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王都編 ジェネシス、王都に帰る
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「うぁああ! ここが王都の正門入り口なんだねー。ブラックミルズの何十倍も大きな門があるー」
「ふむ、これが王都。さすが、人の集まる場所、大きい街」
「凄いですね。私は片田舎出身なんでブラックミルズでも人が多いと思いましたが、王都はもっと多かったですね」
馬車に同乗しているファーマ、カーラ、アウリースの三人が辺りをキョロキョロと眺めては感嘆の声を上げている。
目の前には大きな彫像が並べられた壮麗で巨大な石造りの城壁が並んでおり、鋼鉄製の重厚な扉の前には王都に入ろうとする馬車や人が列をなしていた。
「グレイズさん、冒険者ギルドの関係者はこっちですー」
先行するアルマたちが右端に作られた冒険者ギルド専用の入り口へと向かい誘導してくれていた。
「グレイズさん、王専用の通用口が門の中央にあるんで、そこ通っていいっすよ。ほら、ここに王様いるし、帰ってきたことをサイアスに伝えないと」
御者席の後ろに控えていたジェネシスが冒険者ギルド専門の入口へ行こうとする馬車の手綱を中央に引き寄せていた。
「お、おい。お忍びの帰還じゃないのか?」
「違いますよー。サイアスに結婚相手を見つけたって報告しに帰ってきたんすよー。いや、三人まで絞るのに苦労したなー。ヨシュアのとこの子、かわいすぎっすよー」
温泉街での出来事以降、ジェネシスは宿を取るたびに姿を消していたので、色々と気になっていた。
どうやら、ヨシュアの一族の娘たちに手玉に取られて結婚を決意したらしい。
国王として血を残してもらうためには良いことである。
「そういうことか……サイアスのやつの血圧がまた上がるだろうな……王様が勝手に嫁連れてきたら……」
「そういうことなんで、中央から行きましょう。アルマさんたちにも合図を送ってください」
「わふうう(あたしがメリーさんに思念会話を送りますねー。ジェネシス陛下の意向で中央入り口から行くってー)」
荷台で丸くなっていたハクが、先行するアルマの馬車に乗っているメリーへ思念会話を飛ばしてくれていた。
しばらくしてアルマの馬車が中央寄りの入り口に向きを変えた。
そして、中央の入り口に近づくと、衛兵たちがワラワラと近寄ってきた。
「おいっ! ここは王族専用の入り口であるぞ! このような場所に冒険者ギルドの馬車を止めるではない!!」
金属鎧に身を包んだいかついおっさんの衛兵が、アルマの馬車と俺の馬車を止めさせると、大きな声で別の場所に行けと言っていた。
男の背後には十数人の衛兵が駆け付け、俺たちの馬車を入り口からどかすようにと喚き立てていた。
「おーい、ジェネシス。通してもらえないぞ。お前本当に王様だろうな?」
俺の背後に座っていたジェネシスに軽口を叩く。
「嫌だなー。グレイズさん、オレはちゃんと王様っすよー。グレイズさんと姉上の子供が生まれるまでね。ちょっとどいてもらえますか」
ジェネシスが背後からごそごそと御者席に這い出てくると、衛兵の前に降り立った。
「なんだ、お前……。ここは王族専用だから、早くあの場所をどかせ」
いかつい男は衛兵を束ねる隊長らしく、降り立ったジェネシスを小突くと早く馬車をどかすようにとせっついていた。
「あ、おい。そいつは……」
ジェネシスが兜をかぶったままの冒険者風の格好をしているため、衛兵の隊長は彼の正体に気付いていない様子である。
場所が場所なら、王を小突いた隊長の首が飛んでもおかしくない。
「ほほぅ、ここは王族専用だったか……なら、問題あるまい……」
「な、なにを言っている! 小僧!」
ジェネシスが被っていた兜を空中に投げ捨てた。
