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ムエル外伝(本編とは関係ありません)
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※ムエル視点
グレイズによって半殺しにされ、冒険者ギルドに捕えられたオレは、最近になって発見されたダンジョン近くに建設された収容所に放りこまれていた。
なぜかと言えば、ブラックミルズでの殺人行為と闇市での違法品売買等で、領主に下された刑罰は新規ダンジョンでの探索奴隷という刑罰であった。
探索奴隷。それは、発見されて整備されていない出来立てのダンジョンに向けて送り込まれる奴隷の総称だ。
ダンジョンに併設された収容所で固いパンと味のしないスープを一日一食与えられ、朝がくれば粗悪な装備だけを与えられ、強敵だらけのダンジョン内を探索させられ、刑期を終えるまで続けさせられるのだ。
「一九八番、独房を出ろ」
どうやら、いつの間にか朝が来ていようで、看守が表情を変えずに独房を出ろと言っていた。
オレは首に付けられた首輪に忌々しさを感じながらも、看守の言葉に従い独房の外に出た。
ここに来てすでに一ヵ月、看守への反抗は首に付けられた首輪から苦痛を発するだけだと学習していたのだ。
「今日は第二階層D地区の探索を割り当てる。良かったな。激戦区だぞ」
オレが元Sランク冒険者だと知っている看守が嫌味たらしく今日の探索目的地を書いた地図を渡してきた。
振られた割り当て範囲の探索をして魔物を倒し、ドロップ品を拾って帰ってくる。ここでの一日はブラックミルズで行っていたこととなんら変わりの無い日々である。
だが、決定的に違うのはブラックミルズの時は金を注ぎ込んで買った装備一式がオレの身を守ってくれていたのを痛感していた。
装備の無くなったオレは、グレイズによって壊された利き腕の怪我もあり、ダンジョンで発生する魔物に苦戦することが多くなっているのだ。
「ちっ、D地区かよ。ついてねぇ……」
「そう言うな。今日はお前の元仲間も一緒だ。精々、ドロップ品集めて刑期を短縮するといいさ。あーすまん。すまん。お前は終身刑だったな」
看守はオレの刑期を知った上で小馬鹿にしたようににやけた笑いを貼り付けていた。
首に付けられた首輪さえなければ、すぐにでも拳で殴り殺してやるくらいことは朝飯前だが、反抗しようとすれば体に激痛が走るため拳を固めてグッと我慢する。
オレはいつまでこんな生活を続けるんだ……。生き地獄みたいな生活を続けていたら頭がおかしくなりそうになる。いっそ、魔物に喰われた方が楽になれるだろうか……。
一ヵ月の探索奴隷生活はオレに生きる希望を失わせるには十分な時間であった。
この収容所自体、送られてくるのは重罪犯ばかりで、みんな探索中に死ぬか、発狂して自死するかで、死んでしか外に出られないと言われている収容所であった。
「今日は帰ってこないかもしれないぜ。なにせD地区だしな」
「そんなことを言っても帰ってくるのが一九八番だろ。お前らが何日持つか看守たちで賭けているんだから、しっかりと生きて帰ってこいよ。俺に損させたら飯はないと思え」
看守が自分の都合を前面に押し出した発言をしつつ、オレの手かせと足かせを外していく。
この隙を狙って何度か看守を殺して逃げようと思ったが、看守たちが持つ腕輪は収監者が殺意や反抗心を持つと、収監者の首輪へ自動的に電撃が流れるようになっているのを確認するだけの作業になるので、心を落ち着けていく。
一ヵ月でずいぶんとオレも大人しくなったと思う。というよりは、生き抜くのに必死だったということの方が大きいか。
探索は過酷、満足な食事も与えられず、刑期は死ぬまでとなっていれば、死ぬことを考えてもおかしくないんだろうが、生憎とオレは死にたくないらしい。
いくら今日こそは死んでやると思って、いざダンジョンに入ると身体が勝手に生き残ろうとする。オレの意志を反してだ。
そうやって探索と戦闘を続ける毎日をしている内に、いつの間にか一日でも長く生き延びて腕を磨くことに喜びを見出している自分を発見してしまっていた。
探索を終えて独房に帰ってくると、今日倒した魔物の癖や行動。ダンジョン内のトラップなど全て脳内で反芻して翌日の探索に生かすということを始めている。
皮肉なことにオレの探索や戦闘技術はこの収容所に入れられてからの方が成長していると言える状態であるのだ。
「探索に行くんだから、早いところ装備を寄越せ」
「おお、こわ。さすが『元』Sランク冒険者様だぜ。ほらよ。受け取れ、お仲間はもうだいぶ前からお待ちのようだぜ」
看守から半分壊れかけた革鎧一式と、刃が欠けている鉄の剣を受け取る。
これが目下のところ、オレを守る最上の武具である。探索でドロップ装備が出たとしても地上に帰還すれば看守たちによって取り上げられるので、今装備しているのが、最低であり最高の武具なのだった。
「後、これは特別支給品だ。最近は色々と拾ってくるからな。上も死なれたら困るんだろうさ」
武具に続けて看守が投げてよこしたのは、小瓶に入った回復ポーションが数個であった。
「礼は言わんからな」
オレは受け取った装備を着込むと、今日もダンジョンを探索して生き残るべく、仲間の待つ入口へと向かい歩き出していった。
ーーーーーーーー
小説家になろう様のみの掲載でしたが、一応移植しておきます。この話は本編とは関係ありません。アナザーストーリーです。全三話ありますので、今日から三日はムエル外伝です。
