聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第48話 俺にできない訳がねえ!!!!

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 セイレーンの故郷から戻ってきた俺たちは、すぐさま皆と情報を共有した。
 話を聞いた皆は驚いて、レトの方を見ている。

 それまでも変わった生物だと注目を集めていたけど、今ほどじゃない。
 情報の一部を公開したのは、兵士たちの士気を高める効果を狙ってのことだ。
 上手くいけば、ラヴェルサによる犠牲を少なくできるかもしれないんだもんな。

 俺達が戻ってくるまでの間に、双星機の整備も完了。
 現在は主だったメンバーを集めて作戦会議中だ。

「明朝、いよいよラヴェルサの地下プラントに向けて進軍を開始する。セイレーンが提示したルートに沿って移動を予定している」

 わざわざ動きの分からない教会勢力下を通過する理由はないからな。
 でも、あくまで予定は予定。
 当然変更はあり得ると聞いている。

「現在ラヴェルサは両勢力の動きに合わせて、地下プラントから続々と現れている。だが、これら全てを相手にする必要はない。我々の目的は剣星とイオリの乗る双星機を無事に聖女様の元へ送り届ける事だ。お前らも報告を見ただろう。彼らの強さを体感したはずだ。二人のために道を作れ! 必ずやラヴェルサの元からお救いできるだろう!」

 キルレイドさんが断言する。

 双星機が万全なら絶対にアルフィナを助け出せると思う。
 あの機人にはそれだけのパワーが備えられている。

 今回の作戦では、アルフィナを助けてもその場でレストライナ因子でラヴェルサを抑え込むことはしない。仮に全てのラヴェルサが活動停止したとしても、それでは両勢力の戦力が温存されてしまうからだ。ただ、これ以上ラヴェルサの戦力増加を防ぐために、プラントを破壊するだけだ。

「その後、すぐさま転進してマグレイアを討つ! これは作戦の成否に関わらず絶対条件だ。マグレイアがいては、和平はあり得ないからな」

 その後は、ラヴェルサの動きに合わせて、援軍を送る予定だ。両勢力のバランスを取って、和平に向かわせる。

「同時に聖女様の部隊がラヴェルサに襲われている教会勢力の窮地を救う。タイミングを計り、教会の真実を知ってもらうことで勢力の力を削いでいく」

 情報操作部隊の下地作りは現在進行形で稼働中。
 ここまでの情報操作がリグド・テランじゃなくて同盟国であるロジスタルスによるものとは思わないはずだ。

 アルフィナが直接教会の真実を語ってくれるのがベストだけど、そこまでは流石に望みすぎだろう。

 作戦が開始されれば、もはや引き返せなくなる。
 多くの操者が死んでいくだろう。

「びびってる奴はいねえだろうな。みんな、いい面構えをしてやがる。明日は頼んだぜ!」
「「「 了解!! 」」」

 皆の高揚感が伝わってくる会議だった。

 俺は就寝前に格納庫に向かっていた。
 双星機の試運転は既に終わってるので、別の要件だ。

「ルシオ、調整は終わったか?」
「もうちょっと、ってとこだな。それよか、ホントにいいのかよ? 俺がラグナリィシールドに乗っても」
「RSカスタムだ。間違えるな」
「いや、機人の名前なんて戦場で呼ばねえし」

 俺がイオリから預かっていたRSカスタムは、ルシオの手に渡ることになった。
 俺達が双星機に乗る以上、RSカスタムの操者が必要だ。
 双星機に次いで高性能な機人を遊ばせておく余裕はない。

 キルレイドさんは専用機を持ってるし、他のベテランにとっては扱い慣れた機人の方がいいだろう。

 ってなわけで、白羽の矢が立ったのがルクレツィア傭兵団の若手三人組だ。
 ある程度の腕が必要ってなれば、選択肢が少なかったんだ。
 ところが、フォルカは団長譲りの強化型リンクスに乗り込むという。
 リンダは機人を変えたくないと宣言した。
 もしかしたら、副長が最後に乗った機人だからかもしれない。

「ルシオが選ばれたのは確かに消去法だけどさ。自信を持てよ。相応しい実力があるから大丈夫だ」
「剣星に認められてもね~って思ってる?」
「いや、そんなことねーよ。剣星は努力してたし凄い奴だ。ありがとな。その分、明日は任せてくれ」
「おう!」

 みんなと腕を合わせて格納庫を離れた。



 個室に戻って目を瞑る。
 これまでのことがつい先日のことのように思えてきた。

 この世界に来ていろんなことがあった。
 辛いこと、悲しいこと、悔しいこと、一杯あったけど、俺はこの世界にきて本当に良かった。
 でも、心からそう思うためには、明日の作戦を成功させなければならない。

 不安がない訳じゃない。
 皆もきっと同じだろう。
 不安を抱えながらも、戦い続けるんだ。

「なあ、レト。今までありがとな」
「何よ、ケンセー。急に改まっちゃって、縁起でもない」

「これが最後なんて思ってないさ。ただ、ちゃんと礼を言った事があったかなと思って。俺はレトがいたから、楽しく暮らせてたんだと思う」
「ふ~ん、そっか。まっ、私もケンセーと一緒で楽しかったけどね」

「そういえば、レトってなんで俺に付いてきたんだっけ?」
「う~ん、なんとなくだったような?」

 その答えもまたレトらしい。
 なんだか、気分が落ち着いてきた気がする。

「そうだ、ケンセー。ちょっとお願いがあるんだけど」
「うん。何でも言ってみ?」

 レトの口から出たのは俺が頼もうとしていたことだった。
 まさか、レトの方から言ってくるなんてな。
 俺が言いにくい事を、自分から言ってくれたんだ。
 でも、レトが望むのは謝罪の言葉じゃないだろう。

