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日本の心
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我われ日本人は、異常だ。とっても異常だ。
我われが、自分たちを、異常だとする、そういう認識はない。全くない。日本人が日本人を見て「お前は異常だな」などと思う人は、まあいないと思う。
ところが世界の人びとから見たら、正しく異常だ。オマエタチハ、イジョウダヨと言われてしまう。
ではどう異常なのか、次の事例を見て行こう。
日本人は無類のきれい好きである。それは世界に類を見ない。町にゴミが落ちていると、みんな立ち止まって、ゴミを見る。そして、腕を組んで考える。どうにかしなければならない。次の日、その人はみんなを集めて、自然に、美化活動を始める。清掃に力が入る。それを見て、社会全体が、感化される。そして、どんどん町がきれいになる。それはとても自然な事で、誰の胸にも気持ちが良いこと。町がきれいになって、ハッピーエンドだ。
それは鳥居の向こうにある神社にも言える事で、神に仕える巫女が、染み一つない装束で、境内を掃き清める。ああ、良い。見事に清められた境内、一糸乱れぬ巫女たちの、神楽の舞い。この美しき光景、参拝者たちはハッと胸を打たれる。良い物を見た気がする。
このようにして、日本人は、総じてきれい好きである。
では海外はどうか。海外、ああ、海外は、とりわけアジアの地域において、私は、その惨状を目の当たりにした。彼らは貧しい。それは分かる。それは分かるのだが、しかしまあ町が汚い。路傍にはゴミが散乱、建設現場も散らかっていて、食堂には食べかすが落ちている。仕事の関係で、高級なホテルに宿泊する事もあるが、ちょっと目を離せば、川はゴミだらけ。森は家畜のクソまみれ。うーたまらない。もう、貧しいのは分かったから、とりあえず掃除をしなさい。見えている所もそうだが、奥の方も掃除しなさい。落ちているゴミは、拾いなさい。そして、ゴミのポイ捨てをやめなさい。
これらは、日本人からすると、にわかには信じがたい。汚い部屋で、乱雑な作業場で、平気な顔で仕事をしている。その仕事にしても、あまり気乗りしていない。無駄口を叩く。これが、ほとんどの世界で、普通とされている。
日本だって、貧しい時代には、そうだったじゃないか。中にはこう言う人もいる。しかし日本人は、不毛な土地に生まれ、貧しい生活を送りながら、江戸時代、きちんとした暮らしをしていた。その様子は、初代アメリカ総領事、タウンゼント・ハリスが、目の当たりにして、驚嘆している。
「この土地は、貧困で、住民はただ生活するだけで精いっぱい。装飾的なものに目をむける余裕がない。それでも人々は楽しく暮しており、食べたいだけ食べ、着物にも困ってはいない。それに、家屋は清潔で、日当りもよくて気持がよい」
このように、日本人は、庶民の暮らしの水準が高く、総じてきれい好きである。いつでも家を掃き清め、町を掃き清めた。貧しいながらに、きちんとした着物を着ようと努めた。食事は品祖でも、必要なだけあって、御膳を前にし、両手を合わせて、余さず食した。これが世界から見て、異常だというのだ。
さらに日本人の異常は止まらない。次の異常は、その治安だ。あなたの身に、こんな事が起きたらどうか。見知らぬ人が歩いている、あなたの目の前で、その人は財布を落とした。大切な物を落として、その人はさっさと行ってしまった。さあ、あなたならどうする? そう、あなたはこう思う、ああいけない、早くその人に財布を届けねば。きっとあなたは財布を拾って、その人の事を追うだろう。見失えば、交番へ立ち寄って、落とし物を届けて、そのほとんどは名を告げる事なく去って行く。
ロシア国籍のタタール人、アブデュルレシト・イブラヒムは、その昔、こんな記述を残している。
「日本の治安は完璧だ。町であろうと、村であろうと、盗難などの発生はめったにない。私はよく野山を一人で歩き回った。途中、疲れて眠り込む事も、しばしばあった。時には手元にいくばくかの荷物もあった。しかし、一度たりとも盗まれはしなかった」
これも、世界から見たら異常な事だ。海外では、財布は盗まれる物と、相場が決まっている。私の友人などは、フランスにいた頃、笑いかけて来た男から、いきなりバッグをひったくられた。これが、世界の常識というものだ。
いま一度言う。日本人は、異常だ。道徳という、異常な教えがあるが、我われはその道徳の授業でさえ、そんなこと当たり前の事だと、思わなかったか?
