164 / 232
日常編 新生アウトキャスト
5
しおりを挟む
探索は順調に進んで第五階層にまで降りてきていた。
ジェネシスもメラニアもそろそろ荷物の重さが辛くなってきた様子を見せていたので、空いている小部屋を占拠して早めの野営準備に入っていた。
「ふぅー、重かったぜ。冒険者がこんなにシンドイとは計算違いだったかもしれねっす」
小部屋に入ると、背負っていた荷物を地面に置いて一番に休憩に入ったジェネシスから本音が吐露されていた。
王宮では、身の回りの世話から全て周りの人間に任せて育ったジェネシスからしてみれば、ソロ探索用のフル装備を背負ってのダンジョン探索などは重労働だろうと思われる。
だが、ジェネシスも剣術で体力だけは鍛えていたようで、疲れている様子をみせているが、動けなくなるまで疲労困憊にはなっていなさそうである。
一方、メラニアはさすがに小柄な身体であり、貴族の令嬢であったので、フル装備での探索はこたえたようで、荷物を降ろすと床に座り込んでしまっている。
「メラニア、大丈夫か? 重かったら明日からの残りの行程は俺が持つが……」
「あ、いえ。大丈夫です。一晩寝れば回復すると思いますし……。それにしても、みなさんこれだけ重い物を背負って潜られたのですね。尊敬してしまいます」
座り込んでいたメラニアは、目の前で手早く野営の準備に入った他のメンバーたちを見て感心しているようだ。
「メリーたちも最初は今のメラニアみたいだったさ。ソロのフル装備は誰でもこたえる重さだからな。だから、みんなパーティーを組んで潜るって理解してもらえるだろ?」
「ええ、確かにこの重さは……正直辛いですね。みんなで分け合って持ち込む意味がよく理解できます」
「一応、この重い荷物は今回のみだからな。次回からは能力に応じて割り振るつもりだ」
現在荷物はパーティーメンバーで筋力に応じて振り分けているが、小柄なメラニアはパーティーの中で一番の低負担になると思われた。
重い荷物を割り振って、メラニアがスタミナを消費してしまえば、休息回数も増え、探索効率も落ちるため、荷物は低負担にして少しでも負担を軽くしておいた方が良さげだった。
その分、メラニアの召喚獣であるクイーン辺りにも荷物を背負ってもらえれば負担も少なくできるはずであった。
「メラニア―。お腹すいたー。なんかちょーだい」
俺と話ながら座り込んでいたメラニアに、クイーンがしがみついて食糧をねだってきた。
「あらあら、もうお腹空いたの」
ノーライフキングのクイーンはかなり燃費が悪いらしく、常に飢餓状態にあるらしい。
メラニアの疲労の一部は使役しているクイーンに魔力を常時供給していることもあるため、召喚解除し宝玉に戻ってもらい少しでも魔力消費を節約してみてはと言ってあったが、メラニアは本人が望む限りクイーンを常時外に出しておくつもりだと言っていたのだ。
「クイーン、ほら、ジャーキーでも食うか?」
メラニアが疲れている様子であったので、代わりに俺がベルトポーチにしまい込んでいた保存食であるジャーキーを差し出していた。
「わふぅ(いただきなのです)」
俺の手にあったジャーキーを電光石火の速さでハクが掻っ攫っていく。
「ちょ、ハク!?」
「わふぅ、わふぅ(あー、お肉おいしい)」
「あー、それは妾のなのじゃー。返すのじゃー」
クイーンがジャーキーを掻っ攫ったハクのもとに駆け寄り、ジャーキーを取り返そうとして掴みかかっていた。
傍目には幼女と犬が食べ物の取り合いをしている風に見えるだけだが、片や神の使徒、片や魔物の王なので食料を賭けた神魔戦争が起きているのであった。
「二人ともメーなのー! 喧嘩はダメ―! ハクちゃん、お肉出して」
二人のジャーキーの取り合いを制したのはファーマだった。
ファーマに叱られたハクが口にしていたジャーキーを渡すと、おもむろにファーマが三つに均等に分けていた。
「これがハクちゃんの分、これがクイーンちゃんの分、で、残りはファーマの分ね。これでみんな一緒だよ」
「わふぅう(ファーマちゃん……)」
「わーい! ファーマは優しいのじゃー」
三人がそれぞれに分けたジャーキーを口にして食べているが。
ファーマ、君はちゃっかりとしているな。おっさんは見てしまったぞ。それと、クイーン。騙されているからな。
まぁ、ファーマのおかげで神魔戦争は回避できたのでヨシとしておこう。
食いしん坊三人がジャーキーにうつつを抜かしている間にアウリースやメリーたちがかまどの準備を終えていた。
「さて、食いしん坊組の腹が減っているようだら、飯の準備をするか」
「わたくしもお手伝いします。休憩して多少の疲れはとれました」
そう言ったメラニアが立ち上がると、メリーたちの方へ行き、夕食作りの手伝いを始めていた。
俺も背負っていた荷物を置くと、まだ床に座り込んで休んでいたジェネシスを連れて、夕食づくりを手伝いにいくことにした。
ーーーーーーーーーーーーー
書籍版も好評発売中でございます<m(__)m>
