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第七話 穏やかな朝食
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「坊ちゃま、そろそろ朝食のお時間ですが、今日もルカ様の部屋でご一緒に食べられますか?」
「当たり前だ。義父上の許可が出た日から、ルカの体調が悪くない限り、毎日そうすると申し伝えてあっただろう。ルカの体調が悪いのか?」
「いいえ、体調は良好でございます」
「なら、いつもどおりだ」
「承知しました」
ローマンが近くに控えていたメイドに手で指示を出した。メイドが走り去るのを見ながら、中庭での朝の鍛錬を続ける。先日の模擬戦で課題として判明した身体的負荷に耐える身体作りのため、俺は重い木剣で素振りをする筋トレを行っていた。
俺の霊機操縦技術とルシェの精霊力の高さを十分に発揮するには、加速のGに耐えられる強い身体が必要だ。そのため、ルカと居る時間以外の日々の生活は身体づくり中心の筋トレ生活となっている。身体的にはきついこともある。だが、それで病弱な妹を助けられるなら、努力を厭うことはしない。
近々行われる今年の『対話の儀』で、主人公のリンデルと出会い、腐れ縁キャラとして彼がハーレムルートを歩むのをサポートし、虹の宝玉を手に入れ、妹の命を長らえる手段を手に入れるその日まで身体の鍛錬は怠らないつもりだ。
「ふぅ、どうだった俺の素振りは?」
「まだまだ身体ができておりませんので、軸がブレておりますし、止める位置もズレてますな。でも、筋はよろしいと思います。爺は剣にはちとうるさいですぞ」
「俺は剣に関しては素人だ。剣の師匠のローマンの言うことには従おう」
ローマンに指導された点を意識して直しながら、重い木剣を全力で振り落として止める。地味に腕に負担がかかり十数回やるだけで腕がパンパンになる。
剣の鍛錬に関しては、身体づくりだけではなく、自らの命や妹を守る護身のためでもある。この世界は、現代日本よりか物騒であるため、自衛のための戦闘術を学ぶ必要があった。
「27…28…29…30っ!」
「今日はそこまでですな。これ以上は、腕を痛めます」
「分かった。今日の素振りはこれくらいにして、朝食にする」
「剣の指導に関しては、爺に素直な坊ちゃまですな」
「俺は師匠には敬意を払っているつもりだ」
「でしたら――爺の話を――」
「ローマンは『剣の師匠』であって、『実生活の師匠』ではないからな。生活に関する小言は聞かん。よし、朝食にする」
ローマンに重い木剣を渡し、メイドから水で濡れた布を受け取ると、身体の汗を拭いていく。病弱な妹に会って食事をするのだから、しっかりと身綺麗にしておかねばならなかった。
身体を拭き終ると、自室で服を着替え、朝食の用意されている別宅のルカの部屋に向かった。
「兄様、おはよう……。本日も鍛錬をしてたの?」
「匂うか? 汗は拭いて着替えてきたが?」
「少しだけ……。でも、私は兄様の汗の匂いが好き。だから、問題ないよ」
ここ最近、毎日俺が部屋に通って食事を共にするようになったことで、ルカの病状は落ち着いている。体調不良で寝込むことも減り、食事も取れるようになってきた。
そんなルカの様子を見るに、精霊力の高い者が近くに居れば、病状の進行は緩やかになるという俺の推測は半ば当たっていそうだった。ただ、病状の進行が緩やかになるというだけで、病気を快復できるという感じではなさそうだ。やはり、新たに精霊力を付与できる虹の宝玉は必要だろう。
「そうか、ルカに問題がないなら、誰にも問題はないな」
「うん、問題ない。さぁ、兄様、朝食にしよう」
「ああ、そうしよう。危ないから手を――」
ベッドから出たルカの手をとり、躓いて倒れないよう介助しながらテーブルに向かうと、それぞれの席に腰を下ろした。給仕のメイドたちが運んできた朝食をテーブルの上に並べていく。
「兄様は、またニワトリのお肉とゆで卵?」
「ああ、そうさ。身体づくりにはこの食事が一番いい。俺はどうしても強い機士にならねばならん。そのためには強い身体がいる。だから、この食事だ」
「飽きない?」
「ルカと食べれば、どんな食事だろうが飽きない自信はある」
「兄様、それはお世辞だよね?」
「世辞? 俺は妹に世辞など言わんぞ。本気でそう思っているだけだ」
「兄様の馬鹿……」
照れたように頬を赤くしたルカを見て、紗奈とのことを思い出し、愛おしさがこみ上げる。
ルシェの意識が溶け合ったことで、俺の中で妹のルカは『可愛い』や『好き』の次元を超越し、紗奈と同様に『命を賭けてでも守るべき人』にまで昇華している存在。そんな存在に向かって世辞を言うつもりは毛頭なかった。
「俺の食事の話はどうでもいい。それよりも、ルカはちゃんと食べてくれ。俺にはそっちの方が大事なことだ」
「はぁ~い。でも、最近はお野菜のスープもちゃんと飲めるようになったんだよ」
「それは偉いな。でも、俺にはニンジンを避けているようにも見える」
「ち、違うよ。こ、これは最後に取っておいてあるの」
「そうか、なら俺も最後まで見届けないとな」
「うぅ……兄様のイジワル」
紗奈も野菜が苦手だったよな……。野菜ジュースで摂取してるから大丈夫とか言ってたけど、ほとんど野菜が入ってなくて苦い味がしないやつだったし。そういうところがルカも似てる気がする。
