如月さん、拾いましたっ!

霜月@サブタイ改稿中

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1話(2)先にアピールしてきたのは向こうな件?!

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 カバンからスマホを取り出し、経路案内に沿って、公園へ向かう。意外と近いらしい。そんな公園あったっけ? 気づかなかった。


 しばらく歩くと、公園の入り口に自分より大きな禍々しい、明太子のオブジェが現れた。正直、少し気持ち悪い。こんなでかい真っ赤なもの入り口に普通置くかね?


「うわぁ、変な公園……」


 中へ入ると、明太子をモチーフにした色んな遊具があり、公園の中央には赤い明太子の上を滑ることが出来る滑り台が置いてあり、異彩を放っていた。


(ここ、全然博多じゃないけど。博多でも置かないって!!!)


 作った人は余程明太子が好きなのだろう。変な公園だなと思いつつ、公園の中を一周歩いていく。中には何もないか。一度外へ出て、お目当ての粗大ゴミを探してみる。


 公園の周囲を歩いているうちに、ある6人用のテーブルが目に付いた。こんなもの公園の側に捨てるか? 邪魔極まりない。


 テーブルをじぃっと見つめる。チラシの裏に『粗大ゴミ』と書かれた紙が真ん中に貼られていた。いずれは誰かが回収に来るのかもしれない。知らんけど。


 所詮、噂話。回収できないとは、大きすぎて、無理でしょって意味だったのかな。意外とつまらない粗大ゴミでがっかりする。なんかもっと胸が熱くなるようなものに、出会いたい。


「良いモノに巡り会えると思ったのに、テーブルかぁ~~はぁ~~」


 検索してまで来たのに、持ち帰れないような大きなテーブルとは。つまんなーい。思わずため息が出る。はぁ。


 しばらくテーブルを眺めていると、さっきは気づかなかったが、テーブルの陰で動くものを見た気がした。単純な好奇心で、テーブルの下を覗いてみる。


「なんだろう?」


 ボサボサのセミロングの髪に無精髭。サイズの合わない薄汚れたジャージ。体育座りをしたオジサン(?)と目が合った。こういうのは学校の指導方針的には逃げた方が良い。


 でも私は気になってしまった。


「こんにちわ?」


 オジサン(?)はクスッと笑い私に軽く手を振った。なんとなく釣られて私も振り返す。汚さから放つ、妖艶な切れ長の瞳が私の心を惑わした。


 なんかこの人欲しいーー。


「うちへ行こう!!! 出てこい!!!」


 しゃがんで、オジサン(?)に目線を合わせ、声をかける。


 完全に警戒されている。無理もない。相手も怪しいが、私もかなり不審者。でも負けない!!!! 私は絶対に連れて帰る!!!


 オジサン(?)に近づき、腕を無理やり両手で引っ張る。動かない。動こうとしない。むしろ少し嫌がってるまである。諦めてたまるかぁあぁぁあぁあぁあ!!!!


「らっあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」
「痛い痛い痛い痛い!!!! 何? やめて? 引っ張らないで!!! どこ連れて行くの!!!! こわい!!! 力強!!!!」


 よく喋る。


 全力を注ぎ込みオジサン(?)を引っ張る。いい加減、諦めろ!!!!


「んだぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」
「分かった!!!! 分かったから!!!! ギブ!!! ギブギブギブギブギブ!!!!! もうやめてぇえぇえぇえぇえ!!!!!」

「出てこいやぁあぁあぁあぁあ!!!!」
「いやぁぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」


 ドサ。


 引っ張りすぎて、尻餅をついた。オジサン(?)も倒れ込みながら、テーブルの下から出てきた。私の勝利!!!! お持ち帰り決定!!!!


「ようこそ、佐野家へ」
「誰の家ですかそれ……」


 オジサン(?)は諦めたらしく、額に手を当て、ため息を吐いた。オジサン(?)に手のひらを向ける。


「ん!!!!」
「女の子が知らない人と手なんか繋いじゃダメですって」


 そう言いながらもオジサン(?)は私の手のひらに優しく手を重ね、繋いでくれた。そのまま、自分の家へと歩き出す。


 お父さんと手を繋ぐってこんな感じなのかな?


「これ、ただの連行だから」


 人の心を読むな。



 私が小学生の頃、父と母はどちらも震災で他界している。震災とはいえ、不慮の事故で亡くなったしまった。今は兄の睦月むつき(24)と二人きり。


 一時はお金もなくて、親戚の家に身を寄せ、転々としていたが人間関係が上手くいかず、今は古い賃貸アパートに二人で住んでいる。兄も社会人になったしね。


 決して裕福ではないが、不満はない。


「そういえば、お兄ちゃん、今日、仕事休みだったなぁ」
「……(お兄さん居るんだ)」


 兄は基本は土日休みだが、有休消化で今日は休みとかなんとか言っていた気がする。


 今帰ったら学校サボって粗大ゴミを漁ってたことがバレるなぁ。明太子公園で少しばかり遊んでから帰れば良かった。兄にはいつも迷惑ばかりかけている。


 あともう少しで家に着く。


 なんて言い訳しよう。いや、下手に言い訳したところで、学校から連絡が入っているはず。言い訳はやめよう。スマホで時間を確認すると、お昼を過ぎていた。


 学校をサボったことの言い訳で私は頭がいっぱいだった。自分の左手で繋いでいるオジサン(?)の存在をすっかり忘れていた。


「あ~~なんて言われるかな?」
「知りませんよ、そんなこと……」


 いつも優しく受け止めてくれる兄だが、流石に人間を持ち帰ったら、何か言われるはず。その時はその時だな!!!


「大丈夫!!!!」
「何が?!?!」


 私はオジサン(?)に軽くウインクをした。







 
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