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第二十一話 必勝パターンの確認
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機士学校への入学が迫る中、義父上に申請していた警戒部隊への同行訓練が許され、今は最前線から少し後方となる地域をザガルバンドに乗って進んでいる。
俺の前方を進むのは、頭部に目立つ長い突起を二つ生やしたラビットイヤー型と言われる敵探知距離が広い偵察警戒型霊機だ。義父上の従機士が乗っており、索敵しながら警戒地域を進んでいる。
同行している警戒部隊は、偵察警戒型霊機ラビットイヤー1機、汎用標準型霊機ドランカード2機、俺を含めた従霊機ザガルバンド5機の8機編成の部隊だ。
防衛線を抜け、浸透してくる敵を迎撃するのがこの部隊の仕事であった。
ドランカードと一緒に周囲を警戒しながら歩いていると、先行するラビットイヤーに搭乗している隊長からの通信がモニターの端に表示された。
通信に表示された隊長の表情には困惑が現れている。
「ルシェ様、今回は訓練です。あまり前に出るのは自重してください。ここは最前線にも近い場所ですからね」
「ああ、分かっているが――。一つ試したいことがあるんだ。せっかくの訓練だし、自分が考えたことが実戦の場で役に立つのか知りたくてね。協力してくれないか?」
隊長の顔色が曇る。ドワイド家の後継者候補の俺に何かあれば、責任は隊長である彼に振りかかってくるからだ。
「ブロンギ様からは、ルシェ様の身辺を守るのが最優先だと言われておりますので――」
「大丈夫だ。こちらに危険はないさ。そのためにアレを一緒に持ってきてもらったわけだし」
護衛機として左右に控えるドランガードの背中には、大きな筒型の武器が追加されていた。持ってきたのは、長距離射程タイプの精霊誘導弾発射筒だ。
長距離支援型霊機ジェッタの標準装備として支給されているものだが、射程と威力が高く、何より射出される弾体の誘導性能が高い武器だった。
今回はその武器を使い、ゲームと同じ戦法が再現できるか試したかった。試したい技はシアとリンクさせた他機の探知距離を借りて、誘導兵器を命中させる技だ。
主人公リンデルの代役として、ハーレムENDルートを進むには、この戦法が使えるのか、使えないのかで難易度が大きく変わってくる。そのため、ぜひ確認しておきたい。
「持っていくと言われた時から嫌な予感はしてましたが、何をされるつもりですか?」
ドランガードの背負っている精霊誘導弾発射筒を見た隊長の顔が引きつっていた。
「君のラビットイヤーの精霊とシアを一次的に同化させて、ザガルバンドの探知距離と精度を上げ、精霊誘導弾発射筒の弾体を誘導して、敵に命中させてみたい」
「精霊の一時的な同化? そ、そんなことが簡単に――」
俺は先を進むラビットイヤーの機体に近づき、指先から接触ワイヤーを飛ばす。ワイやがラビットイヤーの機体に触れると、静かに見守っていたシアが、相手の機体の制御をしていた精霊を即座に従える。通信に映し出された隊長は機体の制御が奪われたことに気付いて焦っていた。
「機体が勝手に!?」
「という形で簡単にできてしまうんですよ。シアだと」
「索敵開始。探知距離はラビットイヤーの最大で行くよ」
シアの力とラビットイヤーが探知した敵の名称と方角と距離が、次々にモニターにマーカーで追加されていった。
「50単位内に3体のナイトウォーカーが浸透してるらしいね。この前みたいに部隊のやつもいれば、単機もいるな」
「隊長さんにも見えるようにしといたよ」
「仕事が早くて助かるよ。シア」
「これが噂に聞いてた精霊王位の探知能力か……。ここまで丸見えなんて嘘だろ」
