52 / 74
第2部
#49 もう一人の自分
しおりを挟む
「クロノス、要件ってなんだ?」
「来てくれたんだね。まずはありがとう」
彼女の──クロノスの部屋は閑散としている。
それは綺麗という状態よりも、必要最低限のものしか置いていないからこその物静けさだった。
古びた建物独特の臭いがする。それはどの部屋でも同じで、俺の部屋も例外ではないけれど。
「飲み物が欲しいのか? それとも読書?」
クロノスは魔力を使わない間、寝たきりを強いられている。魔力は有限だ。したがって、日常生活をする為に魔力を消費するのは、避けて然るべきなのだ。
結局、一通りの世話は俺が担当することになった。彼女は男に世話をされることを快く受け入れた。
「いいや……もっと近くに来てくれないか」
彼女の希望通り、ベッドに近づく。
基本的にクロノスはベッドの上にいる。今も紺色の髪を扇のように広げて、茨姫のように眠っていたところだろう。
「ん……? 本当にどうした、具合でも悪いのか──」
「──つかまえた」
クロノスの顔を覗き込むと、彼女は口の端を尖らせて笑った。背後から迫るものの正体に、気づくのが遅れる。
「っ……!?」
金属が擦れ合う音と同時に、鎖が俺の体を目に見えない速度で縛り上げる。
背中で曲げられた腕が、重なって固定される。足首を床から突き出た鎖に捉えられ、足の付根まで拘束された。
鎖は二重、三重に交差して巻き付くと、鉄でできた首輪の先端で束になっていった。
「ふっ、かわいい人。これでもう逃げられない」
磔にされた俺を、クロノスは目で弄んだ。するとベッドから起き上がり、側に近づいてくる。
逃げようにも、強固な鎖が捕らえた獲物を離さんと、体中を蝕んでいる。
「うっ……駄目だ、クロノス。魔力を無意味に消費するのは……」
「おや、こんな状態でもまだ私に説教を? 鎖に縛られた君は、言わば私の掌の上──だ。魔力を使えばこんなことだって……できる」
「うっ……ああ……」
クロノスが指を鳴らす。次第に全身の力が、意思を持ったかの如く逃げ出した。
抵抗力はもちろんの事、自力で立つことすらままならなくなった俺は、鎖に支えられ、辛うじて直立した姿勢を保っている。
「鎖による力の吸収、および略奪──といったところか。ふふっ、熟れた体、美味しそう……食べてもいい?」
「な、何を言って……」
後手に拘束されたせいで、体は腹部を突き出すようにして止まっている。目の前には四足で顔を乗り出す少女が、頬を上気させていた。
体と、クロノスの顔の距離が近すぎて、顔が熱くなっていく。思わず目を逸らした。
「んっ……ねえ、本当に覚えてないの? 私はこんなに求めているのに……ねえ」
恐れていた現実が忽然と姿を現す。
クロノスが脇目もふらずに、俺自身にかぶりついてきた。脳裏に電流が走ったような気がした。
「っ、あ……んっ……! クロノ、スだめだ、こんな……」
目蓋を開けているのに閉じているような明暗が、高速に入れ替わる。
なにより──怖い。はじめて見る顔、はじめて聞く口調の彼女が、怖い。逃げたいけれど、体に力が入らない。
しかし俺のことなどお構いなしに、クロノスは食み続けた。腰までの長さの横髪を、耳にかけるしぐさがいかにも女性らしい。
「ふふ、勃ってるね……いい感じ……」
服の上から嬲られたそれは、自分の意志に反して屹立していた。耐え切れず声を上げる。
「や、やめろ、やめてくれ!! 何がしたいんだ、君は誰だ……」
「これが本来の私だよ。ねえ、私がいくつに見える?」
少女はシャツのボタンを、上から順番に外し始めた。
「……っ。子ども、幼子にしか見えない。少なくとも大人には……見えない」
「そう。残念ね、私はこんな見た目だけど、年齢は君とたいして変わらない。ねえ、さっきの質問、答えは……? 私のこと覚えてるんでしょう」
彼女の語る事実を、鵜呑みにしていいものなのだろうか。言葉だけは受け取れたが、考える余裕までは与えられなかった。
クロノスは指先で、下腹部の真下にある膨らみを小突く。それからズボンのチャックに、両手を伸ばし始めた。
「知らない! 覚えてなんかない、人違いだ。知らないんだよ本当だ。たのむ、やめてくれ……クロノス……」
「……嘘を言っているようには見えない。それはそうか。なら──もう一人の君を呼んでよ。話がしたいの」
クロノスの鋭い視線が、少しだけ和らいだように感じた。
──もう一人の俺。確かに心当たりはあった。だが、俺にとってはその程度だ。これを正直に話さなければ、命を落としかねないと思った俺は、言葉の綱渡りをするように口を開いた。
