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第二部 第五章 成長と暗雲
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目覚めるとそこは神殿の祭壇であった。
「お帰りになられたようで。アクセルリオン神様からなんぞ頼まれましたかな?」
神殿長がニンマリとした顔でこちらを見ているため、今日の呼び出し内容を事前にアクセルリオン神から告げられていたに違いない。
「大丈夫だ。ちょっと世間話をしてきただけさ。それはそうと、みんなのステータスは確認できたのかい?」
「そちらは滞りなく終わっておりますぞ。皆さん驚くほどに成長しております。さすがは『天啓子』といったところでしょうか。ステータスの伸びが凄いですぞ」
神殿長は頼んでおいたみんなのステータスチェックをしてくれていたようだ。
「グレイズさーん! ファーマのを見てー!」
一番最初にステータスを書いた用紙を持ってきたのはファーマであった。武闘家としてすでに敵の攻撃を回避しまくる頼もしい前衛になりつつあるため、どれほどの成長を見せているか楽しみであった。
「おぉ、ファーマからか」
用紙を受け取ると内容に目を落としていく。
名前:ファーマ 種族:獣人族 年齢:一五歳 性別:女性
ジョブ:武闘家
ステータス
筋力:D+→C 素早さ:S+→S+ 器用さ:F+→E 知力:G+→E+ 運:C+→C+
ファーマのステータスはかなり成長していた。一般の冒険者では数年かかるであろうステータスの上昇量が記されていた。
半年ほどでこの上昇量は驚きの量であった。
特に成長著しいのは知力でE+まで上昇しており、ダンジョン探索の無い日にカーラやメリー、アウリースに読み書きと計算の勉強を見てもらっているのが成長に好影響を与えているのかもしれない。
最近では解読不明だった文字もキチンと読み取れる文字に変化しており、ファーマの知識収集欲はカーラに次ぐものとなっている気がする。
「凄いな! ファーマ! 大成長じゃないか!」
わくわくとした顔で俺の様子を見ていたファーマの頭をなでてやる。
「ファーマは頑張ったよー。みんなのおかげもあるけどー。えへへー」
喜ぶファーマの顔を見ていると、ほっこりと心が和んでいく。かつて、パーティーメンバーからアホの子と言われ、追放されて自信なさげに泣いていたファーマはそこにおらず、何事にも興味を示し、天真爛漫で人懐っこい少女がそこにいた。
ファーマのこの笑顔を見られただけでも追放者を作って良かったと思う。
「グレイズ、私のも見る。有能さが更に成長したぞ」
ファーマを褒めていたら、カーラがおずおずと自分の用紙を差し出してきていた。
受け取った紙に視線を落としていく。
名前:カーラ 種族:エルフ族 年齢:一六歳 性別:女性
ジョブ:精霊術士
ステータス
筋力:F→F+ 素早さ:F+→E+ 器用さ:S+→S+ 知力:B+→A 運:E+→D
カーラもまた成長が著しかった。魔法職として必須となる知力が更に上昇しており、習得できる魔法の種類が更に拡大している。回復支援の役として今やうちの追放者の要にもなりつつあるカーラであるため、魔法の選択肢が増えるのはとても頼りになるはずだ。
ステータスもランクの高いものは上がりにくいと言われているため、B+→Aへの成長を半年で成し遂げるのは驚異的であるのだ。
「カーラも凄い成長しているぞ。知力のアップは凄い一言に尽きるな」
「私、優秀。グレイズ、頭撫でていい」
ファーマと同じく、カーラの頭をなでてやる。言葉が不自由なのもあり、自己中心的な考えで行動しパーティーメンバーから追放されていたカーラであるが、このパーティーでは冷静な判断を下せる良い支援役となっていた。
「私のも見てもらえますでしょうか……。あ、あんまり成長してないですけど……」
カーラとファーマを羨ましそうに見ていたアウリースも恥ずかしそうな顔で用紙を差し出す。
名前:アウリース 種族:魔人族 年齢:一八歳 性別:女性
ジョブ:魔術師
ステータス
筋力:D+→D+ 素早さ:C+→C+ 器用さ:B→B+ 知力:S+→S+ 運:D+→C+
仲間になる前から天啓子の力が発揮されていたアウリースは前の二人よりは成長の度合いは低いが元々のステータスが高いので、成長するだけでも一般人離れしている。
一般的冒険者であれば、ステータスはCかC+止まりになる者が多く、年齢とともにステータスも落ちていく傾向にあるため、この若さでこのステータスはかなり恵まれているのだ。
「アウリースの魔法にはいつも助けられているからな。これからももっとお世話になりそうな気がするぞ」
「あ、あの。私も……」
アウリースまで俺に頭をなでてもらいたいようで、上目遣いで求められていた。少し恥ずかしさを感じたが、アウリースが色々とメリーやファーマ、カーラの間に立ってカバーしてくれているのを知っているため、ここは恥ずかしさをこらえ頭を撫でることにした。
「いいわね。三人とも、もちろん私にもしてくれるんでしょ? グレイズさん?」
メリーが用紙を差し出してニヤリと笑っている。明らかに自分もして欲しいと言いたげである様子だ。
受け取った用紙に目を通していく。
名前:メリー 種族:人族 年齢:二五歳 性別:女性
ジョブ:神殿騎士
ステータス:筋力:S+→S+ 素早さ:G+→F 器用さ:D→D 知力:C→C+ 運:D+→D+
仲間になって余り期間が過ぎていないメリーの成長度合いは他のメンバーには劣るものの、ついこの間冒険者になった者としては驚異の成長を見せている。
メンバーのまとめ役として探索後の共同生活においても色々と仕切ってくれる頼れるメリーである。また、商売の方も大切なパートナーであり色々と助け合ってパーティーを支えてくれているのだ。
「メリーも短期間で成長するとはな……。色々とあったからなぁ」
「そうね。色々とあったわ」
商人から冒険者への転身、また新しい店の立ち上げ、メリーもこの半年で色々とあったが見事乗り越えて成長をしてくれている。
俺はそっとメリーの頭を撫でてやった。
「グレイズ殿に関わる女性はステータスの上昇が速そうですな。これも、アクセルリオン神様の与えられた神器の力のおかげでしょうかのぅ」
神殿長がみんなの脅威的なスピードでの成長を見て笑っていた。
アクセルリオン神からもらった力の影響かどうかは知らないが、『天啓子』としての才能開花によって成長期に入ったと判断していいと思われる。
「みんなが頑張った成果が出ているだけで俺の力なんて微々たるものさ。実際俺は探索でもお仕事させてもらえないことが多いからな」
「グレイズの仕事、私たちを応援すること」
「グレイズさんは先生役なのー」
「グレイズさんに仕事をさせるわけには参りません。私たちが全部しないと」
「だって。私もグレイズさんには後ろでデンと構えてて欲しいわ」
メンバーからのご依頼はお仕事をするなとのことだったので、ダンジョンの探索では引き続き監督的立場のままのようである。
そろそろ、本当にヒモ生活者だと言われても反論できない感じもするが、みんなのやる気に水を差すのもそれはそれでしたくない。
「分かった。分かった。俺の仕事はみんなへのアドバイスを中心にしとくよ。そういうことで、成長したみんなには装備を更新してもらおうと思う。商店街にも話は付けてあるし、ドロップ品の装備品から良さげなのも会員価格で売ってくれるそうだから、見繕いに行くとするか。神殿長、邪魔したな。これはご祈祷料だから収めてくれ」
皮袋に入ったお金を神殿長に掴ませる。
「これは受け取れません。アクセルリオン神様からグレイズ殿には協力せよと言われております。ご祈祷料は頂けません」
「これは受け取ってくれ。じゃなかったら、うちのパーティーだけが特別扱いだって言われちまう」
こういったお金のやり取りはしっかりとしておかないとお尻がむず痒くなってしまう性分なので、キチンと受け取ってもらうことにした。
「そういうことならば、アクセルリオン神への御寄進ということでお受け取りさせてもらいます。今後とも何か困ればお力添えできることはさせてもらいますので、お気軽にお立ち寄りください」
