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第二部 第六章 新たな装備

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「あ、あの。私にも選んでもらえますか」

 恥ずかしそうにコートの裾を閉じるアウリースだが、恥ずかしがられるとこちらとしても意識してしまい恥ずかしくなる。

「あ、ああ。いいぞ」

「私は魔法の威力を上昇させた方がいいですよね。このデモンズコートと併せて威力を高めて火力を増やした方がパーティーとしても楽になるでしょうし」

 アウリースが言う通り、魔術師である彼女の魔法威力を増大させれば、知力S+との兼ね合いで更なる火力になる。

 初級魔法ですらかなりの威力を発揮するアウリースの魔法が更に魔物に対しての脅威になるはずだ。

「そうだな。なら、ちょっと見繕う。待っててくれ」

 アウリースの魔法威力を上げる杖は、さきほどのカーラの杖を探した際にチェックしておいたので、すぐに見つけ出すことができていた。

 漆黒の杖。大きな黒い水晶をはめた金属製の杖で魔法威力が増大する杖であった。

「漆黒の杖がちょうどいいと思う。これなら、予算内で収まるし、上がる威力はそのコートと一緒ならかなり上昇する」

 杖を受け取ったアウリースが、はめ込まれている黒い水晶を見て眼をキラキラとさせていた。

「綺麗な杖ですね。グレイズさんが選んでくれたのなら、これでいいです」

 アウリースは俺の選んだ杖を喜んでくれたようで、そっちに夢中になって、コートの中身がチラチラしていたので、そっと視線を外しておいた。

 すると隣に来たメリーがニコニコ顔をしていた。

「アウリースもいい武器をえらんでもらったようだし、私のは何を選んでくれるのかしら? グレイズさん」

「メリーは片手武器だと思うな。ちょっと待ってくれ」

 アウリースが喜んでいるのをチラ見していたメリーも武器を選んで欲しそうにしていた。

 大盾を装備する関係上、片手で扱える武器が選択肢として残る。剣か打撃武器かと聞かられれば、前衛にファーマとハクがいる関係上打撃武器の方がパーティーの攻撃の多様性に繋がる。

 なので、今と同じメイス系で予備の回復魔法の威力が上がるものを探すことにした。

 目的に適うメイスを探して倉庫内をくまなく動きまわる。メイスもまた意外と需要が低く、あまり数は揃えていなかった。

 だが、仕入れ担当のメリーから見せてもらった販売品リストに目的のメイスがあったことを覚えていたので、倉庫内にあるはずであるのだ。

「あったぞ。これだ。ブラッティメイス。これがいいと思うぞ」

 真紅に染められた金属製のメイスが、メリーの装備にピッタリと一致する武器であると思われる。

「あら、結構派手ね。何々、魔物の血を一定量吸わせると回復魔法の効果上昇付与が発動する品物かぁ」

 鑑定スキル発動させたメリーが手渡した武器の効果を確認していく。

「前衛で戦いつつ、回復もこなすメリーにはピッタリだと思うが」

「そうね。回復魔法はオマケ程度だけど、少しでも威力が増すなら、これもありだと思うわね。ちょっと派手なのが気になるけども」

 真紅のメイスを構えたメリーであるが色合い的に一番目立つ格好になっている。

 盾役として前衛に立つ以上、求められるのは攻撃力よりも耐久力であり、自らの魔法で傷を癒すことができればより長い期間を耐えることができるはずである。

「これで、全員の装備が整ったな。今、選んだ装備なら中層階も突破できるかもしれんぞ。さって、後は魔法書か……」

 みんなの装備が選び終わったので、スポンサー料で浮く予定の資金を入れた額で魔法書を選ぶことにした。

 だが、魔法職二人はすでに装備選びの際に自分が欲しい魔法書を下見していたようで、それぞれが欲しい魔法書を差し出していた。

「グ、グレイズさんっ! こ、この連鎖の雷チェインライトニングが今なら一八〇万ウェルで買えるんですよねっ! ねっ! デモンズコートと漆黒の杖とこの連鎖の雷チェインライトニングがあったら、深層階の敵もバリバリ倒せるはずですよねっ!」

 アウリースが差し出した魔法書は、ゾンビ討伐の際に諦めた連鎖の雷チェインライトニングの魔法書であった。

 連鎖の雷チェインライトニングの売値二〇〇万の上級魔法書で二割引きでも一六〇万ウェルという大金だ。浮いた装備代が四人分が、ほぼこの一冊で飛んでいく勘定になる。

 しかし、アウリースの言うように今回更新した装備と、この上級魔法があれば、後方からの範囲魔法だけで敵を撃滅できる可能性が増えるはずであった。

「この前は私、大地の回復アースヒールもらった。今回は我慢してもいい」

 カーラが持っていたのは、魔法反射リフレクションの魔法書を棚に戻そうとしていた。カーラの持つ魔法反射リフレクションも中層階から増える魔法を放つ敵に対してはかなり有効な魔法書であり、重要度ではアウリースの選んだ魔法書と同じくらい重要な魔法書であった。

 もちろん、魔法反射リフレクションも上級魔法書で売値は一五〇万ほどする。

「あ、いや。カーラさんそういうわけには……。グレイズさんも皆さんで話し合うって言いましたし」

 アウリースは、カーラが魔法書をしまおうとしたのを見て、自分が差し出した魔法書をしまおうとしていた。

 一六〇万ウェルと一二〇万ウェル。総額二八〇万ウェル。買えない額ではない。

 今回の装備更新で一気に深層階まで到達し、Sランク冒険者まで駆け上る予定なので、魔法書に関しては出費を惜しむ気はなかった。

「よし、購入! メリーはどれ選ぶ?」

「あら? 即決なのね。私は体力が徐々に回復する回復の燐光ヒーリングライトくらいねー。私だと中級くらいが習得限度かな」

 メリーも物色していた魔法書を差し出していた。

「五〇万ウェルも……。グレイズさん、パーティー資金足りますか……。もう、三二〇万ウェル越えましたよ」

 アウリースがアワアワしていた。Aランクパーティーに所属していたとはいえ、資金難に苦しんでいた彼女からすれば、三二〇万ウェルというのは結構な金額に感じたのだろう。

 まぁ、ダンジョン販売でもらえた資金を分配して個人口座に近い額は貯まっているんだが。

「スポンサー料が入れば装備代二〇〇万ウェル浮くし、元々の予算一〇〇万ウェル。残り二〇万ウェルは俺のポケットマネーだ。安心しろ」

「ファーマのお小遣いも出すよー! みんな強くなって、早くSランク冒険者になろうねー!」

 魔法適性のないファーマもお金を出すと言ってくれたが、パーティーリーダーとしてここは俺が出させてもらうつもりだ。

「いいんですか……」

「さすが、グレイズ。持っている男」

「奢ってもらった分は、ダンジョン探索でグレイズさんを楽にさせてあげればいいのよ。ねー、グレイズさん」

「ああ、そうだな。みんなが強くなって、俺の仕事が無くなるのも少し寂しいが……」

 これでまた一段とみんなが強くなって、街の連中からヒモ生活しているって言われそうな気もするが、それで彼女たちが成長できるなら甘んじて、その評価も受け入れるべきだと思うようになっている。

「よし、買うもんが決まったから、装備はメリーに任せて帰るとするか」

「はーい。防具はスポンサー交渉してから屋号いれるんでね。預かっておくわ。さて、着替えてね」

 こうして、追放者アウトキャストのメンバーは装備を更新して、更なるパワーアップすることになった。
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