12 / 91
一章
12.シノは語る
しおりを挟む
数時間ほどしてハルトはようやく目を覚ました。
(まさか本当に寝てしまうとは。何やってんだ)
「そう言えば馬車に乗る時随分急いでたけど今も急いだ方がいいのか?」
「あ、大丈夫です」
「そうか。ならこのまま安全運転で行くぞ」
だが安全運転はあっけなく終わってしまった。馬車はガタガタと揺れ不快な音を鳴らしていた。御者は一度馬車を止め確認をしてみたところどうやら車輪が外れてしまっていたようだ。
「悪いな二人共。でもここからちょっと歩けば【カーシス村】だから行ってくれ。俺はここで車輪を治しとく」
「わかりました。ありがとうございます」
シノはコートの中から硬貨の入った袋を取り出しその中から銅硬貨を数枚取り男に渡した。
「まいど」
それじゃあ行くかとなった時いきなり二人の後ろから足音が聞こえてきた。何者かと二人が振り返るとそこには三人のロングマントを着た奴らが立っていたのだ。ハルトはシノを守るために前に立ち姿が見えないようにする。御者の男は慌てて馬車に身を隠した。
「何者だ」
「我々はこの世を支配する九神の仲間だ」
「その魔女を渡せ」
「さもなければお前も殺すぞ」
「渡さない」
ハルトは三人の脅しに屈することなくそう言い切った。
(フードで顔は見えないが声的に男か。てかなんでまだ明るいのにあんなに黒いの着てるんだ? 意味ないだろ)
「その言葉、後悔させてやろう」
「後悔」
「後悔」
二人の男が剣を持ちハルトに向かって走っていく。
「ハルト任せて」
シノはハルトの後ろから姿を現すと向かってくる男達に向けて指を指した。その時もう一人の男が能力を発動し始める。
(あいつ能力持ちなのか。ならあっちは俺が…)
だがハルトが指を指す前にシノが魔法を放つ。大きな火の弾は三人の男達を飲み込みそのまま奥に飛ばされていく。そしてシノが「ばん」というとその大きな火の弾は途中で大爆発を起こした。ハルトと馬車の男の人は爆風に必死に耐えなんとか遥か彼方に飛ばされずに済んだ。
「やりすぎだろ」
「これくらい当たり前」
「ちょっとくらい加減しないと俺達まで巻き込まれるところだったぞ」
ハルトがシノに強く言うと「その時は」と言ってシノは指で唇を触った。呆れきったハルトはシノの行動を完全に無視して馬車の男に話しかけた。
「今あった事は内密でお願いします」
「あぁ、わかったよ。絶対にバラさない。バラしたら殺されそうだしな。それよりお前達は早く行けよ!」
二人は馬車の男に礼を言って【カーシス村】へと歩き出した。
「そう言えばシノって炎しか使えないのか?」
「ん? 炎以外も使える」
「でも俺は使えないぞ」
「愛の誓約でどーたらこーたらで結構難しい」
「????」
シノが言っているどーたらこーたらをまとめるこういうことらしい。
愛の誓約、それは遥か昔から行われていた儀式的なものでそれを行うと多くの事が可能になるが魔法に関してはかつての男もハルトと同様に一つしか扱う事が出来なかった。それの原因として確かな情報かはわからないが魔女に伝わる話では愛の誓約の本領を発揮するには愛し合う事が条件だそうだ。だがかつての魔女は世界に生きる多くの人間から化け物だ、人間ではないと忌み嫌われ迫害をされてきたがその中で魔女達は子を残すために愛の誓約を人間と行ってきた。しかし嫌われる者を好きになる者は現れるはずがなくどれだけ魔女が愛しても愛し合う事は出来なかったそうだ。
つまりハルトが完全に力を引き出したいのならシノと愛し合わなければならないということになる。
「俺がシノに愛されてるだけじゃだめってことか」
「そう。愛し合わないと。ハルトは愛してくれてないから使えない」
「あ、いや。物事には順番があるしな」
シノは愛してくれないハルトに対して軽くパンチをした。しかし高校生のハルトには愛という感情がわからずどうすればいいんだと困惑した様子だった。
「それにまだ愛って段階にたどり着けてないだけで近いかもしれないぞ」
その言葉でシノは機嫌が治ったのかハルトの手を握りルンルンと歩く。その頃ハルトは愛とは何なのかという人生の大きな壁に激突したのだった。
(まさか本当に寝てしまうとは。何やってんだ)
「そう言えば馬車に乗る時随分急いでたけど今も急いだ方がいいのか?」
「あ、大丈夫です」
「そうか。ならこのまま安全運転で行くぞ」
だが安全運転はあっけなく終わってしまった。馬車はガタガタと揺れ不快な音を鳴らしていた。御者は一度馬車を止め確認をしてみたところどうやら車輪が外れてしまっていたようだ。
「悪いな二人共。でもここからちょっと歩けば【カーシス村】だから行ってくれ。俺はここで車輪を治しとく」
「わかりました。ありがとうございます」
シノはコートの中から硬貨の入った袋を取り出しその中から銅硬貨を数枚取り男に渡した。
「まいど」
それじゃあ行くかとなった時いきなり二人の後ろから足音が聞こえてきた。何者かと二人が振り返るとそこには三人のロングマントを着た奴らが立っていたのだ。ハルトはシノを守るために前に立ち姿が見えないようにする。御者の男は慌てて馬車に身を隠した。