ジェネシスの顔を見た隊長の顔色が蒼白に染まっていった。
「…………!? へ、陛下っ!! へ、陛下がなぜこのような格好をされて!?」
「姉上であるブラックミルズ公爵が婚約者をご両親に合わせに来たのだ。余はその付き添いとサイアス宰相に結婚の報告に来たのだ。通っても問題はあるか?」
こういった悪戯が好きなのがジェネシスの一番悪い癖だと思われる。
話を聞いた隊長が腰を抜かしへたり込む。
「通ってよいか? それとも余は王族ではなかったのであろうか? どっちだ?」
「ひっ!? ど、どうぞ! お通りくださいませ! サイアス宰相閣下にはすぐに連絡を送ります!! おい、はやく近衛騎士団にも連絡しろ! 陛下が帰還された」
腰を抜かした隊長が、部下たちに向けてすぐに動くようにと指示を下していく。
ジェネシスは王とはいえ、国政はサイアスに代行を任せ、現状ではブラックミルズで姉であるメラニアのもとで遊学中の身の上である。
事前の連絡もなしに帰ってくるとは思ってなかったようで、衛兵たちはとても慌てていた。
「へ、陛下! すぐに近衛騎士団の護衛が来られますので、しばらくここでお待ちください!」
「よい、護衛はグレイズ殿がおられるから要らぬ。道だけ開けよ」
それだけ言うと、ジェネシスは投げ飛ばした兜をそそくさと拾い、馬車に戻ってきた。
「これで、通行オッケーすよ」
「お前なぁ……。もう少し王様らしく部下に恥をかかせないようにしてやる配慮をしてやれよ」
「大丈夫っす。若気の至りで済ませるつもりなんで、姉上のところの遊学終えたら、二人の子供が成人するまでオレはクッソ真面目な王様するつもりなんで」
頭は非常に切れる男であることを知っているだけに、ジェネシスの悪戯が計算されつくした物だとは思っていた。
本人も遊学を終えて、王都に正式に戻ったら真面目にやると言っているので、お小言はあまり言わないでやろう。
俺たちは慌てる衛兵たちを余所に、王族専用の入り口を抜けて王都の中へと入っていた。
ーーーーーーーーーーーー
おっさん商人二巻も来週末くらいには発売してるかと思いますので、ご予約や店頭でのお買い求めして頂けると幸いです。書影はきっと来週には公開されるはず。
「ふむ、これが王都。さすが、人の集まる場所、大きい街」
「凄いですね。私は片田舎出身なんでブラックミルズでも人が多いと思いましたが、王都はもっと多かったですね」
馬車に同乗しているファーマ、カーラ、アウリースの三人が辺りをキョロキョロと眺めては感嘆の声を上げている。
目の前には大きな彫像が並べられた壮麗で巨大な石造りの城壁が並んでおり、鋼鉄製の重厚な扉の前には王都に入ろうとする馬車や人が列をなしていた。
「グレイズさん、冒険者ギルドの関係者はこっちですー」
先行するアルマたちが右端に作られた冒険者ギルド専用の入り口へと向かい誘導してくれていた。
「グレイズさん、王専用の通用口が門の中央にあるんで、そこ通っていいっすよ。ほら、ここに王様いるし、帰ってきたことをサイアスに伝えないと」
御者席の後ろに控えていたジェネシスが冒険者ギルド専門の入口へ行こうとする馬車の手綱を中央に引き寄せていた。
「お、おい。お忍びの帰還じゃないのか?」
「違いますよー。サイアスに結婚相手を見つけたって報告しに帰ってきたんすよー。いや、三人まで絞るのに苦労したなー。ヨシュアのとこの子、かわいすぎっすよー」
温泉街での出来事以降、ジェネシスは宿を取るたびに姿を消していたので、色々と気になっていた。
どうやら、ヨシュアの一族の娘たちに手玉に取られて結婚を決意したらしい。
国王として血を残してもらうためには良いことである。
「そういうことか……サイアスのやつの血圧がまた上がるだろうな……王様が勝手に嫁連れてきたら……」
「そういうことなんで、中央から行きましょう。アルマさんたちにも合図を送ってください」
