上 下
48 / 232
第二部 第二章 おっさんずパーティー

4

しおりを挟む
 グレイたちを販売員としてスカウトすることがほぼ決定したが、問題はグレイの娘であるセーラをスカウトできるかどうかにかかっていた。

 現在は中堅冒険者としてパーティーを組んで、この第一一階層に潜っているらしい。

 俺たちは二手に分かれて彼女を探すことにしていた。

「セーラさんって人を探せばいいんだよねー。そうしたら、グレイさんたちとお店でしょーばいができるんでしょー。ファーマはあのおじさんたち好きー」

 ファーマは自分の実力を認めて、一人前の冒険者として扱ってくれたグレイたちを気に入っているようだ。

「グレイたち、そこらのポンコツSランク冒険者より、よっぽど使える人材」

「確かに『おっさんず』さんたちになら、お店をお任せできそうですね。魚人マーマンをあんなに簡単に無力化される方たちですし」

「そうね。だから、後は会計役候補のセーラの説得を成功させないと。場合によっては所属しているパーティーに移籍料も支払わないといけないしね」

 メンバーたちはグレイたちの戦う姿を見て、信頼を増したようで、彼らがダンジョン販売店の護衛候補にピッタリだと思っているのが、言葉尻からも感じ取れていた。

「セーラ、二〇代の女ドワーフで、目元に黒子がある肩までのストレートヘア。容姿、覚えた」

 記憶力の良いカーラは、グレイが話していたセーラの容姿を覚えていてくれた。一応、俺も覚えているが、パーティー内での情報の共有は重要であるため、カーラを始め、全員が容姿を覚えておいて損はない。

「よし、他のパーティーの気配がする方を捜索することにしよう」

「「「はい」」」

 俺たちは当初の目的を達成しつつ、セーラたちのパーティーを探すために、あらためて捜索を再開していった。


 第一一階層の地底湖エリア。魚人マーマン蜥蜴人リザードマンが生存領域をお互いに争う階層。

 二種の魔物が出会えば、常に魔物同士の戦闘が行われ、倒れた魔物はダンジョンが再配置を行うまで戦闘離脱という名の休息時間を得て、再配置後にはまたお互いに争うことを常に続けている。

 地底湖エリアは魔物同士の争う紛争地帯であることを頭に入れて探索せねばならない。

 地底湖の水辺に沿って歩いていると、前方から魔物が争う声が聞こえてきていた。

「グレイズさん、魔物たちが争っているよー。どうする? 人間の気配はないみたいだけど」

 ファーマは最近、冒険者と魔物との気配の違いを感じ取れるようになってきている。

 元から気配に敏感な子であったが、天啓子としての才能のおかげか急激な成長を見せつつあった。

「魔物同士の争いに介入すると、両方から襲われるからな。放置してた方がいいな」

 俺もファーマと同じく魔物たちの気配を感じ取っていたが、人気のない魔物同士の生存領域争いに首を突っ込んで、両陣営から襲われ全滅したパーティーがあるのも知っていた。

 なので、争っている魔物集団には手を出さない方が無難である。

「それにしても、不思議。ダンジョンの魔物同士が争う。これ、なぜだ?」

 ダンジョン内で魔物同士の争いと聞いて、知識収集の鬼であるカーラが興味をもったようだ。

「ベテラン冒険者から聞いた与太話では、ダンジョン主がダンジョンをより深くするために使う力の元である、『増悪』を創り出す餌として、お互いに争わせているらしいぞ」

「そんな話、書物にはなかった。初めて聞いた。興味深い話だ。ダンジョンの成長過程、色んな文献読んでも、曖昧だった。グレイズの話、一考に値する」

 カーラが冒険を終えて地上に帰った後、色々とブラックミルズで手に入る書籍や文献を調べ、ダンジョンについて考察している姿を見かけていた。

「冒険者の与太話だから、信用性は全くないかな」

「グレイズさんの話は年齢の高い冒険者がよく言ってましたね。私もなり立ての時にチラリと話を聞いたことがあります」

「私も冒険者たちが、そんな話をしてたのは聞いたことあるわね。どこのダンジョンにもお互いに争う魔物が配置されているらしいわ。案外、与太話じゃなくて真理なのかもよ」

 メリーもアウリースも、俺がカーラに話した冒険者たちの与太話を聞いた事があるらしく、わりと有名な話であるようだ。

 ダンジョンの最終階層で、進入する冒険者たちを撃退するため、ダンジョンを成長させつつ、すべてをくぐり抜けて到達する者を待ち受け、戦いを求めるダンジョン主という存在は、アクセルリオン神の話では、神器の力に溺れた者の末路らしい。

 彼らがなぜダンジョンを創り出すのかまでは、教えてもらえなかったが、いずれ俺たちのパーティーは、ブラックミルズのダンジョンの最深部にまで潜る時期も来るはずだ。

 その時までに、なにがしかの理由を知ることができればいいなとは思っている。

『おや、知りたいですか? アクセルリオン神からは、理由を教えてもいいと承っていますけど、理由を聞いたら、お手伝いをお願いされますよ? それでも、聞きます?』

 その話は、今は丁重にお断りしておくぞ。

 皆の話を聞いていたハクが脳内にダンジョンの秘密を暴露しようとしていたが、今のところは丁重にお断りしておいた。

 神様のお使いミッションはSSランクな依頼な気がするので、今はまだ近寄らない。

『あら~。残念です。やっぱり、グレイズ殿は他の神器所有者と違って慎重ですね。多くの神器所有者は二つ返事で、ダンジョン主討伐を請け負って、自分が力に溺れダンジョン主になるって人もいましたしね』

 いずれは、目指すかもしれん。いずれな。

「グレイズさん! 争ってる魔物の集団に人の気配が近づいていくよー!! どっかのパーティーがちょっかい出すみたい」

 前方の気配を窺っていたファーマが、魔物同士で争っている集団に、攻撃を仕掛けるつもりのパーティーがいると伝えてきた。

 単体集団でも中堅なり立てだと苦戦するが、両種が手を取り合うと、難易度が一気に上昇するのだ。その強さは、上級ランクの冒険者でも油断すると危ないと言われるレベルになる。

「ベテランは放置するんだがな。中堅なり立てのパーティーか。一応、援護できる場所にまで移動して様子見しておこう。危なそうなら手を貸すこともできるしな」

「分かったよー。ハクちゃん、前進するよ」

「わふうぅ(了解なのです。背後から強襲ですね!)」

「承知、援護位置まで進む」

「魔法は準備しておきます。範囲魔法で敵をいつでも混乱させられるように」

「私はいつでも前に出れるようにしとくわ」

 各人がすぐに反応して、やるべき役割を果たすための準備をしていた。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。