ジェネシスもメラニアもそろそろ荷物の重さが辛くなってきた様子を見せていたので、空いている小部屋を占拠して早めの野営準備に入っていた。
「ふぅー、重かったぜ。冒険者がこんなにシンドイとは計算違いだったかもしれねっす」
小部屋に入ると、背負っていた荷物を地面に置いて一番に休憩に入ったジェネシスから本音が吐露されていた。
王宮では、身の回りの世話から全て周りの人間に任せて育ったジェネシスからしてみれば、ソロ探索用のフル装備を背負ってのダンジョン探索などは重労働だろうと思われる。
だが、ジェネシスも剣術で体力だけは鍛えていたようで、疲れている様子をみせているが、動けなくなるまで疲労困憊にはなっていなさそうである。
一方、メラニアはさすがに小柄な身体であり、貴族の令嬢であったので、フル装備での探索はこたえたようで、荷物を降ろすと床に座り込んでしまっている。
「メラニア、大丈夫か? 重かったら明日からの残りの行程は俺が持つが……」
「あ、いえ。大丈夫です。一晩寝れば回復すると思いますし……。それにしても、みなさんこれだけ重い物を背負って潜られたのですね。尊敬してしまいます」
座り込んでいたメラニアは、目の前で手早く野営の準備に入った他のメンバーたちを見て感心しているようだ。
「メリーたちも最初は今のメラニアみたいだったさ。ソロのフル装備は誰でもこたえる重さだからな。だから、みんなパーティーを組んで潜るって理解してもらえるだろ?」
「ええ、確かにこの重さは……正直辛いですね。みんなで分け合って持ち込む意味がよく理解できます」
「一応、この重い荷物は今回のみだからな。次回からは能力に応じて割り振るつもりだ」
現在荷物はパーティーメンバーで筋力に応じて振り分けているが、小柄なメラニアはパーティーの中で一番の低負担になると思われた。
重い荷物を割り振って、メラニアがスタミナを消費してしまえば、休息回数も増え、探索効率も落ちるため、荷物は低負担にして少しでも負担を軽くしておいた方が良さげだった。
その分、メラニアの召喚獣であるクイーン辺りにも荷物を背負ってもらえれば負担も少なくできるはずであった。
「メラニア―。お腹すいたー。なんかちょーだい」
俺と話ながら座り込んでいたメラニアに、クイーンがしがみついて食糧をねだってきた。
「あらあら、もうお腹空いたの」
ノーライフキングのクイーンはかなり燃費が悪いらしく、常に飢餓状態にあるらしい。
メラニアの疲労の一部は使役しているクイーンに魔力を常時供給していることもあるため、召喚解除し宝玉に戻ってもらい少しでも魔力消費を節約してみてはと言ってあったが、メラニアは本人が望む限りクイーンを常時外に出しておくつもりだと言っていたのだ。
「クイーン、ほら、ジャーキーでも食うか?」
メラニアが疲れている様子であったので、代わりに俺がベルトポーチにしまい込んでいた保存食であるジャーキーを差し出していた。
「わふぅ(いただきなのです)」
俺の手にあったジャーキーを電光石火の速さでハクが掻っ攫っていく。
「ちょ、ハク!?」
「わふぅ、わふぅ(あー、お肉おいしい)」
「あー、それは妾のなのじゃー。返すのじゃー」
クイーンがジャーキーを掻っ攫ったハクのもとに駆け寄り、ジャーキーを取り返そうとして掴みかかっていた。
傍目には幼女と犬が食べ物の取り合いをしている風に見えるだけだが、片や神の使徒、片や魔物の王なので食料を賭けた神魔戦争が起きているのであった。
「二人ともメーなのー! 喧嘩はダメ―! ハクちゃん、お肉出して」
二人のジャーキーの取り合いを制したのはファーマだった。
ファーマに叱られたハクが口にしていたジャーキーを渡すと、おもむろにファーマが三つに均等に分けていた。
「これがハクちゃんの分、これがクイーンちゃんの分、で、残りはファーマの分ね。これでみんな一緒だよ」
「わふぅう(ファーマちゃん……)」
「わーい! ファーマは優しいのじゃー」
三人がそれぞれに分けたジャーキーを口にして食べているが。
ファーマ、君はちゃっかりとしているな。おっさんは見てしまったぞ。それと、クイーン。騙されているからな。
まぁ、ファーマのおかげで神魔戦争は回避できたのでヨシとしておこう。
食いしん坊三人がジャーキーにうつつを抜かしている間にアウリースやメリーたちがかまどの準備を終えていた。
「さて、食いしん坊組の腹が減っているようだら、飯の準備をするか」
「わたくしもお手伝いします。休憩して多少の疲れはとれました」
そう言ったメラニアが立ち上がると、メリーたちの方へ行き、夕食作りの手伝いを始めていた。
俺も背負っていた荷物を置くと、まだ床に座り込んで休んでいたジェネシスを連れて、夕食づくりを手伝いにいくことにした。
ーーーーーーーーーーーーー
書籍版も好評発売中でございます<m(__)m>
1
お気に入りに追加
9,214
あなたにおすすめの小説
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。