「……もう、ひとり……。君の言う通り、いることは知っている。でもわからないんだ、それが誰なのか、どうやったら姿を現すのか……」
「それは困る。あの人は、他の悪魔たちの前に現れることはあっても、私の前では一度もなかった。どうして、見た目は瓜二つなのに、なんで私のことを覚えていないの……」
「…………」
クロノスは怒りをぶつけるように、けれど寂しさに曇った瞳でつぶやいた。
「試しに呼んでみてよ。もしかしたら……が、あるかもしれない」
「……呼んだことなんて一度もないから、わからないけど。それでも──」
「──構わない」
少女の指示通りに目を閉じて、内側にいるもう一人の自分を意識する。
そして、祈るように呼びかける。出てきてほしい、と願った。
しかし、何も変わらない。呼びかけに失敗してしまったのだろうか。
「……やっぱり無理だ、俺には……っ……あ──」
諦めかけた刹那、意識は混濁し、視界は何重にも景色が揺れ動いて見えた。
目の前が黒一色に染まると、気を失ったように眠りについた。
──やはり、そうか。
次に目を開けた時、俺はベッドの上にいた。
外は明るいとは言えない、けれど暗いともとれない灰色の空で覆われていた。朝と呼ぶには少し早い時間だった。
「…………」
比較的大きなサイズのベッドだ。隣ではクロノスが、寝息を立てて横たわっている。俺も彼女も、服を着ていなかった。ベッドの周り、あるいは椅子の背に乱暴に投げられた衣服だけが、この状況を物語っている。
なんとなく、クロノスの行動から察していた。
──居る。
きっと俺ではない、もう一人の自分という人が、彼女を抱いたのだろう。
それならば、以前ルドルフを抱いたのも──。
「う、ううん……」
「…………」
俺はベッドから起き上がると、心なしか微笑んで眠る少女を起こすことのないように、自分の衣服をかき集めて着直した。
そして俺は、シャワーを浴びるために部屋を出た。
***
大浴場は床も壁も、天井さえも黒タイルでできている。
おかげで常に暗く、明かりといえば窓代わりのステンドグラスと、バスタブの底から照らし出されたライト。それから、仕切られたシャワールームのそれぞれに設置された明かりだけだ。
どちらかというと、風呂としての機能よりも雰囲気作りを優先した──といった所だろう。
「ん……?」
五つに分けられたシャワールームのうち、一つに明かりが灯っていた。誰かがシャワーを浴びている。
その人は俺が浴場に来たことにも気づかず、体の汚れを洗い落としていた。床に滴る雫は、赤く濁っている。
俺が近づいていくと、愛する人はシャワーでくもりを落とした鏡を見て、ほんの少し驚いたような表情をしていた。
「こんな時間にどうしたの、ルドルフ」
ルドルフの首に優しく腕を絡め、囁くように問う。この瞬間、さっきまで考えていたことが嘘のように晴れ、ただ──この子をどう甘やかしてやろうか、という事しか頭に残らなかった。
「あ……。先程、不死鳥様にお飲み物をかけられて……貴方こそ」
ルドルフは手を伸ばしてシャワーを止めた。ただでさえ静かな空間が、より一層の静謐に包まれる。
「気づいたら、クロノスの部屋で眠ってしまっていたみたいで。朝騒がしくしてもいけないだろうから、今のうちにと思ってね」
──半分は本当。残りの半分は、自分でもどう説明していいかわからなかった。
鏡の向こうに立っている彼を覗く。
普段はスーツで隠している魅力的な体躯を、余すことなく露出していた。マシュマロのような白い肌は、触れると溶けてしまいそうなほど柔らかい。髪は濡れて肌に張り付いている。細い毛先から雫が流れ落ちていった。
こんなに無防備な男を見てしまったら、例えどんな手段を使ってでも食べてしまいたい、と誰もが思うに違いない。エデンの園にいたアダムとエバのようには、きっと戻れないだろう。
「ん……う……」
顔を振り向かせて、齧り付くように唇を合わせる。舌を突き出すと、いとも簡単に絡み合った。舌を這わせながら胸や腰を弄ぶと、淫らな吐息が溢れ出る。
「ルドルフ……んっ、愛してるよ……」
「は、ギル、ティさ……ん……」
名残惜しそうに唇を離す。蕩けたように恍惚とした表情を浮かべる彼は、困ったように眉を寄せた。
時々、どうしようもなく奪ってしまいたくなる。
ここにいる悪魔たちからだろうか、彼の想い人からだろうか。心も体も、すべてを欲してしまうほどに、嫉妬の炎が踊り狂う感覚を何度も味わった。
──はやく、俺のものになってしまえばいいのにな。
「……ごめん、用事を思い出した。俺はすぐに出るから、君はゆっくりしていて」
「ふふ、困ってしまいます。あまりからかわないでください……」
もう一度ごめんと謝ると、彼の頬に口づけをして、その場を後にした。
