117 / 232
第二部 第一四章 真実
1
しおりを挟む
ノーライフキングを撃退することに成功した俺たちは、上のフロアにいたジェネシスとメラニア、それに若い冒険者たちのグループに追いつく。
彼らはノーライフキングから退避しろといった俺の指示をキチンと守り、整然と隊列を組んで『おっさんず』を先頭に地上を目指していてくれた。
「グレイズ様……。ご無事で何よりです。あの魔物を撃退されたようですね……。それに、その方たちって、一度骸骨に……」
俺たちの姿を見て歩みを止めた集団からメラニアとジェネシスがこちらに出てきていた。
二人は一度、ノーライフキングに魂を吸われ、命を落としたはずの暗殺者たちやSランクの冒険者たちの姿を見てビックリした顔をしている。
「ああ、色々とあってな。今のところは生きているのさ。メラニアの件も色々と協力を申し出てくれているんで、今日はここで野営しようと思う。なんだか、このまま地上に戻るときな臭い気もするからな。情報だけは先に収集しておいた方がいい」
「確かヴィケットとかいう男の指示で、姉上たちを殺そうという話しだったな。王都の暗殺者ギルドや腕利きのSランク冒険者を使っているとなると、黒幕はチンケな商人如きではあるまい」
ジェネシスは、男たちを睨みつけていく。
彼からしてみれば、散々身内を殺された組織の男たちであり、最後の身内である姉を殺そうとした憎い相手であったのだ。
「それも、含めてな。飯を喰いながらやろうと思う。今日は色々とあり過ぎて、腹が減っているんだ」
ノーライフキングとの戦いで体力こそ余っているが、回復魔法を大量に使ったので魔力が減っている。
魔力回復ポーションを飲んだものの、腹の方は固形物を欲していたのだ。
「おぅ、無事に戻ってきたな。お前らなら、撃退できると思っていたぞ。今、野営と聞いたが、ここで今日は休むか?」
後続が止まったことで、様子を探りにきたグレイが、野営の準備の有無を聞いてきた。
すでに低層階まで帰還しているため、大きな危険は無いと思われるし、色々とあって疲れたまま地上に戻るよりは、一旦ここで休息をとり情報を集め、地上での行動予定を決めた方が良いと思われる。
「ああ、そうする。野営準備に取りかかるとしよう。こいつらも、飯は食わせてやらんといかんからな」
俺は捕えている男たちの方を見て、肩を竦めていた。
さすがにこいつらも飯抜きというわけにもいかんからなぁ。上に戻るまでに餓死されても困る。
「グレイズさんは、相変わらず甘い。余ならそのような者たちは飯抜きで行軍させ弱らせてやるが……」
「まぁ、そう言うな。死なれたら情報も引き出せないだろ。それにこいつらも地上に戻れば罪に服すると言っているんだ」
「甘いですね。でも、それが余の知っているグレイズさんだがな。その男たちはグレイズさんが捕まえたので、グレイズさんの好きにせよ」
ジェネシスも男たちを憎んではいるようだが、殺す気はないようで、彼らの処遇を俺に一任してくれた。
処罰を任せられたが、俺たちが地上に戻り、冒険者ギルドに突き出せば、彼らはこの地の領主であるクレストン家の当主の判断で処罰されることになるはずだ。
甘いとは思われるかもしれんが、俺が刑罰を決めればそれは私刑でしかない。それに一度死んだ身であるし、これ以上のことは領主に任せるべき事柄である。
「野営ってなれば、早速準備しないとね。みんなー。野営するらしいわよ。ほら、荷物おろして」
メリーが前にいた若い冒険者の集団に野営の指示を出していく。
店を切り盛りしてきたメリーであるため、この脱出行の期間中に若い冒険者たちからの信頼を得て彼らのまとめ役におさまっていたのだ。
仕切りに関しては明らかに俺よりも手早く、確実にみんなへ仕事を割り振れる頼れる人材になっている。
「グレイズさんも背負っている荷物から食材出してねー。ファーマ、カーラ、アウリース、あとメラニアもご飯部隊引き連れてご飯の準備よろしくー」
「はーい。カーラさん、アウリースさん、メラニアさん、ご飯の準備しよー」
「はい、じゃあ、私はお水用意しますね」
「グレイズ、背負子から食材取りたい。おろして」
「皆さん、わたくしもお手伝いします」
メリーの仕切りで食事の準備と野営の準備が始まり、周囲はガヤガヤと喧騒に包まれていく。
荷物を降ろした俺にはお仕事が割り振られなかったので、先ほどから言っていた男たちに事情をすべて話してもらうことにした。
リーダー格の冒険者の男と暗殺者のリーダーの男の二人の縄を解き、俺の前に連れてくる。
ジェネシスもお役目を振られなかったようで隣で立っていた。
「さて、フラマー商会のヴィケットが依頼者だと言うことだが、なんで俺たちを皆殺しにしろと依頼された?」
男二人は俺の力を目の当たりにして、まともに目を合わせようとせず、下を向いたままでいる。
心なしか怯えているようで、肩が震えているように見えていた。
