プルートーの胤裔

くぼう無学

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魔女に与える鉄槌

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「ウソだろ、おい」
 不知火の背後、大きな石の扉には、しっかりと七つの弾丸が撃ち込まれていた。
 不知火は、また元の通りに立ち上がって、スノージャケットを脱いだ。中には、テカテカしたエナメルっぽい光沢の、漆黒の暗殺着を身にまとっていた。
「弾の無駄遣い。私に、そんなものは通用しない」
 おもしろくない、そんな舌打ちを一つ見せて、巽は、ホールドオープンになった自動拳銃を顔まで上げて、またたく間にマガジンを交換、スライドリリースレバーを解除して、何事もなかったかのように、利き腕側の足を引いて構える、ウィーバースタンスを取る。
「弾なら腐るほどある」
 これは、現実か? 非現実か? わたくしは目をこすって、相対する二人の姿に目を向けた。生身の女が、実弾をよけて、涼しい顔をしている。あり得ない。あり得るわけがない。わたくしは顔を左右に振って、いま一度、プラグマティックに、現実的に、目の前で起きた現象を正しく並べてみた。
 そこで思いついたのが、超人的な移動スピードによる撃ち損じだ。不知火は、プロボクサーがよくやる、相手に攻撃の的を絞らせない、相手を中心に円を描くようなモーションで、射撃者の照準を狂わせた、という仮説。目にも止まらぬ素早いステップ、移動と停止を超スピードで繰り返す。これにより、射撃者の照準が不能になる。ピストル射撃の競技でも、遠く離れた紙標的が、高速で、かつ、自由に動くとなれば、おのずと撃ち損じが増える。格段に点数が下がる。この方法を使って、不知火は巽の撃ち損じを図ったのではなかろうか。
「そんなものに頼らなければ、何もできない。愚かな」
 獲物を狙い澄ました〝白虎〟のように、不知火の目は青紫色に光っていた。
 待て、違う。この仮説は、射距離二十五メートルの競技の話だ。それが三メートルの目の前の人物の動きとなれば、どうか。
 一般的に、標的との距離が、二倍に離れれば、見える大きさは二分の一になると言われている。それを利用して考えれば、こんな計算になる。
 まず、巽の視点から、拳銃の照準を合わせる、フロントサイトまでの距離は、腕の長さと拳銃のスライダの長さをたして、まあ八〇センチメートル(以下メートルを省略)。そのフロントサイトをゼロ地点と決めて、その場に不知火を立たせる。彼女の身長を測定すれば、仮に、身長一六〇センチとすれば、一六〇センチだ。ここまでは、いいだろうか。
 今度は、巽の立ち位置から、だいたい三メートルの位置に不知火が立っている(現在の立ち位置)。三メートルから、巽からフロントサイトの位置、八〇センチを差し引くと、二二〇センチとなり、距離が二倍に離れれば、二分の一になる考えから、巽の目からフロントサイトまでの距離を基準距離と決めて、不知火の立つ位置は、二・七五倍の距離となる。つまり、フロントサイトで一六〇センチに見えていた彼女の身長は、二二〇センチ遠ざかると、五十八センチの大きさに見える事になる。五十八センチとは、だいたい新聞紙の縦の長さだ。
 次に、三メートル離れている不知火が、ピストル射撃の射距離、二十五メートル離れた場合、巽の目からフロントサイトまでの距離を基準距離として、これは三〇・三倍の距離となる。距離が二倍離れれば、見える大きさが二分の一になる計算で、二十五メートル離れた不知火の姿は、五・三センチまで小さく見える事になる。五・三センチといえば、缶ジュースを寝かせて横から見た大きさだ。
 大変ややこしい話になってしまったが、要するに、ピストル射撃手が、フロントサイトの位置で見える大きさ、寝かせた缶ジュースを狙うのと、新聞紙の縦の大きさを狙うのとでは、雲泥の差がある、こう言いたいのだ。
