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くぼう無学

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私の好きな作家

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 私の好きな作家を一人挙げろと言われれば、それは川端康成だ。
 川端康成。昭和四十三年に日本人として初となるノーベル文学賞を受賞した偉大な作家で、代表作には『雪国』、『伊豆の踊子』がある。
 初めて私が川端康成の小説を読んだ時、私は子供ながらに底の見えない水の中を泳ぐような気持ちになった。ほかの作家さんにはない、なにか秘められたものがあると、すぐに私は直感して、自然とその場に正座した。とりわけ『雪国』には、未だに謎めいた伏線を感じて、私はこの本を手の届く所に置いている。
 ところで私の好きな作家というのはたくさんある。夏目漱石を筆頭に、谷崎純一郎、芥川龍之介、島尾敏雄、永井龍男、二葉亭四迷、それらを数え出したら、枚挙にいとまがない。
 そこへ来て 川端康成は、ほかの偉人たちにはない、近現代日本文学の総本山のような、日本の文人にとって 大きな後ろ盾のような存在に感じてしまう。バカな話だが、私はこの人の本をお守りのように持ち歩いている。これは何も、典拠というものがあるわけではない。これはすべて、私一個人の感想に過ぎない。だが それでも、ノーベル文学賞の受賞理由というものが、「日本人の心をとても繊細に表現している」というのであるから、私はそう間違った事を言っているわけでもない。
 次に 私の好きな作品を一つ挙げろと言われれば、それは『金色夜叉』だ。
 金色夜叉。明治三十年から読売新聞に連載された、尾崎紅葉の代表作であり、遺作でもある。貫一とお宮が憎愛を織りなす、あの、不朽の名作で、この本は私の旅枕のお供になっている。温泉に肩までつかり、糊のきいた浴衣に袖を通し、あんどんの明かりにこの本をひらけば、気づいた頃には障子が青くなっている、というのも珍しくない。
 その面白さには次のようなエピソードがあって、それは、ある不治の病の令嬢が、この小説の熱烈なファンで、もしも自分が死ぬような事があれば、そのお墓に花や水を供えるよりも、毎日この新聞を供えて欲しい、と言ったほどだ。
 この令嬢は きっと、金色夜叉の連載中にお亡くなりになったのだと思うが、それがとても残念であると同情してしまうくらい、この小説の佳境は最高だ。
 次に、私の好きな映画を一つ上げろと言われれば、それは。まあ、これは次の機会としておこう。
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