***
自室に一人。俺は鏡の間で立ち尽くしていた。
かつては鏡を避けて生活をしていた。極力意識をせずに、決してもう一人の自分など見ないように。
けれど今は違う。俺は知らなければならないのだ。でなければ──。
「…………」
唾を飲む。覚悟を決めて、深呼吸をした。
会えるのかどうかなんて、実際にやってみなければ分からない。出会った後、するべきこともわからない。
俺はもう一人の自分というものに、殺されてしまうのかもしれない──。
そんな事を考えながら、第一声を発した。
「もし、俺の声が聞こえているのなら、姿を見せてほしい」
そもそも、本当の俺は今ここにいる俺ではなく、向こう側の俺なのかもしれない。俺が俺であると証明できるものなどないのだから。
「嫌だと言うなら、それでもいい。今まで見て見ぬ振りをしていたのは、俺の方なんだから」
自分にとって都合のいいことばかりを並べて、相手を呼んでいる。
「あなたの事を知りたい。いいや、知らなくてはならない。どうか俺に教えてくれ、ええと……名前、は──」
──鈴の音が聞こえた。
透明なガラスの中で、小石が外に出たいと左右に揺れ動くように。透き通るような音だった。
「…………」
「あなた……が」
その人はただの一言も発することなく、鏡の向こうから俺のことを見ていた。
赤髪で天鵞絨の軍服を着ている。血のように染まった赤いマントを羽織り、その人は堂々と立っていた。──見た目だけは、俺とほとんど同じなのだ。
けれどその表情は冷酷だ。瞳は爛々と光る緑の蛍光色で、両頬には、大きく縦に開いた傷口を縫い止めた跡がはっきりとしていた。
「…………」
「──まって、待ってくれ!」
鏡の縁の外へと消えてしまった、その人を追いかける。手を伸ばすと、体は真っ直ぐに鏡の中へと溶けていった。
別な世界へと入り込んでしまった俺は、夢のような現実に息を呑んだ。
「は……ここは……」
「俺は最期までお前と会うことはないと思っていたよ、ギルティ」
俺の名前を呼ぶその声は、決して俺のものではなかった。
どうやらここは、教会のようだ。ワインレッドの絨毯が、祭壇に向かって一直線に伸びていた。
「……っ、眩しい……」
声のする先を見ようとも、ステンドグラスの窓から差し込む光はあまりにも眩くて、俺は目を細めながら右腕で目蓋の上を覆った。
段差の上にある祭壇に、その人はいる。輪郭がぼやけてしまうほどの逆光を浴び、シルエットは歪んでいた。
その人の傍らには──棺桶が置かれていた。棺桶の縁に腰掛けながら、その人は中にいる何かを見ていた。
「なにから話そうか。そうだな──」
俺は赤黒い棺桶を見るやいなや、釘を打たれたような胸の痛みに冷や汗をかいていた。
それは恐怖で、俺は棺桶から目を背けたくて堪らなくなる。
どうしてここへ来てしまったのだろう。今すぐにでも逃げ出したい。しかし、知ることを望んだのは──俺だ。
「──そこに誰がいる?!」
「……ああ。お前は見ないほうが懸命だ。だが、中に誰がいるのかくらいは教えよう」
逆光に照らされた男は、棺桶の中にいる何かを撫でるような動きになる。
そして男は──口を開いた。
「わかりやすく言うなら、そうだな……。これは──死んだお前の心だよ」
「────」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
──畏敬の念は、払拭されていた。
「悪魔の父──と呼んでやるのは可哀想だけど、悪魔たちは彼を本当の父親のように慕っている。が、当然本当の父親でないことくらいは分かっているんだろうな」
「それは……間違ってない」
「それならいい。父と契約したのはお前じゃない。俺の魂だ。よって、悪魔の力を得たのも──。いや、少し多めに貰ったのが俺だったというだけ、だな」
「…………」
「話は長くなる」
──お前は、ギルティという人は、体よりも先に精神を壊されていた。体の方は、傷だらけではあったが生きていた。
俺はお前を見つけた時、既に死んでいたよ。
お前の体に俺の魂が触れた時、いとも容易く溶け込んだ。同じ血が流れているからかな。
そしてお前の心を、魂を見た。
ひどい有様だった。生まれてこの方涙なんて流したこともなかったが、今度こそは目尻が熱くなったような気さえした。
心が死んだら、復讐すら果たせない。けれど──お前の心を殺してもなお、のうのうと生きている奴らは死ぬべきだ。
だから俺がお前の魂の代わりを務めることを誓って、体を借りたんだ。
さんざん復讐をした。きっと復讐以外のこともした。客観的に見ても、俺はたくさんの人を殺したよ。
そしていつからかこう呼ばれていた。──『戦場の女王』と。
