おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第八章 メラニア

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 容姿こそ貴族のボンボンのような感じだが、知性を感じさせる新任のギルドマスターとの会見を終え、下で待っていたみんなと合流した時には日が傾き始め、夕刻が迫っていた。

 会談が伸びると感じたことで、ミリーがすでに先に軽い昼食を済ませてくれていたため、そのままみんなで酒場に繰り出して夕食をとり、お腹も満たされ、ほろ酔い気分で歓楽街を抜けて家に向かっていた。

「それにしても、アルマさんに会いたかったなぁー。グレイズさんだけ会えたの。いいなぁー」

 先頭を歩くファーマがしきりにアルマに会いかったようで残念がっている。

「色々とアルマ忙しい。でも、グレイズに聞いた話だと身体危ない、今度眠らせて拉致する」

「カ、カーラさん!? 拉致はマズいと思います。一応、冒険者ギルドの幹部職員の方なんで。あっ、そうだ。商店街連合会の会長になったグレイズさんからのご招待って形ならどうですかね」

「あら、それはいいアイディアね。アルマの息抜きがてらお食事会を企画しようかしら、大事な取引先の重役だし、商店街にとっても大事な人だからね。グレイズさんの接待付きとして企画していいかしら?」

 皆それぞれ、俺が話したアルマの様子を聞いて心配をしているようで、いつの間にかアルマを休養させる企画が立ち上がっている。

 確かにあの疲労感を漂わせたアルマをあのまま仕事させると、ぶっ倒れかねない。

「まぁ、いいかな。企画していいよ」

「おっけい。じゃあ、日程調整と招待状の発想は私がしておくわ。公式な招待状だからお仕事だしね」

 メリーがニコリと笑って、企画立案を請け負ってくれていた。

 そういえば、俺の肩書きを使った招待状ならば、食事会参加も仕事ではあるな。そういった意味で言えば肩書きがあってよかったとも思える。

「いやったぁ! アルマさんと一緒に食事ー! ファーマの考えたレシピを試食してもらうんだー」

「よし、エルフ特製の栄養満点ドリンク用意する」

「ご招待なら、グレイズさんもバリっとした正装をしてもらわないと。生地屋さんと仕立て屋さんに注文しておかないと」

 メリー以外の三人もアルマを招待する食事会を楽しみにしているようで、相手からの返事すら来ていないに準備を始めだそうとしている。

 そんな風にワイワイと喋りながら歓楽街を歩いて行く。

 アルガドの犯罪組織壊滅作戦によって治安は良くなってきているが、歓楽街は探索を終えて戻り、酒場でしこたま飲んで酔った冒険者たちが多く徘徊しているため、喧嘩などが多く、か弱い女性が一人で歩くには危ない場所ではあった。

 そんな場所柄、怪しげな男たちが多い。その中でも異様に気配を消して歩く集団の存在に気が付いた。

 ファーマも俺とどうように気配を消して歩く集団に気が付いたらしく、立ち止まって俺の袖を引いていた。

 生憎今日は、ハク一人で幼女女神に会いに神殿に行っていて同行していないため、ハクを通しての思念通話はできないでいる。

 まぁ、無くてもハンドサインは探索の基本だから、みんなには教えてあるがな。

 『止まれ』のサインと『注意』のサインを出して、みんなに警戒を促す。

 今日はオフの日であったため、皆一様に軽装であるため、敵対する者でなければ、わざわざ手を出す必要もないのだ。

 妙に気配を消した集団を詳しく観察していく。一〇名ほどの男だけの集団だが、訓練されているのか、気配を消しつつ、お互いが周囲の警戒に当たりながら移動していた。

 その姿はまるで超ベテランと言われる冒険者で構成されたパーティーの動きのように感じられた。

 今のところこちらの気配は察知されていないようで、集団は周囲を警戒しつつ、人気の少ない裏通りを向かう道に入っていった。

「どうやら、裏通りに入っていったようだ。それにしても、冒険者っぽくも感じるが、それにしては妙に厳重に周囲を警戒して気配を消していたし、黒一色の地味な装備を纏って、まるで誰にも見られたくないと言わんばかりな格好をしていたな」

「変な人たちだったねー。ファーマ、あんなに気配が分かりにくい人たち始めてだったよ」

「グレイズさんが止まれと注意のサインを出されたから、止まっていましたけど、誰かいたんですか? 私には全く見えなかったんですが」

「私もこう暗いと見えなかったわね」

「私も見えない。何があった?」

 俺とファーマ以外は気配と姿を見られなかったようだ。ランタンの光も最小限に絞って黒い一式の装備と気配を消したら、ある程度の明るさのある歓楽街とはいえ見つかりにくい。

「気配を消しておかしな格好をした集団がいてな。夜も更けた歓楽街という場所柄も考えて、用心しただけさ。どうやら、俺の取り越し苦労だったようだ。さて、帰るとしよう」

「最近は治安が良くなってきていたから忘れそうになるけど、ここは歓楽街だものね。用心しないと」

 妙に気配を消した集団は裏通りに去ったようで、俺たちへ危害を加える者ではないと判明したので、再び家に向けて歩き始めだそうとした時――

 男たちが消えていった道にチラリと視線を送ると、視界の端にボロボロのメイド服を着たメラニアの姿が見えたような気がした。

 本当に一瞬であり、見間違いかもしれないし、似た他人かもしれないが、なんだかとても胸騒ぎがした。

 だが、今俺が様子を見に行くと言えば、軽装のままみんなが付いてくると言いだしかねない。

 何かトラブルに巻き込まれてしまえば、装備を持たないみんなに怪我をさせてしまうかもと思うと連れて行く選択肢を削除した。

「おっと、すまん。催したようだ。悪いがみんなは先に行っていてくれ。後で追いつく」

「もう、だから店を出る前にしておいたらと聞いたでしょ。仕方ない、みんな先に帰るわよ。グレイズさんも早く来てね」

「すまん、すまん。今度からはメリーの言う通りにしておく」

 メリーがみんなを連れて先に家に向かって歩き出していった。俺はすぐに裏通りへの道に入ると、視界に入ったメラニアが進んだと思われる道へ入っていく。
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