200 / 232
王都編 グレイズ、冒険者ギルドに喧嘩を売る
3
しおりを挟む「ハリアー殿! ここは往来である! 話の続きは冒険者ギルド本部しましょう!」
俺とハリアーが揉めていたことで、人が集まり始めていたが、ジェネシスたちが来たことでさらに人が集まり始めていた。
「グレイズさん、オレがまだあの野郎をカタにはめてないっすよっ!」
「ジェネシス、お前も王様なんだから往来で喧嘩はするんじゃない」
ハリアーはまだ冒険者姿のジェネシスのことを王様だと認識してないため、怪訝そうにこちらを見ていた。
「お前ら、コソコソと喋りおって……だが、確かに人に見られるのはマズいな。私は先に冒険者ギルドの本部に行くから、お前らもすぐに出頭するように!!」
ハリアーはそれだけ言い捨てると、怪我から回復していた御者を蹴飛ばし、馬車を走らせ駆け去っていった。
俺たちはそのあまりに素早い動きについていけず、置いてけぼりにされていた。
「あの野郎、尻尾を撒いて逃げ出しやがった。ぜってーカタにはめてやるからな」
「へ、陛下。ど、どうかお怒りをお鎮めください。ぼ、冒険者ギルドとの本格的な抗争はなにとぞご容赦を!」
やりとりを見ていたアルマが蒼白は顔色をしてジェネシスに謝罪をしていた。
この国のトップであるジェネシスと、自分の所属する組織のトップが喧嘩して混乱が生じることを案じているようだ。
「いや、アルマさん無理っす。オレも売られた喧嘩は買う主義なんで、あのハリアーってやつはきっちりとやらさせてもらいますよ」
すっかりヤル気モードに入ったジェネシスであった。
「ジェネシス……俺もあのハリアーってやつは組織のトップに座る器じゃないとは思うが……喧嘩はいかんぞ、喧嘩は……」
「いやだなぁ、直接的な喧嘩なんてガキ臭いことなんてしませんよー。オレはきっちりとカタにはめるって言っただけっすからねー」
俺からの視線を、ジェネシスは避けた。
きっと直接的な喧嘩をする気だったと思われる。
いかんとは言わないが、身分を考えて行動する癖をつけて欲しいところだ。
ジェネシスが意識するしないを別にして、修行期間が終われば周りからは王様という肩書き見られる。
あたり構わずに気に入らない者へ喧嘩を売りまくれば、悪王のレッテルを貼られかねない。
修行期間中の後見人としては、ジェネシスの良いところは伸ばし、悪いところを目立たなくしてやりたいと思っているため忠告をする。
「ジェネシス……王様ってのは、みんなから慕われる存在じゃないとすぐにその座を奪われるもんだ。だから、自重に自重を重ね、検討に検討を重ね、喧嘩というのは最後の最後にするもんだ。お前は頭がいいから俺の言いたいことが分るよな?」
俺からの忠告にジェネシスが神妙な頷いていた。
「分かってますよ。グレイズさんと姉さんの子に国を継がせるまで王座から放逐されるわけにはいかないからね。出発前にヨシュアに頼んで仕込んでおいたあのクソハリアーを追い落とす算段は結構進んでますから」
出発時点って……そんな段階から仕込んでたとは……。
ジェネシスの底知れない遠謀を聞かされ心底おどろいていた。
「…………マジか…‥……」
「冒険者ギルド内の王国否定派はオレにとっては敵ですからね。ちょちょいと内部抗争を煽って火種に火を付けてるところっす。本部の強圧的な指示に反発しているギルド支部も結構あるんすよ。大きなダンジョン都市ほどね」
ジェネシスはニヤリと笑う。
現執行部体制に不満のあるギルドマスターたちを焚きつけていると自供していた。
「あら、さすがジェネシス君ね。これはいい商機になりそうな気がするわ」
メリーが手をワキワキとさせて、にやけていた。
商売の匂いが感じ取れたのか、メリーの目が光り輝いている。
と同時にセーラも同じ目をしていた。
「メリーさん、この件を利用してうちの会社の王都での取引先増やせますかね」
「そうね。きっと、脈がありそうなところリストアップしとかないと」
「お、おい。メリー……俺たちは商談に来たわけじゃ……」
ジェネシスから、冒険者ギルド本部への揺さぶりを聞いたメリーたちが色めき立っていた。
その様子を見ていたアルマがそっと呟く。
「……ギルド本部が揺らぐ……ここはグレイズさんが陣頭指揮をとって反王国否定派のトップに座ってもらえば……冒険者ギルド本部の一角に座れるかも……そうなれば、色々と改革も……」
ア、アルマ……何かを企んでいそうな顔だぞ。
仮にも君は冒険者ギルド側の職員だろ。
「グレイズ様が冒険者ギルド本部のギルドマスターというのもいい案かもしれませんね。ブラックミルズは上手くいっているし、他の支部も真似したいだろうし」
メラニアや……話をややこしくしてはいかんぞ。
俺は一介の冒険者でギルドマスターはおまけの仕事でしかないぞ。
「グレイズさん、また偉くなるのー。ファーマも応援すればいいかなー」
「グレイズ、やれる男。偉くなるなら応援するのが妻の仕事」
「そうですね。私たちにできることがあれば、お手伝いしないと」
ファーマやカーラ、アウリースまでやる気をみせていた。
「冒険者ギルドも少し組織が巨大化しすぎてますからね。ここらでちょっと揺さぶりかけてスリム化させないとって思ってる次第です。グレイズさんには相応のポストも用意してますからご安心を」
ジェネシスが『してやったり』という顔をしてこちらを見ていた。
護衛目的で付いてきたのだとばかり思っていたが、もしかしたら今回の件を利用して肥大化していた冒険者ギルドの組織にメスを入れる考えだったかもしれない。
なんだか、王都がきな臭くなりそうな気しかしない……。
俺はわいわいと盛り上がっているみんなを見てため息を吐くしかなかった。
0
お気に入りに追加
9,222
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。