「何者だ」
「我々はこの世を支配する九神の仲間だ」
「その魔女を渡せ」
「さもなければお前も殺すぞ」
「渡さない」
ハルトは三人の脅しに屈することなくそう言い切った。
(フードで顔は見えないが声的に男か。てかなんでまだ明るいのにあんなに黒いの着てるんだ? 意味ないだろ)
「その言葉、後悔させてやろう」
「後悔」
「後悔」
二人の男が剣を持ちハルトに向かって走っていく。
「ハルト任せて」
シノはハルトの後ろから姿を現すと向かってくる男達に向けて指を指した。その時もう一人の男が能力を発動し始める。
(あいつ能力持ちなのか。ならあっちは俺が…)
だがハルトが指を指す前にシノが魔法を放つ。大きな火の弾は三人の男達を飲み込みそのまま奥に飛ばされていく。そしてシノが「ばん」というとその大きな火の弾は途中で大爆発を起こした。ハルトと馬車の男の人は爆風に必死に耐えなんとか遥か彼方に飛ばされずに済んだ。
「やりすぎだろ」
「これくらい当たり前」
「ちょっとくらい加減しないと俺達まで巻き込まれるところだったぞ」
ハルトがシノに強く言うと「その時は」と言ってシノは指で唇を触った。呆れきったハルトはシノの行動を完全に無視して馬車の男に話しかけた。
「今あった事は内密でお願いします」
「あぁ、わかったよ。絶対にバラさない。バラしたら殺されそうだしな。それよりお前達は早く行けよ!」
二人は馬車の男に礼を言って【カーシス村】へと歩き出した。
「そう言えばシノって炎しか使えないのか?」
「ん? 炎以外も使える」
「でも俺は使えないぞ」
「愛の誓約でどーたらこーたらで結構難しい」
「????」
シノが言っているどーたらこーたらをまとめるこういうことらしい。
愛の誓約、それは遥か昔から行われていた儀式的なものでそれを行うと多くの事が可能になるが魔法に関してはかつての男もハルトと同様に一つしか扱う事が出来なかった。それの原因として確かな情報かはわからないが魔女に伝わる話では愛の誓約の本領を発揮するには愛し合う事が条件だそうだ。だがかつての魔女は世界に生きる多くの人間から化け物だ、人間ではないと忌み嫌われ迫害をされてきたがその中で魔女達は子を残すために愛の誓約を人間と行ってきた。しかし嫌われる者を好きになる者は現れるはずがなくどれだけ魔女が愛しても愛し合う事は出来なかったそうだ。
つまりハルトが完全に力を引き出したいのならシノと愛し合わなければならないということになる。
「俺がシノに愛されてるだけじゃだめってことか」
「そう。愛し合わないと。ハルトは愛してくれてないから使えない」
「あ、いや。物事には順番があるしな」
シノは愛してくれないハルトに対して軽くパンチをした。しかし高校生のハルトには愛という感情がわからずどうすればいいんだと困惑した様子だった。
「それにまだ愛って段階にたどり着けてないだけで近いかもしれないぞ」
その言葉でシノは機嫌が治ったのかハルトの手を握りルンルンと歩く。その頃ハルトは愛とは何なのかという人生の大きな壁に激突したのだった。
2
お気に入りに追加
201
あなたにおすすめの小説
【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者
月風レイ
ファンタジー
神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。
そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。
そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。
聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。
そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。
ストレスフリーファンタジー。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
よろしくお願いいたします。
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
何者でもない僕は異世界で冒険者をはじめる
月風レイ
ファンタジー
あらゆることを人より器用にこなす事ができても、何の長所にもなくただ日々を過ごす自分。
周りの友人は世界を羽ばたくスターになるのにも関わらず、自分はただのサラリーマン。
そんな平凡で退屈な日々に、革命が起こる。
それは突如現れた一枚の手紙だった。
その手紙の内容には、『異世界に行きますか?』と書かれていた。
どうせ、誰かの悪ふざけだろうと思い、適当に異世界にでもいけたら良いもんだよと、考えたところ。
突如、異世界の大草原に召喚される。
元の世界にも戻れ、無限の魔力と絶対不死身な体を手に入れた冒険が今始まる。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる