上 下
72 / 232
第二部 第六章 新たな装備

4

しおりを挟む
「あ、あの。私にも選んでもらえますか」

 恥ずかしそうにコートの裾を閉じるアウリースだが、恥ずかしがられるとこちらとしても意識してしまい恥ずかしくなる。

「あ、ああ。いいぞ」

「私は魔法の威力を上昇させた方がいいですよね。このデモンズコートと併せて威力を高めて火力を増やした方がパーティーとしても楽になるでしょうし」

 アウリースが言う通り、魔術師である彼女の魔法威力を増大させれば、知力S+との兼ね合いで更なる火力になる。

 初級魔法ですらかなりの威力を発揮するアウリースの魔法が更に魔物に対しての脅威になるはずだ。

「そうだな。なら、ちょっと見繕う。待っててくれ」

 アウリースの魔法威力を上げる杖は、さきほどのカーラの杖を探した際にチェックしておいたので、すぐに見つけ出すことができていた。

 漆黒の杖。大きな黒い水晶をはめた金属製の杖で魔法威力が増大する杖であった。

「漆黒の杖がちょうどいいと思う。これなら、予算内で収まるし、上がる威力はそのコートと一緒ならかなり上昇する」

 杖を受け取ったアウリースが、はめ込まれている黒い水晶を見て眼をキラキラとさせていた。

「綺麗な杖ですね。グレイズさんが選んでくれたのなら、これでいいです」

 アウリースは俺の選んだ杖を喜んでくれたようで、そっちに夢中になって、コートの中身がチラチラしていたので、そっと視線を外しておいた。

 すると隣に来たメリーがニコニコ顔をしていた。

「アウリースもいい武器をえらんでもらったようだし、私のは何を選んでくれるのかしら? グレイズさん」

「メリーは片手武器だと思うな。ちょっと待ってくれ」

 アウリースが喜んでいるのをチラ見していたメリーも武器を選んで欲しそうにしていた。

 大盾を装備する関係上、片手で扱える武器が選択肢として残る。剣か打撃武器かと聞かられれば、前衛にファーマとハクがいる関係上打撃武器の方がパーティーの攻撃の多様性に繋がる。

 なので、今と同じメイス系で予備の回復魔法の威力が上がるものを探すことにした。

 目的に適うメイスを探して倉庫内をくまなく動きまわる。メイスもまた意外と需要が低く、あまり数は揃えていなかった。

 だが、仕入れ担当のメリーから見せてもらった販売品リストに目的のメイスがあったことを覚えていたので、倉庫内にあるはずであるのだ。

「あったぞ。これだ。ブラッティメイス。これがいいと思うぞ」

 真紅に染められた金属製のメイスが、メリーの装備にピッタリと一致する武器であると思われる。

「あら、結構派手ね。何々、魔物の血を一定量吸わせると回復魔法の効果上昇付与が発動する品物かぁ」

 鑑定スキル発動させたメリーが手渡した武器の効果を確認していく。

「前衛で戦いつつ、回復もこなすメリーにはピッタリだと思うが」

「そうね。回復魔法はオマケ程度だけど、少しでも威力が増すなら、これもありだと思うわね。ちょっと派手なのが気になるけども」

 真紅のメイスを構えたメリーであるが色合い的に一番目立つ格好になっている。

 盾役として前衛に立つ以上、求められるのは攻撃力よりも耐久力であり、自らの魔法で傷を癒すことができればより長い期間を耐えることができるはずである。

「これで、全員の装備が整ったな。今、選んだ装備なら中層階も突破できるかもしれんぞ。さって、後は魔法書か……」

 みんなの装備が選び終わったので、スポンサー料で浮く予定の資金を入れた額で魔法書を選ぶことにした。

 だが、魔法職二人はすでに装備選びの際に自分が欲しい魔法書を下見していたようで、それぞれが欲しい魔法書を差し出していた。

「グ、グレイズさんっ! こ、この連鎖の雷チェインライトニングが今なら一八〇万ウェルで買えるんですよねっ! ねっ! デモンズコートと漆黒の杖とこの連鎖の雷チェインライトニングがあったら、深層階の敵もバリバリ倒せるはずですよねっ!」

 アウリースが差し出した魔法書は、ゾンビ討伐の際に諦めた連鎖の雷チェインライトニングの魔法書であった。

 連鎖の雷チェインライトニングの売値二〇〇万の上級魔法書で二割引きでも一六〇万ウェルという大金だ。浮いた装備代が四人分が、ほぼこの一冊で飛んでいく勘定になる。

 しかし、アウリースの言うように今回更新した装備と、この上級魔法があれば、後方からの範囲魔法だけで敵を撃滅できる可能性が増えるはずであった。

「この前は私、大地の回復アースヒールもらった。今回は我慢してもいい」

 カーラが持っていたのは、魔法反射リフレクションの魔法書を棚に戻そうとしていた。カーラの持つ魔法反射リフレクションも中層階から増える魔法を放つ敵に対してはかなり有効な魔法書であり、重要度ではアウリースの選んだ魔法書と同じくらい重要な魔法書であった。

 もちろん、魔法反射リフレクションも上級魔法書で売値は一五〇万ほどする。

「あ、いや。カーラさんそういうわけには……。グレイズさんも皆さんで話し合うって言いましたし」

 アウリースは、カーラが魔法書をしまおうとしたのを見て、自分が差し出した魔法書をしまおうとしていた。

 一六〇万ウェルと一二〇万ウェル。総額二八〇万ウェル。買えない額ではない。

 今回の装備更新で一気に深層階まで到達し、Sランク冒険者まで駆け上る予定なので、魔法書に関しては出費を惜しむ気はなかった。

「よし、購入! メリーはどれ選ぶ?」

「あら? 即決なのね。私は体力が徐々に回復する回復の燐光ヒーリングライトくらいねー。私だと中級くらいが習得限度かな」

 メリーも物色していた魔法書を差し出していた。

「五〇万ウェルも……。グレイズさん、パーティー資金足りますか……。もう、三二〇万ウェル越えましたよ」

 アウリースがアワアワしていた。Aランクパーティーに所属していたとはいえ、資金難に苦しんでいた彼女からすれば、三二〇万ウェルというのは結構な金額に感じたのだろう。

 まぁ、ダンジョン販売でもらえた資金を分配して個人口座に近い額は貯まっているんだが。

「スポンサー料が入れば装備代二〇〇万ウェル浮くし、元々の予算一〇〇万ウェル。残り二〇万ウェルは俺のポケットマネーだ。安心しろ」

「ファーマのお小遣いも出すよー! みんな強くなって、早くSランク冒険者になろうねー!」

 魔法適性のないファーマもお金を出すと言ってくれたが、パーティーリーダーとしてここは俺が出させてもらうつもりだ。

「いいんですか……」

「さすが、グレイズ。持っている男」

「奢ってもらった分は、ダンジョン探索でグレイズさんを楽にさせてあげればいいのよ。ねー、グレイズさん」

「ああ、そうだな。みんなが強くなって、俺の仕事が無くなるのも少し寂しいが……」

 これでまた一段とみんなが強くなって、街の連中からヒモ生活しているって言われそうな気もするが、それで彼女たちが成長できるなら甘んじて、その評価も受け入れるべきだと思うようになっている。

「よし、買うもんが決まったから、装備はメリーに任せて帰るとするか」

「はーい。防具はスポンサー交渉してから屋号いれるんでね。預かっておくわ。さて、着替えてね」

 こうして、追放者アウトキャストのメンバーは装備を更新して、更なるパワーアップすることになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。