シアの仕事で、隊長の機士席にも俺と同じ映像が見えてるらしいな。ラビットイヤーの機体性能がザガルバンドより高いおかげで、遠距離にいる敵の姿まで疑似的にモニターへ再現されるのも『神霊機大戦』と同じ仕様だったのは助かる。
「あとは自分が精霊誘導弾発射筒の弾体を誘導して敵にあてるだけで戦果を挙げられるというわけです。安全でしょう?」
「一番近いのでも40単位、遠いのは最大探知距離の50単位も離れてるのに!? そんな距離を誘導し続けるのなんて熟練の機士でも無理な話です! 対象との距離が伸びれば伸びるほど誤差も出るし、集中力を必要とするんですよ」
「とりあえず、50単位先の単機のやつ狙うので、当たったら準備した弾を撃ち切って殲滅していいですか?」
通信をしている隊長が、判断に迷っている顔を見せた。
「もしこれで敵を撃破し、戦果を挙げたら隊長の英断のおかげと口添えします。けれど、外れたら、このまま大人しく警戒活動を続けて訓練を終えます。どっちに転んでも迷惑はおかけしませんよ」
「――分かりました。戦闘許可を出しましょう。誘導中のルシェ様の護衛任務はこっちで確実に果たします!」
通話を終えた隊長が、部下のザガルバンドたちに俺の機体の周囲を守るよう指示を出していく。
「よし、これで許可は取れた」
隣に控えるドランガードの背中から、弾体が装填された精霊誘導弾発射筒を取り出すと、発射の準備を進めた。膝を突いた駐機体勢を取り、機体を安定させると筒先を空に向けた。
「武器の展開完了。誘導感度ヨシ」
「こっちはいつでもいいよ」
誘導する弾体の先端から見える映像がモニターに追加で表示された。このモニターに映し出される敵に命中するよう誘導してやれば、弾体が連動して動き見えない遠距離にいる敵を倒してくれる。
「了解! 後方ヨシ! 目標50単位先、単機ナイトウォーカー! 発射!」
背後に味方の機体がいないのを確認し、アームスティックの引き金を引くと、筒の後方から発射炎が噴き上がり、筒先から弾体が発射された。
俺の前方を進むのは、頭部に目立つ長い突起を二つ生やしたラビットイヤー型と言われる敵探知距離が広い偵察警戒型霊機だ。義父上の従機士が乗っており、索敵しながら警戒地域を進んでいる。
同行している警戒部隊は、偵察警戒型霊機ラビットイヤー1機、汎用標準型霊機ドランカード2機、俺を含めた従霊機ザガルバンド5機の8機編成の部隊だ。
防衛線を抜け、浸透してくる敵を迎撃するのがこの部隊の仕事であった。
ドランカードと一緒に周囲を警戒しながら歩いていると、先行するラビットイヤーに搭乗している隊長からの通信がモニターの端に表示された。
通信に表示された隊長の表情には困惑が現れている。
「ルシェ様、今回は訓練です。あまり前に出るのは自重してください。ここは最前線にも近い場所ですからね」
「ああ、分かっているが――。一つ試したいことがあるんだ。せっかくの訓練だし、自分が考えたことが実戦の場で役に立つのか知りたくてね。協力してくれないか?」
隊長の顔色が曇る。ドワイド家の後継者候補の俺に何かあれば、責任は隊長である彼に振りかかってくるからだ。
「ブロンギ様からは、ルシェ様の身辺を守るのが最優先だと言われておりますので――」
「大丈夫だ。こちらに危険はないさ。そのためにアレを一緒に持ってきてもらったわけだし」
護衛機として左右に控えるドランガードの背中には、大きな筒型の武器が追加されていた。持ってきたのは、長距離射程タイプの精霊誘導弾発射筒だ。
長距離支援型霊機ジェッタの標準装備として支給されているものだが、射程と威力が高く、何より射出される弾体の誘導性能が高い武器だった。