結局は戦いに明け暮れた兵器。満身創痍の体に、より多くの傷を受けて死んだ。
死ぬ間際、地べたに斃れた俺の前に現れたのが──契約主となる父だ。
父は言った。君はもうすぐ死ぬが、その魂を預かっても良いかと。俺はその契約に乗った。
だがしかし、障害が多すぎた。もともと魂のみ地上を彷徨っていた俺には、体がない。父と契約するには体が必要だったんだ。
父が試行錯誤してくれたおかげで、召喚の儀は無事成功に終わった。途中で発生した事故も含めて、大成功と言わざるを得ない。
お前を蘇らせながら、俺の魂は付属品として共に目覚めた。大成功の意味は他でもない、お前の死んだ心だけが分離したんだ。それが事故だった。
俺はお前の死んだ心を預かって、お前の受けた傷を自分のものにして、ここに置いておくことにした。
──また、お前の心が目を覚ます時まで。
「……俺は、確かに死んだはずだった……。あなたは、どうしてそこまで……」
とめどない涙が溢れた。俺はこの人がいなければ、ここにいなかったかもしれない。
だのに俺は、知ろうとしなかった。知ることを恐れて、知った先の世界を自ら閉ざしていたのだ。
「単に、面白そうだと思っただけだよ。それに、体のない俺と心のないお前は、凹凸がうまく噛み合っていた」
「たったそれだけで……」
未だ逆光の輝きは失われていない。けれど、俺にはその口元の動きが読み取れた。
──その人は、笑っていた。
「しかし問題はその後だ。付属品であり姿を持たない俺は、お前に存在を知らせる術がなかった。俺が表立つことができる条件は二つ。お前の魔力が不安定な時、もしくはお前が俺を呼んだ時だ」
「ああ、だから度々意識を失っていたのか、俺は……」
「後者はそも、お前が俺に気づけなければ無理な話だ。そして魔力を受け取る器としての体さえ十分に持たないお前は、それを制御する力がない。ある程度決まった周期で、魔力に耐えきれなくなると俺が出てくる。そういう仕組みになっていた」
その人は、棺桶の中にいる俺自身の心、という者の方へと振り返る。
きっと手のあたりを握っているのだろう。その人は、ずっと手を離さずにいた。
「では、その……。あなたが表に出た時に、暴れていた──というのは? いや、これは皆が言っていたからそのように……」
「構わない。だってそれは、お前に気づいてもらう為にした事だ」
「それは、気づかなかった俺が……ううん、違う。薄々感じてたのに、逃げていた俺のせいだ」
──先程から謝ってばかりだな、と指摘されてしまう。申し訳ないという思いばかりが募り、無意識に口にしてしまっていたようだ。
「……今後は、お前に呼ばれた時にだけ現れるようにする。魔力が安定するように、こちらから制御させてもらおう。いざとなれば、女王と呼ばれただけの権能を使う」
「……ああ、それは助かるよ。ありがとう」
窓から差し込む強烈な光が、力を増していく。別れの時が近づいてきたようだ。
「──忘れないでほしい。もう二度と、お前を傷つけたくないと、守ると誓った奴がいたことを」
俺はもう、ほとんど何も見えていなかった。
少しだけ、あともう少しだけ、一秒すら惜しい。
声を上げなければ。次こそ、彼の名前を呼べるように──。
「名前を……あなたの名前を……!!」
「俺か。俺は────」
「来てくれたんだね。まずはありがとう」
彼女の──クロノスの部屋は閑散としている。
それは綺麗という状態よりも、必要最低限のものしか置いていないからこその物静けさだった。
古びた建物独特の臭いがする。それはどの部屋でも同じで、俺の部屋も例外ではないけれど。
「飲み物が欲しいのか? それとも読書?」
クロノスは魔力を使わない間、寝たきりを強いられている。魔力は有限だ。したがって、日常生活をする為に魔力を消費するのは、避けて然るべきなのだ。
結局、一通りの世話は俺が担当することになった。彼女は男に世話をされることを快く受け入れた。
「いいや……もっと近くに来てくれないか」
彼女の希望通り、ベッドに近づく。
基本的にクロノスはベッドの上にいる。今も紺色の髪を扇のように広げて、茨姫のように眠っていたところだろう。
「ん……? 本当にどうした、具合でも悪いのか──」
「──つかまえた」
クロノスの顔を覗き込むと、彼女は口の端を尖らせて笑った。背後から迫るものの正体に、気づくのが遅れる。
「っ……!?」
金属が擦れ合う音と同時に、鎖が俺の体を目に見えない速度で縛り上げる。
背中で曲げられた腕が、重なって固定される。足首を床から突き出た鎖に捉えられ、足の付根まで拘束された。
鎖は二重、三重に交差して巻き付くと、鉄でできた首輪の先端で束になっていった。
