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ヴィケット視点
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※ヴィケット視点
ここ数日待ち望んでいた報告が意外な形で私に届けられていた。
グレイズとメラニア、それと一緒に潜った駆け出しの冒険者たちを始末するため、送り込んだ暗殺者とSランクの冒険者たちが装備をボロボロにして帰ってきていたのだ。
「報告にもあったが、グレイズたちを探して第二二階層まで潜ったそうだな。そして、ノーライフキングと遭遇したということだが……」
衛兵隊の宿舎で闇市の差配をしていた私の執務室に入ってきているのは、暗殺者を束ねる男と冒険者たちを率いていた男の二人である。
「はい、ヴィケット様のご指示通り、グレイズたちを抹殺しようと金色宝箱で転移させられた彼らの行方を捜しながら探索しておりました。低層階から中層階まで探しても見つからず、よもやと思い深層階まで潜ったところ、彼らの集団に遭遇いたしました」
「金色宝箱が低層階に出たという話は聞いておったが、グレイズたちが深層階まで飛ばされていたとはな……。第二二階層は不死王の宮殿が有ったはず」
「その通りです。彼らは不死王の宮殿の玉座の間に飛ばされ、運悪くノーライフキングに遭遇したようで、私が駆け付けたすでに襲われている最中でして……。絶望した彼らは逃げずに戦いを選び、全員が魂を喰われてダンジョンの一員となりました。その時、私がグレイズたちの遺品を引き上げてきたのですが、スケルトンとなった彼らに襲われ、回収できたのはこれくらいですが……」
暗殺者の男が取り出した品は、グレイズが探索で使う魔法の背負子や、そのパーティーメンバーが装備しているスポンサーが文字を入れて派手な装備であった。
「Sランク冒険者の俺たちも、さすがにノーライフキングを抑えるのは難しいので、暗殺者たちを援護しつつ駆け足で地上に戻ってきたということだ」
冒険者の男の方も装備がかなり傷んでおり、深層階で激闘を繰り広げた証だと思われる。
「ほぅ、やはりグレイズたちはノーライフキングにやられたと……」
「はい、私どもがこの目で確認しております。依頼こそ達成できませんでしたが、報告だけはせねばと急ぎ戻ってきた次第」
暗殺者の男が取り出した品を受け取り、真贋を吟味していく。
受け取った品はやはりグレイズたちが使用していたモノのようであった。
ムエルに任せ軌道に乗りかけていたこのブラックミルズの闇市をぶっ壊した男の呆気ない最後に思わず笑みが零れるのがこらえきれない。
「ククク、あの男らしい最後だな。野良犬は野良犬らしくダンジョンで果てたか。よし、報告は受け取った。これより、すぐにアルガド様に報告をしにいく。お主らはこの宿舎で傷を癒せ。追って恩賞の沙汰もあるとおもう」
私は受け取った品を従者へ手渡すと、報告に訪れた男たちを下がらせた。
その後、すぐにアルガドへ面会を求め、馬車に飛び乗り彼の屋敷に向けて一路、馬を駆けさせていった。
アルガドの屋敷に到着すると、昨日夜遅くに実家からブラックミルズに帰ってきていたアルガドが、眠そうな顔をして応接室にマリアンを伴い入室してきた。
寝巻のままの様子から、日が天高く昇り始めている今の時間まで眠っていたようである。
「お休みのところ申し訳ありません。吉報が舞い込みましたので、すぐにでもアルガド様の耳に入れようと」
「実家から舞い戻ってきた疲れから解放される報告だと期待してよいか?」
アルガドは眠そうな目をこすりながら、応接間の椅子にだらしなく腰をかける。
今回の件を報告すれば、もはやブラックミルズで冒険者ギルドのギルドマスター兼領主の息子という立場に抗う者は存在せず、裏で行っている闇市も公認の市として常設を認められる可能性もあるのだ。
そうなれば、闇市を仕切らせてもらえるのはフラマー商会であり、アルガドに上納金を収めたとしてもあり余る金が手元に残るはずである。
今回の報告をすれば、それは遠くないうちに実現されるものと思い、思わず頬が緩むのが隠せないでいた。
