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主人公はプロポーズされました?!
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「あ、あの、マキアさん……?」
いつもの強気はどこへやったのか、リリィーアルは隣に腰かけるマキアを恐る恐る見上げた。裏庭のベンチは、中庭よりも木が多く日射しを遮らせている。心地好い涼しさにも関わらず、リリィーアルの心臓はばくばくと鳴り響いて身体に熱を持たせていた。
あたふたするリリィーアルに構わず俯いていたマキアだったが、横から服をついっと引かれそちらを見た。リリィーアルの眉は情けなく下がっており、常からは想像もできない表情にふっと笑った。
「ま、マキアさん、何を笑って……!」
「ごめんなさい。……ふふ」
堪えきれぬ笑いをマキアが漏らすと、リリィーアルの頬が少しだけ膨らむ。子供のような姿にもう一度笑うと、マキアはリリィーアルを見た。
「実は、リリィーアル様に相談があって」
「相談……?」
はい、とマキアが頷く。「ディアゴ様にプロポーズされてしまったんですが、どうお断りしたらいいでしょう」
「ディアゴ様に!?」
リリィーアルは目を開いてマキアを凝視した。
ディアゴ・アストロッテ。伯爵家の嫡子であり、リリィーアルの友人ルリーシャの婚約者だ。
(まさかプロポーズなさるなんて……!)
かねてよりディアゴがマキアに熱を上げていることを聞いてはいたが、腐っても彼は伯爵家の人間。婚約者のルリーシャは学生の間だけだろうと諦めていたのだが、まさかプロポーズをするとはリリィーアルも思わなかった。
伯爵家までならギリギリ庶子と婚約できるが推奨はされていない。寧ろ『特別なことがない限りしてはいけない』というのが暗黙の了解である。
それを無視して行動するなど。ましてやディアゴは婚約者をもつ身である。アストロッテ伯爵家などという義理堅い家がこんなことをするはずもなく、家の指示もなく単独で動いたのだとリリィーアルには想像がついた。
「……マキアさん、この事を私以外に言いましたか?」
「いいえ」
「ご両親にも?」
「はい。……家の者は皆、権力ほしさに承諾しろと言うと思うので」
「……分かりましたわ」
影を落とすマキアの手をそっと取る。
最後にひとつ、リリィーアルには訊かなくてはならないことがある。溢れてきた唾を飲み込みマキアを正面から見た。
「マキアさんは、このプロポーズを受けたいと思いますか?」
「いえ」
マキアが頭をふった。
「ディアゴ様のお家は伯爵家、男爵家の貴女には上に上がるチャンスですわよ?」
「リリィーアル様私のことをなんだと思ってるんですか」
苦笑いをすると、マキアは自身の手に重ねられたリリィーアルの手をぎゅっと握る。
「私は権力なんて興味ありません。ディアゴ様も、興味はないです。……私が興味あるのはリリィーアル様で、好きなのもリリィーアル様」
そしてマキアの唇がリリィーアルの耳に近づき、「愛してるのも、勿論リリィーアル様です」と甘く囁いた。
リリィーアルの全身が沸騰して身体が思い通りに動かない。マキアを凝視しているとその顔が近づいてくるのがわかり、力を振り絞ってマキアを引き離した。
慌てて後ろに下がるリリィーアルにマキアの舌打ちが聞こえた。
「今なら舌も入れれると思ったのに」
「ちょっと!?」
顔の熱が更に高まってリリィーアルは両手で頬を包んだ。
にやけるマキアをきっと睨み付ける。
「これ以上やったら助けませんわよ!?」
「え、助けてくれるんですか」
「と、ととと当然でしょう! 未来の王妃として!!」
「えへへ」
マキアが嬉しそうに頬を掻いた。
「ありがとうございます、リリィーアル様!」
照れたようににっこりと笑うマキア。風が、顔にかかっていたブロンドから赤い頬をさらけ出す。何故彼女がここまで男性から好意を寄せられるのか、リリィーアルは少しわかった気がした。