神殿長は恭しくに頭を下げるとお金の入った皮袋を受け取る。
その後、俺たちは神殿長に別れの挨拶を告げ、商店街に向かうことにした。
「お帰りになられたようで。アクセルリオン神様からなんぞ頼まれましたかな?」
神殿長がニンマリとした顔でこちらを見ているため、今日の呼び出し内容を事前にアクセルリオン神から告げられていたに違いない。
「大丈夫だ。ちょっと世間話をしてきただけさ。それはそうと、みんなのステータスは確認できたのかい?」
「そちらは滞りなく終わっておりますぞ。皆さん驚くほどに成長しております。さすがは『天啓子』といったところでしょうか。ステータスの伸びが凄いですぞ」
神殿長は頼んでおいたみんなのステータスチェックをしてくれていたようだ。
「グレイズさーん! ファーマのを見てー!」
一番最初にステータスを書いた用紙を持ってきたのはファーマであった。武闘家としてすでに敵の攻撃を回避しまくる頼もしい前衛になりつつあるため、どれほどの成長を見せているか楽しみであった。
「おぉ、ファーマからか」
用紙を受け取ると内容に目を落としていく。
名前:ファーマ 種族:獣人族 年齢:一五歳 性別:女性
ジョブ:武闘家
ステータス
筋力:D+→C 素早さ:S+→S+ 器用さ:F+→E 知力:G+→E+ 運:C+→C+
ファーマのステータスはかなり成長していた。一般の冒険者では数年かかるであろうステータスの上昇量が記されていた。
半年ほどでこの上昇量は驚きの量であった。
特に成長著しいのは知力でE+まで上昇しており、ダンジョン探索の無い日にカーラやメリー、アウリースに読み書きと計算の勉強を見てもらっているのが成長に好影響を与えているのかもしれない。
最近では解読不明だった文字もキチンと読み取れる文字に変化しており、ファーマの知識収集欲はカーラに次ぐものとなっている気がする。
「凄いな! ファーマ! 大成長じゃないか!」
わくわくとした顔で俺の様子を見ていたファーマの頭をなでてやる。
「ファーマは頑張ったよー。みんなのおかげもあるけどー。えへへー」
喜ぶファーマの顔を見ていると、ほっこりと心が和んでいく。かつて、パーティーメンバーからアホの子と言われ、追放されて自信なさげに泣いていたファーマはそこにおらず、何事にも興味を示し、天真爛漫で人懐っこい少女がそこにいた。
ファーマのこの笑顔を見られただけでも追放者を作って良かったと思う。
「グレイズ、私のも見る。有能さが更に成長したぞ」
ファーマを褒めていたら、カーラがおずおずと自分の用紙を差し出してきていた。
受け取った紙に視線を落としていく。
名前:カーラ 種族:エルフ族 年齢:一六歳 性別:女性
ジョブ:精霊術士
ステータス
筋力:F→F+ 素早さ:F+→E+ 器用さ:S+→S+ 知力:B+→A 運:E+→D
カーラもまた成長が著しかった。魔法職として必須となる知力が更に上昇しており、習得できる魔法の種類が更に拡大している。回復支援の役として今やうちの追放者の要にもなりつつあるカーラであるため、魔法の選択肢が増えるのはとても頼りになるはずだ。
ステータスもランクの高いものは上がりにくいと言われているため、B+→Aへの成長を半年で成し遂げるのは驚異的であるのだ。
「カーラも凄い成長しているぞ。知力のアップは凄い一言に尽きるな」
「私、優秀。グレイズ、頭撫でていい」
ファーマと同じく、カーラの頭をなでてやる。言葉が不自由なのもあり、自己中心的な考えで行動しパーティーメンバーから追放されていたカーラであるが、このパーティーでは冷静な判断を下せる良い支援役となっていた。
「私のも見てもらえますでしょうか……。あ、あんまり成長してないですけど……」
カーラとファーマを羨ましそうに見ていたアウリースも恥ずかしそうな顔で用紙を差し出す。
名前:アウリース 種族:魔人族 年齢:一八歳 性別:女性
ジョブ:魔術師
ステータス
筋力:D+→D+ 素早さ:C+→C+ 器用さ:B→B+ 知力:S+→S+ 運:D+→C+