 この理屈に則って、例え、相手に攻撃の的を絞らせない、相手を中心に円を描くような、素早いモーションを不知火が見せたとして、横になった缶ジュースを狙うのと、新聞紙を狙うのとでは、次元が違う。新聞紙がくしゃくしゃっと素早く動いて、奇蹟的に一発の銃弾は躱せても、二発目の弾丸は、射撃者は何とか銃弾を中てようと、照準の補正が入り、体の中心、中心と、動きの少ない部位を撃たれる。三発目、四発目と、時速一三〇〇キロメートルとも言われる銃弾、計七発も、同じ場所で回避し続ける確率は、天文学的な数字となるのではないだろうか。銃口の間近で新聞紙を撃つのだ。目をつむって適当に撃っても、当たりそうなものだ。
 ここまで考えてみても、不知火が、七発もの銃弾を、しかも至近距離から撃たれて全弾よけた、という現象は、非現実的であって、一般的な科学の常識では証明できそうにない。
 巽は、ゆっくりと目を閉じて、ウィーバースタンスを解いた。
「おまえに拳銃は通用しない、そんな事くらい、重々承知している。これはほんの、挨拶がわりと言ったところだ」
 ゴールドの拳銃をガンホルダーに入れて、かわって、タクティカルベストから煙草を抜き出した。頭をさげて、煙草を一本くわえる。
「こんなものが通用するくらいなら、九頭龍会や、バイフーの奴らは、赤子の手をひねるように殺されはしなかった」
 カチッとオイルライターを開き、フリントを擦って、火の色に顔を染めながら、
「おまえは、他のバイフーたちと、いや、他のどんな人間たちと、決定的に違う。種族が違う。氷室のじいさんも、よくもまあこんなバケモノを見つけて来たものだ。幾多の修羅場を踏んで来た、九頭龍会の組長、阿久津宣郎と、さしで酒を酌み交わすこの俺様が、初めて本当の恐怖というものを味わったのが、不知火、おまえだ。一年半前のあの夜、阿久津からハジキを奪い、ベレッタを撃ち尽くした江口をあっさりと畳に沈め、その後で、氷室が捨て身の仲裁に入らなければ、俺の命はどうなっていたか、そう考えただけで、指先が震えるんだよ。返り血でまっ赤に染まったおまえが、抵抗する俺をやすやすと取り押さえて、この首を、ぎりぎりと締め上げていく、こんな悪夢にうなされて、俺はよく、ベッドの上で荒息を押さえていた。斎の復讐に燃えて、いつまたおまえが俺の部屋に飛び込んで来ないとも限らない。その時には、もうおまえを止める術はない。逃げるしかない」
 意外に思った。巽は、不知火の存在を恐れていた。義理の妹を暗殺し、晦冥会のトップに君臨しているというのに、怖いものなしの存在になったというのに、それなのに、たった一人、不知火という脱走したバイフーを恐れ続けて来た。
 巽は、深く煙草を吸い込んで、ぶわっと煙を吐いた。
「だからと言って、この巽様は、部屋の隅っこでビクビクおびえてはいなかった。不知火忍はどんな武器を使っても殺せない不死身の暗殺者だという事が分かった以上、その秘密、おまえが最強と言われる〝ゆえん〟を、じっくりと調べる事にした」
 不知火の顔を見た。何を考えているのか、とても冷たい表情だった。
「一夜にして、八〇人以上もの人間が死んだ、あの夜、崩れた化粧屋根の下敷きになって、奇蹟的に難を逃れた、九頭竜会の若い奴がいた。そいつはおまえの戦い方をよーく見ていた。よーく見て、今でもPTSDという精神の病気にかかって、抗うつ薬の服用とグループ診療で治療中だが、当時面会に来た俺を、さも迷惑そうに顔をそむけて、それでも、九頭竜会と暗殺集団の総攻撃を受けて、弾幕の中で一人おかしな動きを続ける、おまえの様子について語ってくれた。
 おかしな動き、それは、こういうものだ。組の人間が刀で斬りかかるにしろ、バイフーが拳銃で迎え撃つにしろ、不知火はそれらの攻撃を、事前に動いて、全てを回避していたという。それが、いわゆるおかしな動きとして、若い奴の目に映った。そしてこうも言っていた。プロボクサーが相手の筋肉の動きを見て超人的な反射神経でパンチをよける、それとは全く次元が違う動き。不知火は本当に、事前に、相手の攻撃を回避していると」
 事前に、回避。至近距離からの銃弾を、事前に回避する。どういう理屈だ?