いつもの強気はどこへやったのか、リリィーアルは隣に腰かけるマキアを恐る恐る見上げた。裏庭のベンチは、中庭よりも木が多く日射しを遮らせている。心地好い涼しさにも関わらず、リリィーアルの心臓はばくばくと鳴り響いて身体に熱を持たせていた。
あたふたするリリィーアルに構わず俯いていたマキアだったが、横から服をついっと引かれそちらを見た。リリィーアルの眉は情けなく下がっており、常からは想像もできない表情にふっと笑った。
「ま、マキアさん、何を笑って……!」
「ごめんなさい。……ふふ」
堪えきれぬ笑いをマキアが漏らすと、リリィーアルの頬が少しだけ膨らむ。子供のような姿にもう一度笑うと、マキアはリリィーアルを見た。
「実は、リリィーアル様に相談があって」
「相談……?」
はい、とマキアが頷く。「ディアゴ様にプロポーズされてしまったんですが、どうお断りしたらいいでしょう」
「ディアゴ様に!?」
リリィーアルは目を開いてマキアを凝視した。
ディアゴ・アストロッテ。伯爵家の嫡子であり、リリィーアルの友人ルリーシャの婚約者だ。
(まさかプロポーズなさるなんて……!)
かねてよりディアゴがマキアに熱を上げていることを聞いてはいたが、腐っても彼は伯爵家の人間。婚約者のルリーシャは学生の間だけだろうと諦めていたのだが、まさかプロポーズをするとはリリィーアルも思わなかった。
伯爵家までならギリギリ庶子と婚約できるが推奨はされていない。寧ろ『特別なことがない限りしてはいけない』というのが暗黙の了解である。
それを無視して行動するなど。ましてやディアゴは婚約者をもつ身である。アストロッテ伯爵家などという義理堅い家がこんなことをするはずもなく、家の指示もなく単独で動いたのだとリリィーアルには想像がついた。
「……マキアさん、この事を私以外に言いましたか?」
「いいえ」
「ご両親にも?」
「はい。……家の者は皆、権力ほしさに承諾しろと言うと思うので」
「……分かりましたわ」
影を落とすマキアの手をそっと取る。
最後にひとつ、リリィーアルには訊かなくてはならないことがある。溢れてきた唾を飲み込みマキアを正面から見た。
「マキアさんは、このプロポーズを受けたいと思いますか?」
「いえ」
マキアが頭をふった。
「ディアゴ様のお家は伯爵家、男爵家の貴女には上に上がるチャンスですわよ?」
「リリィーアル様私のことをなんだと思ってるんですか」
苦笑いをすると、マキアは自身の手に重ねられたリリィーアルの手をぎゅっと握る。
「私は権力なんて興味ありません。ディアゴ様も、興味はないです。……私が興味あるのはリリィーアル様で、好きなのもリリィーアル様」
そしてマキアの唇がリリィーアルの耳に近づき、「愛してるのも、勿論リリィーアル様です」と甘く囁いた。
リリィーアルの全身が沸騰して身体が思い通りに動かない。マキアを凝視しているとその顔が近づいてくるのがわかり、力を振り絞ってマキアを引き離した。
慌てて後ろに下がるリリィーアルにマキアの舌打ちが聞こえた。
「今なら舌も入れれると思ったのに」
「ちょっと!?」
顔の熱が更に高まってリリィーアルは両手で頬を包んだ。
にやけるマキアをきっと睨み付ける。
「これ以上やったら助けませんわよ!?」
「え、助けてくれるんですか」
「と、ととと当然でしょう! 未来の王妃として!!」
「えへへ」
マキアが嬉しそうに頬を掻いた。
「ありがとうございます、リリィーアル様!」
照れたようににっこりと笑うマキア。風が、顔にかかっていたブロンドから赤い頬をさらけ出す。何故彼女がここまで男性から好意を寄せられるのか、リリィーアルは少しわかった気がした。
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