「ふっ、かわいい人。これでもう逃げられない」
磔にされた俺を、クロノスは目で弄んだ。するとベッドから起き上がり、側に近づいてくる。
逃げようにも、強固な鎖が捕らえた獲物を離さんと、体中を蝕んでいる。
「うっ……駄目だ、クロノス。魔力を無意味に消費するのは……」
「おや、こんな状態でもまだ私に説教を? 鎖に縛られた君は、言わば私の掌の上──だ。魔力を使えばこんなことだって……できる」
「うっ……ああ……」
クロノスが指を鳴らす。次第に全身の力が、意思を持ったかの如く逃げ出した。
抵抗力はもちろんの事、自力で立つことすらままならなくなった俺は、鎖に支えられ、辛うじて直立した姿勢を保っている。
「鎖による力の吸収、および略奪──といったところか。ふふっ、熟れた体、美味しそう……食べてもいい?」
「な、何を言って……」
後手に拘束されたせいで、体は腹部を突き出すようにして止まっている。目の前には四足で顔を乗り出す少女が、頬を上気させていた。
体と、クロノスの顔の距離が近すぎて、顔が熱くなっていく。思わず目を逸らした。
「んっ……ねえ、本当に覚えてないの? 私はこんなに求めているのに……ねえ」
恐れていた現実が忽然と姿を現す。
クロノスが脇目もふらずに、俺自身にかぶりついてきた。脳裏に電流が走ったような気がした。
「っ、あ……んっ……! クロノ、スだめだ、こんな……」
目蓋を開けているのに閉じているような明暗が、高速に入れ替わる。
なにより──怖い。はじめて見る顔、はじめて聞く口調の彼女が、怖い。逃げたいけれど、体に力が入らない。
しかし俺のことなどお構いなしに、クロノスは食み続けた。腰までの長さの横髪を、耳にかけるしぐさがいかにも女性らしい。
「ふふ、勃ってるね……いい感じ……」
服の上から嬲られたそれは、自分の意志に反して屹立していた。耐え切れず声を上げる。
「や、やめろ、やめてくれ!! 何がしたいんだ、君は誰だ……」
「これが本来の私だよ。ねえ、私がいくつに見える?」
少女はシャツのボタンを、上から順番に外し始めた。
「……っ。子ども、幼子にしか見えない。少なくとも大人には……見えない」
「そう。残念ね、私はこんな見た目だけど、年齢は君とたいして変わらない。ねえ、さっきの質問、答えは……? 私のこと覚えてるんでしょう」
彼女の語る事実を、鵜呑みにしていいものなのだろうか。言葉だけは受け取れたが、考える余裕までは与えられなかった。
クロノスは指先で、下腹部の真下にある膨らみを小突く。それからズボンのチャックに、両手を伸ばし始めた。
「知らない! 覚えてなんかない、人違いだ。知らないんだよ本当だ。たのむ、やめてくれ……クロノス……」
「……嘘を言っているようには見えない。それはそうか。なら──もう一人の君を呼んでよ。話がしたいの」
クロノスの鋭い視線が、少しだけ和らいだように感じた。
──もう一人の俺。確かに心当たりはあった。だが、俺にとってはその程度だ。これを正直に話さなければ、命を落としかねないと思った俺は、言葉の綱渡りをするように口を開いた。
「……もう、ひとり……。君の言う通り、いることは知っている。でもわからないんだ、それが誰なのか、どうやったら姿を現すのか……」
「それは困る。あの人は、他の悪魔たちの前に現れることはあっても、私の前では一度もなかった。どうして、見た目は瓜二つなのに、なんで私のことを覚えていないの……」
「…………」
クロノスは怒りをぶつけるように、けれど寂しさに曇った瞳でつぶやいた。
「試しに呼んでみてよ。もしかしたら……が、あるかもしれない」
「……呼んだことなんて一度もないから、わからないけど。それでも──」
「──構わない」
少女の指示通りに目を閉じて、内側にいるもう一人の自分を意識する。
そして、祈るように呼びかける。出てきてほしい、と願った。
しかし、何も変わらない。呼びかけに失敗してしまったのだろうか。
「……やっぱり無理だ、俺には……っ……あ──」
諦めかけた刹那、意識は混濁し、視界は何重にも景色が揺れ動いて見えた。
目の前が黒一色に染まると、気を失ったように眠りについた。
──やはり、そうか。
次に目を開けた時、俺はベッドの上にいた。
外は明るいとは言えない、けれど暗いともとれない灰色の空で覆われていた。朝と呼ぶには少し早い時間だった。
「…………」
比較的大きなサイズのベッドだ。隣ではクロノスが、寝息を立てて横たわっている。俺も彼女も、服を着ていなかった。ベッドの周り、あるいは椅子の背に乱暴に投げられた衣服だけが、この状況を物語っている。