彼らはノーライフキングから退避しろといった俺の指示をキチンと守り、整然と隊列を組んで『おっさんず』を先頭に地上を目指していてくれた。
「グレイズ様……。ご無事で何よりです。あの魔物を撃退されたようですね……。それに、その方たちって、一度骸骨に……」
俺たちの姿を見て歩みを止めた集団からメラニアとジェネシスがこちらに出てきていた。
二人は一度、ノーライフキングに魂を吸われ、命を落としたはずの暗殺者たちやSランクの冒険者たちの姿を見てビックリした顔をしている。
「ああ、色々とあってな。今のところは生きているのさ。メラニアの件も色々と協力を申し出てくれているんで、今日はここで野営しようと思う。なんだか、このまま地上に戻るときな臭い気もするからな。情報だけは先に収集しておいた方がいい」
「確かヴィケットとかいう男の指示で、姉上たちを殺そうという話しだったな。王都の暗殺者ギルドや腕利きのSランク冒険者を使っているとなると、黒幕はチンケな商人如きではあるまい」
ジェネシスは、男たちを睨みつけていく。
彼からしてみれば、散々身内を殺された組織の男たちであり、最後の身内である姉を殺そうとした憎い相手であったのだ。
「それも、含めてな。飯を喰いながらやろうと思う。今日は色々とあり過ぎて、腹が減っているんだ」
ノーライフキングとの戦いで体力こそ余っているが、回復魔法を大量に使ったので魔力が減っている。
魔力回復ポーションを飲んだものの、腹の方は固形物を欲していたのだ。
「おぅ、無事に戻ってきたな。お前らなら、撃退できると思っていたぞ。今、野営と聞いたが、ここで今日は休むか?」
後続が止まったことで、様子を探りにきたグレイが、野営の準備の有無を聞いてきた。
すでに低層階まで帰還しているため、大きな危険は無いと思われるし、色々とあって疲れたまま地上に戻るよりは、一旦ここで休息をとり情報を集め、地上での行動予定を決めた方が良いと思われる。
「ああ、そうする。野営準備に取りかかるとしよう。こいつらも、飯は食わせてやらんといかんからな」
俺は捕えている男たちの方を見て、肩を竦めていた。
さすがにこいつらも飯抜きというわけにもいかんからなぁ。上に戻るまでに餓死されても困る。
「グレイズさんは、相変わらず甘い。余ならそのような者たちは飯抜きで行軍させ弱らせてやるが……」
「まぁ、そう言うな。死なれたら情報も引き出せないだろ。それにこいつらも地上に戻れば罪に服すると言っているんだ」
「甘いですね。でも、それが余の知っているグレイズさんだがな。その男たちはグレイズさんが捕まえたので、グレイズさんの好きにせよ」
ジェネシスも男たちを憎んではいるようだが、殺す気はないようで、彼らの処遇を俺に一任してくれた。
処罰を任せられたが、俺たちが地上に戻り、冒険者ギルドに突き出せば、彼らはこの地の領主であるクレストン家の当主の判断で処罰されることになるはずだ。
甘いとは思われるかもしれんが、俺が刑罰を決めればそれは私刑でしかない。それに一度死んだ身であるし、これ以上のことは領主に任せるべき事柄である。
「野営ってなれば、早速準備しないとね。みんなー。野営するらしいわよ。ほら、荷物おろして」
メリーが前にいた若い冒険者の集団に野営の指示を出していく。
店を切り盛りしてきたメリーであるため、この脱出行の期間中に若い冒険者たちからの信頼を得て彼らのまとめ役におさまっていたのだ。
仕切りに関しては明らかに俺よりも手早く、確実にみんなへ仕事を割り振れる頼れる人材になっている。
「グレイズさんも背負っている荷物から食材出してねー。ファーマ、カーラ、アウリース、あとメラニアもご飯部隊引き連れてご飯の準備よろしくー」
「はーい。カーラさん、アウリースさん、メラニアさん、ご飯の準備しよー」
「はい、じゃあ、私はお水用意しますね」
「グレイズ、背負子から食材取りたい。おろして」
「皆さん、わたくしもお手伝いします」
メリーの仕切りで食事の準備と野営の準備が始まり、周囲はガヤガヤと喧騒に包まれていく。
荷物を降ろした俺にはお仕事が割り振られなかったので、先ほどから言っていた男たちに事情をすべて話してもらうことにした。
リーダー格の冒険者の男と暗殺者のリーダーの男の二人の縄を解き、俺の前に連れてくる。
ジェネシスもお役目を振られなかったようで隣で立っていた。
「さて、フラマー商会のヴィケットが依頼者だと言うことだが、なんで俺たちを皆殺しにしろと依頼された?」
男二人は俺の力を目の当たりにして、まともに目を合わせようとせず、下を向いたままでいる。
心なしか怯えているようで、肩が震えているように見えていた。
2
お気に入りに追加
9,222
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。