仲間になる前から天啓子の力が発揮されていたアウリースは前の二人よりは成長の度合いは低いが元々のステータスが高いので、成長するだけでも一般人離れしている。
一般的冒険者であれば、ステータスはCかC+止まりになる者が多く、年齢とともにステータスも落ちていく傾向にあるため、この若さでこのステータスはかなり恵まれているのだ。
「アウリースの魔法にはいつも助けられているからな。これからももっとお世話になりそうな気がするぞ」
「あ、あの。私も……」
アウリースまで俺に頭をなでてもらいたいようで、上目遣いで求められていた。少し恥ずかしさを感じたが、アウリースが色々とメリーやファーマ、カーラの間に立ってカバーしてくれているのを知っているため、ここは恥ずかしさをこらえ頭を撫でることにした。
「いいわね。三人とも、もちろん私にもしてくれるんでしょ? グレイズさん?」
メリーが用紙を差し出してニヤリと笑っている。明らかに自分もして欲しいと言いたげである様子だ。
受け取った用紙に目を通していく。
名前:メリー 種族:人族 年齢:二五歳 性別:女性
ジョブ:神殿騎士
ステータス:筋力:S+→S+ 素早さ:G+→F 器用さ:D→D 知力:C→C+ 運:D+→D+
仲間になって余り期間が過ぎていないメリーの成長度合いは他のメンバーには劣るものの、ついこの間冒険者になった者としては驚異の成長を見せている。
メンバーのまとめ役として探索後の共同生活においても色々と仕切ってくれる頼れるメリーである。また、商売の方も大切なパートナーであり色々と助け合ってパーティーを支えてくれているのだ。
「メリーも短期間で成長するとはな……。色々とあったからなぁ」
「そうね。色々とあったわ」
商人から冒険者への転身、また新しい店の立ち上げ、メリーもこの半年で色々とあったが見事乗り越えて成長をしてくれている。
俺はそっとメリーの頭を撫でてやった。
「グレイズ殿に関わる女性はステータスの上昇が速そうですな。これも、アクセルリオン神様の与えられた神器の力のおかげでしょうかのぅ」
神殿長がみんなの脅威的なスピードでの成長を見て笑っていた。
アクセルリオン神からもらった力の影響かどうかは知らないが、『天啓子』としての才能開花によって成長期に入ったと判断していいと思われる。
「みんなが頑張った成果が出ているだけで俺の力なんて微々たるものさ。実際俺は探索でもお仕事させてもらえないことが多いからな」
「グレイズの仕事、私たちを応援すること」
「グレイズさんは先生役なのー」
「グレイズさんに仕事をさせるわけには参りません。私たちが全部しないと」
「だって。私もグレイズさんには後ろでデンと構えてて欲しいわ」
メンバーからのご依頼はお仕事をするなとのことだったので、ダンジョンの探索では引き続き監督的立場のままのようである。
そろそろ、本当にヒモ生活者だと言われても反論できない感じもするが、みんなのやる気に水を差すのもそれはそれでしたくない。
「分かった。分かった。俺の仕事はみんなへのアドバイスを中心にしとくよ。そういうことで、成長したみんなには装備を更新してもらおうと思う。商店街にも話は付けてあるし、ドロップ品の装備品から良さげなのも会員価格で売ってくれるそうだから、見繕いに行くとするか。神殿長、邪魔したな。これはご祈祷料だから収めてくれ」
皮袋に入ったお金を神殿長に掴ませる。
「これは受け取れません。アクセルリオン神様からグレイズ殿には協力せよと言われております。ご祈祷料は頂けません」
「これは受け取ってくれ。じゃなかったら、うちのパーティーだけが特別扱いだって言われちまう」
こういったお金のやり取りはしっかりとしておかないとお尻がむず痒くなってしまう性分なので、キチンと受け取ってもらうことにした。
「そういうことならば、アクセルリオン神への御寄進ということでお受け取りさせてもらいます。今後とも何か困ればお力添えできることはさせてもらいますので、お気軽にお立ち寄りください」
神殿長は恭しくに頭を下げるとお金の入った皮袋を受け取る。
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