なんとなく、クロノスの行動から察していた。
──居る。
きっと俺ではない、もう一人の自分という人が、彼女を抱いたのだろう。
それならば、以前ルドルフを抱いたのも──。
「う、ううん……」
「…………」
俺はベッドから起き上がると、心なしか微笑んで眠る少女を起こすことのないように、自分の衣服をかき集めて着直した。
そして俺は、シャワーを浴びるために部屋を出た。
***
大浴場は床も壁も、天井さえも黒タイルでできている。
おかげで常に暗く、明かりといえば窓代わりのステンドグラスと、バスタブの底から照らし出されたライト。それから、仕切られたシャワールームのそれぞれに設置された明かりだけだ。
どちらかというと、風呂としての機能よりも雰囲気作りを優先した──といった所だろう。
「ん……?」
五つに分けられたシャワールームのうち、一つに明かりが灯っていた。誰かがシャワーを浴びている。
その人は俺が浴場に来たことにも気づかず、体の汚れを洗い落としていた。床に滴る雫は、赤く濁っている。
俺が近づいていくと、愛する人はシャワーでくもりを落とした鏡を見て、ほんの少し驚いたような表情をしていた。
「こんな時間にどうしたの、ルドルフ」
ルドルフの首に優しく腕を絡め、囁くように問う。この瞬間、さっきまで考えていたことが嘘のように晴れ、ただ──この子をどう甘やかしてやろうか、という事しか頭に残らなかった。
「あ……。先程、不死鳥様にお飲み物をかけられて……貴方こそ」
ルドルフは手を伸ばしてシャワーを止めた。ただでさえ静かな空間が、より一層の静謐に包まれる。
「気づいたら、クロノスの部屋で眠ってしまっていたみたいで。朝騒がしくしてもいけないだろうから、今のうちにと思ってね」
──半分は本当。残りの半分は、自分でもどう説明していいかわからなかった。
鏡の向こうに立っている彼を覗く。
普段はスーツで隠している魅力的な体躯を、余すことなく露出していた。マシュマロのような白い肌は、触れると溶けてしまいそうなほど柔らかい。髪は濡れて肌に張り付いている。細い毛先から雫が流れ落ちていった。
こんなに無防備な男を見てしまったら、例えどんな手段を使ってでも食べてしまいたい、と誰もが思うに違いない。エデンの園にいたアダムとエバのようには、きっと戻れないだろう。
「ん……う……」
顔を振り向かせて、齧り付くように唇を合わせる。舌を突き出すと、いとも簡単に絡み合った。舌を這わせながら胸や腰を弄ぶと、淫らな吐息が溢れ出る。
「ルドルフ……んっ、愛してるよ……」
「は、ギル、ティさ……ん……」
名残惜しそうに唇を離す。蕩けたように恍惚とした表情を浮かべる彼は、困ったように眉を寄せた。
時々、どうしようもなく奪ってしまいたくなる。
ここにいる悪魔たちからだろうか、彼の想い人からだろうか。心も体も、すべてを欲してしまうほどに、嫉妬の炎が踊り狂う感覚を何度も味わった。
──はやく、俺のものになってしまえばいいのにな。
「……ごめん、用事を思い出した。俺はすぐに出るから、君はゆっくりしていて」
「ふふ、困ってしまいます。あまりからかわないでください……」
もう一度ごめんと謝ると、彼の頬に口づけをして、その場を後にした。
***
自室に一人。俺は鏡の間で立ち尽くしていた。
かつては鏡を避けて生活をしていた。極力意識をせずに、決してもう一人の自分など見ないように。
けれど今は違う。俺は知らなければならないのだ。でなければ──。
「…………」
唾を飲む。覚悟を決めて、深呼吸をした。
会えるのかどうかなんて、実際にやってみなければ分からない。出会った後、するべきこともわからない。
俺はもう一人の自分というものに、殺されてしまうのかもしれない──。
そんな事を考えながら、第一声を発した。
「もし、俺の声が聞こえているのなら、姿を見せてほしい」
そもそも、本当の俺は今ここにいる俺ではなく、向こう側の俺なのかもしれない。俺が俺であると証明できるものなどないのだから。
「嫌だと言うなら、それでもいい。今まで見て見ぬ振りをしていたのは、俺の方なんだから」
自分にとって都合のいいことばかりを並べて、相手を呼んでいる。
「あなたの事を知りたい。いいや、知らなくてはならない。どうか俺に教えてくれ、ええと……名前、は──」
──鈴の音が聞こえた。
透明なガラスの中で、小石が外に出たいと左右に揺れ動くように。透き通るような音だった。
「…………」
「あなた……が」
その人はただの一言も発することなく、鏡の向こうから俺のことを見ていた。
赤髪で天鵞絨の軍服を着ている。血のように染まった赤いマントを羽織り、その人は堂々と立っていた。──見た目だけは、俺とほとんど同じなのだ。
けれどその表情は冷酷だ。瞳は爛々と光る緑の蛍光色で、両頬には、大きく縦に開いた傷口を縫い止めた跡がはっきりとしていた。
「…………」
「──まって、待ってくれ!」
鏡の縁の外へと消えてしまった、その人を追いかける。手を伸ばすと、体は真っ直ぐに鏡の中へと溶けていった。
別な世界へと入り込んでしまった俺は、夢のような現実に息を呑んだ。
「は……ここは……」
「俺は最期までお前と会うことはないと思っていたよ、ギルティ」
俺の名前を呼ぶその声は、決して俺のものではなかった。
どうやらここは、教会のようだ。ワインレッドの絨毯が、祭壇に向かって一直線に伸びていた。
「……っ、眩しい……」
声のする先を見ようとも、ステンドグラスの窓から差し込む光はあまりにも眩くて、俺は目を細めながら右腕で目蓋の上を覆った。
段差の上にある祭壇に、その人はいる。輪郭がぼやけてしまうほどの逆光を浴び、シルエットは歪んでいた。
その人の傍らには──棺桶が置かれていた。棺桶の縁に腰掛けながら、その人は中にいる何かを見ていた。
「なにから話そうか。そうだな──」
俺は赤黒い棺桶を見るやいなや、釘を打たれたような胸の痛みに冷や汗をかいていた。
それは恐怖で、俺は棺桶から目を背けたくて堪らなくなる。
どうしてここへ来てしまったのだろう。今すぐにでも逃げ出したい。しかし、知ることを望んだのは──俺だ。
「──そこに誰がいる?!」
「……ああ。お前は見ないほうが懸命だ。だが、中に誰がいるのかくらいは教えよう」
逆光に照らされた男は、棺桶の中にいる何かを撫でるような動きになる。
そして男は──口を開いた。
「わかりやすく言うなら、そうだな……。これは──死んだお前の心だよ」
「────」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
──畏敬の念は、払拭されていた。
「悪魔の父──と呼んでやるのは可哀想だけど、悪魔たちは彼を本当の父親のように慕っている。が、当然本当の父親でないことくらいは分かっているんだろうな」
「それは……間違ってない」
「それならいい。父と契約したのはお前じゃない。俺の魂だ。よって、悪魔の力を得たのも──。いや、少し多めに貰ったのが俺だったというだけ、だな」
「…………」
「話は長くなる」
──お前は、ギルティという人は、体よりも先に精神を壊されていた。体の方は、傷だらけではあったが生きていた。
俺はお前を見つけた時、既に死んでいたよ。
お前の体に俺の魂が触れた時、いとも容易く溶け込んだ。同じ血が流れているからかな。
そしてお前の心を、魂を見た。
ひどい有様だった。生まれてこの方涙なんて流したこともなかったが、今度こそは目尻が熱くなったような気さえした。
心が死んだら、復讐すら果たせない。けれど──お前の心を殺してもなお、のうのうと生きている奴らは死ぬべきだ。
だから俺がお前の魂の代わりを務めることを誓って、体を借りたんだ。
さんざん復讐をした。きっと復讐以外のこともした。客観的に見ても、俺はたくさんの人を殺したよ。
そしていつからかこう呼ばれていた。──『戦場の女王』と。
結局は戦いに明け暮れた兵器。満身創痍の体に、より多くの傷を受けて死んだ。
死ぬ間際、地べたに斃れた俺の前に現れたのが──契約主となる父だ。
父は言った。君はもうすぐ死ぬが、その魂を預かっても良いかと。俺はその契約に乗った。
だがしかし、障害が多すぎた。もともと魂のみ地上を彷徨っていた俺には、体がない。父と契約するには体が必要だったんだ。
父が試行錯誤してくれたおかげで、召喚の儀は無事成功に終わった。途中で発生した事故も含めて、大成功と言わざるを得ない。
お前を蘇らせながら、俺の魂は付属品として共に目覚めた。大成功の意味は他でもない、お前の死んだ心だけが分離したんだ。それが事故だった。
俺はお前の死んだ心を預かって、お前の受けた傷を自分のものにして、ここに置いておくことにした。
──また、お前の心が目を覚ます時まで。
「……俺は、確かに死んだはずだった……。あなたは、どうしてそこまで……」
とめどない涙が溢れた。俺はこの人がいなければ、ここにいなかったかもしれない。
だのに俺は、知ろうとしなかった。知ることを恐れて、知った先の世界を自ら閉ざしていたのだ。
「単に、面白そうだと思っただけだよ。それに、体のない俺と心のないお前は、凹凸がうまく噛み合っていた」
「たったそれだけで……」
未だ逆光の輝きは失われていない。けれど、俺にはその口元の動きが読み取れた。
──その人は、笑っていた。