今回はその武器を使い、ゲームと同じ戦法が再現できるか試したかった。試したい技はシアとリンクさせた他機の探知距離を借りて、誘導兵器を命中させる技だ。
主人公リンデルの代役として、ハーレムENDルートを進むには、この戦法が使えるのか、使えないのかで難易度が大きく変わってくる。そのため、ぜひ確認しておきたい。
「持っていくと言われた時から嫌な予感はしてましたが、何をされるつもりですか?」
ドランガードの背負っている精霊誘導弾発射筒を見た隊長の顔が引きつっていた。
「君のラビットイヤーの精霊とシアを一次的に同化させて、ザガルバンドの探知距離と精度を上げ、精霊誘導弾発射筒の弾体を誘導して、敵に命中させてみたい」
「精霊の一時的な同化? そ、そんなことが簡単に――」
俺は先を進むラビットイヤーの機体に近づき、指先から接触ワイヤーを飛ばす。ワイやがラビットイヤーの機体に触れると、静かに見守っていたシアが、相手の機体の制御をしていた精霊を即座に従える。通信に映し出された隊長は機体の制御が奪われたことに気付いて焦っていた。
「機体が勝手に!?」
「という形で簡単にできてしまうんですよ。シアだと」
「索敵開始。探知距離はラビットイヤーの最大で行くよ」
シアの力とラビットイヤーが探知した敵の名称と方角と距離が、次々にモニターにマーカーで追加されていった。
「50単位内に3体のナイトウォーカーが浸透してるらしいね。この前みたいに部隊のやつもいれば、単機もいるな」
「隊長さんにも見えるようにしといたよ」
「仕事が早くて助かるよ。シア」
「これが噂に聞いてた精霊王位の探知能力か……。ここまで丸見えなんて嘘だろ」
シアの仕事で、隊長の機士席にも俺と同じ映像が見えてるらしいな。ラビットイヤーの機体性能がザガルバンドより高いおかげで、遠距離にいる敵の姿まで疑似的にモニターへ再現されるのも『神霊機大戦』と同じ仕様だったのは助かる。
「あとは自分が精霊誘導弾発射筒の弾体を誘導して敵にあてるだけで戦果を挙げられるというわけです。安全でしょう?」
「一番近いのでも40単位、遠いのは最大探知距離の50単位も離れてるのに!? そんな距離を誘導し続けるのなんて熟練の機士でも無理な話です! 対象との距離が伸びれば伸びるほど誤差も出るし、集中力を必要とするんですよ」
「とりあえず、50単位先の単機のやつ狙うので、当たったら準備した弾を撃ち切って殲滅していいですか?」
通信をしている隊長が、判断に迷っている顔を見せた。
「もしこれで敵を撃破し、戦果を挙げたら隊長の英断のおかげと口添えします。けれど、外れたら、このまま大人しく警戒活動を続けて訓練を終えます。どっちに転んでも迷惑はおかけしませんよ」
「――分かりました。戦闘許可を出しましょう。誘導中のルシェ様の護衛任務はこっちで確実に果たします!」
通話を終えた隊長が、部下のザガルバンドたちに俺の機体の周囲を守るよう指示を出していく。
「よし、これで許可は取れた」
隣に控えるドランガードの背中から、弾体が装填された精霊誘導弾発射筒を取り出すと、発射の準備を進めた。膝を突いた駐機体勢を取り、機体を安定させると筒先を空に向けた。
「武器の展開完了。誘導感度ヨシ」
「こっちはいつでもいいよ」
誘導する弾体の先端から見える映像がモニターに追加で表示された。このモニターに映し出される敵に命中するよう誘導してやれば、弾体が連動して動き見えない遠距離にいる敵を倒してくれる。
「了解! 後方ヨシ! 目標50単位先、単機ナイトウォーカー! 発射!」
背後に味方の機体がいないのを確認し、アームスティックの引き金を引くと、筒の後方から発射炎が噴き上がり、筒先から弾体が発射された。
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