如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

文字の大きさ
上 下
10 / 306

4話 友達と一緒に勉強は長くは続かない!

しおりを挟む


 4月27日土曜日。今日は友達がうちへ遊びに来る。一緒に勉強をする予定!!! そのため、兄が朝早くから家の掃除をやっている。


「掃除終わった~~」
「お兄ちゃんたちは今日家にいるの?」


 三角巾にエプロンという姿は、もはやお母さん。兄がお茶を飲みながら、一息ついている。


「いや、今日は隣町で特売があるから、まとめ買いをしに行く!!! 家に居ても邪魔だろうし。あと男手が欲しいから如月も一緒にきてもらうつもり~~」
「え」


 突然振られ、リビングで寝転がりながら本を読んでいる如月が、振り返った。勝手にご指名だもんね。


「ふーん」


 机の上に勉強道具を並べ、友達が来る準備をする。まぁ、お兄ちゃんたちが居ない方が友達も気を遣わず、ゆっくり出来るからいっか。


「今日は暑いから、ちゃんと水分取れよ?」
「わかってるって、うるさいな~~」


 それにしても今日は本当に暑い。暑くなるたびに『今年1番の暑さです』とテレビから流れる。一年に何回言うつもりなのだろうか。


 黒の半袖Tシャツにチノパン姿の兄と相変わらずなテーパードコーデの如月が玄関に向かう姿が見えた。


「もう、行くの?」
「うん。売り切れちゃうからね!」
「卯月さん、ごゆっくり」


 軽く手を振り、玄関から出ていく2人を眺める。


「なんか仲良いな……」


 これが男の友情? いつもバカみたいにじゃれあってる2人をみて、少し羨ましく思う時はある。女同士にそういうのはあまりないし。


 2人を見送った後、パーカーを脱ぎ、ロングTシャツに着替える。誰も居ないから、気を遣わず着替えることが出来て、楽だ。一応これでも女子中学生。若い男が2人、家に居ると少し着替えづらい。


 ハーフパンツから、デニムのショートパンツへ履き替えると、自ずとテンションが上がった。


 肩より少し長い黒髪を左にかき集め、シュシュで束ねる。勉強なんか、やめてしまい、このまま外に出かけたいくらいだ。


 ーーピンポーン


 来た!!!


 玄関へ向かい、相手の確認もせずにドアを開ける。ドアの向こうに髪の長い女の子が1人立っていた。


「急に開けるからびっくりした!」
「迷わずこれた??」
「経路案内で来たからバッチリよ!」
「暑かったでしょ~~お茶飲む?」
「飲む! お邪魔します!」


 友達の志田星奈しだせいな。私は学校であまり多くは喋らないため、友達が少ない。私の唯一の友達である。


 星奈と一緒に部屋へ上がる。リビングに向かって歩きながら、星奈は口を開いた。


「お兄さんは?」
「お兄ちゃん、如月と買い物へ行った」
「誰? 如月って」


 初めて聞く名前に戸惑っている。


 星奈には両親が居ないこと、そして兄と2人暮らしであることは話してあるが、最近家へやってきた如月のことは、全く話していない。戸惑うのも無理はない。


「あ~~なんだろうね、友達?」


 如月のポジションってなんだ?


「お兄さんの友達ってこと? 居候してるってこと?」
「まぁ、そんな感じ……」


 少し事実とは異なるが、嘘と真実を混ぜて話せば、本当になる的なことを、如月が言っていた気がするから良いでしょ。知らんけど。

 
 質問攻めを聞きながらキッチンへ向かい、麦茶をコップに注ぐ。2人分のコップを持って、リビングに戻った。


 床に座る星奈にコップを渡すと、星奈は麦茶を一気に飲み干し、机をパンパンと叩いた。


「まだ質問がある!!!」
「お兄さんってどんな感じ??」


 ぉお!! 恋を求めてる瞳だぁ!!!