「わふうう(あたしがメリーさんに思念会話を送りますねー。ジェネシス陛下の意向で中央入り口から行くってー)」
荷台で丸くなっていたハクが、先行するアルマの馬車に乗っているメリーへ思念会話を飛ばしてくれていた。
しばらくしてアルマの馬車が中央寄りの入り口に向きを変えた。
そして、中央の入り口に近づくと、衛兵たちがワラワラと近寄ってきた。
「おいっ! ここは王族専用の入り口であるぞ! このような場所に冒険者ギルドの馬車を止めるではない!!」
金属鎧に身を包んだいかついおっさんの衛兵が、アルマの馬車と俺の馬車を止めさせると、大きな声で別の場所に行けと言っていた。
男の背後には十数人の衛兵が駆け付け、俺たちの馬車を入り口からどかすようにと喚き立てていた。
「おーい、ジェネシス。通してもらえないぞ。お前本当に王様だろうな?」
俺の背後に座っていたジェネシスに軽口を叩く。
「嫌だなー。グレイズさん、オレはちゃんと王様っすよー。グレイズさんと姉上の子供が生まれるまでね。ちょっとどいてもらえますか」
ジェネシスが背後からごそごそと御者席に這い出てくると、衛兵の前に降り立った。
「なんだ、お前……。ここは王族専用だから、早くあの場所をどかせ」
いかつい男は衛兵を束ねる隊長らしく、降り立ったジェネシスを小突くと早く馬車をどかすようにとせっついていた。
「あ、おい。そいつは……」
ジェネシスが兜をかぶったままの冒険者風の格好をしているため、衛兵の隊長は彼の正体に気付いていない様子である。
場所が場所なら、王を小突いた隊長の首が飛んでもおかしくない。
「ほほぅ、ここは王族専用だったか……なら、問題あるまい……」
「な、なにを言っている! 小僧!」
ジェネシスが被っていた兜を空中に投げ捨てた。
ジェネシスの顔を見た隊長の顔色が蒼白に染まっていった。
「…………!? へ、陛下っ!! へ、陛下がなぜこのような格好をされて!?」
「姉上であるブラックミルズ公爵が婚約者をご両親に合わせに来たのだ。余はその付き添いとサイアス宰相に結婚の報告に来たのだ。通っても問題はあるか?」
こういった悪戯が好きなのがジェネシスの一番悪い癖だと思われる。
話を聞いた隊長が腰を抜かしへたり込む。
「通ってよいか? それとも余は王族ではなかったのであろうか? どっちだ?」
「ひっ!? ど、どうぞ! お通りくださいませ! サイアス宰相閣下にはすぐに連絡を送ります!! おい、はやく近衛騎士団にも連絡しろ! 陛下が帰還された」
腰を抜かした隊長が、部下たちに向けてすぐに動くようにと指示を下していく。
ジェネシスは王とはいえ、国政はサイアスに代行を任せ、現状ではブラックミルズで姉であるメラニアのもとで遊学中の身の上である。
事前の連絡もなしに帰ってくるとは思ってなかったようで、衛兵たちはとても慌てていた。
「へ、陛下! すぐに近衛騎士団の護衛が来られますので、しばらくここでお待ちください!」
「よい、護衛はグレイズ殿がおられるから要らぬ。道だけ開けよ」
それだけ言うと、ジェネシスは投げ飛ばした兜をそそくさと拾い、馬車に戻ってきた。
「これで、通行オッケーすよ」
「お前なぁ……。もう少し王様らしく部下に恥をかかせないようにしてやる配慮をしてやれよ」
「大丈夫っす。若気の至りで済ませるつもりなんで、姉上のところの遊学終えたら、二人の子供が成人するまでオレはクッソ真面目な王様するつもりなんで」
頭は非常に切れる男であることを知っているだけに、ジェネシスの悪戯が計算されつくした物だとは思っていた。
本人も遊学を終えて、王都に正式に戻ったら真面目にやると言っているので、お小言はあまり言わないでやろう。
俺たちは慌てる衛兵たちを余所に、王族専用の入り口を抜けて王都の中へと入っていた。
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