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出会い
いっぱいの人間
しおりを挟むわけのわからないあたちがここに来て、数日が経った頃、隣のおへやのネコちゃんと仲良くなった。
だんだん、ここの暮らしにも慣れてきた。
その子は、イズミと名乗っていた。
あたちは、ナルと名乗っていた。
つまり、あたちたちネコの世界での名前ってこと。
あたちの名前は、お母さんがつけてくれたもの。
イズミも多分誰かに、そう名付けてもらったんだと思う。
いまのルカって名前も気に入ってるけどね。
イズミに、ここでの暮らしを教えてもらった。
ここでは、毎日いっぱいの人間が自分たちを見にくるらしい。
大抵は見られるだけだけど、たまに抱っこをしてくる人もいるらしい。
そして、抱っこをされて、気に入られたらそのままここを去るんだって。
いままで、そうやって何匹ものネコやイヌが人間に連れて行かれたらしい。
人間に連れていかれる先には、ここより豪華なおうちが用意されていて、快適な暮らしが約束されている。
そこは、自分にたっぷりの愛情を注いでくれる人間との暮らしで、第二のお母さんができる。
そして、そこで一生を過ごす。
移動はこれが最後なんだって。
これは、時々ここにくる元先輩イヌたちが教えてくれる情報らしい。
イズミは、自分を迎えにきてくれる人間を待ってるんだって。
早くこのおへやから出たいなら、人間に見られている間は、毛づくろいしたり、歩いたりしたほうがいい。
人間にアピールして、気に入ってもらえると、次のステージである抱っこをされる確率が上がるらしい。
逆に、ものかげに隠れたりしていると、いつまで経っても抱っこされない。
あとは、いっぱいの人間に見られることに早く慣れないと、ずっと眠れない日々が続いて、体調を崩して、チャンスが減っていってしまう。
こんな感じで、ここでの暮らし方をイズミは細かく教えてくれた。
あたちは、また移動するのがちょっと嫌だったから、あまり人間にはアピールしなかった。
イズミはもったいないと、何回も怒っていたけど、あたちは少し落ち着きたかった。
それでもいっぱいの人間に見られたし、2回くらい抱っこもされた。
そうこうしているうちに、イズミは優しそうなお姉さんに連れられておへやを出ていった。
お幸せに。
イズミ。
数日間だったけど、一緒にお話しできて、楽しかったよ。
元気でね。
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