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第1話 終わらない仕事
しおりを挟む俺は明日見 碧
日本の企業に勤める、社畜5年生の28歳、独身だ。
学生時代はそれこそ一日中オンラインゲームに明け暮れた廃人ゲーマーだったが、今は仕事に追われてずいぶんとご無沙汰だった。
感染症のおかげで、数年前には夢物語だったリモート勤務が当たり前になった今のご時世。
在宅勤務での月のサビ残100時間など少ないくらい。
勤怠管理は改竄だらけで給料も増えず、労基署が入れば一発で会社が潰れるレベルだ。
俺が勤める会社は――いわゆる、超ブラック企業というやつである。
「ふぅ、マジで終わんねぇ……。誰だよ、こんな無茶な納期で仕事とってきたやつ。あーマジ、クソ案件だわ」
時刻は深夜二時すぎ。
灰色のスエットに、足つぼを押してくれるサンダルを履きながら、自宅の机に座ってリモートで会社のサーバーに繋いでいるPCで仕事をしている。
いつものごとく1人でやるにはおかしい作業量なわけだが……。
無能な営業担当者にぶーたれながら、プレゼン用の資料を作っていると、PCの画面が突然切り替わった。
モニターには、ゲームのログイン画面っぽいページが表示され、そこにこう書かれている。
―――――――――――――――――――――――――
異世界ウィンダミアで、ストレスフリーな冒険者生活を送ってみませんか?
今ならなんと初心者優遇キャンペーン中! 『SSR確定ガチャ』付きとなっております!
――――――――――――――――――――――――――
「ん? ……何だこれ。ゲームの勧誘か?」
ただでさえ仕事で人生が圧し潰されそうなのに、ゲームする時間なんか捻出できねぇっての。
でも、久しぶりにオンラインゲームとかやりてぇな……。
時間を忘れてのめり込んだ学生時代を思い出しちまったぜ。
って、こんなのに時間を取られる暇はなかった。
削除ボタンはどこだ? ない、見当たらないぞ。
明日の朝までにプレゼン用の資料を作らないといけないのに……。
「ちっ、なんだコレ。社内クラウド経由で勧誘してくるって怪しさ全開だろ!?」
消えない表示にイラついた俺は、間違ってクリックを押してしまった。
「やっば、クリックしちまった。ウィルスとかだったらマジでめんどくせー」
クリックすると、画面が再び切り替わる。
―――――――――――――――――――――――――――
召喚ご承諾ありがとうございます!
ようこそ、異世界ウィンダミアへ!
すぐにご召喚準備を開始します!
――――――――――――――――――――――――――
お、おいなんだコレ! キャンセルできねぇぞ!
モニター映し出された文字に慌てた俺はキャンセルを試みた。
だが、キャンセルできそうなボタンは一向に見つからない。
くっそ、プレゼン資料の保存してねえが、怪しいプログラムに乗っ取られる前に電源落とすしかねぇ。
仕方なしに保存してないプレゼン資料をあきらめ、強制的に電源の再起動をかけた。
その瞬間、俺の視界は真っ白な光に包まれ始める。
―――立ち眩み? 睡眠不足だとはおもってたが……なんでこんな時に――
そこで俺の意識はプツリと途切れた。
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