「ははっ! アルガド様が待ちかねていた報告でございます。抹殺指示を出したグレイズ及びメラニア嬢、捜索に参加した者たちは全員が第二二階層の不死王の宮殿に飛ばされ、ノーライフキングによって魂を吸われてダンジョンの一員になったそうです。うちが雇って派遣した暗殺者や冒険者たちがその最後を確認したと申し、遺品とともに引き上げて参りました」
応接間のテーブルの上にグレイズたちの遺品を並べて置いていく。
その一つ一つを確認するように視線を向けるアルガドの顔に邪悪ともいえる笑みが広がっていった。
「ははは、はぁーはっあはあぁ!! ざまぁみろっ!!! わたしを邪魔するから天罰が下ったのだ!!! あのクソ忌々しいグレイズもメラニアも居なくなったとなれば、後は好き勝手にやっても誰も文句は言うまい。父上も宰相閣下との権力闘争で忙しいのでな。これでわたしはマリアンと贅沢三昧の生活に浸れるはずだ。ヴィケット、闇市は大々的に行え、人の売買も許す。稼げるだけ稼ぎまくれ! 取り締まる側はわたしの手の者だし邪魔をする者はいなくなった」
アルガドが魔物に憑りつかれたかのように目を見開いて大笑いをしたかと思うと、私が待ち望んでいた許可をしてくれていた。
これで、ブラックミルズの闇市は常設化され、衛兵隊の宿舎において大々的に大手を振って開催されることになるだろう。
そうなれば、収入は今までの数倍にまで膨らむと思われた。
「ははっ! アルガド様の庇護があれば、闇市はブラックミルズで一番の稼ぎを産み出す産業となりましょう。早速、手はずを整えたいと思います」
「手はずは任せる。衛兵隊にはダンジョンの封鎖を解くように通達を出しておくから、すぐにダンジョンに潜らせて、品物を補充していけ。冒険者ギルドもすでに十日近く開店休業状態だから稼ぎの損失を埋めてくれ」
「ははっ! 心得ました」
私は興奮気味のアルガドに辞去の挨拶をすると、足早に衛兵隊の宿舎に戻り、闇市へ並べる品物を補充させるため、帰還したばかりの冒険者たちをダンジョンに送り込むことにした。
そして、依頼を果たした暗殺者たちには口止め料として大量の金銭を渡し、王都へと引き上げてもらうことにしていた。
ここ数日待ち望んでいた報告が意外な形で私に届けられていた。
グレイズとメラニア、それと一緒に潜った駆け出しの冒険者たちを始末するため、送り込んだ暗殺者とSランクの冒険者たちが装備をボロボロにして帰ってきていたのだ。
「報告にもあったが、グレイズたちを探して第二二階層まで潜ったそうだな。そして、ノーライフキングと遭遇したということだが……」
衛兵隊の宿舎で闇市の差配をしていた私の執務室に入ってきているのは、暗殺者を束ねる男と冒険者たちを率いていた男の二人である。
「はい、ヴィケット様のご指示通り、グレイズたちを抹殺しようと金色宝箱で転移させられた彼らの行方を捜しながら探索しておりました。低層階から中層階まで探しても見つからず、よもやと思い深層階まで潜ったところ、彼らの集団に遭遇いたしました」
「金色宝箱が低層階に出たという話は聞いておったが、グレイズたちが深層階まで飛ばされていたとはな……。第二二階層は不死王の宮殿が有ったはず」
「その通りです。彼らは不死王の宮殿の玉座の間に飛ばされ、運悪くノーライフキングに遭遇したようで、私が駆け付けたすでに襲われている最中でして……。絶望した彼らは逃げずに戦いを選び、全員が魂を喰われてダンジョンの一員となりました。その時、私がグレイズたちの遺品を引き上げてきたのですが、スケルトンとなった彼らに襲われ、回収できたのはこれくらいですが……」
暗殺者の男が取り出した品は、グレイズが探索で使う魔法の背負子や、そのパーティーメンバーが装備しているスポンサーが文字を入れて派手な装備であった。
「Sランク冒険者の俺たちも、さすがにノーライフキングを抑えるのは難しいので、暗殺者たちを援護しつつ駆け足で地上に戻ってきたということだ」
冒険者の男の方も装備がかなり傷んでおり、深層階で激闘を繰り広げた証だと思われる。
「ほぅ、やはりグレイズたちはノーライフキングにやられたと……」
