上 下
53 / 81

第53話 調査達成したからボスも狩る

しおりを挟む


 昼食を終え、探索を再開した俺たちは数体の絡み根草を倒したところで、ボス部屋らしい広い空間が見える場所に来た。


 奥に人のような形をした木が立っているのが見える。


「あれがここのボスか……」


「みたいですね。強そうですが、大丈夫でしょうか?」


 黒い板が調査の終了を告げる青い光を発している。


 魔物調査、ダンジョンマップ、魔素濃度の三つが揃ったようで、調査依頼を終えたらしい。


 黒い板の上に脅威度判定はDと浮かんでいるな。


「どうやら、けっこう成長したダンジョンだったらしい。隠蔽されたミミックも脅威度判定を上げた原因かも」


「Dランクのダンジョンですか……。ヴェルデ様なら、倒せそうですが」


 ボス部屋に入ると、倒すまで脱出は不可能になるし、みんなで入らないと脱出用に転移ゲートも使えない。


 ここでダンジョンから引き返して調査依頼達成だけでもいいが。


 ここまで来たら倒したいよな。


「アスターシアとガチャは影潜りの外套で隠れててくれ。あれは、俺が倒す」


「承知しました。ガチャ様、こちらへ」


 アスターシアがガチャを抱き抱えると、外套を被り姿を消す。


 プロテクションシールドもあるし、よっぽどのことがない限り、アスターシアたちまでは攻撃がいかないはずだ。


「よし、行くぞ」


 部屋に入ると入口が消え、奥の人の形をした木がメキメキと音を立てて動き出す。


「愚かな侵入者め。我が領域を犯した者には死を与える」


 木の幹に浮かんだ老人の顔から、敵対的な言葉が吐き出される。


「それはどうかな? 倒されるのはそっちだと思うぞ」


 俺は空間収納からチャンピオンソードを取り出すと、両手にしっかりと持って構えた。


 Dランクのダンジョンのボスだし、最大火力を出せる武器で一気に仕留める。


 地面が抉れたかと思うと、尖った根っこがこちらを狙って飛び出した。


「遠い間合いでもやれるのか!」


 こちらを狙って飛び出した根っこを斬り払う。


 白い樹液が辺りに飛び散ったが、すぐに根っこの先は再生していく。


「たかが養分のニンゲン風情が我を傷付けるとは! 許さぬ!」


 今度は手指らしき枝が伸びて、こちらの心臓を狙ってきた。


 紙一重で枝先を避けると、手で触れ、鑑定を行う。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 エント LV14

 HP250/250

 MP40/40

 攻撃方法:取り込み 再生 消火 枝刺し 根刺し

 弱点属性:炎

 解体時取得物:エントの古木 エントの若芽

 解説:ウィンダミアの樹海の中に出てくる木の魔物。MPを使用して再生をするため、再生能力が高く、耐久度の高い魔物として知られている。炎に弱いが自らの身体に貯め込んだ水で消火するため、水がなくなるまでは弱点化しない。枝や根は攻撃してもダメージ判定なしのため、顔のある本体を攻撃しないといけない。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――


 枝や根を傷付けてもダメージにならず、本体を一撃で葬らないと回復するのうざいな。


 それに消火のせいで、ファイアの連撃押しでやりきれないかもしれない。


 やっぱ物理ごり押しで叩き切るしかないよな……。


 倒す方法を考えてる間も、枝や根がこちらを狙ってドンドンと飛んでくる。


 斬り払っても枝や根は無限再生しそうだぞ。


 このままじゃ、間合いにも飛び込めずじり貧だな。


 プロテクションシールドがぶっ壊れてもいいから、突っ込んで一気に仕留めるしかない。


 俺は飛んでくる枝先と根を斬り払うのをやめ、剣を構えて本体に向かい突撃をする。


 こっちに向かってくる枝や根でシールド耐久値がガンガン削れてるけど、もってくれ!


 あと一歩のところまで近づくと、敵の攻撃を弾いてるプロテクションシールドが弾ける音を発して効果が消えた。


 あと一歩! 行くしかねぇ!


 あと一歩踏み込むため、身体を動かすと、鋭い枝先が頬を掠めて痛みが走る。


「こんなもんじゃ、俺は止められねよ! それで、ここからは俺のターンだ!」


「ニンゲン風情が吠えるな! 串刺しにしてやる!」


 チャンピオンソードが届く間合いの入った俺は、連続攻撃のスキルを発動させた。


 目にもとまらぬ速さで、エントの本体を2回斬りつける。


 本体を傷付けたら、赤い血のような樹液が噴き出した。


「その程度で倒せ――」


「悪いな。もう1ターンある」


 連撃スキルでクールタイムをキャンセルし、再び連続攻撃を本体に打ち込んだ。


 攻撃力の高いチャンピオンソードによる4連続攻撃で沈められないはずがない。


 3回目、4回目の攻撃がさらに大量の樹液を噴き上げた。


「馬鹿な……ニンゲン風情が……」


 大量の樹液を噴き上げたエントは、ボロボロに枯死した木になって絶命した。


 光の玉が発生し、ガチャとアスターシアがいると思われる場所に飛んでいく。


「ふぅ、意外と強かったかもしれない」


 エントを倒し、樹液で濡れた地面に足跡だけが付いて、動くのが見えた。


 影潜りの外套の弱点を見つけてしまったなぁ。


 気配も姿も消せるけど、足跡だけは消せないらしい。


「ヴェルデ様、頬に傷が! すぐに消毒いたしましょう!」


 足跡が俺の前にくると外套の力を解いたアスターシアの顔が現れた。


 既にポーチから消毒液とハンカチを取り出し終えている。


「かすり傷だし、それに魔法で――」


「ちゃんと消毒してから回復魔法をしないと。変な病気になってもいけませんし」


「分かった。じゃあ、頼む。どのみち、転移ゲート出るまで休憩だしな」


「では、濡れてない場所に移動しましょう。ガチャ様の足も汚れてしまいますので」


「ああ、そうだな」


 エントの樹液で濡れていない場所に向かって移動することにした。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

処理中です...