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日常編 温泉街
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ブラックミルズの街から旅立った俺たちは、荷台の馬車に分乗して、穏やかな馬車旅を続けていた。
「うわっぁああっ! グレイズさんっ! あの山おっきいよぉおおっ! ファーマ、初めて見たー! ハクちゃんも見て見てー!」
御者をしている俺の隣でファーマが横目に見える山並みを見て驚いていた。
「わふぅう(ファーマちゃん、はしゃぐと馬車から落ちますよ)」
一緒にいたハクがファーマの服を噛んで落ちないように踏ん張っている。
「あれはきっとバナウェア山だろうな。俺もブラックミルズから出たことないが、この世界で一番デカイ山のことは聞いたことあるぞ。なんでも、アクセルリオン神が最初に降り立った山らしいけどな」
「わふぅうう(ああ、そう言えばそうでしたねぇ。懐かしい話です。実は力の使い方が分からなくてモリモリと土地をかさ上げしたら、トンデモナイ高さになっちゃったなんて言えない話しですからねー)」
ハクがアクセルリオン神のトンデモナイ失敗談の暴露話をしていた。
あの幼女女神も初めから立派な神様だったわけじゃないってことだな。
あー、これはいい話を聞いた。
今度、俺に対してちょっかいをかけてきたら、こっちもこの話で茶化してやることにしよう。
「そうか、あの女神様も元は人間だって言ってたからな。これは、ハクからいい話が聞けたぞ。旅はしてみるものだな」
「わふぅううっ! (この話をあたしがグレイズ殿に喋ったことをアクセルリオン神様には内緒してくださいねっ! あたしが怒られますからっ!)」
ファーマが落ちそうになったところを支えていたハクが焦っているのが見えた。
「へぇ、そんな話があったのですねー。確か、『神様に一番近い場所』っていうことで神殿の聖地に指定されていたと聞いたことがありますが、そんな裏話があったのですね」
「神の聖地は神の失敗の跡地。これは興味深い」
荷馬車の奥で休んでいたアウリースもカーラも、ハクの話が聞こえたらしく、荷馬車から出てきて山の方を見ていた。
先行するもう一台の方に乗っているメリー、アルマ、セーラ、メラニア、クイーンも同様にハクの話が聞こえたバナウェア山を指差している。
「わふぅううっ! (内緒! 内緒ですからぁっ! アクセルリオン神は結構繊細なんですから失敗したとか弄ったらキレちゃいますからね)」
ハクがアワアワとしているが、喋った方が悪いと思うぞ。
いやぁ、旅も悪くないなぁ。
五年間以上ダンジョンに潜る日々を送ってきた俺だが、ガタゴトと揺れる荷馬車でのまったりとした旅も悪くないものだと感じている。
旅は非日常を俺に味合わせてくれていた。
そんな旅を続け、日暮れ間近になると、本日の宿場先となるバナウェア山麓のふもとに開けたコーリアンの街が見えてきていた。
「グレイズさぁ~ん! 今日はここで宿取りますからねぇ!」
ブラックミルズから馬車で一日の場所にあるコーリアンの街は、王都に向かう主街道と交わる街となっており、ここからが本当の王都への旅の始まるとなる街であった。
それまでの田舎街道とは違いコーリアンに近づくほど街道を行き交う馬車の数が増えてきていた。
「おう、宿泊先はアルマに任せるぞ。俺は後ろをついて行くからな」
「おっけーですっ! ブラックミルズの冒険者ギルド御用達の宿を使うのでついて来てくださいねっ!」
二台に別れて走っているため、アルマとのやりとりは自然と大声になっていた。
「わふぅう(この匂い……まさかっ!! そんな……いや、でも……。あれはちゃんとアクセルリオン神が処理したはず……)」
ハクが街に近づくにつれ、鼻をひくつかせてソワソワとし始めていた。
「どうした、ハク?」
「わふぅ(なぜだか硫黄の匂いがするんですが……)」
「うわぁああっ! ハクちゃんっ! グレイズさん! 街の中から煙がいっぱい上がってるよー! 燃えてるの!?