我われ日本人は、世界的に見ても、正しい。その正しい行動は、いま、世界から注目を集めている。もしもアダムとイヴが、日本人であったならば、その二人の日本人は、いつまでも禁断の果実に手を出す事なく、さすれば、楽園から追放され事もなかっただろう。
これだけの徳を持って、和の心を持ち合わせた日本人。されば、つまらないじゃないか。日本人は、いじめなどという、卑怯な行為は、するはずがないじゃないか。
会う度に物をおごらされ、外で自慰行為を強要され、性的な写真を要求され、今までのことバラすぞと、精神的に追い詰められ、「死にたくもないのに死ぬって言うんじゃねえよ」と、笑われ、公園に積もった雪の中で一人死んで行く少女が、この日本の国土にいるはずがないじゃないか。日本人という、すばらしい民族に生まれ、それを誇りに思うのであれば、いじめなんて、そんな許されざる行為は、そっこくやめてもらいたい。
いじめは、世界で一番、汚い。
私は、怒っているのだ。
我われが、自分たちを、異常だとする、そういう認識はない。全くない。日本人が日本人を見て「お前は異常だな」などと思う人は、まあいないと思う。
ところが世界の人びとから見たら、正しく異常だ。オマエタチハ、イジョウダヨと言われてしまう。
ではどう異常なのか、次の事例を見て行こう。
日本人は無類のきれい好きである。それは世界に類を見ない。町にゴミが落ちていると、みんな立ち止まって、ゴミを見る。そして、腕を組んで考える。どうにかしなければならない。次の日、その人はみんなを集めて、自然に、美化活動を始める。清掃に力が入る。それを見て、社会全体が、感化される。そして、どんどん町がきれいになる。それはとても自然な事で、誰の胸にも気持ちが良いこと。町がきれいになって、ハッピーエンドだ。
それは鳥居の向こうにある神社にも言える事で、神に仕える巫女が、染み一つない装束で、境内を掃き清める。ああ、良い。見事に清められた境内、一糸乱れぬ巫女たちの、神楽の舞い。この美しき光景、参拝者たちはハッと胸を打たれる。良い物を見た気がする。
このようにして、日本人は、総じてきれい好きである。
では海外はどうか。海外、ああ、海外は、とりわけアジアの地域において、私は、その惨状を目の当たりにした。彼らは貧しい。それは分かる。それは分かるのだが、しかしまあ町が汚い。路傍にはゴミが散乱、建設現場も散らかっていて、食堂には食べかすが落ちている。仕事の関係で、高級なホテルに宿泊する事もあるが、ちょっと目を離せば、川はゴミだらけ。森は家畜のクソまみれ。うーたまらない。もう、貧しいのは分かったから、とりあえず掃除をしなさい。見えている所もそうだが、奥の方も掃除しなさい。落ちているゴミは、拾いなさい。そして、ゴミのポイ捨てをやめなさい。
これらは、日本人からすると、にわかには信じがたい。汚い部屋で、乱雑な作業場で、平気な顔で仕事をしている。その仕事にしても、あまり気乗りしていない。無駄口を叩く。これが、ほとんどの世界で、普通とされている。
日本だって、貧しい時代には、そうだったじゃないか。中にはこう言う人もいる。しかし日本人は、不毛な土地に生まれ、貧しい生活を送りながら、江戸時代、きちんとした暮らしをしていた。その様子は、初代アメリカ総領事、タウンゼント・ハリスが、目の当たりにして、驚嘆している。
「この土地は、貧困で、住民はただ生活するだけで精いっぱい。装飾的なものに目をむける余裕がない。それでも人々は楽しく暮しており、食べたいだけ食べ、着物にも困ってはいない。それに、家屋は清潔で、日当りもよくて気持がよい」
このように、日本人は、庶民の暮らしの水準が高く、総じてきれい好きである。いつでも家を掃き清め、町を掃き清めた。貧しいながらに、きちんとした着物を着ようと努めた。食事は品祖でも、必要なだけあって、御膳を前にし、両手を合わせて、余さず食した。これが世界から見て、異常だというのだ。
さらに日本人の異常は止まらない。次の異常は、その治安だ。あなたの身に、こんな事が起きたらどうか。見知らぬ人が歩いている、あなたの目の前で、その人は財布を落とした。大切な物を落として、その人はさっさと行ってしまった。さあ、あなたならどうする? そう、あなたはこう思う、ああいけない、早くその人に財布を届けねば。きっとあなたは財布を拾って、その人の事を追うだろう。見失えば、交番へ立ち寄って、落とし物を届けて、そのほとんどは名を告げる事なく去って行く。
ロシア国籍のタタール人、アブデュルレシト・イブラヒムは、その昔、こんな記述を残している。
「日本の治安は完璧だ。町であろうと、村であろうと、盗難などの発生はめったにない。私はよく野山を一人で歩き回った。途中、疲れて眠り込む事も、しばしばあった。時には手元にいくばくかの荷物もあった。しかし、一度たりとも盗まれはしなかった」
これも、世界から見たら異常な事だ。海外では、財布は盗まれる物と、相場が決まっている。私の友人などは、フランスにいた頃、笑いかけて来た男から、いきなりバッグをひったくられた。これが、世界の常識というものだ。
いま一度言う。日本人は、異常だ。道徳という、異常な教えがあるが、我われはその道徳の授業でさえ、そんなこと当たり前の事だと、思わなかったか?
我われ日本人は、世界的に見ても、正しい。その正しい行動は、いま、世界から注目を集めている。もしもアダムとイヴが、日本人であったならば、その二人の日本人は、いつまでも禁断の果実に手を出す事なく、さすれば、楽園から追放され事もなかっただろう。
これだけの徳を持って、和の心を持ち合わせた日本人。されば、つまらないじゃないか。日本人は、いじめなどという、卑怯な行為は、するはずがないじゃないか。
会う度に物をおごらされ、外で自慰行為を強要され、性的な写真を要求され、今までのことバラすぞと、精神的に追い詰められ、「死にたくもないのに死ぬって言うんじゃねえよ」と、笑われ、公園に積もった雪の中で一人死んで行く少女が、この日本の国土にいるはずがないじゃないか。日本人という、すばらしい民族に生まれ、それを誇りに思うのであれば、いじめなんて、そんな許されざる行為は、そっこくやめてもらいたい。
いじめは、世界で一番、汚い。
私は、怒っているのだ。
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