「さっすが、相棒。明日も頼んだぜ!」
「まっかせなさ~い!」

 ありがとう、レト……



 ――――――――――――――――



 作戦開始時刻より、だいぶ前に目が覚めた。

 まだ外は暗いし静かだけど、廊下からは沢山の足音が聞こえてくる。
 俺と同じように緊張で目が覚めてしまった奴がいるんだろうな。

 ベッドから起き上がって支度を始める。
 顔を洗って飯を食い、部屋から出ると自然と足は格納庫に向かっていた。

「頼んだぜ、双星機ヘレファナーレ

 俺を見下ろしてくる巨大な機人。
 当然のことながら、返事を返さない。
 そう思っていたけど、コックピットが開いてイオリが下りてきた。

「なんだ剣星。お前も早く起きたのか」
「まあな。イオリは試運転か?」
「ああ、私の出番はないだろうが、一応な」

「それでどうだった?」
聖王機エスタシュリオに乗った時と変わらない感触だな」

 ……それはそうだろうな。

 イオリに告げるのは、今しかない。
 もう調整してあるから、これから変更なんてできないし。

「イオリ、今日の出撃では、お前に操縦してもらう」
「何を言っている。自信をなくしたのか?」
「そうじゃない。双星機は聖王機同様に複座型の機人だ。能力を発揮するためには、イオリが操縦した方がいいと判断したんだ」

「……だからメカニックに頼んで、私に合わせて調整してもらったのか?」
「そうだ。イオリ、お前が双星機を操縦するんだ。俺が合わせてやる」

 複座型の機人は、二人の操者が同じ事を考えた時に最大の力を発揮する。
 だから、俺がイオリが考えてるのと同じ事をイメージすればいいだけだ。

「剣星、事の重要性を理解しているのか? この作戦の成否にはアルフィナ様の命運がかかってるんだぞ!」

「分かってるさ。だからこそ、俺が合わせるって言ってるんだ。俺だけの力じゃない。二人でアルフィナを救うんだ」

「不安になるのは分かる。だが、いきなり合わせるなど不可能だ。私の動きに剣星がついてこれるものか! それなら剣星が一人で乗った方が遥かにマシだ!」

 それぞれのイメージが合わなければ、俺達が一緒に聖王機に乗った直後みたいに無防備になる。ラヴェルサに囲まれた状況では小さな隙が致命的になるだろう。イオリはそれを危惧してるんだ。

 確かに十五年近く鍛錬したイオリに比べれば、俺の数カ月の努力なんてちっぽけなものだ。仮にイオリと対峙したら俺は無残にやられるだろう。それだけの実力差があるのは認めるさ。だけど、そんなことは問題じゃないんだ。

「絶対にイオリの動きについていってみせる。俺を信じてくれ!」
「アルフィナ様だけじゃない。多くの人々の命に関わるんだ! お前の個人的な感情を優先させる時じゃないことが分からないのか!」

 ヒートアップしてきて、人が集まり始めた。
 でも、俺だって引くわけにはいかない。
 伊達や酔狂で提案したわけじゃねーんだ。

「イオリこそ分かってない。俺がどんだけ見てきたと思ってるんだよ」
「見てきた? ……なんのことを言っている?」

「お前のことだ! 俺は、俺はずっと、イオリのことを見てきた。見続けてきた! 雨の日も風の日も、会えない時だって頭の中で、ずっとイオリのことを考えてた!!」

「(ケンセー、なんか変態っぽい!)」

 余計な茶々が聞こえて来るけど、もう止められない。
 てか、止まったら、きっと二度と言えない。
 このまま突き進む!

「俺がどんだけイオリのことを見てきたと思ってるんだ!! イオリの剣に憧れて、イオリの背中を必死に追い続けて。朝も昼も夜も妄想して。寝ている時だってずっとイオリのことを考えてた。……そんな俺がイオリの動きについていけないはずがねえ!!」

「剣星……お前……」


「俺にできない訳がねえ!!!! イオリ!!」


「は、はい!」

「俺を信じろ!! お前のことをずっと見てきた俺を信じろ!! 俺達二人で絶対にアルフィナを助けるんだ!!」

 イオリは下を向いている。
 でもなんだか微笑んだような気がした。

 「……剣星、お前は本当に馬鹿な男だ。こんな私のことを見続けてたなんて。放っておけばいいものを」
「放っておくはずがないだろ。俺はなんとかイオリに近づこうとしてたんだからな」
「全く。本当に物好きな男だ。馬鹿な私に負けないくらい馬鹿な男だ。……剣星、私は剣星のことを信じる。私のことをずっと見てきた剣星の事を信じるよ」
「ああ、任せてくれ」
 
 なんだか周りから囃したててくる声が聞こえてきた。
 もしかして、告白したみたいに聞こえたのか?  

 そんなつもりは無かったんだけど、ちょっと恥ずかしくなってきたぞ。
 イオリの頬もかなり赤くなってる。

「なんか剣星さん、凄かったね」
「ああ、漢だな」
「女の子が全員ああいうの好きとか思わないでよね。言っとくけど、私にあんなことしたら即殺すから」

 ルシオ、お前、顔が引きつってるぞ。
 さては真似しようとしてたな。
 それにしても、やっぱりJKもどきは恐ろしい。

「どうやら剣星のおかげで、皆リラックスできたようだな」

 キルレイドさんの問いに皆が笑い声を返す。
 そんなつもりはなかったけど、みんなの緊張が解けたのならそれでいい。

 さあ、もうすぐ出発だ!
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