グレイズによって半殺しにされ、冒険者ギルドに捕えられたオレは、最近になって発見されたダンジョン近くに建設された収容所に放りこまれていた。
なぜかと言えば、ブラックミルズでの殺人行為と闇市での違法品売買等で、領主に下された刑罰は新規ダンジョンでの探索奴隷という刑罰であった。
探索奴隷。それは、発見されて整備されていない出来立てのダンジョンに向けて送り込まれる奴隷の総称だ。
ダンジョンに併設された収容所で固いパンと味のしないスープを一日一食与えられ、朝がくれば粗悪な装備だけを与えられ、強敵だらけのダンジョン内を探索させられ、刑期を終えるまで続けさせられるのだ。
「一九八番、独房を出ろ」
どうやら、いつの間にか朝が来ていようで、看守が表情を変えずに独房を出ろと言っていた。
オレは首に付けられた首輪に忌々しさを感じながらも、看守の言葉に従い独房の外に出た。
ここに来てすでに一ヵ月、看守への反抗は首に付けられた首輪から苦痛を発するだけだと学習していたのだ。
「今日は第二階層D地区の探索を割り当てる。良かったな。激戦区だぞ」
オレが元Sランク冒険者だと知っている看守が嫌味たらしく今日の探索目的地を書いた地図を渡してきた。
振られた割り当て範囲の探索をして魔物を倒し、ドロップ品を拾って帰ってくる。ここでの一日はブラックミルズで行っていたこととなんら変わりの無い日々である。
だが、決定的に違うのはブラックミルズの時は金を注ぎ込んで買った装備一式がオレの身を守ってくれていたのを痛感していた。
装備の無くなったオレは、グレイズによって壊された利き腕の怪我もあり、ダンジョンで発生する魔物に苦戦することが多くなっているのだ。
「ちっ、D地区かよ。ついてねぇ……」
「そう言うな。今日はお前の元仲間も一緒だ。精々、ドロップ品集めて刑期を短縮するといいさ。あーすまん。すまん。お前は終身刑だったな」
看守はオレの刑期を知った上で小馬鹿にしたようににやけた笑いを貼り付けていた。
首に付けられた首輪さえなければ、すぐにでも拳で殴り殺してやるくらいことは朝飯前だが、反抗しようとすれば体に激痛が走るため拳を固めてグッと我慢する。
オレはいつまでこんな生活を続けるんだ……。生き地獄みたいな生活を続けていたら頭がおかしくなりそうになる。いっそ、魔物に喰われた方が楽になれるだろうか……。
一ヵ月の探索奴隷生活はオレに生きる希望を失わせるには十分な時間であった。
この収容所自体、送られてくるのは重罪犯ばかりで、みんな探索中に死ぬか、発狂して自死するかで、死んでしか外に出られないと言われている収容所であった。
「今日は帰ってこないかもしれないぜ。なにせD地区だしな」
「そんなことを言っても帰ってくるのが一九八番だろ。お前らが何日持つか看守たちで賭けているんだから、しっかりと生きて帰ってこいよ。俺に損させたら飯はないと思え」
看守が自分の都合を前面に押し出した発言をしつつ、オレの手かせと足かせを外していく。
この隙を狙って何度か看守を殺して逃げようと思ったが、看守たちが持つ腕輪は収監者が殺意や反抗心を持つと、収監者の首輪へ自動的に電撃が流れるようになっているのを確認するだけの作業になるので、心を落ち着けていく。
一ヵ月でずいぶんとオレも大人しくなったと思う。というよりは、生き抜くのに必死だったということの方が大きいか。
探索は過酷、満足な食事も与えられず、刑期は死ぬまでとなっていれば、死ぬことを考えてもおかしくないんだろうが、生憎とオレは死にたくないらしい。
いくら今日こそは死んでやると思って、いざダンジョンに入ると身体が勝手に生き残ろうとする。オレの意志を反してだ。
そうやって探索と戦闘を続ける毎日をしている内に、いつの間にか一日でも長く生き延びて腕を磨くことに喜びを見出している自分を発見してしまっていた。
探索を終えて独房に帰ってくると、今日倒した魔物の癖や行動。ダンジョン内のトラップなど全て脳内で反芻して翌日の探索に生かすということを始めている。
皮肉なことにオレの探索や戦闘技術はこの収容所に入れられてからの方が成長していると言える状態であるのだ。
「探索に行くんだから、早いところ装備を寄越せ」
「おお、こわ。さすが『元』Sランク冒険者様だぜ。ほらよ。受け取れ、お仲間はもうだいぶ前からお待ちのようだぜ」
看守から半分壊れかけた革鎧一式と、刃が欠けている鉄の剣を受け取る。
これが目下のところ、オレを守る最上の武具である。探索でドロップ装備が出たとしても地上に帰還すれば看守たちによって取り上げられるので、今装備しているのが、最低であり最高の武具なのだった。
「後、これは特別支給品だ。最近は色々と拾ってくるからな。上も死なれたら困るんだろうさ」
武具に続けて看守が投げてよこしたのは、小瓶に入った回復ポーションが数個であった。
「礼は言わんからな」
オレは受け取った装備を着込むと、今日もダンジョンを探索して生き残るべく、仲間の待つ入口へと向かい歩き出していった。
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小説家になろう様のみの掲載でしたが、一応移植しておきます。この話は本編とは関係ありません。アナザーストーリーです。全三話ありますので、今日から三日はムエル外伝です。
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