「あの夜の信じられない話を聞いて、俺は、こいつは頭がおかしい、イカれてやがる、とは思わなかった。なにせ武装した八〇人以上の過激な集団が、一夜で死体に変わった。不知火は、俺たちには全く信じられない事をしたのに違いない。
 それから俺は、不知火の〝おかしな動き〟について、そのメカニズムの解析に没頭した。不知火忍が最強と言われるゆえん、それは、相手の攻撃を、寸分たがわず、完ぺきによける事にある。それは、およそ人間技ではない。合気道の神様、塩田剛三でさえ、大勢の人間から拳銃を発砲されたら、ひとたまりも無いだろう。では、不知火はあの夜、いったい何をしていたのか」
 巽は銜え煙草をしながら、人差し指を立てて、自分の額をトントンと打った。
「その答えは〝予知〟だ。不知火は、相手の攻撃を全て予知している。それも、途轍もない精度でな」
「はあ?」
 話に聞き入っていたわたくしは、たまらず声を出してしまった。困惑の表情から、なかなか元に戻らない。
「お、そこのあんた、いいリアクションだ。信じられないだろう? 俺も始めは、バカな事を思いついちまったと、くすぐったく笑って、首を振ったものだ。予知だって? そんなの信じられるのは、自分が世界を救うんだと意気っているガキだけだ。予知なんてものは、一見ありそうでありながら、なかなか研究者たちの間で良い結果が発表できていない。ダリル・ベムのESP研究の実験結果が、一度も再現できた例はない、と言う事からも分かっている」
〝わたしは、透視能力者です。不思議な力を使って、ありとあらゆるものが見えるのです〟
 わたくしの頭に、久慈りおの顔が浮かんでいた。
「だがな、今では、もうすでに、現代の科学では考えられない最悪な事態に突入している。俺たちの常識だって、変えなければならない。常識、そいつがなくなれば、不知火が予知能力を使って、敵の攻撃を全て把握している、という考えは、最も自然なものになる。まあもっとも、斎暗殺計画にあった、不知火を個室へ閉じ込めるというのが成功している所を見ると、直接自分に危害がある攻撃を対象とし、尚且つ、ある程度近い未来、秒単位の世界の予知しかできないようだがな」
 透視を得意とする〝りお〟のような、特殊な能力者という事か?
「どうだ不知火、当たっているだろう?」
 煙草を投げ捨て、火花が散った。それをコンバットブーツで踏み潰す。
「さあ」
 相手の出方を窺って、ふくみ笑いを見せる不知火。
〝あるとき私は悪魔と化す。あれは私ではない、私の知っている、私ではない。まったくの別物だ〟
 不知火は十四の夏、暴行目的でワゴン車に拉致され、あっという間に五人もの若者を殺した。その時のことを、彼女はこう回想していた。悪魔、そのちからの正体とは、予知能力だったとでもいうのか?
