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第2部
#43.5 崩れ落ちていく
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「の、ののの、のじゃーーーーーッ!!!!」
「逃げ足だけは早いのね、この蝿。早く白状したほうが、楽になれるわ」
「わしは分身じゃ!! 白状も何も、本体が勝手にやってることなんか、知らんのじゃー!!」
「そうは思わないのだけれど。人形のクセに、嘘が上手ね」
「ぴーーっ! わ、わかったのじゃ。わかったから、その銃を下ろすのじゃ……」
「ええ、下ろしたわ。そこに、たまたま、まぐれで、アナタの頭が落ちていただけよ」
「転んじゃっただけじゃ! りーふーじーんー!! 理不尽すぎるのじゃあああ!!」
「……残念ね。この世界は理不尽そのものよ」
「…………」
「あ~あ……本当にやりおったわい。移動中に頭痛がするもんじゃから、びっくりした……」
「もう、遅いわ。待ちくたびれたんだから」
「あまりチビを虐めないでくれるかのう。痛みは儂にも反映されるんじゃぞ……」
「それは知っている。ワタシが聞きたいのは、パパをどこへやったか、それだけよ」
「ぐえ……胸ぐら掴むのやめて。ていうか、なんで父上がいなくなったと気づいた?」
「パパへの愛よ。アナタたちとは違うのよ、重さも、大きさも。だからワタシにはわかるの、パパの熱が……。彼が地下にいればそれを感じ取れるの。けれど熱が冷めた……いいえ。熱ごと、どこかへ行ってしまった」
「それは初知り。お主は父上の熱が感じ取れなくなったから、こうして儂を尋問しておるのじゃな」
「その通りよ。悪魔の中で一番怪しいのはアナタだもの。まずはじめに疑われて当然でしょう」
「ふ~ん。……知らんのう」
「なんですって? アナタも銃で脅さなければいけないのかしら」
「……何度撃ち殺されても、銃弾の抜けていく感覚は恐ろしいものよ。……いくら不老不死とはいえ、死の恐怖を忘れたりなどせんわ」
「それじゃあ教えてくれるのかしら?」
「んーまぁお主のような別嬪さんに脳天ぶち抜かれるなら、本望じゃがのう……。父上は行ったぞ、『神の業』に」
「……あぁ……そう……」
「なぁ、ブレイズよ。いつか来ると、みんな知っておったはずじゃ。その時がやってきただけなのじゃ」
「……うぅ、パパ……嫌よ、ワタシを置いて行かないで……」
「パパがいないなら、ママに慰めてもらえばよいじゃろう」
「ママ……? ママですって? そんなものいないわよ……」
「…………」
「ママなんていないわ!! ママなんているわけがない!! だってワタシが殺したんだもの!! 生きているわけないじゃない──アッハハハハハハハ!!!!」
「会話中に失礼する──ん? 何だこの状況は……フェニックス、またお前か……」
「師匠……。いや、なんというか……ちと遊びすぎた」
「全く……言葉遣いには気を配れと、再三言ったはずだが。立てるか、ブレイズ」
「ええ、ありがとう……。それより、アナタが急に現れるほどの要件って、なにかしら……?」
「それが……我々にも看過できない問題だ。巨大な象のような魑魅が現れた。余(俺)はこれをアルケミストと呼称する」
「アルケミスト……。それが、おつかいの邪魔になるかもしれない──ということね」
「そんなところだ。今まで観測した、どの魔獣とも合致しない形、どの建物も比にならないおびただしさを持つ」
「ほう!! ようやく芽が出たか!!」
「……戦犯はお前か、フェニックス。人の心はなくとも、やって良い事と悪い事の区別くらいはつくだろう?」
「ごめんなさい」
「思ってないわね」
「蒔いた種が芽を出し、実をつける……これほど趣があり、名伏しがたい味わいのある情緒を見るのが、儂の唯一の楽しみでなあ……」
「無論、責任は取れるんだろうな?」
「大口叩いておきながら。そんなすごいものを見て、放っておけるほど大人しい性格でもないでしょう」
「そうともいうわな。何時でも、なんとでもしてやるわい」
「……あれはイレギュラーだ。放置したら、目標の損失を待つだけでは済まされない。アルケミストによって、我々のうちの誰かが血を流すことになるだろう」
「アルマさんがそこまで言うのなら……対処すべきなのかもしれないわね。ワタシはこれからお使いがあるから……」
「余が行こう。後にどうするかは……皆で考えればいい」
「…………」
「じゃあ、ワタシもおつかいに行ってくるわ。アナタのことは、アルマさんに免じて許してあげる。それじゃあね」