「ファーマ、アレ燃えてる違う。きっと温泉の煙」
ファーマの隣で見ていたカーラが近づいてきた街から立ち上る煙を見て温泉があると言っていた。
噂では聞いたことがあるが、地面の底から熱い湯が勝手に沸き出すらしい。
なんでも浸かるとすごく疲れが取れるとか、ブラックミルズの街に来ていた行商の商人が言っていたのを思い出していた。
「あー、温泉かぁ! なら硫黄の匂いがするのも頷ける」
「わふぅううっ! (温泉っ!? まさかっ! アクセルリオン神が間違って引き当てたマグマ層はキチンと適性に処理したと言ってたはず……なんで、この場所に温泉が……まさか、あたしに未処理なのを黙っていたのかしら)」
ハクの独り言が、いちいち一大事な気がするのは俺の気のせいだろうか。
あの創世の女神様、結構いい加減な仕事していた疑惑があるぞ。
でも、まぁ一日馬車に揺られて色々と普段と違う場所に疲れがたまっているから、温泉とやらに浸かってみたい気もする。
「ハク、そう目くじらを立てるな。アクセルリオン神も初めての仕事でテンパったんだろうさ。それにみんなが困っているわけでもなさそうだし」
「わふぅう(それもそうですけど……。今度、お会いしたら一応確認してみます。お仕事の手抜きは上司神から怒られますからね)」
「おんせんーっ!! ファーマ、入ってみたいよー!! グレイズさん、早く! 早く行こう!!」
温泉と聞いたファーマのテンションが上がっていたので、俺たちはコーリアンの街へ向かうスピードを少し上げることにした。
「うわっぁああっ! グレイズさんっ! あの山おっきいよぉおおっ! ファーマ、初めて見たー! ハクちゃんも見て見てー!」
御者をしている俺の隣でファーマが横目に見える山並みを見て驚いていた。
「わふぅう(ファーマちゃん、はしゃぐと馬車から落ちますよ)」
一緒にいたハクがファーマの服を噛んで落ちないように踏ん張っている。
「あれはきっとバナウェア山だろうな。俺もブラックミルズから出たことないが、この世界で一番デカイ山のことは聞いたことあるぞ。なんでも、アクセルリオン神が最初に降り立った山らしいけどな」
「わふぅうう(ああ、そう言えばそうでしたねぇ。懐かしい話です。実は力の使い方が分からなくてモリモリと土地をかさ上げしたら、トンデモナイ高さになっちゃったなんて言えない話しですからねー)」
ハクがアクセルリオン神のトンデモナイ失敗談の暴露話をしていた。
あの幼女女神も初めから立派な神様だったわけじゃないってことだな。
あー、これはいい話を聞いた。
今度、俺に対してちょっかいをかけてきたら、こっちもこの話で茶化してやることにしよう。
「そうか、あの女神様も元は人間だって言ってたからな。これは、ハクからいい話が聞けたぞ。旅はしてみるものだな」
「わふぅううっ! (この話をあたしがグレイズ殿に喋ったことをアクセルリオン神様には内緒してくださいねっ! あたしが怒られますからっ!)」
ファーマが落ちそうになったところを支えていたハクが焦っているのが見えた。
「へぇ、そんな話があったのですねー。確か、『神様に一番近い場所』っていうことで神殿の聖地に指定されていたと聞いたことがありますが、そんな裏話があったのですね」
「神の聖地は神の失敗の跡地。これは興味深い」
荷馬車の奥で休んでいたアウリースもカーラも、ハクの話が聞こえたらしく、荷馬車から出てきて山の方を見ていた。
先行するもう一台の方に乗っているメリー、アルマ、セーラ、メラニア、クイーンも同様にハクの話が聞こえたバナウェア山を指差している。
「わふぅううっ! (内緒! 内緒ですからぁっ! アクセルリオン神は結構繊細なんですから失敗したとか弄ったらキレちゃいますからね)」
ハクがアワアワとしているが、喋った方が悪いと思うぞ。
いやぁ、旅も悪くないなぁ。
五年間以上ダンジョンに潜る日々を送ってきた俺だが、ガタゴトと揺れる荷馬車でのまったりとした旅も悪くないものだと感じている。
旅は非日常を俺に味合わせてくれていた。
そんな旅を続け、日暮れ間近になると、本日の宿場先となるバナウェア山麓のふもとに開けたコーリアンの街が見えてきていた。
「グレイズさぁ~ん! 今日はここで宿取りますからねぇ!」
ブラックミルズから馬車で一日の場所にあるコーリアンの街は、王都に向かう主街道と交わる街となっており、ここからが本当の王都への旅の始まるとなる街であった。
それまでの田舎街道とは違いコーリアンに近づくほど街道を行き交う馬車の数が増えてきていた。
「おう、宿泊先はアルマに任せるぞ。俺は後ろをついて行くからな」
「おっけーですっ! ブラックミルズの冒険者ギルド御用達の宿を使うのでついて来てくださいねっ!」
二台に別れて走っているため、アルマとのやりとりは自然と大声になっていた。
「わふぅう(この匂い……まさかっ!! そんな……いや、でも……。あれはちゃんとアクセルリオン神が処理したはず……)」
ハクが街に近づくにつれ、鼻をひくつかせてソワソワとし始めていた。
「どうした、ハク?」
「わふぅ(なぜだか硫黄の匂いがするんですが……)」
「うわぁああっ! ハクちゃんっ! グレイズさん! 街の中から煙がいっぱい上がってるよー! 燃えてるの!?
「ファーマ、アレ燃えてる違う。きっと温泉の煙」
ファーマの隣で見ていたカーラが近づいてきた街から立ち上る煙を見て温泉があると言っていた。
噂では聞いたことがあるが、地面の底から熱い湯が勝手に沸き出すらしい。
なんでも浸かるとすごく疲れが取れるとか、ブラックミルズの街に来ていた行商の商人が言っていたのを思い出していた。
「あー、温泉かぁ! なら硫黄の匂いがするのも頷ける」
「わふぅううっ! (温泉っ!? まさかっ! アクセルリオン神が間違って引き当てたマグマ層はキチンと適性に処理したと言ってたはず……なんで、この場所に温泉が……まさか、あたしに未処理なのを黙っていたのかしら)」
ハクの独り言が、いちいち一大事な気がするのは俺の気のせいだろうか。
あの創世の女神様、結構いい加減な仕事していた疑惑があるぞ。
でも、まぁ一日馬車に揺られて色々と普段と違う場所に疲れがたまっているから、温泉とやらに浸かってみたい気もする。
「ハク、そう目くじらを立てるな。アクセルリオン神も初めての仕事でテンパったんだろうさ。それにみんなが困っているわけでもなさそうだし」
「わふぅう(それもそうですけど……。今度、お会いしたら一応確認してみます。お仕事の手抜きは上司神から怒られますからね)」
「おんせんーっ!! ファーマ、入ってみたいよー!! グレイズさん、早く! 早く行こう!!」
温泉と聞いたファーマのテンションが上がっていたので、俺たちはコーリアンの街へ向かうスピードを少し上げることにした。
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