「はい、私どもがこの目で確認しております。依頼こそ達成できませんでしたが、報告だけはせねばと急ぎ戻ってきた次第」
暗殺者の男が取り出した品を受け取り、真贋を吟味していく。
受け取った品はやはりグレイズたちが使用していたモノのようであった。
ムエルに任せ軌道に乗りかけていたこのブラックミルズの闇市をぶっ壊した男の呆気ない最後に思わず笑みが零れるのがこらえきれない。
「ククク、あの男らしい最後だな。野良犬は野良犬らしくダンジョンで果てたか。よし、報告は受け取った。これより、すぐにアルガド様に報告をしにいく。お主らはこの宿舎で傷を癒せ。追って恩賞の沙汰もあるとおもう」
私は受け取った品を従者へ手渡すと、報告に訪れた男たちを下がらせた。
その後、すぐにアルガドへ面会を求め、馬車に飛び乗り彼の屋敷に向けて一路、馬を駆けさせていった。
アルガドの屋敷に到着すると、昨日夜遅くに実家からブラックミルズに帰ってきていたアルガドが、眠そうな顔をして応接室にマリアンを伴い入室してきた。
寝巻のままの様子から、日が天高く昇り始めている今の時間まで眠っていたようである。
「お休みのところ申し訳ありません。吉報が舞い込みましたので、すぐにでもアルガド様の耳に入れようと」
「実家から舞い戻ってきた疲れから解放される報告だと期待してよいか?」
アルガドは眠そうな目をこすりながら、応接間の椅子にだらしなく腰をかける。
今回の件を報告すれば、もはやブラックミルズで冒険者ギルドのギルドマスター兼領主の息子という立場に抗う者は存在せず、裏で行っている闇市も公認の市として常設を認められる可能性もあるのだ。
そうなれば、闇市を仕切らせてもらえるのはフラマー商会であり、アルガドに上納金を収めたとしてもあり余る金が手元に残るはずである。
今回の報告をすれば、それは遠くないうちに実現されるものと思い、思わず頬が緩むのが隠せないでいた。
「ははっ! アルガド様が待ちかねていた報告でございます。抹殺指示を出したグレイズ及びメラニア嬢、捜索に参加した者たちは全員が第二二階層の不死王の宮殿に飛ばされ、ノーライフキングによって魂を吸われてダンジョンの一員になったそうです。うちが雇って派遣した暗殺者や冒険者たちがその最後を確認したと申し、遺品とともに引き上げて参りました」
応接間のテーブルの上にグレイズたちの遺品を並べて置いていく。
その一つ一つを確認するように視線を向けるアルガドの顔に邪悪ともいえる笑みが広がっていった。
「ははは、はぁーはっあはあぁ!! ざまぁみろっ!!! わたしを邪魔するから天罰が下ったのだ!!! あのクソ忌々しいグレイズもメラニアも居なくなったとなれば、後は好き勝手にやっても誰も文句は言うまい。父上も宰相閣下との権力闘争で忙しいのでな。これでわたしはマリアンと贅沢三昧の生活に浸れるはずだ。ヴィケット、闇市は大々的に行え、人の売買も許す。稼げるだけ稼ぎまくれ! 取り締まる側はわたしの手の者だし邪魔をする者はいなくなった」
アルガドが魔物に憑りつかれたかのように目を見開いて大笑いをしたかと思うと、私が待ち望んでいた許可をしてくれていた。
これで、ブラックミルズの闇市は常設化され、衛兵隊の宿舎において大々的に大手を振って開催されることになるだろう。
そうなれば、収入は今までの数倍にまで膨らむと思われた。
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「手はずは任せる。衛兵隊にはダンジョンの封鎖を解くように通達を出しておくから、すぐにダンジョンに潜らせて、品物を補充していけ。冒険者ギルドもすでに十日近く開店休業状態だから稼ぎの損失を埋めてくれ」
「ははっ! 心得ました」
私は興奮気味のアルガドに辞去の挨拶をすると、足早に衛兵隊の宿舎に戻り、闇市へ並べる品物を補充させるため、帰還したばかりの冒険者たちをダンジョンに送り込むことにした。
そして、依頼を果たした暗殺者たちには口止め料として大量の金銭を渡し、王都へと引き上げてもらうことにしていた。
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