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1話(3)イケメンかどうかは個人の主観によって違う?!
しおりを挟む古い賃貸アパートの2階に兄と2人で住んでいる。2DKは2人で住むには申し分ない広さだ。外観に古さはあるが、部屋の中を兄が一生懸命DIYで改装してくれたため、そこまで古さは感じない。
ギシギシと軋む階段を上がり、1番手前の扉の前に立った。
もう開き直ろう。
だって、粗大ゴミの回収日以外は、毎日、真面目に学校へ行っているんだもん。なんの問題はない!!!! だからこのオジサン(?)だって許される!!!!
スクールバッグから家の鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。ガチャ。少し深呼吸して、ドアを開けた。大丈夫大丈夫。
「ただいま~~」
「おかえり、学校から連絡あったよ。どうせまた粗大ゴミでも見に行ってたんでしょ」
リビングの方から呆れたような兄の声がする。
「あはは、バレた? ごめんね」
いつものことすぎて、私が考えているより兄は気に留めてなかった様子。良かった。靴を脱ぎ捨て、家の中へ入る。私の脱いだ靴をオジサン(?)が綺麗に並べていた。でも自分の靴は並べないんですね。
「私、お腹空いちゃった。お昼なんかある?」
「誰?」
私の後ろに立つ人物を見て、兄は眉を顰めた。いつもより低い声で訊いてくるのが怖い。まぁ、どう見ても、不審者ではある。
「え? あーー、粗大ゴミ?」
「はぁあああぁあぁあぁあぁあ????」
まぁ、そうだよね。現実的に考えて人間を拾ってくるのはおかしい。いくら私が中学生でもそれは分かる。兄は大きな目を更に見開いて、言葉を続けた。
「お母さん言いましたよね?! 生き物は拾ってきちゃダメだって!!! しかも人間って!!! 誰?!?! バカなの?!?! 元のところに捨ててきなさい!!!!」
完全に母ちゃんモードだ。面倒くさいな。
「元の場所に帰したら可哀想だよ」
「養う俺が可哀想だとは思わないのか?!?!」
くっ、これは言い返せないな。
「えっと、ほら!!! 身なりを綺麗にしたら、拾ってきた粗大ゴミはイケメンだった件かもしれないよ?!?!」
「ふーん、いいだろう。風呂の許可と髭剃りを許す」
「…………(イケメンじゃなかったらどうなるの)」
じとりとオジサン(?)を見つめる兄が少し怖い。これで滞在許可が得られるなら、かなり儲けもの!!!!
「脱衣所はあそこで~~」
「はいはい」
私はオジサン(?)にオーバーサイズTシャツとデニム、髭剃りを渡し、浴室まで案内する。これで清潔感が出て、イケメンなら万事解決!!!!
ーー30分後
「お風呂ありがとうございました」
髭はなくなり、ボサボサの髪は、サラサラのセミロングに変化した。若いの? オジサン(?)なの? どっちなの?
「…………」
「…………」
こいつはイケメンなの? 兄と顔面を見比べる。系統は違うが、同じような感じでは? ってことは普通じゃね? 身長も兄とそこまで開きはないし。
イケメンってどこからイケメンなの? イケメンの定義って何?
最初に口を開いたのは兄だった。
「よし、捨てよう。うちに3人分を養う収入はない」
イケメンだったら住めたのか?!?! そもそも比較対象が兄しか居ないのが間違ってる!!!! 何か突破口を!!!! 頭をフル回転させる。
「お兄ちゃん、拾ってきた粗大ゴミは実は神様だった件かもしれない」
ふっ。これはイケたな。自信にありふれた目で兄を見つめる。
「神様? まぁ名前も知らないしなぁ。面接を行う!!!!」
この一瞬でオジサン(?)はスーツになっていた。そのスーツどこから持ってきたの?!?! 履歴書まで用意して!!! それ、いつ書いたの?!?! 兄に渡してるし!!!
スパン!!!!
兄はリビングに隣接する襖を思いっきり開け、和室へ入った。座布団を三角形に並べ始める。
「どーぞ、座って」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
オジサン(?)と兄が座布団の上に正座で座るのを見て、私もなんとなく正座で座る。これから面接だ!!! 絶対オジサン(?)を受からせてみせる!!!
私の兄への戦いだ。
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