上 下
75 / 81

第75話 Bランクダンジョン攻略完了!

しおりを挟む

「ぷはぁ!」


 岩陰で着ていた服を脱ぐと、木桶に詰めてあった飲料水を頭から被り、刺激臭を放つアースドラゴンの血で汚れた身体を清める。


「つめてぇ!」


「ヴェルデ様、今トマスさんが焚火を起こしてくれてますので、身体を洗い終わったら、そちらで暖をとってくださいね!」


 反対側の岩陰では、俺に抱き着いて血まみれになってしまったガチャをアスターシアが洗ってくれている。


「助かるよ。ううぅ、つめてぇ」


 石鹸を使い、血で汚れた身体を洗いつつ、装備に付いた血も洗い流していく。


 今度戦う時は絶対に腹の底には潜り込まないでおこう。


 圧し潰してきた時、アイスの魔法で凍らせられたらよかったんだろうけど、クールタイムが終わってなかったからなぁ……。


 連撃使って最大火力で倒しきれないと、連撃のクールタイムが終わるまで、回避か防御か通常攻撃しか選べないのが辛いところだ。


 早いところ連撃のスキルLVあがって、クールタイムが減ってくれないかなぁ。


 使用後のクールタイムが減れば、通常攻撃や回避防御でしのぐ時間も削れるし、回復魔法や防御魔法もすぐに使えるようになる。


 そうしたら、LVの高い魔物とでも、安定した戦いがもっとできるはず。


 そのためにはもっといろんなスキルを獲得したり、成長させていかないとな。


 Bランクのダンジョンを攻略したことで、褒賞の金色コインもいっぱい出ただろうし、ホーカムの街に戻ったらガチャ引くとするか。


 身体と装備を洗い終えた俺は、綺麗な布で身体を拭くと、代わりの服を空間収納から取り出し着込んだ。


「ふぅ、冷たかったけど、さっぱりした」


 濡れたままの装備を持ち、隣のアスターシアに声をかける。


「ガチャの様子はどうだ? さむがってないか?」


「大丈夫ですよ。もうすぐ、終わりますのでヴェルデ様は先に暖をとっててください。あとでガチャ様もお連れします」


「そうか、じゃあ、先に暖をとらせてもらうよ。ガチャ―、しっかりと洗ってもらえよー!」


 岩陰に隠れてて見えないガチャだが、抵抗はしてない様子なので、アスターシアに任せ、俺はトマスが火の番をする焚火に向かった。


「マシになったようだな」


「ああ、酷い目にあった」


 火の番をしていたトマスに応えながら、まだ濡れている装備を焚火の前に並べていく。


「とりあえず、あの宝箱のチェックはしといたぞ。罠はない」


「中身は?」


「まだ見てないさ。お前のものだしな。手助けもできてないオレが、勝手に見るのははばかられる」


「意外と義理堅いやつだな」


「そこまで金に困ってねえってだけだ。ただし、今回の調査依頼を折半……いや2割くれればの話だがなー」


 ああ、そう言えばトマスは調査依頼を受けて、このダンジョンに潜ってたんだった。


 それが突発的なトラブルで、あれよあれよと言う間にBランクダンジョンまで成長してしまった。


 もともとトマスが受けた依頼だし、いろいろと助けてもらったから、3割くらいはとっても問題ない気がする。


「分かった。調査討伐報酬の2割を譲るってところで手を打とう」


「本当にいいのか!? 冗談で言ったんだが!? ほら、キュアポーション代とかもあるしよ」


「いらないならやめとくが――」


「いる! もらうぞ! 2割だからな!」


「おう、2割譲る」


 トマスは思わぬ収入を手にできると知って顔を綻ばせた。


 Bランクダンジョンの調査報酬と討伐報酬合わせるとどれくらいになるか分からんが……。


 総額数千ゴルタくらいにはなるはずだよな。


 ほどほどに実入りはあるはず、それに宝箱の中身次第ではもっと稼げるはずだ。


「とりあえず、宝箱の中身を確認してくる。火の番を引き続き頼む」


「おぅ、いい物が出るといいな!」


「まったくだ」


 俺は岩場にポツンと置かれている金属製の宝箱の前に行き、軽く手を触れ、鑑定する。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 銀の宝箱

 耐久値:300/300

 罠:なし

 状態:無施錠

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 トマスの言った通り罠はなしか。


 施錠されていない宝箱の蓋を開け、中身を確認する。


 小型の弓と短杖が入っていた。


 それぞれ鑑定をする。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 風纏いの短弓

 攻撃力:30+風属性威力20

 属性:風

 特別効果:この弓を使い放った矢に、風属性の攻撃が付与される。

 エンチャント:不可

 解説:風属性を付与された緑色の小型の弓。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 エンチャント装備品だ!


 矢に風属性が付与される弓かー。


 飛んでるやつはだいたい風属性に弱点持ってるし、狙い撃ちして矢で射抜けたら、弱点ダメージが追加されるやつっぽいな。


 基本的な攻撃力は低いけど、飛行系キラーの弓って感じだ。


 ジョブスキルもないし、射撃系スキルはまだ習得してないし、今の俺だと宝の持ち腐れ感が強い武器になりそう。


 次は短杖だが――


 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 魔術師の短杖

 基礎攻撃力:20

 属性:なし

 特別効果:攻撃魔法の魔法威力+15 MP容量+50 打撃攻撃可能

 エンチャント:不可

 解説:魔法の発動を補助する長さ50cmの金属製の杖。片手装備可能。装備者のMPが最大値の場合、杖にMPを50まで貯めることが可能。魔法使用時は杖に貯まった分を優先使用する。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 こっちもエンチャント装備だったか。


 外部タンクとしてMPを貯めておける杖って感じか。


 俺自身のMPが最大値にまで回復すると、装備してれば杖にMP貯まっていくやつみたいだ。


 シャーマンの杖よりか若干魔法の威力も上がるし、MPは心もとなかったので、これは使った方がいい気がする。


 とりあえず、どっちもエンチャント武器だし、大収穫って感じだ。


 宝箱の中身を漁り終え、焚火に戻ると、ガチャたちもやってきた。


「とりあえず、中身はエンチャント武器2つだった。どっちもいいものだと思う」


「ひゅー! さすがBランクの討伐褒賞! 低ランクじゃ滅多に出ないエンチャント武器が2つも出るなんてな! すげーぜ」


「おめでとうございます! これもヴェルデ様のお力のおかげですね!」


 みんなが喜んでいる中、ガチャも俺の膝もとにダイブしてきて喜びをあらわにしてくれた。


 この周辺の村の人たちも魔物の襲撃に晒されずに助かっただろうし、俺たちも稼げたし、探索者冥利に尽きる仕事をした気がする。


 一時はどうなるかと思ったが、何とかなって本当によかった……。


 あとはダンジョンの消滅の確認をして、ホーカム街にことの顛末を伝えないとな。


「さて、ちょっと気が早いかもしれないが、脱出ポータルが開くまでBランクダンジョン討伐祝いでもしようか」


「そうですね! すぐにお食事の支度をします!」


「そういえば、帰還する時間をかなり超えてたな。もう夕方頃か」


 ガチャもお腹が空いていることを思い出したようで、食事の支度を始めたアスターシアの近くに駆け寄り、つまみ食いの準備を始めた。


 それから俺たちはゆっくりと休息と食事をとり、脱出ポータルで外に出ると、ダンジョンの入口が消滅したのを確認し、日が暮れた道をホーカム街へ歩いて戻ることにした。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

処理中です...