「それは助かるのう。儂だってな、ここで無駄にくたばるわけにはいかんのじゃよ……」
「逃げ足だけは早いのね、この蝿。早く白状したほうが、楽になれるわ」
「わしは分身じゃ!! 白状も何も、本体が勝手にやってることなんか、知らんのじゃー!!」
「そうは思わないのだけれど。人形のクセに、嘘が上手ね」
「ぴーーっ! わ、わかったのじゃ。わかったから、その銃を下ろすのじゃ……」
「ええ、下ろしたわ。そこに、たまたま、まぐれで、アナタの頭が落ちていただけよ」
「転んじゃっただけじゃ! りーふーじーんー!! 理不尽すぎるのじゃあああ!!」
「……残念ね。この世界は理不尽そのものよ」
「…………」
「あ~あ……本当にやりおったわい。移動中に頭痛がするもんじゃから、びっくりした……」
「もう、遅いわ。待ちくたびれたんだから」
「あまりチビを虐めないでくれるかのう。痛みは儂にも反映されるんじゃぞ……」
「それは知っている。ワタシが聞きたいのは、パパをどこへやったか、それだけよ」
「ぐえ……胸ぐら掴むのやめて。ていうか、なんで父上がいなくなったと気づいた?」
「パパへの愛よ。アナタたちとは違うのよ、重さも、大きさも。だからワタシにはわかるの、パパの熱が……。彼が地下にいればそれを感じ取れるの。けれど熱が冷めた……いいえ。熱ごと、どこかへ行ってしまった」
「それは初知り。お主は父上の熱が感じ取れなくなったから、こうして儂を尋問しておるのじゃな」
「その通りよ。悪魔の中で一番怪しいのはアナタだもの。まずはじめに疑われて当然でしょう」
「ふ~ん。……知らんのう」
「なんですって? アナタも銃で脅さなければいけないのかしら」
「……何度撃ち殺されても、銃弾の抜けていく感覚は恐ろしいものよ。……いくら不老不死とはいえ、死の恐怖を忘れたりなどせんわ」
「それじゃあ教えてくれるのかしら?」
「んーまぁお主のような別嬪さんに脳天ぶち抜かれるなら、本望じゃがのう……。父上は行ったぞ、『神の業』に」
「……あぁ……そう……」
「なぁ、ブレイズよ。いつか来ると、みんな知っておったはずじゃ。その時がやってきただけなのじゃ」
「……うぅ、パパ……嫌よ、ワタシを置いて行かないで……」
「パパがいないなら、ママに慰めてもらえばよいじゃろう」
「ママ……? ママですって? そんなものいないわよ……」
「…………」
「ママなんていないわ!! ママなんているわけがない!! だってワタシが殺したんだもの!! 生きているわけないじゃない──アッハハハハハハハ!!!!」
「会話中に失礼する──ん? 何だこの状況は……フェニックス、またお前か……」
「師匠……。いや、なんというか……ちと遊びすぎた」
「全く……言葉遣いには気を配れと、再三言ったはずだが。立てるか、ブレイズ」
「ええ、ありがとう……。それより、アナタが急に現れるほどの要件って、なにかしら……?」
「それが……我々にも看過できない問題だ。巨大な象のような魑魅が現れた。余(俺)はこれをアルケミストと呼称する」
「アルケミスト……。それが、おつかいの邪魔になるかもしれない──ということね」
「そんなところだ。今まで観測した、どの魔獣とも合致しない形、どの建物も比にならないおびただしさを持つ」
「ほう!! ようやく芽が出たか!!」
「……戦犯はお前か、フェニックス。人の心はなくとも、やって良い事と悪い事の区別くらいはつくだろう?」
「ごめんなさい」
「思ってないわね」
「蒔いた種が芽を出し、実をつける……これほど趣があり、名伏しがたい味わいのある情緒を見るのが、儂の唯一の楽しみでなあ……」
「無論、責任は取れるんだろうな?」
「大口叩いておきながら。そんなすごいものを見て、放っておけるほど大人しい性格でもないでしょう」
「そうともいうわな。何時でも、なんとでもしてやるわい」
「……あれはイレギュラーだ。放置したら、目標の損失を待つだけでは済まされない。アルケミストによって、我々のうちの誰かが血を流すことになるだろう」
「アルマさんがそこまで言うのなら……対処すべきなのかもしれないわね。ワタシはこれからお使いがあるから……」
「余が行こう。後にどうするかは……皆で考えればいい」
「…………」
「じゃあ、ワタシもおつかいに行ってくるわ。アナタのことは、アルマさんに免じて許してあげる。それじゃあね」
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