おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第八章 メラニア

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 メラニアらしき人物が消えていったのは歓楽街の裏通りと言われる人通りの少ない場所で、アルガドが犯罪組織壊滅作戦を実行するまでは、犯罪者たちの巣窟として夜に女性が一人歩きできる場所ではなかった。

 最近は犯罪者集団が捕縛され、治安の向上が見られているが、それでも夜に女性の一人歩きは推奨することはできない。

 こんな時間にメイドを使いに出す家はどこだ。って、メラニアはカーラ曰く、ギルドマスターであるアルガドの家のメイドらしい。

 荷物を持って商店街に送った際、本人はかたくなに家の名前を出さなかったが、時期的にアルガドの家くらいしかメイドを雇う新顔の裕福な家はなかった。

 会談ではいい人そうだったがな。あの色気過剰なメイド長がメラニアを毛嫌いして苛めているのであれば、主人であるアルガドに気付かれないようにやっているんだろうか……。何事も無ければいいが。

 メラニアらしき人物を追って裏通りを探索していく。しばらくすると、先ほど見つけた妙に気配を消して隠れるように行動していた男たちの集団を見つけていた。

 あいつら、あんな奥まった路地で何をしてるんだ?

 裏通りの更に奥まった路地に集まる気配を消した男たち。今までなら犯罪者集団という選択肢一択だったが、今は大量捕縛されそういった存在は一層されている。

 それに地上で悪事を行う集団にしては妙に手練れで、気配を消したり、周囲への警戒などもしてベテラン冒険者といった感じを覗かせていた。

 他の場所を探そうと立ち去ろうとすると、男たちの集団の気配が一変していた。

 それまでの抑えた気配から、戦闘状態とも言えるほどまで高まったのだ。と同時にそれまで全く感じなかった魔物の気配までしている。

 地上で魔物気配だとっ! 一体何が起きていやがるっ! このままじゃ街に被害が出ちまうぜ。

 不意に現れた魔物の気配に対処するべく、俺は男たちがいる奥まった路地へ急行することにした。


 路地に到着すると、そこに居たのは黒一式の装備をした男たちと、鋭く尖った爪と蝙蝠のような翼、太くねじれた角をもった人型の魔物であるグレーターデーモンが激闘をしている場面にであった。

 そして、その場所にボロボロのメイド服を着たメラニアが倒れているのを見つけた。

 マジかっ! 深層階にしか出ないグレーターデーモンがなんで地上にいるんだよっ!

 男たちも地上にグレーターデーモンが出るとは思っていなかったようで、武器を手に取っているものの、かなり怯んだ様子を見せていた。

「こんな話は聞いていないぞ。クソ、女一人痛めつけるだけということで軽装できたのが裏目に出たか」

 男の一人がグレーターデーモンを見て悪態を吐いているが、なかなかの手練れらしく、敵からの攻撃は見事に避けていた。

 俺は男たちとグレーターデーモンの乱戦に紛れ、一気にメラニアの側へ駆け寄っていく。

「メラニア。大丈夫か!」
 
 地面に倒れて服が汚れていたものの、それ以外に外傷等は見られず、呼吸も胸が上下しているようなのでありそうだった。ただ、意識だけが混濁しているようでうわごとを発していた。

「わたくしは……国の安泰のために……命を捧げなければ……。お父様、わたくしは負けません……きっと、いくさの火種を消して……」

 混濁した意識下のメラニアがうわごとのように『国の安泰』という言葉を発していた。

 一介のメイドが『国の安泰』とは、一体どうなっているんだ。

 混濁した意識下でうわごとを言うメラニアの素性に怪しさを感じた。だが、この場に放置することは安全上危険である。

「メラニアの素性より、今は助けるのが先決だな。外傷のない意識の混濁状態を察するに魔力切れの昏倒だろうか」

 俺はメラニアの症状は魔力切れによる昏倒だと推察した俺は、万が一に備えていつも装備しているベルトポーチから魔力回復のポーションの小瓶を取り出す。

「メラニア、コレを飲め」

 意識が混濁しているが、気を失っているわけではないので、小瓶の飲み口のコルクを抜くと、メラニアを抱き起し中身を口元に流し込んでいく。

 その間もグレーターデーモンは暴れ回り、範囲魔法をぶっ放しては男たちをメラニアの傍に近づけないようにと追い払うような戦いを見せていた。

 あのグレーターデーモン、もしかしてメラニアを守っているのか?

 人気のない歓楽街の裏通りの奥まった路地とはいえ、グレーターデーモンと手練れの男たちが戦いを続けており、被害は周囲の家にも出始めている。犯罪者が摘発されてほとんど無人化されているのがせめてもの幸いだった。

「クソ、このグレーターデーモンはダンジョンの奴より手強いぞ。この装備じゃ歯が立たん。一旦引くぞ」

 リーダー格の男が撤退を指示すると男たちの集団は、グレーターデーモンとの抗戦を諦めて、手早く集まるともの凄い勢いで駆け去っていった。

 その動きはどう見ても冒険者としか思えず。かなりの実力を持った集団に感じられる動きをしていた。

 あんな手練れの冒険者がなんでメラニアを襲うんだ。謎だらけでさっぱり事情が理解できんぞ。

 冒険者の一団と思われる男たちが去ると、暴れていたグレーターデーモンが動きを止め、まばゆい光を発したかと思うと地面に現れた魔法陣に吸い込まれて消えていくのが見えた。
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