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海風に導かれて〜新たな仲間か!?カイルとの出会い

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タケルは、昼間の港で目撃した光景を思い返していた。ダリウスが海賊たちと密かに接触していたあの瞬間を。そして、リリスと宿へ戻り、これからどう動くべきか話し合っていた。そんな時、レオが訪ねてきた。

ダリウスが王子の側近だと知ったレオは驚きを見せたが、すぐに表情を引き締めた。

「ダリウスが海賊とつるんでるとなると、アレクシスが何か裏でたくらんでるかもしれないな…」タケルはそう感じ、慎重に行動することを決めた。レオもうなずき、3人はまず敵の動きを探ることにした。

タケル、リリス、レオの3人は、ダリウスの動きを探るために港へ向かうことにした。しかし、彼らはまだ具体的な手掛かりを掴んでいない。

「船着場には漁師たちが集まっているはずだ。何か情報が手に入るかもしれない」とレオが提案した。

タケルはうなずき、「そうだな。港はいつも賑わっているし、何か異変があれば誰かが気づいているはずだ」と答えた。

3人は港へ向かい、漁師たちが集まる小屋に足を踏み入れた。そこでは数人の漁師が話し込んでいたが、タケルたちが近づくと静かになった。

「何か聞きたいことでもあるのか?」1人の漁師が尋ねた。

レオが前に出て、「実は、最近港で何か異変があったかどうかを知りたいんだ。海賊や怪しい動きがないか…」と問いかけた。

漁師たちは一瞬顔を見合わせたが、しばらくして1人が口を開いた。「そういう話なら、海のことに詳しいカイルに聞いてみるといい。あいつはこの港の漁師たちの長で、海の変化には誰よりも敏感だからな。」

「カイル?」リリスが尋ねた。

「そうだ。青い髪で、船着場によくいる。きっと何か知ってるはずだ」とその漁師は答えた。


タケルは感謝の意を伝え、リリスとレオと共に船着場へ向かった。夕暮れが迫る中、海の光が穏やかに波打っている。漁師たちの「海のことならあいつに聞け…漁師の長だからな」という言葉に従い、彼らが船着場に着くと、風に長い青い髪が揺れる姿が見えた。それがカイルだった。

タケルは一歩前に出て声をかけた。「初めまして、俺はタケル。ここの港について色々と聞きたいんだけど、少し時間をもらえますか?」

カイルは振り返り、冷静な表情で3人を見つめたあと、ゆっくりとうなずいた。「俺はカイル。漁師の長だ。海のことなら分かるが、何を知りたい?」

タケルは少し安心した表情で続けた。「ありがとう。実は最近この港で何か異変が起きているって聞いて、君の意見を聞きたくてね。」

カイルはその言葉に少し目を細め、遠くの海を見つめながらため息をついた。

「海が…おかしいんだ。何かが近づいている気がする。波の動きがいつもと違う。」

タケルはその言葉を聞いて真剣な表情を浮かべた。「それって…海賊と関係があるのか?」


カイルは少し眉をひそめて、再び海に目を向けた。「その可能性は高い。海賊はこの港を狙っているのかもしれない。何か大きな動きがある前兆だ。」


タケルはカイルの言葉に重みを感じながら、周囲の状況を見回した。この港には確かに異変が起きている。波の音や船の揺れからも、それは感じ取れる。タケルは嫌な予感がしていた。

「やっぱり…海賊がこの港を狙っているのか」と、タケルは冷静に確認するように言った。

カイルは静かにうなずいた。「その可能性はある。ただ、まだ確かな証拠はない。でも、このまま何もしなければ、奴らが本格的に動き出してしまう。それはまずいからな。」

リリスがそのやり取りを聞きながら、カイルに問いかけた。

「じゃあ、どうするの?カイル、何か手立てがあるの?」

カイルはリリスの瞳に一瞬見惚れ、胸が高鳴ったが、すぐに気を取り直して真剣な表情に戻った。

「俺たちは海の変化に敏感だ。海賊たちが動き出す前に、その動きをつかむことができるはずだ。船を出すのはリスクがあるが、港の外れで何か不穏な動きがあるかもしれない。調査が必要だ。」

「それなら、俺たちにも手伝わせてくれ!」とタケルは力強く言った。

カイルは「わかった」と短く返し、すぐに準備を始めた。
「この異変がただの偶然じゃないことは、すぐに明らかになるだろう。今は一刻の猶予もない。動き出すしかない。」


カイルは無言で自分の船へ向かい、手際よく準備を始めた。タケル、リリス、レオも黙ってそれぞれ装備を整える。張り詰めた空気の中、カイルがふと顔を上げて言った。「まずは港の外れから異変がないか確かめよう。見たことがない船があるかもしれない」。その冷静な声には、どこか緊張を押し殺したような響きがあった。

船はゆっくりと波を乗り越えて進み始める。空は薄暗く、夕焼けが海面を赤く染めていた。カイルが操縦する船は港の外れへと向かう。タケルは無言でその様子を見守りつつ、海賊との接触を警戒していた。

「タケル、あれを見て…!」

リリスが指さした先には、水平線の近くに小さな影が見えた。それは船のようだが、普通の貿易船とは様子が違う。

「海賊船かもしれない」とカイルが低い声で言った。「この距離でははっきりしないが、あの船は潮に逆らっている。普通なら船は潮の流れに乗るはずだが、あれはまるで無視して進んでいる。不自然だ。」

タケルはすぐに「近づいて確認しよう。もし海賊なら、今ここで動きを封じなければならない。」

カイルはうなずき、船の速度を上げた。強まる海風に、彼らの船は波を切って進む。緊張感が高まる中、タケルの脳裏にはダリウスの姿が浮かんでいた。もし彼が海賊と手を組んでいるなら、戦いは避けられないだろう。

「準備はいいか?」カイルが振り返って尋ねた。タケルもリリスも無言でうなずいた。覚悟は決まっていた。次の動きに備えて、静かに様子を伺っていた。
船の音だけが海上に響き、徐々に海賊船との距離が縮まっていく

海賊船は確かに異常な動きをしていた。港の外れに向かって移動しているが、警戒している様子はない。カイルの直感が正しかったことが証明されつつあった。

「近づきすぎるとリスクが高い。動くタイミングを慎重に見極めよう」とタケルがささやいた。

「その通りだ。もう少し様子を見てから動く」とカイルは船を操作しながら答えた。

突然、海の向こうで光が一瞬だけきらめいた。遠くに見えたのは、かすかに燃え上がる炎のようだった。それが船上の火なのか、何かの信号なのかはわからない。しかし、タケルはその光に違和感を覚えた。

「何かが始まっている…」


タケルの言葉にカイルもすぐに反応した。「確かに。これは何かの合図かもしれない。警戒を怠るな。」

船の速度を落としながら、彼らはさらに慎重に状況を見守った。周囲の静けさが不気味なほどに彼らを包み込む。しかし、海賊船は突然進路を変え、遠ざかり始めた。

「追ってもいいが、今はまだ手を出すべきじゃないかもしれない」とカイルが判断した。「港に戻って、もっと情報を集めよう。今のままでは無駄にリスクを取るだけだ。」

タケルもリリスもうなずいた。カイルは船の進路を港に向け、再び速度を上げた。

港に戻った頃には、夜の闇が港を完全に覆い始めていた。船が静かに波止場に停まると、港は昼間のにぎやかさが嘘のように、静まり返っていた。タケル、カイル、リリス、レオは、それぞれの思いを胸に、次の行動に備えている。リリスはふと、以前港で見かけたダリウスの姿を思い出した。あの時、彼の胸元で光っていたペンダントが、今も頭から離れない。

「一体、あのペンダントは何を意味しているの…?」

リリスの胸に芽生えた疑念は、やがて大きな謎へと繋がっていくことになる。それが、ダリウスの秘密を知る手がかりとなるものだった。だが、今はまだ、そのペンダントの意味を知る者はいない。アレクシスは依然として辺境の地に姿を潜めたままだった。

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