俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

文字の大きさ
27 / 81

第27話 門出

しおりを挟む

 路地裏からメインストリートに出ると、駅馬車の停留所がある門の近くへ戻っていく。


 停留所には駅馬車を待っている数名の男女の姿が見えた。


「ヴェルデ様、切符はわたしが購入してまいりますので、ここでガチャ様とお待ちください」


「ああ、分かった。悪いが任せるぞ。ガチャ、こっちにこい」


 周囲の人に興味を持ってフラフラしていたガチャだったが、アスターシアと入れ替わるように俺の声に反応し駆けてきた。


「あら、賢い子。その子は訓練された探索犬なのね」


 近くにいる大きな荷物袋を足元に置いた白髪の老婦人が、ガチャの姿を見て目を細めた。


「ええ、そうです。ガチャはとっても賢いんですよ。ほら、挨拶してあげて」


 ガチャは老婦人に向かい、レバーをゆっくりと回した。


「まぁ、可愛らしいこと。賢いだけでなく、可愛らしいとなると、貴方がその子に夢中なのも分かるわ」


 ガチャは老婦人に興味を持ったのか、彼女の足元をうろうろし始めた。


「ちょっと、ガチャちゃんを抱いてみてもよいかしらね?」


「ええ、ガチャも興味を持ってみたいですし、問題ありませんよ。なぁ、ガチャ」


 足元をうろうろしていたガチャが、レバーを回して『問題ない』と応える。


 老婦人はガチャを抱え上げると、モフモフを堪能している様子だ。


「ほんとに大人しい子ね。ふわふわの毛もよくお手入れされるし」


 身体を撫でてもらってガチャも嬉しそうにしてるな。


 まぁ、ガチャは最高にカワイイ相棒だから、誰から好かれるのはしょうがない。


 もっと褒めてやっていいんですよ。


 相棒を褒めてもらって思わず頬が緩むのが抑えられなかった。


「ところで、貴方はホーカムの街に行くのかしら?」


「ええ、そのつもりです」


「あら、そうなの。その格好だと貴族様のご子息かと思ってたのだけど」


「家名はありますが、次男の私が領地を継げるほど裕福な貴族ではありませんので……。家を継ぐ兄に子が生まれ、予備として修行に明け暮れていた俺は晴れてお役御免です」


 事前にアスターシアと話し合っていた設定を老婦人に喋った。


 今のところ不審がられている様子は見えないな。


 やっぱり容姿の影響が強いんだろう。


 黒髪は『渡り人』かその末裔って思われるらしいしな。


「まぁ、まぁ、それは大変ね。なにか生活のあてはあるのかしら? ほら、さっきのメイドの子も面倒を見ないといけないんでしょ?」


 ガチャを抱いて撫でている老婦人が、心配そうな顔でこちらを見てくる。


「ええ、まぁ。彼女には身の回りの世話をしてもらってますからね」


「家を出された貴方に付いてきてくれた子なんだから、しっかりと面倒を見てあげないとダメよ」


「はい、十分に理解しております。彼女の助けがなければ俺は生活もままならないですしね。幸いにして子供の時から剣と魔法の修行をさせてもらいましたので、のんびり探索者でもやろうかなと思ってます」


