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日常編 キマイラ討伐へ
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しおりを挟むキマイラとの戦闘が開始されると、俺にできるのは応援とか、目の届いていないところへの注意喚起くらいだった。
カーラの支援魔法によって能力が底上げされていたファーマとハクのコンビが、キマイラの攻撃をかわし攻撃を加えていくのが見えた。
すでに二人のコンビネーションは完成度が高く、キマイラの攻撃は空を切るばかりであった。
二人に素早い攻撃に苛立ったのか、キマイラの尻尾の蛇が二人に向けて毒霧を吐こうとしていた。
「ファーマ、ハク。油断は大敵なのじゃ! 毒蛇の方は妾で抑える」
ファーマたちを狙っていた尻尾の毒蛇をクイーンがグーパンチで吹き飛ばしていく。
ノーライフキングであるクイーンは魔法も使えるが、肉弾攻撃の方もかなり強い。
クイーンのパンチ一発で毒蛇が気絶してダラリと地面に向けて垂れていた。
キマイラは二つの頭を倒されながらも、獅子の頭が大きな口を開き、周囲に火炎の息をまき散らしてきた。
鉄すらも溶かす高熱の炎が床を一気に舐めていく。
炎が三人を包み込もうと迫った瞬間、魔法の加護を受けたメリーが盾で火炎を遮っていた。
相手の意図を挫く、絶妙のタイミングであった。
「アウリースから魔法の援護がくるわ。それを合図に一気に沈めるわよ」
「「「はい」」」
「オ、オレも攻撃させてくださいよー!!」
ようやく戦闘地域に着いたジェネシスが、剣を片手にキマイラへ打ちかかっていくのが見えた。
前衛のみんなが優秀過ぎて、すでにジェネシスの出番はあまりないと思われる。
アウリースからの魔法攻撃がキマイラをよろけさせると、待ち構えていたみんなが一斉に武器を構えてキマイラの巨体に打ちかかっていった。
そして、大した抵抗もできぬままキマイラの山羊頭も落ち、獅子の頭もガクリと垂れるとそのまま地面に倒れ込んでいた。
対キマイラ戦は呆気ないほどの大勝利であった。
マジで、呆気なかったな。これでも中堅の装備が整ったパーティーでも苦戦する相手なんだがなぁ。
Bランク昇格の必須条件であるボス魔物であるキマイラはそれなりに強い魔物なのだが、天啓子として急速に才能を開花させ始めてるみんなにとっては物足らない相手となっていたようだ。
「完勝と言ったところか……」
「完勝、グレイズの知恵もかなり役に立った。あれは次の解説書に載せるべき知恵であると私は思う。それにしても、私たちもしてかして強い?」
カーラがキマイラに完勝したことで、自分たちの実力がかなりのものだと認識し始めていた。
俺がまったく戦闘に関与しないでキマイラを討伐を成し遂げた。
しかも、圧倒的完勝でだ。
深層階での戦闘も経験しているため、Aランクもすぐに目指せる実力であると思われる。
経験を積むよりも先に、メンバーの実力の方が加速度的に伸びて来ていた。
ムエルたちの時も成長は他のパーティーより早かったが、今回は更に成長度合いが早い気がしてもいる。
「油断は大敵。そういった気の緩みが死を招くのがこのダンジョンだと言っているはずだ。とはいえ、すでにBランクでも十分に通用する気はするぞ」
「うわーい!! グレイズさんに褒められたぁああ!! ファーマたち強くなっている?」
「わふぅう(ファーマちゃんとあたしは世界最強コンビ!!)」
「妾もちゃんと仕事したぞ。メラニアもいっぱい魔力使ったー。メラニア―、ご飯にするのじゃー。お腹すいたー」
「キマイラももっと強いかと思ったけど、案外……」
「メ、メリーさん。あのですね。私の時は死ぬ思いで倒した相手なんですよ。あのキマイラって。毒の息とか、炎の息とか空中を飛んだりとか大変だったんですよ」
「そうなの……。意外とあっさりと倒されたんだけど……」
メンバーの中で俺以外に唯一キマイラと戦ったことのあるアウリースが、倒した敵の強さを力説していた。
確かにアウリースの言ったことが、一般的な冒険者たちの対キマイラ戦の感想であると思われる。
普通はもっと苦戦するはずなのだ……。はずなのだが、やはり想定以上にみんな実力が伸びているのは認めなければならない事実だろう。
三年かけてと街の連中には啖呵を切ったが、みんながSランクを名乗るのはもっと早まるのかもしれないなぁ。
「あ、グレイズさん鑑定よろしくねー」
俺がみんなの成長を実感していると、メリーがキマイラからドロップ品に変わった物を投げて寄越していた。
受け取ったドロップ品を鑑定すると、例の如くレアドロップのキマイラの心臓である。
一つ一五〇万ウェルはするレアドロップ品だ。
相変わらずメラニアの相乗効果でドロップ比率がおかしかったが、今はいくらでも金が欲しいのでありがたく頂戴しておくことにした。
こうして、俺たちは探索を終えて地上に帰還するとBランク昇格条件を満たし、晴れてBランク冒険者になることが決定した。
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