「う~~ん、ツーブロックにツイストパーマで、アッシュブラウンに染めてる。あっ、二重。背が高い、24歳」
「それ、ただのイケメンじゃね?」
「イケメン違う! イケメン足臭くない!」
「それ関係ないって」


 星奈は机に両肘をつき、手のひらに顎を乗せ、卯月の顔をまじまじと見た。


「卯月ちゃんも二重だよね~~!! そしてくりくりおめめ!!」


(お兄ちゃんがイケメン?)


 自分の兄がイケメンだなんて考えたこともなかった。そもそも、一緒住んでいると顔なんて見慣れすぎて、イケメンかどうかよく分からない。彼女とか、連れてきたことないし、モテるかどうかもよく分からない。


「如月さんはどんな感じ?」


 ここまで来ると、星奈の目がハートに見えてくる。


「ミディアムっていうの? 男性にしては髪の毛長いかな~~肩につくか、つかないか。サラサラなのに毛先うねってる。アレ、パーマなの? あ、時々丸メガネ。切れ長の目! お兄ちゃんより少し背が高い! テーパードパンツいつもはいてる! 30代に見える42歳!」

「それ、ただのイケメンじゃね?」
「イケメン違う! イケメン冷凍庫に頭突っ込んだりしない!」
「イケメンに囲まれて生活してるの?」
「いや……そんなはずは……」


 思わず口籠る。如月もイケメンなの?


「ま、見ればわかる!」


 星奈が勉強道具を広げ始め、私も釣られて、教科書を開いた。


「学校で、卯月ちゃんがなんて呼ばれてるか知ってる?」
「掃除の神様、焼却炉の女!!」
「ちっがーう! いや、違わないけど! 隠れ美少女って呼ばれてるんだよ」
「は?」


 思わず、怪訝な顔で見つめる。


「もうもう~~!」


 星奈が机を拳でとんとん、と叩く。


「卯月ちゃん、可愛いんだからね!」
「星奈の方が可愛いよ、おめめぱっちりだし」


 私は星奈の頬を引っ張った。星奈は目をキラキラさせながら続ける。


「お兄さん達がイケメンだったら好きになっちゃうかも! 私にチャンスあるかな?!」
「いや~~あの2人は……ううん、なんでもない」


 これはただの憶測に過ぎない。なんの確証も、証拠もない。本当に、もしかしたら、でしかない。だからその先の言葉は言わない。


「でもでもぉ~~こういう生活って、卯月ちゃんが如月さんに恋して、ラブラブ展開じゃない?!」


 両手を頬に当て、嬉しそうに話している。


「ないない! いくら如月が若く見えても、30も年上の人に恋とか無理ぽよ。もっと年近くないと恋愛対象にならない~~」


 これは本当のことだ。如月と恋愛とかマジで無理。私たちは2人のいないところで言いたい放題だ。


「だよね! やっぱお兄様かな?」
「お兄ちゃん彼女居ないと思うよ~~だからチャンスアリ! 知らんけど」
「知らんのかい! 卯月ちゃんはどういう人がタイプなの?」

「えっ! 家事とかやってくれる人? 尽くしてくれる人?」
「それ、お兄ちゃんじゃね? ブラコンかよ」


 星奈が呆れ、ため息を吐いた。


「違うってば~~!!!」


 私は教科書で星奈の頭を叩いた。


 星奈が完全にお兄ちゃんをロックオンしているのが分かる。妹としては少し複雑だけど、恋をすることは自由だから、そっと見守ることにする。


「そういえば、隣のクラスの金森くんが、卯月ちゃんのこと好きらしいよ」
「誰それ、話したことないよ~~」


 私たちが勉強したのは5分程度で、恋バナばかりしていた。このままだと、お兄ちゃんに、怒られてしまうかな。帰ってくる時に、勉強しているフリをすればいっか。


 私たちは恋の話に花を咲かせた。
 

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...