和気あいあいと妹との食事をしていたら、ドアがノックされた。こちらの返事を待たずにドアが開く。けして、訪れるはずのない人物の登場に俺は驚いた。現れたのは穏やかな顔をした義父のブロンギだった。
「当たり前だ。義父上の許可が出た日から、ルカの体調が悪くない限り、毎日そうすると申し伝えてあっただろう。ルカの体調が悪いのか?」
「いいえ、体調は良好でございます」
「なら、いつもどおりだ」
「承知しました」
ローマンが近くに控えていたメイドに手で指示を出した。メイドが走り去るのを見ながら、中庭での朝の鍛錬を続ける。先日の模擬戦で課題として判明した身体的負荷に耐える身体作りのため、俺は重い木剣で素振りをする筋トレを行っていた。
俺の霊機操縦技術とルシェの精霊力の高さを十分に発揮するには、加速のGに耐えられる強い身体が必要だ。そのため、ルカと居る時間以外の日々の生活は身体づくり中心の筋トレ生活となっている。身体的にはきついこともある。だが、それで病弱な妹を助けられるなら、努力を厭うことはしない。
近々行われる今年の『対話の儀』で、主人公のリンデルと出会い、腐れ縁キャラとして彼がハーレムルートを歩むのをサポートし、虹の宝玉を手に入れ、妹の命を長らえる手段を手に入れるその日まで身体の鍛錬は怠らないつもりだ。
「ふぅ、どうだった俺の素振りは?」
「まだまだ身体ができておりませんので、軸がブレておりますし、止める位置もズレてますな。でも、筋はよろしいと思います。爺は剣にはちとうるさいですぞ」
「俺は剣に関しては素人だ。剣の師匠のローマンの言うことには従おう」
ローマンに指導された点を意識して直しながら、重い木剣を全力で振り落として止める。地味に腕に負担がかかり十数回やるだけで腕がパンパンになる。
剣の鍛錬に関しては、身体づくりだけではなく、自らの命や妹を守る護身のためでもある。この世界は、現代日本よりか物騒であるため、自衛のための戦闘術を学ぶ必要があった。
「27…28…29…30っ!」
「今日はそこまでですな。これ以上は、腕を痛めます」
「分かった。今日の素振りはこれくらいにして、朝食にする」
「剣の指導に関しては、爺に素直な坊ちゃまですな」
「俺は師匠には敬意を払っているつもりだ」
「でしたら――爺の話を――」
「ローマンは『剣の師匠』であって、『実生活の師匠』ではないからな。生活に関する小言は聞かん。よし、朝食にする」
ローマンに重い木剣を渡し、メイドから水で濡れた布を受け取ると、身体の汗を拭いていく。病弱な妹に会って食事をするのだから、しっかりと身綺麗にしておかねばならなかった。
身体を拭き終ると、自室で服を着替え、朝食の用意されている別宅のルカの部屋に向かった。
「兄様、おはよう……。本日も鍛錬をしてたの?」
「匂うか? 汗は拭いて着替えてきたが?」
「少しだけ……。でも、私は兄様の汗の匂いが好き。だから、問題ないよ」
ここ最近、毎日俺が部屋に通って食事を共にするようになったことで、ルカの病状は落ち着いている。体調不良で寝込むことも減り、食事も取れるようになってきた。
そんなルカの様子を見るに、精霊力の高い者が近くに居れば、病状の進行は緩やかになるという俺の推測は半ば当たっていそうだった。ただ、病状の進行が緩やかになるというだけで、病気を快復できるという感じではなさそうだ。やはり、新たに精霊力を付与できる虹の宝玉は必要だろう。
「そうか、ルカに問題がないなら、誰にも問題はないな」
「うん、問題ない。さぁ、兄様、朝食にしよう」
「ああ、そうしよう。危ないから手を――」
ベッドから出たルカの手をとり、躓いて倒れないよう介助しながらテーブルに向かうと、それぞれの席に腰を下ろした。給仕のメイドたちが運んできた朝食をテーブルの上に並べていく。
「兄様は、またニワトリのお肉とゆで卵?」
「ああ、そうさ。身体づくりにはこの食事が一番いい。俺はどうしても強い機士にならねばならん。そのためには強い身体がいる。だから、この食事だ」
「飽きない?」
「ルカと食べれば、どんな食事だろうが飽きない自信はある」
「兄様、それはお世辞だよね?」
「世辞? 俺は妹に世辞など言わんぞ。本気でそう思っているだけだ」
「兄様の馬鹿……」
照れたように頬を赤くしたルカを見て、紗奈とのことを思い出し、愛おしさがこみ上げる。
ルシェの意識が溶け合ったことで、俺の中で妹のルカは『可愛い』や『好き』の次元を超越し、紗奈と同様に『命を賭けてでも守るべき人』にまで昇華している存在。そんな存在に向かって世辞を言うつもりは毛頭なかった。
「俺の食事の話はどうでもいい。それよりも、ルカはちゃんと食べてくれ。俺にはそっちの方が大事なことだ」
「はぁ~い。でも、最近はお野菜のスープもちゃんと飲めるようになったんだよ」
「それは偉いな。でも、俺にはニンジンを避けているようにも見える」
「ち、違うよ。こ、これは最後に取っておいてあるの」
「そうか、なら俺も最後まで見届けないとな」
「うぅ……兄様のイジワル」
紗奈も野菜が苦手だったよな……。野菜ジュースで摂取してるから大丈夫とか言ってたけど、ほとんど野菜が入ってなくて苦い味がしないやつだったし。そういうところがルカも似てる気がする。
和気あいあいと妹との食事をしていたら、ドアがノックされた。こちらの返事を待たずにドアが開く。けして、訪れるはずのない人物の登場に俺は驚いた。現れたのは穏やかな顔をした義父のブロンギだった。
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