「そうか。知らないか。ひょっとしたら、おまえ自身なにも知らないで、予知を使っているのかも知れないな。氷室の研究による、バイフーの究極〝空間を生む〟という暗殺術が、まさか成功しているとでも思い込んでいるかもしれない。
 まあとにかく、不運にも俺は、とんでもないヤバい相手に喧嘩を売ってしまった、というわけだ。氷室の持ち駒を見誤った、その代償、被害総額は、計り知れないものだった。だが俺は、ただではおかない。恐怖にふるえているばかりではない。俺はあの夜から、人の皮をかぶったバケモノの存在を受け入れ、克服し、殺すため、日本中の超能力者を拉致して回った」
「は?」
 もはや、話について行けない。
「エンターテイメントの世界で活躍する、有名な超能力者、その仕事帰りを狙って、繁華街から静かな路地へ入った所で、彼らを拘束、目隠しをさせ、待機していたマイクロバスへと押し込む。走り出したバスの通路に立たせ、目隠しと、拘束を解き、待ち構えていた俺は、ギャルソン風の衣装にパーティー用の覆面をかぶって、座席から立ち上がる。そして、ふところからエアガンを取り出し、〝こいつを全てよけたら一〇〇〇万円あげよう〟そう宣告してから、エアガンのトリガーを引く。結果は、BB弾の着弾によって、苦悶の表情を見せ、誰も彼もがうずくまった。中には、自分の超能力は八百長で、事務所からの指示でやっているだけだと、泣きながら暴露する輩もいた。こんなふうに、不知火と同等の予知をもった奴を探して、都市部を中心に全国を回って見たが、超能力者たちは、たった一発の弾もよける事ができなかった」
「当たり前だろう! 拉致していきなりエアガンで撃つなんて、どんな罰ゲームなんだ!」
 ニヤけた面が、ゆっくりと振り返った。
「そう思うか? だがな、いたんだよ。いきなりエアガンで撃つという、この罰ゲームの唯一の勝者がな。そいつは超能力者ではなかったがな」
「え」
「後ろでモジモジしていた、中年の幹部の一人が、こっそり近づいて来て、こう耳打ちした。自分の娘が通う中学校に、〝呪われた魔女〟とあだ名のついたヤバいのがいる、その少女は、いじめっこと担任を呪い殺した、そう言って、当時の新聞を手で叩いた。ガキどもで流行る都市伝説だから、あまり乗り気はしなかったが、念のため、下校途中の女子中学生をバスに押し込み、例のごとく通路に立たせた。子供だから、まあ賞金は一〇万円にしておいた。呪われた魔女とあだ名される、そのガキは、そういう性格なのか、ココがおかしいのか、魂のない人形が抱きかかえられ、運び込まれるように、成すがままの状態で車内に立った。そのうえ問答無用で銃口が向けられても、悲鳴の一つも上げやしない。目の半分が闇に浸かっているみたいに、鬱っぽく下を見ている。そしてひと言〝一〇〇〇万でしょう〟と気味悪く笑って、両手を広げた。俺は、確かにこいつはヤバいガキだ、とんでもないのを連れて来ちまったと、ボリボリと頭を掻いてから、少女の胸に一発エアガンを撃ち込んだ。その〝撃つ〟という動作、トリガーを引くか引かないかの、ほんのわずかな瞬間、ガキは右肩を引いた。背後のドアガラスに、カチッとBB弾の弾ける音がした。狙いがマズかったか、俺の失敗だと思って、もう一発、今度は腹のあたりを撃った。今度もやはり、撃つという動作の前に、ガキは手のひらを出して、飛来するBB弾をキャッチした」
「な!」
「白いBB弾を目の前に上げて、そのガキは〝あ、よけたら一〇〇〇万だから、失敗〟と暗い表情で笑った。あまりの出来事に、俺は、がたんとエアガンを落として、あんぐりと口をあけていた」
「中学生の少女、いじめっこと担任を呪い殺した、か。どこかで聞いたような」
「久慈篤の、娘だ」
 敷島の横目が待っていた。
「そうだ、りおの話だ」
「りお?」
 巽はゆっくりと、二本目の煙草をくわえて、
「俺はガキに対して惜しみない拍手を送った。まさに絵にかいたようなブラボーな結果だった。次に俺はこう質問した。時速三〇〇キロとも言われるエアガンの弾を、どうやってよけた? よけたのが、特殊な能力だとすると、そいつは一体なんだ? するとガキは、気持ち悪いくらい沈んだ表情で、初めて俺の顔を見た。