「なるほど。『オッサムの森』はダンジョンのランクも高いし、ホーカムの街の低ランクダンジョンから、探索者を始めるつもりなのね。いい判断だと思うわ」


 俺の答えを聞いた老婦人は、ニコリと微笑んだ。


 ふむ、ホーカムの街の方が低ランクなダンジョンが発生するのか。


 さすがにアスターシアも一緒に潜ることになるだろうし、ゴブリンチャンピオンとか出てこないダンジョンの方がいいな。


 老婦人の言った通り、ホーカムの街で探索者になって少し資金とダンジョン探索の経験を稼いだ方がいいかもしれん。


「ヴェルデ様、切符を購入してきました」


 老婦人と話していたら、アスターシアが戻って来た。


「すみませんね。貴方のご主人様が、話しかけやすい方だったし、ガチャちゃんが可愛かったのでついつい長話を」


「えーっとこちらは?」


 アスターシアが困惑した顔をこちらに向けてくる。


 そう言えば名前聞いてないや。


「私はリアリー。ホーカムの街でちょっとした店をやってるの」


「そうでしたか。わたしはアスターシアと申します。わが主、ヴェルデ様のメイドをしております。同じ駅馬車になりそうですので、これも何かのご縁ですね」


「そうね。ガチャちゃんの繋いでくれた縁かしら」


 リアリーさんは相当ガチャが気に入ったようだな。


 旅は道連れって言うけど、リアリーさんも一緒の駅馬車っぽいし、ホーカムの街まで、世間話をする相手には困らなそうだ。


 ガチャもリアリーさんのことを気に入って喜んでるみたいだし。


 この世界、悪い人ばかりってわけでもなさそうでよかったぜ。


「あらあら、どうやら早めに駅馬車が来たみたいよ」


 門の方へ視線を向けると、10人ほどが乗れる4頭引きの大型馬車が入ってくる――。


 同時に馬車の隣に、怒気を前面に見せたデキムスと下着姿の仲間2人の姿が見えた。


 あいつら、追いつきやがった。衛兵となにか喋ってるみたいだな。


 アスターシアも気付いたようで、意識しないようチラ見をしている。


「早いところ駅馬車に荷物を積まないといけませんね。リアリ―さんの荷物は俺が持ちますよ。その代わり、ガチャをよろしくお願いしますね」


「え? ええ、それでいいのかしら? 私は楽できるからいいのだけど」


「ヴェルデ様は鍛えておりますので問題ありません」


 一刻でも早くここを離れたい俺とアスターシアは、リアリーさんの荷物と一緒に停留所に停車した駅馬車に近づいた。


 乗ってきた人たちが全員下車したのを待ち、駅馬車が空になると一番で御者にリアリ―さんの荷物を渡す。


 すでにガチャとアスターシアは、リアリーさんと一緒に駅馬車の座席を確保してくれているようだ。


 気になったので、デキムスたちがいた門の入口に視線を向けるが、すでに彼らの姿がなかった。


「おい、お前!」


 背後から聞き覚えのある声かけられ、心臓が止まりそうになる。


 呼吸を整え、ゆっくりと背後に振り返ると、デキムスの姿がそこにあった。


「何か俺に用ですか?」


「この辺で真っ黒な外套を着込んだ男と、ボサボサな茶髪をした大柄な老いぼれを見なかったか? あと、小型の探索犬連れてるはずだ。頭がピンクの毛をした目立つやつだ!」


 デキムスは俺のことに全然気づいてないようだ。


 さすが偽りの仮面で顔の造形も変わって、声質も若干違ってるし、あの時の『渡り人』って分るわけないか。


 こちらの存在がデキムスにバレてないことを確認したため、落ち着いて相手の様子を観察することができた。


 それにしても、俺たちのことめっちゃ必死に探してるな。


 まぁ、荷物を丸ごと盗まれたうえ、仲間の装備まで剥ぎ取られたから怒るのは分かるが。


 こっちも殺されたくないんでね。


「ああ、見かけましたよ。たしか、この街の探索者ギルドですれ違った気がしますね」


「何! 本当か! すまない情報提供助かる! お前ら、行くぞ! 探索者ギルドだ!」


 デキムスは仲間2人引き連れると、メインストリートを疾走していった。


 あばよ! 明日見碧は、もうこの異世界ウィンダミアには存在してないからな。頑張って探してくれ!


 デキムスたちの姿を見送ると、俺は駅馬車の中に入り、アスターシアが取ってくれた隣の席に腰を下ろした。


「物騒な世の中だな。追いはぎにでもあったのかな?」


 俺の言葉にアスターシアがクスリと笑みを浮かべる。


「そうですね。笑ってはいけないとは思いましたが、お仲間の格好を見て我慢できませんでした」


「この国もいろいろと物騒だからねぇ……。まったく、もう少し治安を良くしてほしいところだね。ねー、ガチャちゃん」


 リアリーさんに同意を求められたガチャが、彼女の膝の上で頷いている。


 まったくだ。治安のいいところでまったりと探索者生活して金を稼ぎたい。


「これより、ホーカムの街に向け出発いたします。到着は3日後、途中、2つほど村に寄りますので食料等は各自で準備お願いしますね」


 護衛らしい男が室内の客に旅程の説明をしていく。


 3日の馬車旅か。それもまた異世界っぽくて楽しいだろな。どんな景色が見えるんだろうか。


 上手く追手を撒いたことと、これから始まる旅に俺の心は沸き立った。


 護衛がドアを閉めると、御者の鞭がうなり、馬車がゆっくりと動き出す。


 さって、これから俺の異世界サバイバルがようやく始まるって感じだな。


 馬車は速度を上げ、『オッサムの森』の近くにあったヴェンドの街がどんどんと小さくなっていった。



――――――――――――――――

導入部が終わりました。探索パートが始まります
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

処理中です...