日々、思う事、常々

くぼう無学

文字の大きさ
上 下
6 / 18

日本の心

しおりを挟む
 我われ日本人は、異常だ。とっても異常だ。
 我われが、自分たちを、異常だとする、そういう認識はない。全くない。日本人が日本人を見て「お前は異常だな」などと思う人は、まあいないと思う。
 ところが世界の人びとから見たら、正しく異常だ。オマエタチハ、イジョウダヨと言われてしまう。
 ではどう異常なのか、次の事例を見て行こう。
 日本人は無類のきれい好きである。それは世界に類を見ない。町にゴミが落ちていると、みんな立ち止まって、ゴミを見る。そして、腕を組んで考える。どうにかしなければならない。次の日、その人はみんなを集めて、自然に、美化活動を始める。清掃に力が入る。それを見て、社会全体が、感化される。そして、どんどん町がきれいになる。それはとても自然な事で、誰の胸にも気持ちが良いこと。町がきれいになって、ハッピーエンドだ。
 それは鳥居の向こうにある神社にも言える事で、神に仕える巫女が、染み一つない装束で、境内を掃き清める。ああ、良い。見事に清められた境内、一糸乱れぬ巫女たちの、神楽の舞い。この美しき光景、参拝者たちはハッと胸を打たれる。良い物を見た気がする。
 このようにして、日本人は、総じてきれい好きである。
 では海外はどうか。海外、ああ、海外は、とりわけアジアの地域において、私は、その惨状を目の当たりにした。彼らは貧しい。それは分かる。それは分かるのだが、しかしまあ町が汚い。路傍にはゴミが散乱、建設現場も散らかっていて、食堂には食べかすが落ちている。仕事の関係で、高級なホテルに宿泊する事もあるが、ちょっと目を離せば、川はゴミだらけ。森は家畜のクソまみれ。うーたまらない。もう、貧しいのは分かったから、とりあえず掃除をしなさい。見えている所もそうだが、奥の方も掃除しなさい。落ちているゴミは、拾いなさい。そして、ゴミのポイ捨てをやめなさい。
 これらは、日本人からすると、にわかには信じがたい。汚い部屋で、乱雑な作業場で、平気な顔で仕事をしている。その仕事にしても、あまり気乗りしていない。無駄口を叩く。これが、ほとんどの世界で、普通とされている。
 日本だって、貧しい時代には、そうだったじゃないか。中にはこう言う人もいる。しかし日本人は、不毛な土地に生まれ、貧しい生活を送りながら、江戸時代、きちんとした暮らしをしていた。その様子は、初代アメリカ総領事、タウンゼント・ハリスが、目の当たりにして、驚嘆している。
「この土地は、貧困で、住民はただ生活するだけで精いっぱい。装飾的なものに目をむける余裕がない。それでも人々は楽しく暮しており、食べたいだけ食べ、着物にも困ってはいない。それに、家屋は清潔で、日当りもよくて気持がよい」
 このように、日本人は、庶民の暮らしの水準が高く、総じてきれい好きである。いつでも家を掃き清め、町を掃き清めた。貧しいながらに、きちんとした着物を着ようと努めた。食事は品祖でも、必要なだけあって、御膳を前にし、両手を合わせて、余さず食した。これが世界から見て、異常だというのだ。
 さらに日本人の異常は止まらない。次の異常は、その治安だ。あなたの身に、こんな事が起きたらどうか。見知らぬ人が歩いている、あなたの目の前で、その人は財布を落とした。大切な物を落として、その人はさっさと行ってしまった。さあ、あなたならどうする? そう、あなたはこう思う、ああいけない、早くその人に財布を届けねば。きっとあなたは財布を拾って、その人の事を追うだろう。見失えば、交番へ立ち寄って、落とし物を届けて、そのほとんどは名を告げる事なく去って行く。
 ロシア国籍のタタール人、アブデュルレシト・イブラヒムは、その昔、こんな記述を残している。
「日本の治安は完璧だ。町であろうと、村であろうと、盗難などの発生はめったにない。私はよく野山を一人で歩き回った。途中、疲れて眠り込む事も、しばしばあった。時には手元にいくばくかの荷物もあった。しかし、一度たりとも盗まれはしなかった」
 これも、世界から見たら異常な事だ。海外では、財布は盗まれる物と、相場が決まっている。私の友人などは、フランスにいた頃、笑いかけて来た男から、いきなりバッグをひったくられた。これが、世界の常識というものだ。
 いま一度言う。日本人は、異常だ。道徳という、異常な教えがあるが、我われはその道徳の授業でさえ、そんなこと当たり前の事だと、思わなかったか?
 我われ日本人は、世界的に見ても、正しい。その正しい行動は、いま、世界から注目を集めている。もしもアダムとイヴが、日本人であったならば、その二人の日本人は、いつまでも禁断の果実に手を出す事なく、さすれば、楽園から追放され事もなかっただろう。
 これだけの徳を持って、和の心を持ち合わせた日本人。されば、つまらないじゃないか。日本人は、いじめなどという、卑怯な行為は、するはずがないじゃないか。
 会う度に物をおごらされ、外で自慰行為を強要され、性的な写真を要求され、今までのことバラすぞと、精神的に追い詰められ、「死にたくもないのに死ぬって言うんじゃねえよ」と、笑われ、公園に積もった雪の中で一人死んで行く少女が、この日本の国土にいるはずがないじゃないか。日本人という、すばらしい民族に生まれ、それを誇りに思うのであれば、いじめなんて、そんな許されざる行為は、そっこくやめてもらいたい。
 いじめは、世界で一番、汚い。
 私は、怒っているのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ノンフィクション短編集

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
各話読み切り、全て実話。 あー、あるある、と思う話や、こんなこと本当に経験したの? と思う話まで。 色々取り揃えてお送りします。 不定期更新です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

九情雑記

九情承太郎
エッセイ・ノンフィクション
ジャンル無差別級のエッセイです。 随筆です。 雑記です。 戯言です。 書き置きです。 ※他の投稿サイトでも公開しています

人工知能でif歴史〜もしもの歴史シミュレーション〜

静風
エッセイ・ノンフィクション
もしもの歴史があった場合、それには独自の魅力があるかもしれません。本書の目的は、そうしたもしもの歴史について、人工知能を使って再現し、その魅力を伝えることです。この文章自体も、人工知能が生成したものです。本書では、手作業を極力避け、人工知能を活用して文章を作成していきます。

処理中です...