俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

文字の大きさ
上 下
29 / 81

第29話 異世界の和食定食

しおりを挟む

「さぁさぁ、食べて。ガチャちゃんのこっちに用意したからねー。どうぞー」


 テーブルの上にはザ・和食定食とも言うべき食事が並べられている。


 ほかほかの湯気を放つ白いご飯に、具だくさんの味噌汁、肉じゃが、魚の塩焼き、焼きのり、漬物。


 こっちに来る前は、ずっと家に籠ってインスタントラーメンばっかだったし、外食もできなかったしな。


 アスターシアの作ってくれる飯も美味いが、これも美味そうだ。


「ガチャ、アスターシア、頂くとしようか。冷めたらもったいないし」


「そうですね。頂きましょう」


 許可をもらったガチャは、俺の膝から飛び降りると、専用の皿に盛りつけられた柔らかくほぐされたお肉のペーストに顔を突っ込んですでに食べて始めた。


 あったかい白いご飯を手に取り、備え付けの箸ですくうと匂いを嗅ぐ。


 米のいい匂いが食欲をそそるぜ……。


 パンもいいんだが、やっぱ米も食いたいよね。


 米を口に運び、咀嚼すると、甘みがどんどんと増していく。


 美味い米だな……。異世界米、美味すぎだろ!


 米の甘みを噛みしめながら、具だくさんの味噌汁をすする。


 わかめ、豆腐、ネギなんてのもこの異世界では手に入るのかよ。


 日本食を極めようと作物改善に力を注いだ『渡り人』の執念やべーな。


 にくじゃがは人参、玉ねぎ、豚肉か。


 煮崩れしないくらい大きめに切ってあるけど、どれも味がしっかりしてる。


 魚はアジかこれ……。ふっくら、しっとりと焼き上がっているし、大根おろしと醤油のコンボで箸がとまらねえ。


 海苔もパリッとしてるし、大根の漬物もほど塩加減。


 定番だけど飽きない味っぽい。毎日通いたくなるな。


「美味いね」


「はい、とても美味しいですね。わたしもこれくらい美味しい食事を作れるようになりたいです」


 アスターシアも、一口食べては美味しさを感じて、頬を緩めている。


 異世界の和食定食の威力、半端ねえ。


「気に入ってもらえたようね」


 リアリーさんが、すでに自分の食事を完食したガチャを抱えテーブルに座ると、口元の汚れを拭ってくれる。。


「ええ、毎日でも食べたいくらいですよ」


「わたしも料理の勉強をさせてもらいたいくらい美味しいです」


「あらあら、褒めても何も出てこないわよ。ねー、ガチャちゃん」


 口元を綺麗にしてもらったガチャが、レバーを回して喜んでいた。


「あー、そうそう。忘れそうだったけど、旅の中で2人とも探索者志望ってお話をしてたわよね? うちで登録していく? 登録はすぐにでも終わるし。それに宿なら、うちの部屋を提供するわよ。いっぱい空いてるからね」


 リアリーさんの方から探索者登録を切り出された。


 こっちから切り出そうと思ってたから、渡りに船だ。


 どうせ、宿も探す手間も省けるし、飯は美味いしな。


 アスターシアに視線を向けると、了承を示す頷きを返してくる。


「ぜひ、登録させてください。なぁ、アスターシア」


「はい、ぜひ」


 探索者登録をしたいとリアリーさんに申し出たら、周囲のテーブルにいた老人たちが笑い出した。


 なんで笑われる? おかしいことを俺が言ったか?


 アスターシアに視線を向けるが、彼女も笑われた理由が分からないらしく、戸惑っている様子だ。


「にーちゃん、こんな辺鄙な街で探索者なんてやっても儲からねえぞ」


「そうそう、若い連中は、みんな『オッサムの森』でヴェンドの街に出て、そっちで探索者してるしな」


「低レベルなダンジョンしか出ない、このホーカムの街は寂れる一方さ」


 そんなに稼げないのか?


 まぁ、でもしばらくの生活費はあるし、経験を積む意味も含め、ホーカムの街に滞在してダンジョン探索に勤しむつもりだ。


「あの人たちの言うことは、半分当たってるし、半分間違ってるわ。当たっているのは、稼げないってところ。間違っているのは、探索者は身の丈に合わないダンジョンには潜らない方が稼げるってところかしらね」


 リアリーさんは、ガチャの頭を撫でながらが、老人たちが笑った理由の補則をしてくれた。


「稼げないんですか? アスターシアからは探索者は儲かると聞いてますが……」


「低レベルダンジョンが生み出す魔物の素材は単価が低いし、宝箱からはそうそうよい物は出ないでしょうしね。でも、その分確実にダンジョン主を退治して帰還ができる。死んだら終わり。ねー、ガチャちゃん」


 リアリーさんの言う通りだ。


 身の丈に合わないダンジョンに挑んで、死んでしまえば稼げない。


 俺の実力がどれくらいか分からないのに、高ランクダンジョン挑むのは死亡する確率が高くなるよな。


 デキムスたちも撒いたし、俺が『渡り人』だってバレてるわけでもないんだから、ゆっくりと探索者をやればいい。


「リアリーさんのお言葉、心に留めておきますよ。さぁ、登録お願いします!」


「あら、しっかりした子ね。ご両親の教育がよかったのかしら。アスターシアちゃんもいいご主人様に仕えてよかったわね。大事にしてもらいなさい」


「はい、返しきれない御恩を受けておりますので、身も心もヴェルデ様に捧げてお仕えしております!」


 身も心も捧げてはいろいろとこっちも言われてる恥ずかしいのだが……。


 美人のメイドさんを侍らせてる貴族っぽく見えるしさ。


 言葉にオブラートを包んで欲しい気がする。


「うんうん、よい相棒になりそうね。ウェンリー、登録作業するから道具もってきてくれるかしらー」


「はーい、今お持ちしまーす!」


 リアリーさんの呼びかけに返事をしたのは、ギルドの職員らしい制服を着た茶髪の若い女性だ。


 魔道具らしき品を抱えて、俺たちのテーブルの前に駆け込んできた。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

処理中です...