俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

文字の大きさ
上 下
69 / 81

第69話 野営

しおりを挟む


「とりあえず野営の準備するから、トマスはここで休んでてくれ」


「お、おぅ……」


 肩に担いでいたトマスを地面に下ろすと、彼は自分でフラフラと歩きながら、崖にもたれかかって座り込んだ。


 脱出の途中で、水分を補給してもらったので、トマスの意識はかなり鮮明になっている。


「それと、これ飲めば身体もマシになる」


 座り込んだトマスへ、残り1本だったキュアポーションを投げて渡した。


「こいつ、高いポーションだろ? いいのか?」


「気にするな。あとで請求する」


「マジか!」


「嘘だ。とりあえず、飲んで休憩してくれ。聞きたいこともあるしな」


「情報代としてこのポーションはもらうぞ」


 ガラス瓶の蓋を外し、中身を飲み干したトマスは安堵したように目を閉じて眠り始めた。


 これでトマスの病気は治癒するはず。


 起きたら飯が食えるよう野営の準備を進めないとな。


 空間収納から野営に必要な道具を取り出し、地面に並べていく。


「ヴェルデ様、わたしは食事の支度をいたします。トマスさんが起きたら食べられそうなものもお作りしますね」


「ああ、頼む。俺はまずダンジョンの入口から魔物が出られないよう障害物を設置してくるよ。ガチャも手伝ってくれ」


 ガチャはレバーを回して応えると、俺の足元に寄ってきた。


 すでに日は暮れており、辺りは漆黒の闇に包まれている。


 早いところ入口を塞がないと、ゆっくり休む時間も取れない。


 何で塞ぐとすると……。


 光球の光が届く範囲で、入り口を塞げそうなものがないかを探した。


 岩を動かすのは厳しいし、強度的には不足するかもしれないが、どかしやすい木材を使った簡易的な柵の方がいいな。


「ガチャ、ちょっと作業するから入口を見ててくれ!」


 頷いたガチャが、レバーを回すと、ダンジョンの入口の前に陣取った。


「何か出てきそうなら、すぐに俺のところに呼びにきてくれよ」


『任せてください!』と言いたげなガチャが、レバーを勢いよく回す。


 ダンジョンの入口付近は入念に魔物退治をしておいたし、成長が速いとはいえ、まだ溢れてこないはずだ。


 ガチャに入口の見張りを頼むと、俺は柵に使うための木材を切り出すことにした。


 意外と太い木が多い。


 この太さだと打ち刀は刃こぼれするだろうし、刃の厚いチャンピオンソードでぶった斬った方がいいよな。


 空間収納からチャンピオンソードを取り出し構えると、力の限り振り抜いて、目標の木を切り倒す。


 よし、切れる。あと10本くらいあれば、柵を作るのには足りるよな。


 切り倒した木をそのままにして、別の木に狙いを付けると、再びチャンピオンソードを振り抜く。


 続けざまに木を切り倒し、必要な木材を確保すると、柵に使えるよう大きさを切り揃え、地面に刺せるよう短剣で先を尖らせた。


 よし、あとは入口の地面に刺して、縄で縛ればある程度の強度を持ってくれるはず。


 加工した木材を持って入口にいくと、中を見守ってくれていたガチャが足もとに寄ってきた。


 魔物は出てきてないようで、異常なしと伝えてくれているようだ。


「よくやった! すぐに柵を立てるからな。ちょっとだけ、待っててくれ」


 材料を地面に置くと、すぐさま作業に入る。


 先を尖らせた木を狭い間隔で地面にしっかりと突き刺し、縄で頑丈に縛り付ける。


 明日も出入りしないといけないから、端の部分は隙間を作りやすくしとくか。


 大きな魔物が一気に外に出れなければいいし、これくらいの隙間だったらゴブリンとかスライムくらいしか這い出てこないはず。


 破壊音がすれば、すぐに駆け付けられるしな。

 
「よし、完成」


 ガチャが出来上がった柵の前を歩き回り、様子を確認していく。


 満足の出来だったのか、俺の方へ振り返り頷き返してくれた。


 どうやら、オッケーみたいだ。


 これでとりあえず、封鎖はできた。


 残った材料は空間収納にしまっておこう。


 片付けを終えると、ガチャを抱え、食事の支度をしているアスターシアのもとに戻る。


「入口は塞げましたか?」


「ああ、塞げた。あれだけしとけば、溢れ出すことはないと思う。それに破壊されたら大きな音がするはずだしな」


「そうですか。ダンジョンの中の魔物も多少排除しましたし、周辺の村の方へ被害が出ないようにはできた感じですね」


「そうだ。俺たちがここで見張りつつ、中の魔物を退治していけば、探索者ギルドから熟練の探索者が送られてくるはず」


 ダンジョンの成長が速いか、討伐できるほどの探索者が集まるのが先かってところだが。


 そろそろ、村の人がリアリーさんに伝えてくれてるはず。


 俺は暗闇に閉ざされた空を見上げた。


「頑張りどころですね。でも、ヴェルデ様の腕前なら、きっと討伐できちゃいそうな気もしますよ」


 アスターシアが料理する手を止めて、ニコリと笑ってくれた。


 そんな実力が俺にあるんだろうか……。


 明らかに今までのダンジョンとは違う強さ。


 複雑なダンジョンだし、罠もあるし、魔物も強い。


 それに最初に攻略したダンジョンクラスのボスが現れれば、倒しきれるか分からない。


「できたらいいな。とりあえず、今は探索調査が先決だ」


「ですね。あ、そうだ! 探索中に言いそびれてしまってたのですが、ガチャ様が2枚ほど金色コインを出しておられました」


 手を布を拭いたアスターシアがポケットから金色コインを2枚差し出してきた。


「探索中に倒した魔物で貯まったやつか」


「はい、トマスさんのことで言いそびれてました」


 たしかに強い魔物ばっかだったから、経験値が貯まってもおかしくないな。


 2枚だけど、少しでも戦う力が向上するなら、使った方がいい。


「ありがたい。早速使わせてもらう。ガチャ、コイン使うぞー!」


 アスターシアの近くでご飯ができるのを待っていたガチャを呼ぶ。


 コインを見たガチャが喜んでレバーを回すと、俺の前に来てきちんと座った。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...