「しかし問題はその後だ。付属品であり姿を持たない俺は、お前に存在を知らせる術がなかった。俺が表立つことができる条件は二つ。お前の魔力が不安定な時、もしくはお前が俺を呼んだ時だ」
「ああ、だから度々意識を失っていたのか、俺は……」
「後者はそも、お前が俺に気づけなければ無理な話だ。そして魔力を受け取る器としての体さえ十分に持たないお前は、それを制御する力がない。ある程度決まった周期で、魔力に耐えきれなくなると俺が出てくる。そういう仕組みになっていた」
その人は、棺桶の中にいる俺自身の心、という者の方へと振り返る。
きっと手のあたりを握っているのだろう。その人は、ずっと手を離さずにいた。
「では、その……。あなたが表に出た時に、暴れていた──というのは? いや、これは皆が言っていたからそのように……」
「構わない。だってそれは、お前に気づいてもらう為にした事だ」
「それは、気づかなかった俺が……ううん、違う。薄々感じてたのに、逃げていた俺のせいだ」
──先程から謝ってばかりだな、と指摘されてしまう。申し訳ないという思いばかりが募り、無意識に口にしてしまっていたようだ。
「……今後は、お前に呼ばれた時にだけ現れるようにする。魔力が安定するように、こちらから制御させてもらおう。いざとなれば、女王と呼ばれただけの権能を使う」
「……ああ、それは助かるよ。ありがとう」
窓から差し込む強烈な光が、力を増していく。別れの時が近づいてきたようだ。
「──忘れないでほしい。もう二度と、お前を傷つけたくないと、守ると誓った奴がいたことを」
俺はもう、ほとんど何も見えていなかった。
少しだけ、あともう少しだけ、一秒すら惜しい。
声を上げなければ。次こそ、彼の名前を呼べるように──。
「名前を……あなたの名前を……!!」
「俺か。俺は────」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
魔女の呪いで男を手懐けられるようになってしまった俺
ウミガメ
BL
魔女の呪いで余命が"1年"になってしまった俺。
その代わりに『触れた男を例外なく全員"好き"にさせてしまう』チート能力を得た。
呪いを解くためには男からの"真実の愛"を手に入れなければならない……!?
果たして失った生命を取り戻すことはできるのか……!
男たちとのラブでムフフな冒険が今始まる(?)
~~~~
主人公総攻めのBLです。
一部に性的な表現を含むことがあります。要素を含む場合「★」をつけておりますが、苦手な方はご注意ください。
※この小説は他サイトとの重複掲載をしております。ご了承ください。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
超好みな奴隷を買ったがこんな過保護とは聞いてない
兎騎かなで
BL
旧題:奴隷を買って丸洗いしたら超好みだったので、相棒として仲を深めつつダンジョン攻略する
俺は鏑木樹。気がついたら異世界で、兎の耳が生えてた。
嘘じゃないぜ? ロップイヤーでモカブラウンの、ラブリーキュートな耳が生えてるだろ? ほら。
いや、まいったな。帰れんのかこれ。
とりあえず、所持品売って奴隷でも買うか。
買った悪魔奴隷のカイルに契約を持ちかけ、ダンジョン探索の相棒として護衛してもらうことに。
最初は樹の魔力ほしさに契約したカイルだが、共に過ごすうちに独占欲全開になっていく。
「コイツは俺のだ。他の誰にもやらねえ」
カイルの顔が超絶タイプな樹は、思わせぶりで色気たっぷりのカイルに、だんだん翻弄されていく……
みたいな話です。戦闘あり、陰謀ありの世界をかっこよく切り抜けながら、仲を深めていく二人を書いていきたい(初心表明)
R15くらい→☆
R18→★マークを見出しにつけます。
2023
8/27 BL4位ありがとうございます♪
10/7 一章完結しました! 二章も続けて連載します!
11/8スピンオフ作品「新婚約者は苦手な狼獣人!? 〜婚約破棄をがんばりたいのに、溺愛してきて絆されそうです」も、本編と時系列をあわせて同時連載中です。
対抗戦付近のクインシー視点がたっぷり読めます!
エイダンとセルジュのスピンオフ「のんびり屋の熊獣人は、ツンデレ猫獣人を可愛がりたくてしょうがない」もよろしくお願いします。
11/27 スピンオフ完結しました!
11/30本編完結済み、番外編を投稿中!
2024/2/11第四章開始しました。
2024/2/13書籍発行となりました!
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる