?」


 何を言っているのか分からない。思わず、皐から目を離し、女の子を見る。パパ活? 何? 人違い? 呼んでないけど。目の前の女の子から目を外し、皐へ戻す。


(って、あれ? 皐氏はーー?)


「……居ない。え、もしや、撒かれた? 嘘。これ罠? やばっーー!」


 ほんの一瞬だった。突然のことで頭が真っ白になる。ごめん、と女の子に謝り、その場を離れ、周辺を探す。居ない。これはまずい。完全に撒かれた。


 しかし、いつからバレていた? もしかして今日の作戦は筒抜けだったりしない? このままでは卯月ちゃんと佐野が危ない。急いで卯月へ連絡をする。


 【皐氏に撒かれた、ごめん。家帰ったかもしれん。俺もそっち行く。警戒よろしく】
 【なにやってんの! お兄ちゃんに電話して退却する】


 大丈夫かなぁ? 胸騒ぎがする。



 *
 


「今日は拒否してもやめないよ?」


 身体の中の熱情を抑えきれず、如月の前にしゃがみ込み、確認する。


「まぁ、避妊具ゴムがないので最後まではできないですけどね」
「男同士でもいるの?」
「え……避妊するだけの道具じゃないですって、もう」


 根本的に、男性同士のえっちに知識がない!!!! まず男性相手とか初めてだし!!! 俺大丈夫かな?!?!


「あ、でもここ人の家だな~~いいの? 外に卯月もいるしなぁ。う~~ん、また今度にする?」


 卯月のことや外の様子とか、なんだかそれ以外も色々気になってしまう。肩に手をかけられ、ゆっくり押し倒された。


「……誘っといてなんですか、それ」
「あっちょっ……あれ? 雰囲気的に俺が攻めじゃーーっあっ」


 耳を甘噛みされ、思わず変な声が出てしまう。恥ずかしさで頬が赤く染まる。


「可愛い。もっと見せてください」
「ん~~っ…やめっあっ…どこに手入れっ…ぁあっだめっ」


 繰り返される首筋の口付けに肩が小さく上がる。湿った唇の感覚に身体が熱くなった。首に気にとられていると、ズボンのボタンが外され、下着の中に手が入ってきた。


 自分の幹に触れる如月の手に身体がビクッと反応する。


「んっ…あっ…だめっ…はあっ」
「上目遣いで言われても求めてるようにしか見えませんよ」


 幹が手のひらで包み込まれ、上下する。気持ち良さで目をしっかり開けることが出来ない。身体がすごく熱い。身体への口付けは首筋に留まらず、全身を愛撫していく。快感を耐えるように、繋がれている如月の手をぎゅっと握った。


「はぁっあ……っんっ…あっ……だめぇ~~っ あぁっ」
「何がダメなのかなぁ? 教えてよ、睦月さん」
「……はぁ……ぁっあっあ…待っ……はぁっ…んっ~~」


 身体だけでなく、恥ずかしさで顔も熱い。どうかなってしまいそう。答えられるほど余裕はくれない。如月のいじわる。


 部屋に携帯のバイブ音が鳴り響く。そんなことも気にならないくらい、身体は全ての動作にビクビクと震える。


 如月の甘い吐息。頬を赤らめながら、俺を求めて見つめる目。手や唇から伝わる温度。全てを全身に感じ、愛欲へ溺れた。


 ーーガチャ


 ドアが開く音? 足音はこちらへ向かっている。快感で、ぼうっとしていた頭は一瞬で現実に引き戻された。如月を見るとつまらなさそうに執筆部屋の扉を見ている。


 あれ卯月は? 見張りは? まだ昼前じゃ。そもそも皐が昼に家へ帰って来たことは一度もない。誰?


 執筆部屋の扉がゆっくり開いた。皐だ。
 

「正気か。ここは、私の家だよ」


 部屋の中に入るなり、如月のそばに皐が座った。なんだか気まずい。


「私の時は、ダメだったのに。悔しいなぁ」
「見ないでください」


 膨れ上がった如月のズボンを皐がじぃっと見つめている。見られて恥ずかしいのか、如月の頬が赤く染まった。俺も恥ずかしい。ゆっくりと如月が俺の上から降りた。


「ふむ、いい案を思いついた。3人でシよう」
「シない」
「では、抜いてあげ「やめて」


 如月がサッと下半身を手で隠した。何この状況。突然割り込まれ、動揺しつつも、身体は少しずつ落ち着きを見せる。残念な気持ちがちょっぴり広がる。もう少し、シてみたかったな。下着の中が湿っぽい。


 突然、皐が真面目な顔つきで俺たちを見つめた。


「私に話があるのだろう? 弥生」
「あの……卯月と神谷は……?」
「私を監視していたやつなら、撒いた」


 体を起こし、スマホを確認する。スマホには卯月から沢山の着信が来ていた。なんじゃこりゃ。えっちしていて気づきませんでした、なんて口が裂けても言えない。


「皐、今まで曖昧に関係を続けてごめん。私には皐への気持ちがない。別れて欲しい」


 皐を真っ直ぐ見つめ、話す如月に誠意を感じる。


「……分かっていた。いつかこうなることも。でも気づかないフリをした。少しでも長く、一緒に居たかったからね。これは私のエゴだ。今日、この現場をみて、覚悟がついたよ、弥生」

「私はそこまで、物分かりが悪い女ではないよ、弥生。だが、条件がある」

「私を担当から外さないこと。佐野この下品な男と同棲している家を私に教えることが条件だ」
「下品って……」

「これでも私は、弥生が書く小説が好きなんだ。担当は、外されたくはない。どうだ? そこまで可笑しな条件ではないはずだ」

「いいよ。構わない。今まで沢山迷惑をかけた。本当にありがとう。ごめん」


 如月が皐の頬に触れた。イヤだなと思いつつ、2人を見守る。


「あははっ! そんなことはない。私は弥生のことも、弥生の小説も愛しているからね。それに、一生の別れではない。これからは友達よりは、深い間柄になれるだろう」


 皐が頬に触れている如月の手を外し、両手で包み、薄く微笑んだ。


 2人を見ていると、付き合いの長さを感じる。そんなことにヤキモチを妬いても仕方がないのだが、月日による関係の深さを羨ましく思う。ないものねだりだ。


 俺はまだこんな関係を築けそうにない。これから、少しずつ積み重ねていくしかない。


 それにしてもいつも邪魔が入る!!! これでは満足できない!!! どうにか対策を考えなければ!!!


「弥生、見たか? 落とし穴は大成功だっただろう? 私の努力の賜物だ」


 皐が俺の方を見て、ニヤリとほくそ笑んだ。


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