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一章

17.クラスside1

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 これは少し前の出来事である。
 
 森にて魔物が突如現れ【ヒルアール王国】の国民三人が怪我を負った。
 先代国王によって召喚された異世界の者達は独断で討伐に向かったが失敗に終わった。
 死亡者:五人
 負傷者:十一人
 生死不明者:一人

 屋敷に戻った和希達は長老に事の顛末を話していた。それを聞きつけダリアがやってきた。相当急いでやってきたようでダリアの額からは汗が垂れていた。そして息を整えたダリアは和希達に声をかける。

「何を勝手にやってるんだ! どうしてそんな事を……」

「ダリア、落ち着くのじゃ。これから世界を救う者達が自発的に討伐へ向かった事は成長と言えるじゃろ」

「だがそれで若いもんが死んでるんですよ!」

 悲しみと怒りを持つダリアが長老と言い争っていると割って入るようにして結華が話し出す。

「ハルトが! ハルトはまだ生きてます! 足を潰されただけで!!」

「なんだと!! それは本当なのか!」

「ほんとです!」

 結華はダリアが信じてくれた事でホッとしていたがそれを邪魔するように和希がやってくる。

「言ったはずだ。彼はもう生きてはいないって。現実を受け止めきれないのもわかるけれどそれにも限度があるよ」

「和希、お前一回黙れ」

 非人道的な発言をする和希についに怒りの限界を迎えた海斗が一発顔面を殴った。和希の取り巻きが海斗を抑えようとした時ダリアが行くぞ! と言いそれに答えるように海斗は走り出す。二人に続き結華も走る。たまたま起きてきた一条先生はどうして彼らが走っているのか理解できずとりあえず後を追いかけだす。

 駆け出したダリアはもう一度ハルトが本当に生きているのかを聞くと海斗が「気絶してるとは思いますけどきっとまだ……あいつなら生きてると思います」と答える。ダリアは「そうか」とだけ言う。そんな事をしていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「君達待ってくれ。これは一体何事なんだ」

「先生!?」

 遅れて走ってきていたのは一条先生だった。必死に走り追いついてきた一条先生に一体何があったのかを海斗は森の中を走りながら一条先生に説明する。説明を終えると一条先生はいつもの様に眠そうな顔ではなくなり怒りの様な悲しみの様な複雑な表情をしていた。自分の生徒がそんな目にあっては仕方ないことなのかもしれない。

 しばらく走り四人はあの森のあの場所に到着する。辺りは血まみれで生徒の死体が無造作に転がっている。既に酷い死に方をした生徒の元には得体のしれない虫が群がっている。

「ハルト……」

 どこを見渡せどもハルトの姿はなかった。

「ハルト…ハルト!! ハルト!!!」

 結華は泣きながらふらつきだした。そんな結華を海斗は優しく支え「きっとあいつは大丈夫だ」と言い続けた。生徒の死体周りを調べていると一条先生が不自然な血の跡がある事に気づき皆を呼んだ。その血はまるで誰かが血を垂らしながら進んだことで出来たように思えるものだった。

「ここってハルトが倒れてたところ!」

「てことはこの血をたどれば東雲がいるかもしれないってことか」

「行きましょう! 早く」

 四人はその不自然な血の跡を辿っていく。途中で血は【ヒルアール王国】ではない方に続いていた。

「ハルト、なんでこっちに……」

 なぜ【ヒルアール王国】ではない別の方向に進んでいっているのかわからない一同は最悪のシナリオを頭に思い浮かべる。しかしそのシナリオは一瞬にして覆される。そこには驚くべき光景が広がっていた。

「ト、トロールが!?」

 なんと丸焦げになっているトロールが二体も倒れていたのである。そしてそれまで垂れていた血は途絶えていた。

「ハルトには能力スキルがなかったはずなのにどうして…。一体何があったんだ」

「もしかしたらここで止血をして国に戻ったのかもしれないよ!」

「なら手当たり次第国の人に聞いて回るしかないな」

 もしかしたら【ヒルアール王国】のどこかにハルトがいるかもしれないと思った結華達は森を出て国の人々に話を聞くことにした。例えそれがどれだけかかったとしても結華達はやめる気がないそれくらいの覚悟だった。ダリアは生徒の遺体を処理してから向かうと言い先に三人を向かわせた。早速国に戻った三人は手分けをしてハルトの行方を探すことになった。
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