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日常編 新生アウトキャスト

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 第二階層からはメラニアとジェネシスを加えた新たな隊列を組んでダンジョンを進んでいた。

 ファーマとハクが索敵警戒班として最前列、メリーとクイーンが援護攻撃班として後ろに続き、その後ろをジェネシス、俺が続き、前衛後衛どちらでも援護できるように位置取り、その後ろを魔法班のメラニア、カーラ、アウリースと続いていた。

 王様であるジェネシスは剣の腕こそそれなりにあるが、前衛に出して万が一のことがあれば大事に至るので、援護役と称してあまり前衛に出さないつもりであった。

 これはメラニアからの要望も出ているので、乱戦に陥らない限りはジェネシスの出番はほとんどないはずである。

 低階層であれば、ファーマとハクが敵を発見しては殲滅すると思われるので乱戦の発生は起きなさそうではあるが。

 そんなことを考えながら前方を歩いていると、ファーマたちが敵を発見したようで、前進するのを手を制して止めていた。

 潜る前にジェネシスとメラニアには、きちんと前衛を歩くファーマの合図を見落とさないようにと伝えていたため二人も歩みを止めている。

「前から二体。多分、ゴブリンっぽいかなー。私とハクちゃんで倒してこようか?」

「わふぅ? (ファーマちゃんが行くまでもないし、あたしがひとっ走りやってきましょうか?)」

「いや、通常の手順で戦闘に入るぞ。クイーン、ジェネシス、メラニア、敵はゴブリン二体。前衛から戦闘に入るからな。戦闘の音を聞いて敵が近寄ってくるかもしれん。周囲の警戒も怠らないようにな」

 深層階からの脱出行を経験している二人は、戦闘の音に魔物が寄ってくることも理解しているため、俺の指示よりも先に周囲を警戒し始めていた。

「心得ております。下の階層では雲霞の如く魔物が戦闘音を聞いて集まってきたことを忘れておりませんわ」

「りょーかいっす。いつでも戦闘に入れますよ」

「ゴブリンは妾のご飯にするのじゃ」

 戦闘準備を整えると、ファーマたちを先頭にして気配のする方へ進んでいった。

 結果から言えば、ゴブリンはうちらの相手ではなく、ハクの牙が彼らを仕留める前にクイーンが捕食を果たしていた。

 開幕早々、二体のゴブリンは抵抗する暇もなく、転移移動で懐に入ったクイーンの手がゴブリンを消滅させるとドロップ品に変化させていたのだ。

「あら、クイーンは素早いわね。さすが元ノーライフキングかしら、ハクやファーマと同じくらい早い動きをできるのは羨ましいわね」

「メリー、妾は現役のノーライフキングなのじゃ!!」

「あー、はいはい。そうだったわね。じゃあ、お上手に敵を倒せたお祝いに飴ちゃんどうぞ」

 メリーがゴブリンを捕食して帰ってきたクイーンの口に飴玉を放り込んであげていた。

「むふー。甘いのじゃ。シアワセなのじゃー」

 完全にみんなに餌付けされてしまっているクイーンであった。

「飴玉いいなー。ファーマも欲しい」

 ファーマが、メリーから飴玉をもらったクイーンを見て羨ましそうに見ている。

 ファーマ、よだれ、よだれ。垂れているから。

 俺はさり気なく、ファーマの口元を自分のハンカチで拭うと、彼女の手に飴玉を持たせていた。

「グレイズさん!? いいの?」

「ああ、ファーマはいつも頑張っているからな『特別』だぞ」

「んふー、おいひい。ありがとう」

 ファーマが手にしていた飴玉を口に放り込んでシアワセそうな顔をしていた。すると、みんなが俺を見て手を差し出してくる。

 どうやら、みんなして飴玉が欲しいらしい。

 仕方なく俺はベルトポーチから取り出した飴玉をみんなに配布することにした。

 まぁ、飴玉で喜んでくれるなら、いくらでもあげられるんだがな。

「さて、糖分もみんな補給したし、探索を続けるぞ」

「「「「はい」」」」

 探索を再開することにしたが、一週間ぶりに潜った低階層は以前とは比べ物にならないほど人で溢れかえっていたのだ。

 アルマが言っていた通り、駆け出し冒険者が低階層の依頼を受注しまくっているため、以前は閑散としていた低階層に人が溢れているのだ。

 それと、これは小耳挟んだ情報だが、火力重視で編制していた中堅なり立てパーティーが多数解散をして、中堅冒険者になった者がリーダーとなり新規に駆け出し冒険者を加えて莫大な数の駆け出し冒険者パーティーが作られているそうだ。

 これは俺の打ち出した駆け出し冒険者応援政策に、冒険者たちが即座に反応した結果だと言われている。

 中堅のなり立ての頃が一番資金面で苦しいため、利害関係だけで繋がっていたダンジョン攻略法で中堅に上がったパーティーの解散に拍車をかけていたのだ。

 金のために気の合わない連中と我慢して潜っていた中堅冒険者が、気の合う駆け出し冒険者を募って再出発を始めるのが増えているらしい。

 今後は低層階でも十分に稼げるようになるため、育成専用の冒険者も出てくるかもしれなかった。

「グレイズさん、ちっす。どうぞ、先に行ってください」

「お、おう。ありがとな」

 探索中に通路ですれ違った駆け出し冒険者のパーティーに道を譲られたので、礼を言ってすれ違っていくが、駆け出しの冒険者たちからは尊敬の眼差しを終始浴びせられて、こそばゆいことこの上なかった。

「低層階にこれほどの冒険者の数がいることも珍しいですね。グレイズさんが打ち出した政策で依頼料三割増しと鑑定無料があれば、中層階で頑張るよりも低層階の依頼を多数受けた方が効率よく稼げますからね」

「確かにアウリースの言う通り、低層階で三つ受ければ、中層階の依頼料を超える。みんな簡単な方が選ぶ当然」

 カーラとアウリースがすれ違った冒険者たちを見て、低層階に冒険者が溢れている現状を観察していた。

 二人の会話を聞きながら、俺は今、ブラックミルズの冒険者界隈は激変の時期に差し掛かっているのかもしれないと考え始めていたのだ。
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