上 下
17 / 81

第17話 俺って異世界転移しちゃいました?

しおりを挟む
「それにしても、この辺では見ない髪色だが何者だ? 異国の者か?」


 革の水筒をくれた猟師は、こちらの素性を確かめようとする視線を向ける。


「名はアオイ。生まれはこの国ではないところですね。旅の途中でこの森に迷い込んでしまいました」


 俺はこの場にいたことに対する適当な理由を話し、日本人であることは伏せ、名を答えた。


 いい人っぽいけど、相手の態度の判断が付かない以上、うかつなことは言えない。


「異国からの旅人アオイか。わしはデキムスだ」


 デキムスと名乗った男からは、こちらの素性を見極めようとする視線が崩れずに注がれている。


 これって、俺のことを怪しまれてますかね?


 怪しい異国人がいたら、俺でも警戒心は抱く。


 デキムスさんもこちらが敵か味方かを探っているのだろう。


 こっちから友好的な態度を示した方がいいかもしれん。


「ところで、この近くに洞窟型のダンジョンが発生していたと思うのだが、アオイは見なかったか?」


 こちらを探る視線をしたまま、デキムスさんがダンジョンについて聞いてきた。


 デキムスさんが言ってる洞窟型のダンジョンって、きっと俺が目覚めたあの場所のことだよな。


 ダンジョンの主っぽいゴブリンチャンピョンを倒したら、消えちゃいましたとか言うとマズいか。


「俺はこの国には来たばかりで、分からないことが多いんです。そのダンジョンってなんです?」


「異国にはダンジョンがないのか? このウィンダミアに漂う魔素が凝縮して自然発生する異空間とも言うべきダンジョンが?」


 この世界、ダンジョンって当たり前に存在するものなのか!?


 って言うか、この世界ウィンダミアって名前なんだな! 俺が寝落ちする前のPCモニターに表示されてた怪しいゲームのと同じ名前だ!


「えっと、母国にも似た物はあったかもしれないけど、ダンジョンという名称ではなかったような」


 相手に不審がられないよう、ダンジョンについて知らなかったことを誤魔化した。


 デキムスさんの探るような視線の厳しさが増す。


「それはおかしな話だ。異国であったとしてもウィンダミアであれば、統一ダンジョン管理協会や探索者ギルドが同じ名称を使っているはず」


 はっ!? そんなことになってるの知らねーし! もしかして、こっちの素性が疑われてる!?


「アオイはまさか……。『渡り人』か? ダンジョンを知らぬことも、その黒い髪色も『渡り人』なら説明がつくが……。まさかな……あれは稀人のはずだ。いや、でもA級以上のダンジョンは可能性がゼロではないし」


 こちらを探るような視線を崩さないデキムスさんが発した『渡り人』の言葉が気になった。


 洞窟の中で目覚めた時から、ずっと俺の夢の中だと思っていたが――。


 その一方で、痛みや空腹感があったため、異世界転移してるのではとも思う気持ちも少しだけあった。


 でも異世界転移なんてあり得ないと思う気持ちの方が、今まで強かったわけだけども。


 デキムスさんの言う『渡り人』が、『異世界転移者』って意味だったら……。


 腕を組み考え込む様子を見せるデキムスさんが、チラチラとこちらを見てはぶつぶつと独り言を言う。


 思い切って聞いてみるしかないよな。


 このまま誤魔化していくと、さらに怪しまれるだろうし。


「先ほど口にした『渡り人』ってどういう意味ですか?」


『渡り人』について質問したら、こちらの素性を怪しんでいるデキムスさんの顔に険しさが増す。


「『渡り人』も知らんのか? 魔素が強い場所で発生した強力なダンジョンが、異世界の人間をこのウィンダミアに召喚するのだ。その召喚された人間を『渡り人』と呼んでおる」


 異世界人!? って、やっぱりここは俺の夢じゃないってことか!?


 俺の夢ではない方の可能性が、急に強まってきたな。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。 ※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。 ※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。 俺の名はグレイズ。 鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。 ジョブは商人だ。 そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。 だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。 そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。 理由は『巷で流行している』かららしい。 そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。 まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。 まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。 表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。 そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。 一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。 俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。 その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。 本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

処理中です...