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第二部 プロローグ

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 ファーマはハクを抱きしめて、頭を撫でているし、カーラは自分の推察した以上の話に驚いているし、アウリースはハクの前で土下座して謝っているし、メリーも普段ではほとんど見せない表情でハクを見ていた。

 神の使徒だと言われて、皆が『そんな馬鹿な』って言わないのは、俺自身の神様から授かった人外の力を知っているし、ハク自身の頭の良さや、並みの獣らしからぬ強さを探索中に見ているからだと思われる。

「ということなんで、みんなもこれからは、ハクに敬意をもって接してくれるとありがたい。ちなみに、みんなが成長したら、俺と同じように声が頭の中に聞こえるようになるみたいだぞ」

「本当に!」

 ハクに抱き着いて頭をワシワシとしていたファーマの眼がキラキラと輝き出していた。

「本当にハクちゃんとお喋りできるの! グレイズさん! ファーマ、お喋りしたいよー」

「ああ、成長したら聞こえるようになるらしいぞ。ハクがそう言っている」

「了解、だったら今日もダンジョン潜る。自主練で早く強くなってハクの声が聴きたい。グレイズ、付き合ってくれるか?」

 カーラはいそいそとダンジョンに潜るため、自分の部屋に向かって駆け出していた。

 それを見たアウリースも装備を取りに自室に向かっている。

「それは大変いいことを聞きました。なるべく早急にハクちゃんの声を聞ける人材にならねば。グレイズさん、私もカーラさんと潜るんでお付き合いしてもらっていいですか?」

「ファーマも潜るー!! ハクちゃんの声が聴きたいー! 準備してくるねー」

「朝食は冒険者ギルドで済ませましょう。私もハクがどんな声か聴いてみたいし、冒険者としては、みんなよりちょっと劣っているから、経験を積みたいわね」

 メリーも何度かの探索を成功させて急成長しているのだが、まだ自身が納得できるほどの力量には至っていないらしい。

「みんな、やる気に溢れているなぁ。どうせ潜るなら、店も開くか。荷物も商店街の連中が準備してくれているはずだし」

 皆のやる気に押され、休養日に当てていた今日も店を開き、探索する気になっていた。

 ただ、疲労は冒険者にとっては十分に気を配らなければならないため、あまり深い階層までは潜らないつもりだ。

 店の方もあるし、疲労が重なれば、ミスや怪我、病気だって誘発しかねない。冒険者は適度な休息も必要だと思われる。

 と言っても、皆のやる気に水を差すつもりもないので、疲労が溜まらない程度に店も開き、ダンジョンで魔物を退治してこよう。

 装備を取りにそれぞれの自室に戻ったメンバーたちであったが、残されたハクが『皆さんの愛が溢れすぎてて』って呟いていたのを、俺は聞き逃さなかった。

 愛されてるなぁ。ハク。

『グレイズ殿ほどでは無いですけどね。皆さん好意はあたしとしても嬉しいですし、あたしも皆さんとお話したいですからねぇ。連続での探索ですけど、きっと怪我だけをしないようにグレイズ殿がきっと気を配ってくれるんで大丈夫ですよね?』

 ああ、そのへんは任せておけ。なにせ、俺は探索中、ほとんど何もさせてもらえないからな。その分、みんなの観察はしっかりとしている。疲れていそうなメンバーがいたら、探索を打ち切るつもりだ。

『確かに何もしてないですね。それだけ、みんなの成長が顕著だってことの証拠かと』

 危ないって思える場面はかなり少なくなってきたのは確かだ。おかげで戦闘外のことに意識を向ける余裕も出て、ダンジョンの販売店の方もわりと繁盛しているとも言える。

 販売店もおかげさまで繁盛しており、そっち側も運営しているため、普通の冒険者よりも忙しくなりつつあるのだ。

 そろそろ、店は冒険者から売り子を募集してお任せしていきたいと思っているが、中々、俺とメリーの眼に叶うやつは見つからないでいる。

 引退間近の中堅冒険者で若手に舐められず、金管理の厳しいのがいたら、高額で雇ってもいいんだがな。条件に当てはまるやつが中々いない。それに冒険者でない者をダンジョンに送り込むのは気が引ける。

『そちらもいい人が見つかるといいですね。店はあたしのおかげで万引きする馬鹿者はいなくなりましたけどね』

 ああ、それは助かってる。冒険者たちもメリーからの高額請求とハクの摘発能力を見て、リスクが高いと判断してくれたようだ。

 ダンジョン販売店の成功のおかげか、闇市関係の摘発を恐れたのか分からないが、フラマー商会がブラックミルズから撤退してくれたおかげで、商店街の連中の店も前の賑わいを取り戻し、更に俺たちのもたらすダンジョンでの販売によって利益も増している。

 おかげで俺の嫁候補の賭けのレートが上がったとおばばから聞かされたが、余計なお世話だとしか言えなかった。

 そんなことを考えていると、装備を整え終えた皆が部屋から出てきてこちらを見ていた。

「あとは、グレイズさんの準備待ちよ。私たちが準備した方がいいかしら?」

 メリーがニッコリと笑って、準備した方がいいかと聞いてきた。
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