〝それを聞いておじさん、どうするの?〟
 だから俺は胸を張って、超能力者を撃ち殺すためだ、と教えてやった。世の中には悪い超能力者がいて、そいつは今のおまえみたいな能力で、山ほど人を殺した。だから俺は、その大悪党を成敗するのだ、と演説した。ガキは、くすくすっと肩で笑って、
〝罪も無い超能力者たちを、こんなふうに連れ込んで、エアガンで撃つ。これって、大悪党のすることじゃないの?〟
 まあこんなふうに、生意気で食えない少女だった。妙に口答えする所なんて、不知火、おまえにそっくりだ。しかしまあ、相手の目的がハッキリしてからと言うもの、ガキは案外素直に、こちらの要求に応じてくれた。エアガンの弾をよけた、その能力についても、詳しく説明してくれた」
〝りお〟が、そんなことを? 大悪党の巽に加担するだなんて、ちょっと考えられない。
「ガキの話では、BB弾をよけたその方法とは、簡単な〝予知〟を使ったという。それも、マインドリーディング(読心術)というスキルを使って、相手の心を読んで、エアガンの照準、撃つタイミングなどを読み取り、適当に弾をよけたとの事だった。それからぐちゃぐちゃと講釈を垂れたが、俺にはその半分も理解できなかった。要するに、世間一般で使用される、マインドリーディング能力と言うのは、視覚的に相手を観察する事によって、得られた情報を総合的に判断するのが、まあ一般的で、超能力者は、それとは全く異なる手法で、相手の心を読み取っている、これは一種の予知にも当たる、とは言っていたな。自分がエアガンの弾をよけたのは、それがエアガンと分かっていて、簡易的で見世物のような能力を使って、よけただけ。不知火という女性の話を聞く限りでは、数千、数万の実弾をよけた事から、想像もつかないくらい正確に、しかも複数の相手に対して、自分には真似ができないくらいのマインドリーディングが行われていた、と」
「なあ敷島、こんな非現実的な話、信じろというのか?」
 わたくしは眉間に指を当てて、首を振った。
「不知火は今まで数えきれないほどの実弾をよけて来た。信じるしか、ないだろう」
 巽は、煙草の煙に顔をしかめ、
「それからの俺は、宿敵不知火を撃ち殺すために、呪われた魔女があみ出した秘密の特訓に打ち込んだ。その、魔女でさえ恐れる超絶なマインドリーディングの使い手、おまえを撃ち殺す、すばらしい特訓をな」
 勢いよく、ガンホルダーからデザートイーグルを抜き出して、巽は今一度、不知火の姿に照準を合わせた。
「特訓の成果、披露したいようね」
「ふん、おまえのマインドリーディングの秘密さえ、見破る事ができれば、もはや俺は向かうところ敵なしだ」
 目をむき出しにして、巽はフロントサイトをにらむ。わたくしは両耳をふさいで、鼓膜は守ろうとしたが、巽の特訓の成果は見届けようと、しっかりと刮目して発砲に備えた。不知火の目は、燐が燃えたように、すさまじく青紫色に光った。そのすぐ後、彼女の体が左へ動いた。追って、銃口が火をふく。一発、二発と、石の扉から破片が飛来する。
「これが特訓の成果? どうやら無駄骨を折ったようね」
 巽は、一時射撃を中断し、満足げに笑みを浮かべた。
「バーカ、まだだよ。これから見せてやるんだ。俺様が魔女っ子の腕を撃った、ファンタスティックな射撃方法をな」
 巽は静かに目を閉じて、ブルブルと全身を震わせた。肩の力を抜いて、さもリラックスした状態で、ゆっくりと、再びまぶたを開ける。
「!」
 不知火の顔つきが変わった。発砲は一発。体を右に回転させ、大きく左右に両足をひらき、五本指を床へつく。初弾の動きと同じだ。しかしこの時、最強と言われた不知火の、その左腕が後方へ弾き飛ばされた。追って、石の扉に血しぶきが広がった。
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